279 宇宙(そら)を往くサルバシオン
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[様々な人がいた。
大学教授を名乗る気さくな女と、科学者だと主張する尊大な猫がいた。
機械の音をさせる無口な男と、朧な声で懸命に関わりを求める浮遊種がいた。
主を亡くしたヒューマノイドと、大切な人との別れを強いられた知性体がいた。
先輩を慕う調子のいい技師がいた。 電子音で話すゼリー状の生き物がいた。
故郷の味を、無邪気に喜んでくれた少女がいた。
このまま旅が続いていれば、あるいは。 遺伝子に刻まれた習性と忠誠だけで生きていた男にも、新たな理由が見つけられたのかもしれない。
もしも果たされていたら、それは多分幸せなことだったのだろう。]
(+31) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[クラゲに寄生された時、トルドヴィンには意識があった。 だから、教え込まれた通り>>0:38に自らの首を斬り落とそうとした。 もっと武器らしい武器があれば、クラゲは一匹減っていたのかもしれない。 結果としてそれは失敗し、トルドヴィンは意識と体を奪われ、以降はクラゲの触手からの刺激に反応を返すだけとなった。
そこに彼自身の意思はなにひとつ存在しない。]
(+32) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[宇宙クラゲは記憶と思考パターンを読み取って行動する。 不自然でないように。中身が変わっていることを悟られないために。
トルドヴィンはクラゲにとって模倣しやすい相手だった。 情緒の変動が少なく、行動原理が単純だからだ。 だから、クラゲに寄生されていようといまいと。 トルドヴィンの行動は結果的にあまり変わらなかった。
敵への共感に対する過剰な拒絶反応も。>>4:110 敵を生かすという言葉の受け取り方も。>>4:113
宿主の思想を、習性を、本能を、クラゲが忠実に真似ただけだ。
それはクラゲを探すという状況において有効な対応とは言えず、結果としてクラゲは今まさに触手の先から凍りつつある。 そのあたり、このクラゲはやや狡猾さに欠けるところがあった。]
(+33) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[記憶を読み取る。意識を奪う。
それは細かく言えば、触手を脳や神経に沿わせて張り巡らせ、電気信号を送って体を動かしたり、宿主の感覚器を介して情報を受け取ったりすることだ。必要ならばより宿主の思考に近付けるため、"考えさせる"こともある。
それらは宿主が生きていなければ行えない。 クラゲが与えた信号に、返ってくるものがなければならない。
そして、返ってくるということは。
クラゲ自身も、触手を通して何かを受け取ってしまう可能性があるということだ。>>+8]
(+34) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[このクラゲが意図せず宿主から吸い上げてしまったのは、『母』への思慕だった。 それは最初、『母』に会いたい、食べてみたいという欲求となって表れた。 勿論トルドヴィンの『母』――Vespaの女王は冷凍追放刑に処されているため、クラゲには手出しができない。
その時はまだ、正常な判断ができていた。
おかしくなったのは、彼女に触れられてからだ。>>3:34]
(+35) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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/* なんと、どちらでもない 狩食おうっつったら食わしてくんなかったのだ はは トルドヴィンくんはかわいいね
(-80) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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/* あ、>>112ね
狩くえない→アーサーくえない ワクラバがんばってSGにしてるので食えない \シルクだ/
(-81) 2020/09/04(Fri) 20時頃
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[ミタシュの手が頭に触れた時、対応に迷ったクラゲは宿主に"考えさせた"。 思考させられたトルドヴィンの脳は、その状況から『母』との記憶を思い出した。 それがいけなかった。
トルドヴィンの種族は、生まれた時から役割が決まっている。体のつくりも、役割を全うするためだけに特化している。 彼に与えられた役割は『女王の側近』。 盾となるための硬い外殻と、普段は隠された殺傷力の高い大顎を備えた大柄な個体群。 そして、女王の命令を忠実に遂行するための仕組みがひとつ。
自分を産んだ女王――『母』を思う時、彼等の脳は強力な鎮痛作用と多幸感をもたらす神経伝達物質を分泌するようにできている。 トルドヴィンが躊躇せず自らの首に刃を向けたのも、この物質によるところだ。
クラゲはあの時>>*3:16、引きずり出された記憶によって分泌されたそれを――脳内麻薬に近しいそれを、じかに受け取ってしまった。]
(+36) 2020/09/04(Fri) 20時半頃
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[トルドヴィンがクラゲに寄生されていなければ、別に何も起こらなかった。 彼女の勇敢な申し出に跪き、謝意を示すことはしただろう。>>2:191 その小さな手>>3:15に、『母』との幸せな記憶を思い出しもしただろう。
だからといって彼がミタシュに『母』を重ねることはない。 その記憶がどれほどの歓喜と恍惚に満ちていたとしても、彼女とは無関係だ。
ミタシュを気にかけることはあれど、それは彼女の勇気や真摯さに対する好ましさと、少しの庇護欲によるものだと、トルドヴィンならば自覚できていたはずだった。]
(+37) 2020/09/04(Fri) 20時半頃
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[しかし、クラゲにそんな区別はつかなかった。 突然襲ってきた過剰な幸福感に、クラゲは仰天し、混乱した。
クラゲにとっての幸せは、食べることと殖えることだ。 そのどちらにも結びつかない行動がもたらしたそれをどこに置いたらいいのか、クラゲにはわからなかった。わからなかったので、わからないまま、クラゲの無意識は目の前にいた少女にそれを紐づけた。
それから、クラゲは彼女を見ていた。 そうしていると、あの強烈な多幸感の残滓が感じられた。]
(+38) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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(うれしい、と おもった。)
[彼女の姿を見ただけで、無意識に触角が跳ねた>>4:159。
彼女と話したいと思った。 触れたいと思った。>>4:171 もう一度、触れてほしいと思った。
そして、たぶん、
――食べたいとも、思っていた。]
(+39) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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(わからない。)
(おれには、……わたしには、これがなんなのかわからない。)
[伸ばした手が落ちた>>4:171のは、わからなかったからだ。 どうするべきか。 どう、したいのか。
"気に入っているのだろう"と、同胞は言った。 そうなのだろうか。わからない。]
(+40) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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(触れていたら、わかったのだろうか。)
(食べていたら、わかったのだろうか。)
[彼女に票を入れなかったのは、追放されたら困るからだ。 彼女を襲わなかったのは、一度きりにしたくなかったからだ。
彼女のためではない、どこまでも自分のため。 その証拠に、ヘリンを喰えば少女が悲しむだろうことすら、このクラゲは考慮しなかった。 彼女を食べることは躊躇しても、彼女のために食べることをやめようとはしなかった。
だから、今クラゲがここにいることは、正しい。 クラゲは、隣人にはなりえない生き物だ。]
(+41) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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(……わからない、わからなかった。 けれど もういちど、)
(……あのとき。もしも、てを、)
(…………、)
(……。)
[傘の中心まで凍りついて、クラゲの思考はそこで停止した。]
(+42) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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[蜂の骸と冷凍クラゲを乗せて、ポッドは漂っていく。
あてもない、果てもない旅だ。
救うべきものなど、ここにはいない。
――だから、ここに救いは必要ない。**]
(+43) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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/*は〜〜〜〜こんなもんか 遺伝子レベルのマザコン男に破滅させられたクラゲみたいな図になってしまったな
それはそれとして寄生されてないトルドヴィンとミタシュちゃん見たかったとぼくはおもっています(赤希望しておきながら
(-82) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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/*最初『母』を追っかけていく路線でいこうとしていたので色々と…色々と赤ログと齟齬が出ていそうなのがイヤンなんですが、まあクラゲもぼくも想定外ということでひとつ…
(-83) 2020/09/04(Fri) 21時頃
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いえ。本来の挙動に沿わぬ言動に対する、定型文のようなものです。 紛らわしい表現となり、申し訳ございません。
[>>101ヒューマノイドが恥じらうかと言われれば、答えはNoだ。 定型文は、迷いや判断の遅延があったことを詫びる際に組み込まれている行動でしかない。]
感情があるように見えるということであれば、喜ばしいことです。 私は人に寄り添うものとして作られました。 人に近しく見られることは必須ではありませんが、傍にいるにあたって好感触でしょう。
[ありがとうございます、と首部アームを上下する。]
(115) 2020/09/04(Fri) 22時頃
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宇宙クラゲの仲間が、トルドヴィン氏を選ぶ理由はない、ですか。
[では、トルドヴィン氏に投票をしなかった自身の判断は誤りだったのだろうか。 否、彼はそのようには言っていない。その受け取り方は推奨されない。
誰を選んだか公表する、という提案に、ヒューマノイドは持論を述べる。]
私は、トルドヴィン氏を信頼し、彼の発言データと私独自の観点から推定し、シルク様に寄生の懸念があると考えていましたが、こちらの判断を保留し、ワクラバ氏へ投票を行いました。
(116) 2020/09/04(Fri) 22時頃
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ワクラバ氏への投票の理由には、スプスプイ様がたが先日襲われたことに由来します。 あの日の襲撃が、スプスプイ様がたが宇宙クラゲにとって脅威であったのみならず、ワクラバ氏に対する判定を隠すためであったと考えたためです。
[昨晩アーサーに伝えたことを、掻い摘んで伝える。 宇宙クラゲの生態、襲撃理由に基づく、自論のみでの推定だ。]
(117) 2020/09/04(Fri) 22時頃
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シルク様とトルドヴィン氏の関係については、結果としてアーサー氏の見当が正しいものでした。
私は現在、はじめの想定から結果は真逆のものとなってしまいましたので、どの地点から推測をやり直すべきか……
(118) 2020/09/04(Fri) 22時頃
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[ワクラバ氏が昨日の談話室の様子を話すのは、じっと聞いていた。 シルク少年と今日話すつもりでいた事を、それで思い起こす。
叶わない約束になってしまった*]
(119) 2020/09/04(Fri) 22時頃
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/* もし頑張れていたのなら、皆さんの魅力的なPCたちと村建てさんが組み上げた素敵な舞台のおかげだと思うのですよ。 天声もwikiも読み物として単純に楽しくて目を通していたところがある。 PLとPCでは全部を共有することはできないけど、>>0:#3があったから書けた部分は大きいですから。
読み間違いとかあったらまことにもうしわけないんですけどね! むしろまだまだ拙い部分が多いと思っているので、皆さんの優しさに感謝が尽きません。ありがたや……。
(-84) 2020/09/04(Fri) 22時頃
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/*
はートルドヴィン寄生うまうまですね!! せつなーーい、おいしみだ… 上手くやりとりを回収して折り込んでいて それもまた素敵だな…!!
(-85) 2020/09/04(Fri) 22時頃
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/*
地上がどうなるかも楽しみにしている…! わくてか! わりとスプスプの種族的なその後は 地上の結末で分岐かなあとも思っているので、 楽しみながら見守りたいですねえ
(-86) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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/*
同志モナリザの動き相変わらず、 私は感情のない機械ですのでの軸を外さないの ほんといいですよね
こころテーマの動きしてたシルクとの対比がまた好きでなあ
(-87) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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[膝の上に乗ってくれた猫さんは、暖かかった。>>91 偽物のセンサーが柔らかな感触を伝えてくれる。]
ほんとうは、……みんな、守り、たかったけど。
[ヘリンお姉さんも、シルクさんも。薄荷さんだって。 でも、みんなみんな守れなかった。 わたしに出来ることなんて、何もなかった。]
… だって。 猫さん、小さい でしょ?
[小さいから!と、薄荷さんに言った時には尻尾がぴしぴしと揺れていたけど。>>3:39 泣き出しそうな、声がくぐもる。今は大人しく聞いてくれてたかしら。]
(120) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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わっ…、わたし は、ね。
[ひょいっと猫さんが降りていく。 そうして向けられたワクラバさんの問いと視線に、鼓動を打たない心臓がぴょこんと跳ねた。でも、目は逸らさない。逸らしてはダメなんだと思ってた。 今は寄り添えるお姉さんもお兄さんもいないから。 ひとり、薄荷さんとお姉さんのいる胸元に拳を添える。]
わたしは、モナリザさんを選んだの。
[それでも。彼女の方は見れそうにない。]
(121) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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/*
クラゲは隣人になれない! そうだよなーーー まず、寄生した相手そのものを、 まず殺してるんだものなあ みたいなのが すごく大きいんだなあっていうのがわかるのが面白かった…
コータもトルドヴィンも、本来のその人だったら しないことをさせられてるわけで、通常の捕食者の人狼より わりとえげつないよな寄生生命体。
その辺の見え方みたいなのもまた味わいが面白い村だった… トルドヴィン、こかさんではと思っているんですが、 寄生したクラゲの微妙な変化もまたうまみですよね。 さすがお上手でした
(-88) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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わたし。昨日、廊下で言ったわ。>>4:75>>4:76 猫さんとモナリザさんと一緒にいた時に。
理由は変わっていないの。 わたしは猫さんの夢を、本当に素敵だと思ったし… シルクさんは、……ひとを、大事にしてくれる人だったから。
[ぎゅう。と、胸元を押さえる手に力が篭る。]
そしてね。 昨日、言えなかったもう一人。
[そう、言いそびれてしまった最後の名前。それを口にする前に部屋についてしまった。>>4:77 問われれば答えただろうけど、問われることはなかったから。結局は言い出せぬまま。]
… ワクラバさんも、違うんじゃないかしらって。
(122) 2020/09/04(Fri) 22時半頃
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