93 Once upon a time...
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[共演者の小さな声には頷き返し、 少しだけ、いつもよりも眉尻下げて、短い金髪を揺らした。
「いつもより」
皆の演技は輝いているように見える。 団長がいなくとも――団長が、いないから?]
(101) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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/* トリノスさん……もしかしてまだ回想的なヤツで、飛んでいなかったのかもしれない。 ごめんなさい。私が口火切っちゃいました。ごめんなさい。
(-37) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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―― ステージ裏:>>22客席近く ――
[いつもならばフライヤーの陣取る場所 彼がリング上に上がっている間、 クラウンが場所を借りた。
ステージが臨める。 客の顔がおぼろげに照らされて浮かび上がる。 その更に上を、無尽に飛ぶ姿。]
(102) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[ステージ裏を見渡す。 ステージ上にいる仲間を想う。
一人一人の顔を思い浮かべる。
ついさっき「皆のこと、好き」と言った。 その言葉に偽りはない。 事実、奏者はこのサーカス団メルヘンのことを愛していたし 団長にたいしてもは特に感謝するようなこともなかったが 恨み辛みがあるわけではなかった]
(103) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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―― 綱渡り ――
[練習では梯子を使った。 けれど本番でそれは使わない。 女がこれから披露するのは綱渡り。 サーカス団が魅せる『メルヘン』の一幕。
ピンと張られた綱には傾斜がついている。 左右へと伸ばした手は爪先まで神経が張り巡らされたように形よく。 綱のぼりゆく足取りはゆっくりなれど確かなもの。 凛とした横顔には未だ笑みはなく。 メインとなる平行な綱を結ぶ台に辿りついた時、漸く表情を綻ばせる。]
――――……。
[紹介のアナウンスにあわせて流麗な仕草で一礼すると 綱渡りのスーザンは華やかな笑みを浮かべた。]
(104) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[台から綱へと伸びる足先。 地面と平行に張られた綱を慎重に女は進む。 途中でふらりとよろめきバランスを取るのは無論パフォーマンス。 半ばまで来たところで、女の動きはぴたりと止まった。
曲調が変わる。 アップテンポな曲に合わせて細い綱の上で女は軽やかにステップを踏む。 不安定な場所で踊る女短い曲の終わりにつ、と片脚を上げてポーズをとった。
ふと地上に視線を向ける。 音楽を奏でるバンドネオンの彼をちらと見る。 再び音楽が響き始めるにあわせて女は両足が綱の上で揃えた。
ゆると膝を折り綱の上に腰かける形となれば 下肢はそのままに頼りない一本に背を預け仰向けになる。 大テントのてっぺんを見上げ、そうしてゆっくりと身体を起こし 女は危なげなく立ち上がる。]
(105) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[綱を渡りきろうとしたところで、 その先の台にいる人影にぴたりと足を止めた。 プログラム通りの動き。 黒くしなやかな鞭を持つのはアシスタント。 ――そのはず、だった、けれど。 スーザンの眸に映り込むのは隻眼の指導役。 舞台に立つ事のなくなった男が其処に居た。]
――……。
[くちびるが彼の名を紡ぐけれどはっきりとした音にはならない。 対面に居る指導役がにっと口の端を吊り上げ笑った。 そうして次の動きもまた相手は違うがプログラム通り。 指導役は手にした鞭をスーザンの足元へと振るう。]
(106) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[しなやかな軌跡描く鞭をぴょんと綱の上でジャンプして避ける。 ふらりとよろめいたのは僅かな動揺が滲んだせいだった。 ひやりとしながらも手筈通りの動きが続く。 もう一撃、今度は顔を狙うように振るわれる鞭。 女はしゃがんで避けて、また立ち上がりバランスを取りなおす。
ゆらりと、白く細い腕を横に伸ばして。 再び歩み出そうとした女の腕に鞭が絡む。 取られた腕を見て、それから対面の指導役を睨みつける。]
――…っ。
[ぐ、と腕に力を込め、引き寄せる。 指導役の手からするりと鞭が抜けて それは女の手許へとすんなりおさまる。]
(107) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[隻眼の彼もまた綱の上に来ればいいのに。 二人で立つ事はなかった舞台。 それは誰かのはなむけのような予定外の演出。
女が鞭もつ手を掲げる。 向こう岸に居る隻眼に向かい鞭を振るえば 今度は予定通りにアシスタント代わりは台から下りて舞台裏に引っ込む。
女は滑らかな動きで綱を渡りきり先程まで隻眼が居た台へ。 ライトに照らされる中、客席へとお辞儀して。 いつものように愛想よく笑んで手を振りつつ退場した。**]
(108) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[この公演が終われば。
漏れる光を丸い眼球に泳がせて、 クラウンは思った。
日常に帰るわけではない。 団長の死んだ、非日常に帰るのだ。 公演のためと追いやってきた全てに手を伸ばし 腕に抱え、ケリをつけなければいけない。 なんで団長が死んだのか もしくは、誰が団長を殺したのか。]
(109) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[常のように頷きをくれたクラウンの背中が目に入る。 ステージ裏の特等席。 フライヤーがステージに上る時だけ、メルヘン内の子どもたちがいつもとりあっている場所にいる、クラウン。
音もなく――ステージ裏で足音をたてぬ技くらいはだれもが心得ている――歩み寄り、少し後ろで鳥が飛ぶのを眺め]
悲しいの
[短く、背中に問いかけた]
(110) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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みんな、悲しいのかな
[強い想いがステージをより力強いものにする。 その源は、いつもと違う――団長の死?]
(*8) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[撓むネットから起き上がりまた登って、 再びブランコの上になんとか到着する演技。 成功させればきっと拍手喝采だろう、お決まりのパターン。
見えるように笑顔を浮かべて手でも振れば、もっと湧き上がる。 応えるように頷いて宙で回転するような大技を披露する。 団長に褒められたことのあるそれを、 フィリップは行わない演技をしたのは常にある対抗心と 恩人である団長への追悼の心。]
(111) 2014/10/12(Sun) 23時頃
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[普段はブランコのバーしか見えないのに、 今日は不思議と見上げる人が、見える気がした。
そこまで視力は良くも無いはずだが、不思議なこともある。 まさか団長がそこに居たりして?]
(112) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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うん、……嫌だ。 丸呑みは嫌だ。
[それは、人間の味を知り始めたばかりの子狼には、単なる恐怖心でしかなく。 嫌なものは排除する、という発想にはまだ少し届かない。 だからそれが、別れに繋がる可能性をまだ考えていない。]
(*9) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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[嫌だな、とクラウンマスクの下に過る。 この照明の煌めきも、 観客が、演技技術に誘われ一斉に息をのむ空気も、 舞台上で作り出される何もかもが、奪われるのが。
クラウンたり得る場所が 無くなってしまうのは――――]
ニコラス、
[声は突然降ってわいた。 肩を跳ねさせることはない、けれど、 自ずと開いた眼が知らせる。驚いたと。 だから次の一言は、意識的に眦で弓を描く。]
(113) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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そう見える? 見えたらクラウン失格だなあ。
[場所を少しずらし、 望むならステージ上が見えるように譲りながら 小さな灰色の瞳がひょいと跳ねた]
ニコラスはどお。 いつもと、違う、音で今日の客入れだったけど。 ……マァ 音のこと、よくわかんないんだけどさ。
(114) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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……――おれのせい?
[悲しいかどうか、に対してではなく、悲しんでいることに対して、問う。]
(*10) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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/* >>111 うまく繋げられなくて申し訳ない>< ソロな感じで書いた方が良いのかなと思って…
(-38) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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[舞台裏、観客も、団員の姿も、―――…おとも、少し、遠い。
初舞台の緊張ゆえか 腕のなかで震える子犬を抱え直して、マリオネット>>96に目を。 人形の震えは幾分か治まっただろうか。 指摘をしないまでも、視線が、懸念を物語る。]
……… 『当然だ、わん。』
[初めて口にする、子犬の真似。 男の口を閉じたままに告げる声は高い。]
………僕は、なにも。 あれは、我が儘、だよ。
[告げられた、ありがとう、に、首を振る。 本当に、告げた理由が、我が儘だったから。]
(115) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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んーん、大丈夫
[あけてくれた場所、少しだけ塞ぐように半歩前に出た]
皆、悲しいのかな、って思って ……ザックの前口上、かっこよかったから
だから、俺は悲しくないと 思う
[いつもと違う音。 いつもと違うざわめき。 自分ひとりに向けられた意識。 悲しみは、きっとほんの少しだけ、あったけれど 朝が来る前に何処かへ行ってしまったのだ]
(116) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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聞きたかった、からさ。
…… 団長も、きっと、聞いてくれた、……… ね。
[ブラーボ、と、再度、告げる代わりに子犬が鳴いた。 舞台上で聞かせた遠吠えとも異なる。 甘える響きの、きゃん。褒められた自覚は、あるようで。]
本当なら、こんな、演目……
[在るはずのない、演目。 団長が死んだことによって進む、台本にない、演目。
――――わ、と、観客が、また、湧いた。 今の演目は綱渡り>>108の筈だ。昔、彼女の指導役が演目に立っていた頃の、ファンが居たのか。そも、演目に魅了されたのか。
恐らく理由はそのどちらとも
実現する筈のなかった、演目なのだ。]
(117) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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[役目を終えて裏に下がってから、 じわりと浮かぶ汗を拭いつつ袖から他を眺める。
ザックに向けた視線の意味は噛み砕けば 「代わりに団長やれば?」というものだったのだけど。 それを自分が言ってもいいのか解らずに、唇は動かない。]
(118) 2014/10/12(Sun) 23時半頃
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[余興が行われるステージの裏。専ら話しかける側として喋り続けていた男は、ふと話しかけられて、一旦言葉を止めた。声の主の姿を見ると、にやりと笑い]
ああ。いつも通り、上々、ってところだ。 そっちは、……そっちもまあ、いつも通りかね。 それなら何よりってもんだ。 本番で失敗なんぞするわけにはいかないからな。
[人形めいた――人形の役を担う娘、エフェドラの姿を見下ろし返しつつ、くつりと笑い声混じりに言った。装いに返す装い。一時の平常。も、不意に続けられた言葉に]
……なんだぁ? いきなり。 しちゃいけないお願いだなんて、穏やかじゃねえな。 意味深は意味深にとっちまうぜ?
[僅かに眉を寄せ、からかい半ばの調子で言い]
(119) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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じゃあ……丸呑みされないように、しちゃおう
[綺麗な蛇。 其れの口を借りる調教師もまた、美しい。 だからきっと……美味しいだろう]
悲しいのはね、誰かのせいじゃないよ
(*11) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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みんなが悲しければ、 ニコラスは悲しくない? 難しいな。それにニコラスも自信がなさそう。
[悲しい、悲しくない。 言葉にするは複雑な感情は、その実、短い音。 付け足された「思う」へ、指摘一つ重ね。
ステージ上を照らし、 漏れ落ちる光が浮かび上がらせるものを見んと 道化は視線を、半歩近づいた彼へ注ぐ。]
(120) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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[演技は、終わった。 トリノスが新しい技を決めた所も、見ていなかった。 そんなことは、興味が無かった。
こんな事は始めてではないのだから。 トリが死んだ時も、こうして哀悼を捧げたサーカスだったように思う。 記憶が酷く曖昧だけれども。
普段ならば、直ぐにいつもの特等席に戻る。 なのに、今は、何故か戻らなかった。 それは、物語が、変わってしまっている証かもしれず]
(121) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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[舞台裏。 一緒に空中ブランコの上を待っていたムスタングも、回収。 肩に載せたまま、人波を避ける]
あの演目、暗すぎるんじゃないかな。 マリオネット。
[小さな人形>>96へと近付いて。 いつも通り、挨拶も無く一言を刺す。
側に誰がいようとも、会話途中であろうとも]
(122) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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/* ……、―― もし、あれがかっこよかったなら。 嬉しいけどね。そう思ったなら、演出のおかげだよ。
だってクラウンは、かっこいいものじゃないからね。
[って入れたかったんだけど 話題が錯綜しすぎちゃうので 去り際に 押し付けたい 道化師です。道化してるぜ!(言いたかっただけ)]
(-39) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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だから、違う
ああでも少し、荒らしちゃったから……
[団長の部屋。少し、悲しくなったから。 それは自分のせいだと。他に理由を求めることもできなかったから]
だから、俺のせいかもね?
(*12) 2014/10/13(Mon) 00時頃
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