―― 一ヵ月後、紫陽花の館にて ――
[紫陽花の見頃はもう過ぎて、静けさ漂うこの館は、ゲームを交えたあのときと比べて、どことなく寂しさを漂わせていたけれど。
派手で過激な魔法も何もかもが過ぎ去ったなら、きっとこれから口にすること――ずっと心の中で温めてきた気持ちは、穏やかでささやかだけど、きっと生きた“なま”のもの]
いざこの場に来るってなったら、何言おうか色々悩んだんだけど。
やっぱ俺ってバカだからさ、下手な前口上さえ思い浮かばねーんだよな。
[浮かぶのはやはり苦笑。
なにせこの一ヶ月、彼女の舞い踊る酒場に足繁く通っては、慣れない酒を煽りと、散々な溺れっぷりだったのだ。
これで、よくまだ気持ちがはっきりしてないなどとと口に出せたものだと思いつつも、
そんな日々があったから、やっと自分の想いに自覚が持てた。――認めないといけないと決心がついた]
[一つ深呼吸をした後、ぐっと目を見開いた先、彼女はどんな顔をしているだろう。緊張から思わず目を逸らしてしまいそうな自分を、心の中で叱咤して]
(227) JITA 2015/06/23(Tue) 23時頃