263 ― 地球からの手紙 ―
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やあ、君の方こそおつかれさま。 これは少しだけど、お土産。
[親族の館へ着いて、長旅を労ってくれる相手にそう返す。 もめ事に巻き込まれて、だいぶ疲れているように見えた]
ああ、すまないね。ありがとう。 それで、あれからどうなっているのか、聞かせてくれるかな。
[出された飲み物を、ひとくち飲んで。 思い出したように、鞄をさぐった*]
(+0) 2019/04/21(Sun) 23時頃
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[魚を食べた子は高熱を出してうなされていた。 悪夢の中で、ブルーブラックのインクでそめたような夜の空を泳いでいた。いつものモフモフの手足はなく、ぬるつく皮膚としっぽでまっすぐに泳いだ。
友人の命を助けるため、幼馴染は森の中を走った。 霊験あらたかな水を、何やらたくさん模様のあって珍しい、桜の葉っぱですくい取って頭上にかかげて運んだ。 とても重く、いつ力尽きてもおかしくなかった。]
(+1) 2019/04/21(Sun) 23時半頃
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[“夜”は明け、新しい“朝”がやってくる]
(+2) 2019/04/21(Sun) 23時半頃
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[子は幼馴染が葉にくるんで持ってきた水をそっとなめた。 ひとなめ程度の量だったけど、すごく力が湧いてきた、ような気がした。
ぜえはあと息を切らす、手のひらに収まるくらい小さな幼馴染の背を、そっと指でなでた。]
(+3) 2019/04/21(Sun) 23時半頃
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[私は“夜”の間ずっと遅くまで起きていること―― いわゆる徹夜をしたことはない、と思う。 いかんせん私についての記憶がないので確定はしがたいが、 夫曰くの私は夜更かしなどしないような人だという。 対する彼は――徹夜明けの珈琲は美味いと億面もなく言っていたね。うん。
そんな彼とのささやかなやりとりを思い出しながら、 病室の窓越しに、穏やかな街の風景を眺めている。 ビルの灰色が多いが、それでも様々な色がそこかしこに点在している]
(+4) 2019/04/21(Sun) 23時半頃
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[夫はもうとっくに気付いただろう。 レースのコースター7枚が入ったプレゼント袋と、 その傍らに置かれた手紙に。その文面はこうだ]
『私は気付くことができました。 記憶のない私でも、あなたに何かを返せるだろうということに。
このコースターはお礼です。 気分に合わせて違う色を使ってください。 今まで私に良くしてくれてありがとうございました。 それから、行ってきます』
(+5) 2019/04/21(Sun) 23時半頃
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[外は雨が降り出した、きっと朝まで続くだろう。 子と幼馴染は静かに話し始めた。
アリたちの巣穴は、小砂利で埋まったおかげで被害が少なかった。 雨が止むのを待って新しい出口を開拓するだろう。
育ての母の胸の中で、他の卵を蹴落として成長するヒナは静かに決意していた。 必ず生き延び大きく育ち、命をつないで空を飛ぶのだと。 だけど鳥の巣の下では、雨宿りに来た蛇がじっと見上げていた。]
(+6) 2019/04/21(Sun) 23時半頃
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