266 冷たい校舎村7
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フウタに5人が投票した。
レナータに1人が投票した。
フウタは村人の手により処刑された。
時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
レナータが無残な姿で発見された。
現在の生存者は、タカモト、ヤン、キョウスケ、ヨーコの4名。
キーンコーンカーンコーン…………
(#0) 2019/06/16(Sun) 00時頃
──午前8時50分
そして、また新たな今日が訪れる。
焼き増しを重ねるように繰り返す1日に、
また新たな別れがもたらされる。
轟木颯太と田所怜奈が見当たらない。
(#1) 2019/06/16(Sun) 00時頃
そして、5度目のチャイムが鳴ったとき、
君は理解しているはずだ。
──ここは、君の世界。
すべて、君が望んだものだった。
君の作り上げたものだった。
君が作って、招き入れたのだ。
どうかな。二度目の文化祭は楽しめた?
ほしかったものは君の手の中にある?
(#2) 2019/06/16(Sun) 00時頃
……どちらにせよ、決断の時はやってきた。
馬鹿なふりをしたって仕方がないよ。
君にも分かっているはず。
君の作り上げた世界は有限なのだ。
気づいているだろう。
もうじき、誰もいなくなる。
君以外誰も、この世界に留まれやしない。
だから君も選ぶのだ。
悩みはない、けれど誰もいない世界に一人留まるか、
痛みや苦しみ、悲しさと、そして、仲間の待つ世界へ帰るか。
もう時間はあまりないけれど、
どうか君にとって悔いなき選択を。
(#3) 2019/06/16(Sun) 00時頃
冷たい校舎の時は────、
(#4) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[馬鹿なふりをしていたって 見ないようにしたって、 ……いずれ、終わりはくる。>>#3]
(0) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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―― 朝早く ――
[チャイムが鳴るよりも前に、 早く起きて3階の家庭科室の扉を開けた。 横で眠っていたキョースケを起こさないようにして。
冷蔵庫の中に入っているものを確認して 簡単な朝食しか作れないな、と思う。 田所さんに節約術聞いておけばよかったかも。
ソーセージ。焼き蕎麦の材料と思しきキャベツに卵。 にんじんもハムもあるのに、 残念ながらコンソメスープの素はない。 パン、は、出店であったのだろうか、 サンドイッチ用の食パンがあったのでそれを拝借して
ハムを敷いた目玉焼きに、 簡単なサラダに、焼いたソーセージ。 そういう簡単な朝食をつくりあげて食堂に三皿。並べた。 「朝飯」というメモを添えて。]
(1) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[親父と、母さんと、俺。 (悟と、キョースケと、ヨーコねーさん。)
うん、三つであってる。……あってるよなあ? ぼんやりした頭で考えて
ふと、ラップをかけた手を止めた。]
(2) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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…………………、そっ、かあ。
(3) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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「売る…………?」 [問いかけは薄い壁に吸い込まれて消えた。 背を向けた親父は、俺に背を向けたまま 「終わりにしよう」と言った。
この家と土地を売ってその金を分けるから 高校を卒業したら就職しろ。 そういったことを、ろれつの回らない舌で言っている。
……また床に空き缶が転がっている。 だからこれも酔っ払いの駄々だ。いつもどおりのわがままだ。 「なにいってるんだよ、もう」と流して目の前を去ろうとして 笑おうとして、笑顔が引きつった。
思えばもうずっと限界だったらしい。 その日、俺は珍しく親父に思いの丈をぶちまけた。]
(4) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[親父と遊んだガレージも、母さんが料理をしていたリビングも 俺にとっての世界で、俺にとっての思い出だ。 勝手になくさないで、勝手に決めないで、って。
多分そんな事を言った気がするんだけれど 途中で殴られたものだから、どこまで言ったか覚えてない。
――母さんに似た顔が気に食わない。 ――いっそお前が女に生まれていれば。 そういう言葉の意味が欠片も理解できない。
――気持ち悪い。そんなんだから逃げられるんだ。 言い返したら、俺よりずっと体が大きい親父は 割と簡単に、俺を蹴り飛ばすんで、 大きい物音がしたっていうのに その日はじゃれて笑うふりを忘れて、咳き込んだ。]
(5) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[遠い昔作ったおもちゃが音を立てて落下して 痛みの中で俺は親父を見る。とうさん。と、呼ぶ。
あのな、父さんがこんな人じゃなかった事、 よく覚えているんだ。
休みの日にはガレージで日曜大工をして ……好きなヒーローのおもちゃも買ってくれたっけ。 たろの世話もしてくれた。よく蹴ってたけど。 車で遠くにつれていってくれたりもした。
仲冬に合格したときは、 「よくやったな」って頭を撫でてくれただろ。
それでね、父さんが母さんが好きだったことも よく、知っているんだよ。 母さんを守るためにずっと働いていたことも。
それでな…………それ、で。]
(6) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[おやじ、って、俺はもう一度だけ、目の前の人を呼んだ。 目の前の男は酔った赤い顔で俺を見下ろしている。 血走った目が俺を見てる。 シャツの襟を大きな手が掴んで、
……………この男と、ずっと「かぞく」なのか。
体が持ち上げられているのに、 その感情はすとんと胸に落ちてきてしまって困った。
これから俺、父の日に一体誰にプレゼントを贈ればいいんだろ。 迷子にでもなったような気持ちでその男を見て
…………ええと、それで、それから。 ごめん。それ以上のことはいえない。
死にそうな気持ちで目を覚ましたら 再び酒をいれた親父がお笑い番組を見て爆笑していた。]
(7) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[もう、いいかなあ。
子供の世話と狭い空間に疲れきった女が 外で幸せを得るのも
そんな女を心の底から愛していた男が 愛を失って、寂しさに酒に逃げてしまったのも
なにひとつとして世界の終わりじゃない。 なにひとつとしておかしくないよ。人間だから。 人間だからいつかは壊れてしまう。
誰も責任なんかとらないし。 きっとそれだけのことに付き合うのに疲れた。]
(8) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[とめたい。それが今であるべきだ。 そういう判断は、すんなりと胸に落ちてきた。
母さんもたろももういないけれど まだ家は売られていなくて俺は高校生で
今、でやめてしまえば 文化祭のおしまいに笑顔で写真を撮ったあのときのまま クラスの皆が止まってくれる。
……何の罪もない皆を殺して回るより 生きたくない自分が死ぬほうがよっぽど早い。 そういう理由で、自分の腹に包丁を突き刺した。
今まで十分叩いたでしょう。もう食べごろだよ。 腐る前に、召し上がれ。]
(9) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[公園じゃない。学校じゃない。 ましてや夜でもないし、昼でもない。 ここはガレージの中。真っ暗闇の、冷たい床の上。]
(10) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[死ぬまでに随分と時間がかかるなあ、と 濡れた自分の腹を見下ろしながら思った。 痛い。痛いのだけれど、笑うしかなくて こんなことをしても親父が駆けつけてくれるわけでもない。
ああそうだ。お別れくらい、いっておかないと。
手元にあった携帯を起動する。 文面はどうしよう。あまり悲しませないのがいい。 けれど礼はなくさずに、心残りの、ないように………]
…………は、はは、
(11) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[うまく打てない。携帯の画面が濡れた指で滑って これが最後。これが、最後なのに。 赤くなって、滑って、落として、またとりあげて、 早く打たなきゃ、打てよ、また滑り落とした。
かたん、と物音がして「SEND」の文字が消え 携帯が水溜りに落ちる。真っ暗闇に取り残された。
朦朧とした意識で天井をあおぐ。 見上げたって星も月も見えない。まして青空なんて]
(12) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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………………こえぇ、なあ…………
(13) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[知らなかった。死がこんなに暗いなんて。 最後に皆に会いたいと思ってしまった。 笑いながら、目を閉じた。
馬鹿だなあ。何も望まなければ…… 遺書みたいな迷惑メールさえ送れていれば
あのまま、終わっていたんだろうに*]
(14) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[食堂に朝食を置きながら、 そうだったな、って俺は思いだす。
思い出してしまったので。 夢から起きてしまったので。
この世界の電源をOFFにしにいこうか。
……その後の事?
ううん、俺は知らないけど。 残ったお客さんが脱出してくれるなら 俺は憂えることはない。]
[お化け屋敷は脱出するまで楽しまなきゃ。ね?]
(15) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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―― 美術室 ――
[様々な絵が額縁に飾られている美術室の中 赤い頭部が模された作品のタイトルが 書き加えられていることに気づいた。
「家族」>>4:299
何を思ってそう題をつけたしたのだろう。 書き文字の主のことを思い、少し立ち止まる。]
(16) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[それから、再び歩みだして その作品のもとへと辿りつく。
「タイムカプセル」って平凡な名前をした 奇妙なガラス絵の塔の前に、俺は立った。
見えない明日のために、 明日を生きる希望にするために 今日見たうつくしいものを、過去に埋める。 そんな意味のタイトルだった気がする。
……どうでもいい。
ここにあるのは過去だけだ。 鮮やかな景色から青空に視線を移して そのときに見える残影。
いずれ人の記憶からは消えるもの。 それだけ。]
(17) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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…………大好きだった。
[俺はひまわりの絵をひとつだけ撫でて、 それから、]
(18) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[迷わずにイーゼルを手にとった。 遠心力をかけながら、そのまま、 大きく、振りかぶって―― ]
[チャイムが鳴る。]
[…………がしゃん、と、2階で物音がし 一瞬、学校のすべての明かりが消える。 窓の外が暗闇に包まれる。
少しの間をおいて電気は復旧するが 窓の外は依然、暗闇のままだ。]
(19) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[いくつものガラスが飛んでいく。 きらきらと色がついた思い出たちが、 自分の腹や腕に突き刺さる。
だらだらと体中から血が流れている。 精神世界なのに面白い。
淡々とそんなことを思いながら いくつかのガラスを拾った。]
(20) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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[指切りをした夕暮れの公園。>>0:272 青空を背にしたひまわり畑。>>1:450 子供達が遊び笑う雪の学校。>>4:56
そういったものを見下ろして、 ぎゅっと握りこめば、ガラス片が自分の手を切った。
手を開けばそこにあるのは、 どれも赤く濡れた景色だ。
…………これでいい。 汚れた景色はいずれ忘れ去られる。
ぱらぱらとガラス片を取り落として 何も持たずに、ゆっくりと美術室を出た。]
(21) 2019/06/16(Sun) 00時頃
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