93 Once upon a time...
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[奏者は少しだけ軽くなった革袋を抱えて、今一度大テントの中へ戻ることにした。もういない、と教えられた場所には見向きもしない]
何処かなぁ……何処だろう
[音もなく、足は進む。 人の姿のまま――奏者はいつだって、人のままだけれど――腹を空かせた獣は、ただ一人と決めた相手を、探すのだ。
悲しい、が待っていると知っても、足は止まらない]
(5) 2014/10/14(Tue) 00時頃
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許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/14(Tue) 00時半頃
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[公演中は、なにもない空間でさえ煌いて見えた。 此方を見る観客の、瞳の中に星が見えた。
その魔法が少しずつ薄くなり、月が傾き始めた頃]
― 倉庫 ―
こんばんは
[そこで、どんな御伽噺が語られていたか。 観客はいない。語り部もいない。 新たな出演者は、いつもの顔で、眉尻下げて笑んでみせた]
(7) 2014/10/14(Tue) 00時半頃
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ジャニス、共演ありがとう フィリップは………鳥、だね
眩しかった
[ステージに立っても、けしてスポットライトの当たらないのが奏者だ。それを望んでいるし、満足している。それでも]
とても、眩しかった
[賞賛に交えて、羨望が僅かに混じる]
(10) 2014/10/14(Tue) 00時半頃
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ひとつ、聞きたいことがあってね ジャニスを探してたんだよ
[入り口から一歩踏み出す。 倉庫内がどんな様でも、常どおりでも そこが自らの舞台であるように、堂々とした態度は変わらない]
おおかみなんて、こわくない ……ってさ じゃあ君が怖いのは なぁに?
(11) 2014/10/14(Tue) 00時半頃
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つけた…
…をもらえたかもしれないけれど…わない…
…あとはただ…が…に…をやり…げるかどうかだ…
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[緩やかな四拍子で、何小節だろう。 1フレーズ、リピート、セーニョへ跳んで、コーダに落ちる。 奏者が得意とするダンスのリズムで一曲分後の、同じ部屋。
人のまま、口元を赤に染める奏者の姿がそこにはあった。 蛇も鳥も、人間も、狩ることに慣れた狼には叶わない。
紅に染まった床に、いつから舞っていたのか、 ムスタングの羽根が、音もなく一枚落ちた]
(12) 2014/10/14(Tue) 01時頃
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丸呑みなんて、できやしない
[それでも、1mを超える蛇が、あるいは銃弾が 金色の狼を傷つけたかも知れず――身体か、心か。何処からか知れぬ痛みを誤魔化すべく、血塗れた指で頬を掻いた]
できやしないんだ
[膝をついた。 いつかの……皆が悼んだ団長のときとは違う。 目の前のこれは、自ら望んで、手にかけたモノ。 それでも、同じように。あの時と同じように。 腹を割き、肉を抉り――違う、それは元から抉れていた。もう、腹のなかにある――無残さを"演出"した。 二人とも、同じように。 甘い肉を噛みながら、喉の渇きを潤しながら 食事には不必要なほどに、場を汚す]
(15) 2014/10/14(Tue) 01時頃
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[そして、月を見上げる。 赤い足跡は外へと続き、いつしか消えうせるだろう。
華やかな公演の、成功を祝うささやかな宴の裏で 新たな二人の犠牲が出たことも、月は見ていた]
やっぱり うん、やっぱり すごく、 ……美味しかった
[言葉は、全てを表せない。 表情も、また。
いつものように、夜に奏でられる静かな音は 数刻前に聞いた子犬の遠吠えのように、何処か物悲しげだった**]
(16) 2014/10/14(Tue) 01時頃
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…もう…だよ
…
…もう…みなんてできやしないから
…して…は…おやすみ
許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/14(Tue) 01時頃
もう…
…
…みなんて…やしない…
…
うん…なあ…
…の…いものは…だ…
…
ん…みはきっと…わない…
…ねぇ…はさ
…べちゃったから
…は…にしよっか
…
なあ…やっぱり…おれも…けばよかった…
…のとこ…
…に…いたかった…
おれ…やれたかって…けてない…
…
えてくれなかったら…わからない…
…
…えてくれなかったら…えない…
…
…
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― 朝 ―
[悲劇がまだ終わっていないと、 団員達のざわめきを聞きながら、奏者は楽器の手入れをしていた。 衣装は勿論脱ぎ、ゆるやかなシルエットの普段着に身を包み あぐらをかいてバンドネオンを膝上に置き]
………よし、できた
[水で洗ったばかりの髪はまだしっとりと濡れている。 血の香りは、もう何処にも残っていないはずだ。 重くなった革袋を背負い、立ち上がる。 倉庫には行く気がしない。 当然、腹が減っているわけもない。 普段は足を向けない、練習用テントへと、ゆっくりと歩き出す]
(81) 2014/10/14(Tue) 21時半頃
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許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/14(Tue) 21時半頃
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― 練習用テント ―
[空中ブランコの練習台を見上げた。 ネットの下からだと、よく見えない。 たとえ向こうに誰か――フィリップがいたとしても 此方はよく見えないだろう]
………
[何か言いかけて、口を閉じた。 俯けば、冷え切った前髪から、雫がぽつり、床に落ちた]
(84) 2014/10/14(Tue) 22時頃
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[―――昨夜。 猛獣使いとの共演は、盛大なる拍手で成功を収めた。 終演へ、そして新たな食事へと向かって奏者の想いは高まり バンドネオンの中で、部品がひとつ、はじけとんだ。
ひとつだけ、音が出なくなったまま 奏でられた夜の旋律は歪で悲しげで……]
(92) 2014/10/14(Tue) 23時頃
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は…が…べたよ
…
…も…べたかった…
…ねぇ…ごめん…べちゃって
許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/15(Wed) 00時頃
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[練習用テントで、音楽は邪魔なだけだ。 直したはずの楽器も、革袋から出しても何も語らず 再びしまわれてそのままテントを出た。
どこかで誰かのすすり泣きが聞こえた。 団長は、慕われていたとしても、団長だ。
何より、昨日まで共に寝て、食べて、演技していた仲間が死んだ。 殺された。 しかも………二人も。
その悲劇を演出した奏者の表情に "悲しみ"は、ないし"寂しさ"もない]
(119) 2014/10/15(Wed) 00時半頃
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許婚 ニコラスは、メモを貼った。
2014/10/15(Wed) 00時半頃
してほしくなかった…
…それとも…が…したかった…
…
…ねぇ…
…はいつだって…で…なんだ
…らぬ…に…われたくないなら
…その…に…わなきゃ
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