[嗚咽は、いつもの女らしい声を潰す。
切れ切れの、返事にもなってないような言葉を聞きながら、その手からテーブルナイフを取り上げた]
そうか。
[もっと言うべきことはあるんだと思う。
自暴自棄になるなとか、泣くなとか、そんなことをしたらみんなが悲しむとか。
そんな、耳障りで誰にでも言える綺麗な励ましを。
それでも、その言葉しか出なかった。
目の前の女が誰を喪ったかは知らずとも、何を喪ったかは察せられたから。
自分も、先ほどまでこんな顔をしていただろうから。
自分の気持ちにダブらせれば、その言葉は刃にしかならない]
……だよな。
[呟いて、ため息ひとつ。
取り上げたナイフの切っ先は彼女へ向けたまま、手の中で弄びながら、言葉を出せずに。
ともかく座ろうと促すために、ナイフをポケットへ入れてホリーの肩を押す。
ベンチなんて上等なものはないが、すぐそばの木陰は涼しそうだった]
(7) 2014/07/16(Wed) 16時半頃