シーシャさん。
[彼に微笑むと、右手を上げる。
上げた手の薬指には、彼からもらった指輪が嵌められていた。
高価なものではなく、わかる人が見ればちゃちな指輪だろう。
だけど、彼の思いが十分以上に詰まっていることを、自分だけは知っている。
自分も、彼に指輪を贈った。
バイト代は諸所の費用に消えていき、やはり高価なものではなかったが、この街を出る前に、どうしても贈りたかった。
どこまでも自分と共に居てくれる彼への感謝と、彼は自分のものだ、という独占欲と、いつか左手への指輪を贈るという約束と、あとは、ただひたすら彼に感じている愛しさを込めた、つもりだ。
やっぱりこれも、早くもっといいものを贈ってあげたい、と思う。
もっと彼に相応しい価値のものを。]
(376) wallander 2019/08/12(Mon) 23時頃