[洗濯された綿のシャツに両手を通し、一番上のボタンから一つずつ掛けてゆく。全て掛け終えれば、床にぺたりと尻をつけ、片足ずつズボンを穿く。
シャツとパンツを着終われば、椅子の背もたれにだらしなく掛けてあった麻のジャケットを上から羽織った。
ボタンが一つ掛け違えて、上と下に一つずつ余っているが、ヤヘイはそんなことに気付かぬように、脱いだ服を抱えて隣の部屋へ。
毎日欠かさず着ている麻のジャケットは、汗や泥や零したスープやらで、もうすっかり元の生成りの色合いがわからないくらいに薄汚れていたが、それでもヤヘイは、誰かがジャケットを奪おうとすると頑なにそれを拒み、毎日毎日、父が以前くれたジャケットを着続けていた。
ジャケット以外の他の衣服は、入り口を入ってすぐの部屋の隅に溜めておくのを、セレストが週に何度か訪れて洗ってくれる。
感謝してしかるべきであるのに、時偶洗濯のためにジャケットを奪おうとして来るセレストのことを、ヤヘイは嫌っていた。]
(62) 2014/07/10(Thu) 23時頃