270 「 」に至る病
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―― 遠い日の思い出 ――
……ミルフィ、疲れちゃったのかい?
[僕は買い物袋を片手に下げて、 とぼとぼと歩みが遅くなってきた君を見下ろした。
無理もない。 積まれた食材を見ただけで目を輝かせはしゃいだし 嬉しそうに砂糖や苺を買い物カゴにつんでは 「あたしが!」と一生懸命お手伝いをしていたから 体力も持たなかったんだろう。]
(261) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[君が買い物カゴを持っていた関係で あんまり重くない買い物袋を 僕は、手から肘に吊り下げる形にして 「おいで」と君に声をかけた。
君の体を抱き上げれば 暮れた空をカラスが飛んでいく。 ぎゅ、と力がこもるのを感じて 胸いっぱい広がる愛しさに、僕は笑った。]
……帰ろう、ミルフィ。 僕らの家へ。
………………眠ってしまったのかい?
(262) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[穏やかな笑い声が聞こえなくなって 君の体温がぽかぽかと暖かくなった頃 僕は静かに、そう尋ねた。
返る答えは、沈黙のYes。
僕はくすくすと笑って、君を抱えたまま家に戻る。 鍵をあけるのに苦労しながら君を落とさないように 寝室のベッドまで運ぶと その丸い額をなでて、口づけた。]
おやすみ、可愛い子。
(263) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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―― 夕 ――
[ベッドに寝かせた君の髪をなでて、 夕食の用意のために 自室から出ようとしていた頃のことだった。]
……おかえり、ミルフィ。
[僕はうまく笑えていただろうか。
泣きながら抱きついてくる君を 優しく抱きしめ返す。]
(264) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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いいんだ、……いいんだよ。 君がケーキを作ってお祝いしてくれた。 僕には、それだけでも十分。
[ぽん、ぽん、と背中をなでた。 どうにか泣き止んでおくれ、と優しく呼びかけた。
君は夢の内容を話す。 遠い遠い昔の、六歳の頃の夢を見た、と。
――……ああ、それは、もしかしたら 僕らが、……もしかしたらだけれど 一番幸せな時期の、思い出かもしれないな。
壁にかけられた古い似顔絵を見て 僕はそう思って苦い味を飲み込むのだけれど>>243 次の瞬間には、君の呼びかけに呼び戻されている。]
(265) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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ミルフィ。 ……僕も、僕もね 君が僕の娘で、とても幸せだ。
だから……………
[繋ぎとめて、と言われて僕は少しだけ言いよどむ。 セックスをして、吸血してしまえば きっとまた君の病は進行する。
君を失うのが恐ろしくて、 僕は「駄目だ」といいそうになる。 「どこにもいかせたくないんだ」と縋りそうになる。]
(266) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[……でも、君はそれを望んでいないから。]
(267) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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…………
[僕は君の体を強く抱きしめる。 そうして優しくベッドに押し倒した。]
……繋ぎとめるよ。
君がもしも……もしも…… ”あの子”に負けて消えてしまいそうになったら
その前に、パパのお腹に隠してあげる。 大丈夫だよ、ミルフィ。泣かないでおくれ。
(268) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[僕は、ちゃんといつもどおり笑えていたかい? ……そうだね、やっぱり、自信がないな。
唇の震えまで抑えて、人差し指の背で君の涙を拭う。 そして君に読み聞かせをするときのように 優しく笑って、唇にキスをする。]
(269) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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"I'm so happy to be your daddy, my love."
(270) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[いつか眠りにつく君が、 穏やかに笑えていますように。
願いながら、僕は君を愛すだろう。 愛によって全てが終わる日まで。
……その血も。涙も。笑顔も、]
( ”You are mine, my love." )
[――――いずれは、そう胸を張って言おう。
孤独に至る病を抱えながら 僕らは本当の家族になる。*]
(271) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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――-…………、
机に瓶を分けて飾られた五本の白薔薇、赤薔薇からはらりと花びらが落ちた。
『何故後を追わなかったのですか』
静かに投げかけられたその問いに教授は答えを返さなかった。非難するような色を持つその言葉を発した相手を一瞥し、手元のPCに視線を戻す。沈黙。 やがて窓の結露が流れ落ちる頃、椅子に腰掛けていた教授は、若い吸血鬼の研究員に笑いかけた。ひどく自嘲的に。ひどく寂しげに。
『……神の国に入る資格がない。死んでも会えはしない。 意識を失えば苦しみから逃れ得るかもしれないが 同時に大事にしていた思い出も消え去る。
それとも…………、 君は大事な家族の思い出を失うリスクを負ってまで、 死後の世界に夢を?』
(-1029) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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砂糖を溶かしすぎるほど溶かした紅茶を一口啜った。 PCに移していた視線を、添削中の論文へ。 そして赤く印をつけて研究員に渡した。――ああ、彼は、自分の「家族」のひとりに懸想をしていたな、と思い出しながら、
『先ほど指摘した場所について……。 来週までに直しておいてくれ。
…………。 彼女らがいない世界に私の幸せがないだけだよ。 どこに居ても同じだ』
微笑み、それから再びPCに視線を戻す。 また、淹れた紅茶に角砂糖を落とした。 痛みを和らげるように。 *
(-1030) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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『序 本書は長年提起されてきた吸血鬼と眷属の関係、依存症、外界との関わり方について記されたある吸血鬼(以降、A氏)の遺稿を編集したものである。■■■■年、リンディン内のある住宅地にてA氏の遺体は見つかった。ベッドで安らかに眠るA氏の周囲には眷属が映った古いアルバムや似顔絵が並べられ、……(中略)……』
(-1031) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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―― ――
[曇天に黒いカラスが舞っていた。
クリスマスが近づく町はどこもかしこも飾り立てられている。にも関わらず、天気のせいか、降り始めた雨のせいか、どこか灰色だった。
町を歩く人間たちは皆家族や恋人を連れている。 冷たい空気を、互いの微笑みで暖めて灰色の町並みを歩いていく。
その人ごみの中で、黒いコートを羽織った男があたりを見渡した。 足しげく通った店にも、友人が住んでいた家にも、知った顔の1つもないことを理解すると、納得するように歩いていく。]
(272) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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「ママ、パパ、サンタクロースが来たら ぼくあれが欲しいなあ」
「いい子にしてたらきっとくれるわ」
「おいおい、いつもいい子にしてるじゃないか、なあ? クリスマスを待ちなさい」
「え――、僕待ちきれ……、わ、ごめんなさい!」
(273) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[町を歩く親子連れがプレゼントについて語り合っている。
はしゃいだ少年が父親に振り返ろうとして、前方を歩いていた男にぶつかり、咄嗟に謝罪を口にした。
男は黙って微笑むと、彼の頭からずり落ちた帽子を被せなおして、何かを呼びかけた。聞き取れなかった少年がぱちくりと瞬きをする。 ――直後。]
「……、誰と喋ってるの?」
「ほら、そんなにふらふらしてたら危ないぞ」
「えっ、――うん、……」
[両親の声が聞こえ、少年は不思議そうに首をかしげた。 そうする間にも、黒いコートの男は雑踏に消えていく。広い背を雨に濡らしながら、家族連れの中をひとりで。]
(274) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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「雨が降ってきたわ。――さあ、帰りましょう。 私達の家へ」
「うん!」
[微笑を交わし、人間たちはそれぞれの帰路につく。
結露に曇った窓の向こう。 クリスマスツリーを室内に飾り、 暖かな料理がテーブルに並ぶ場所へ。
それら全てを祝うように、 あるいは厳かに祈るように
柔らかな雨の中で、リンディンの鐘が鳴っていた。]**
(275) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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/* ご挨拶。 さねきちと申します。 今回は素敵な村に参加させていただき、有難うございました。 狂気に陥っていく吸血鬼と眷属、ほんとうに楽しかったです。 村たてのももてんさんに感謝を。
そして、一緒に村に入って遊んでくださった相方さん、ありがとうございました。 娘ちゃんがけなげで可愛く、「なぜこの男は娘を抱いているのだ(怒りの枕パンチ)」「でもエッチな娘ちゃんはかわいい」と中の人が煩悶する日々でした。依存症になるあたりもとっても怖くてすきです。 長々と書きましたが、ありがとうございました。
お使いイベでお話させていただいたフェルゼ君や、育児談義させていただいたチトフ君にも全力で感謝を。あんまり綺麗な大人ではなかったので、お話していていろいろ浄化されました。ありがたや…
そのほか、同村してくださった方へ最大の感謝を。 それでは、また。
(-1032) さねきち 2019/10/20(Sun) 03時頃
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[彼と薄氷を踏み出してからどれ程の時が流れたか。 気が遠くなるような未来ではなかった気がする。 諦めた後の日常は曖昧だ。 記憶に鮮烈に残っているのは彼のことだけ。
自身の生活は徐々にではあるが、 人々の終末を支援するのでなく、 白き眷属と最期の時を迎える準備に使われた。 ――とは言え、何かを備えたりした訳じゃない。
朝から淫交に走ったり、食事を手ずから与えたり、 体中にキスと噛み跡を残したり、愛したりした。
それでも歪みは止められない。寧ろ一気に加速した。 僅かに離れるだけで彼の情緒が乱れるようになれば、満を持して診療所を閉めた。そこまでいくと、もう未練はなかった。
それからは毎日彼を抱いていたように思う。 体温を恋しがる彼を慰めて、依存に堕ちていく彼に溺れて。 傍目から見れば中々凄惨な終末期だったのかもしれないが、己の世界は彼一人のものであったから、然程気にならなかった。 マトモではなかったが、覚悟の上だった。]
(276) momoten 2019/10/20(Sun) 07時頃
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[だから、漠然と、今日なんだな。と察しても、 悲しいとか苦しいだとか、ネガティブな感情は湧かなかった。
彼と己の最後の日は、ずっと手を繋いでいた。 セックスはしなかったけど、ずっと笑っていたように思う。
吸血鬼と眷属の多くは碌な結末を迎えない。 自身らも失敗のうちに数えられるのだろう。 天から貰った寿命の半分も使えなかった。
乱れた生活だったし不健康な日々だったが彼がいた。 どこにも行かず、ずっと傍にいてくれた。 結んだ手を強く握る。温もりがある。
堕落し爛れた末期を幸福と呼ぶには流石に抵抗があるが、孤独ではなかった。 彼の気持ちが今なら分かる気がした。>>-1012
重ねた掌の中、 そこには確かに同じの想いと心があった。**]
(277) momoten 2019/10/20(Sun) 07時頃
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/* 朝から天啓が来たのでペコペコお布団の中からお届け! ひゃー!楽しかった!ありがとう、だいすき!!
(-1033) momoten 2019/10/20(Sun) 07時頃
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/* おはようーございます! 無事にバスに揺られまして酔う前にご挨拶。
みなさま、この度はご一緒していただきありがとうございました。ペアことに依存に至る経緯やその先があって、様々な葛藤と狂気と愛情溢れるドラマが繰り広げられてるのを見守る時間も楽しかったです。
このような素敵な企画と村を建ててくださったももてんさんには感謝尽きません。何度でも言いますが、この村でグスタフの眷属として生きられてわたしもフェルゼも幸せです。(進行形)
縁を繋いでくださった方もありがとうございました。お使いでお世話になったセイルズさんや、うちにいらしたケイトさんと、深く関わらずとも刺激し合えるこの仕組みは今後も推していきたい気持ち。
普段同村する機会がない方とも会えるのがペア村のいいところですね、またどこかでお目にかかれましたらよろしくお願いします。
(-1034) mumriken 2019/10/20(Sun) 07時頃
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グスタフは、フェルゼに、ハグハグ
momoten 2019/10/20(Sun) 07時頃
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/* って、あぁあああぁあなんてことしてくれてんですか! 残り10分前におとすもんじゃないでしょうまた目が腫れてしまう… ギリギリのギリまで本当にありがとうございました。
普段照れてしまって言えませんがグスタフも、ももてんさんも大好きですよ!とびっきりのお餞別ありがとうーーー!
(-1035) mumriken 2019/10/20(Sun) 07時頃
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/* ふええぇ………
(-1036) mumriken 2019/10/20(Sun) 07時頃
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/* この頃には彼シャツも着ないで全裸にシーツかぶってんだろーな…うっかり診察に行くグスティを刺したり患者を、刺す未来がなくて良かった…
(-1037) mumriken 2019/10/20(Sun) 07時頃
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/* 最期は手を繋いでいたいなって。
自分もちかたろうちゃんさんがだいすきですー! いってらっしゃいましませ!
ちかたろうちゃんさんも、皆様も、どうぞ良い週末を!
(-1038) momoten 2019/10/20(Sun) 07時頃
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/* ぎゅぎゅっとね、手を握って傍にいてください。 死ぬのは怖くてないけどグスタフと離れるのは怖いから。 ちゃんとフェルゼの最期のお願い叶えてくれてありがとう。
やったー両思い。(へっへっへ) バスの揺れが激しくなってきたのでーここで失礼します! ありがとうございました!いってきまーす**
(-1039) mumriken 2019/10/20(Sun) 07時頃
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/* 殺傷沙汰回避というか、 自分以外がフェルゼくんに刺されるのやだよ!! 同担拒否過激派。お前は俺のだろメンタル。
好きが重い男、それが拙者フェルゼくんだいすき侍。
(-1040) momoten 2019/10/20(Sun) 07時頃
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……アオくん? 眠ったかな。
桜、きれいだね。 アオくんのがきれいって言ったら「ばか」って言いそうだよね。
……愛してるよ。
(-1041) Ellie 2019/10/20(Sun) 07時頃
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