―芸術劇場跡→広場―
[焼け落ちた建物を見ながら脳裏を掠めたのは、道化としてつい先日まで所属していた移動喜劇団のことだった。物心ついた頃には劇団員のひとりになっていた、その理由を、戦争に巻き込まれて両親を失ったのだと聞いていた。観劇のさ中に劇場が燃え、まだ右も左も覚えられないような子供が、焼け跡の中一人で踞って泣いていた、それを引き取った、それがお前だ。と。]
妖精、喋ってたな。
ちょっと威嚇されちゃったよ。
ビスケット、喰うのかな、妖精って。>>2:67
[つい先ほどの出来事が、何やら現実にあるまじきことのように思えてきて、くつくつと声を抑えて笑った。]
妖精だってさ、あり得るのかなそんなこと。
ああ、でも、そっか、お前が先に見つけたんだもんな。
笑って悪かったよ、あれは現実だ。
[肩の相棒がご機嫌を損ねたらしく、ビスケットで誤魔化そうとポケットに手を入れて程よい大きさの欠片を探っていたその時、広場へ出る直前で、小奇麗に身なりの整った青年と出会い頭にぶつかりかけた。>>13]
(43) 2014/07/30(Wed) 02時半頃