270 「 」に至る病
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[蠱惑的に誘って、「愛して」と両手を広げてくる>>162 そんな彼女――依存症を愛しながら思う。 依存症に乗っ取られている時の娘は、 妻に似た表情を浮かべながら、いつも寂しそうにしている。
"You'll never ever, never ever, never be happy without me."
そういう言葉が彼女の口からこぼれるたびに、 「もちろん」と笑ってその唇を塞いだ。 彼女の望むまま愛して、血を啜った。 それは例えるなら、死ぬ前の晩餐に似ていた。
気を失うまで抱いて愛しているうちに、時々、 僕は自分が誰を愛して抱いているのか解らなくなってくる。 そういう時必ず、「ミルフィ」と彼女の名を呼んで、 頭を優しく撫でた。
僕自身が誰のためにそう在るのか、 そうすれば思い出せたから。]
(183) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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……ミルフィ。
[気絶してしまった彼女の髪を撫で梳いていると 時折、依存症が抜けた娘が目を覚ますことがあった。 そんなとき決まって、彼女は『あたしも』>>163と 僕にすがり付いてきた。]
ミルフィ。おかえり。 ……しょうがない子だ。
[僕は彼女を抱きしめて、その肌に鼻筋を寄せた。 心が少し入れ替わってしまっているだけで 同じ彼女。同じ体なのに 僕はそんなとき決まって、「おかえり」と口にする]
(184) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[恋しさと苦さ、娘を失いたくないと叫ぶ心を 「しょうがない子だ」と 彼女を受け入れるふりをして誤魔化して、 怖がる娘に微笑みかける。
そういう時の僕がうまく笑えていたか、自信がない。
たぶん、読み聞かせするときのように 声を穏やかに繕っていても 彼女を抱きしめる腕の震えと強引さは、 誤魔化せなかっただろうが。]
(185) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[カレンダーについた赤い丸を見る。 季節は巡る。今年も、あの日がやってくる。]
(186) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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―― 夢 ――
[最近、頻繁に夢を見る。
僕と君は、手を繋いで歩いている。 灰色の空の下を。
君の体には随分と噛み痕が増えて 君を彩る服も化粧も、随分君が好まないものになった。 『ママ』に寄せた格好で、ぎこちなく笑っている。
もう何日も、君は君ではなかったから 久々の外出になる。]
(187) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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今日は、好きなところに連れて行ってあげる。
[僕は笑ってそういう。――動物園、水族館、遊園地。 研究ばかりしていては息が詰まるから 史跡や図書館、博物館以外の場所を どこでもいいよ、と選択肢を示して 君の興味がある場所へ赴く。
少し大きくなりすぎた君を抱き上げることだって 甘いデザートがある店にも行って 弱ってきた胃腸に鞭を打つことだってする。]
沢山遊んだなあ、ミルフィ。
[そうしていくつも思い出を積み上げた後に、 夕暮れを見上げて帰路につく。 僕が作った夕食に、甘すぎる君のデザートを添えて 二人で食卓を囲んだら、 月が窓から覗く頃、僕らは眠る準備をする。]
(188) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[夢の中の僕は、まだ君を抱かない。
ただ古びたアルバムを持ち出して 全てがデジタル化されたこの時代に わざわざ現像して、色の褪せた古い写真を―― 半透明のページに綴じられたそれらを、 君と一緒にたどっていく。 あんな事があったね。こんな事もあった。
そうしてアルバムが最後のページに差し掛かる頃 僕は君の服に手をかけて]
[初めての時のように愛して、]
[――首筋に、深く牙をつきたてた。]
(189) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[真っ白だったシーツが真っ赤に染まっていく。 僕は止めずに尚君を腹に収める。
君の血。君の涙。君の全てを。 君が君でなくなってしまう前に。
君の体はどんどん冷たくなっていく。 かつて抱きかかえて町を歩いた体が 弛緩して、重くなっていく。
僕はずっと君の名前を呼んでいる。 口の中に広がる幸せの味に嗚咽しながら 君を最後まで食べつくして
その瞳を、優しく閉じてあげる。 その髪や頭を撫でてあげる。
愛している、と言いながら。 ――――……………君が狂う前に、]
(190) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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『お目出度い人ね。 ――そんな夢物語、あるわけないじゃない』
(191) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[声が降る。
ざあざあと雨が降っている。 妻が死んだ日と同じ服を着て、 僕は夜のリンディンに立っている。
目の前には、白い幽霊が居る。 真っ白な顔をした妻が僕を見つめ、 妖艶に、そして恨めしげに微笑んでいる。 化けて出て尚、美しくも恐ろしい、白薔薇に似た僕の妻。
降る長雨の中、シャツが体に張り付く。髪が体に張り付く。 ……体が冷えていく。
彼女は雨に打たれながら僕を見据えると、 すっと暗闇の中に姿を消した。 僕は思わず手を伸ばして、一歩、二歩と石畳を踏む。]
(192) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[雨が降っている。
濡れた革靴が黒い水溜りを踏んだ。
雨が降っている。
遠く、サイレンの音を聞いた。
雨が降っている。
散らばり、ひしゃげた、――の体を覗き込んだ。]
(193) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[膝をついて君の名を呼ぶ。 答えは返らない。誰も応えない。 ただ、雨の音だけが聞こえている。
僕はただただ首を横に振って、 眠り姫のように目を瞑る君の赤くなった髪を撫でる。]
…………ねぼすけな子だなあ……
[白く冷たい頬に手を伸ばす。 目覚めのキスになんかならなくとも 笑いながら泣いて君の体を抱き上げた。]
(194) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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解って、いるよ。 許されないことだと。 救いなどないほうが自然だと。
けれど、どうあっても…… 僕は、この子の最期までを
…………すまない
[妻か、君か、誰に謝りたいのかわからなかった。 解らないまま、もう息をしない君の唇を塞ぐ。
――――甘い匂いが鼻をついて、]
(195) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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"... I'm so happy to be your ... ."
(196) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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―― ある誕生日に ――
[――――……]
[今日は仕事がない日だからと、 ベッドに埋もれて惰眠を貪っていると 隣で起き上がる気配がして、少しだけ手を伸ばした。
さらり、流れる髪の柔らかさだけを感じてまた眠る。
なんだか酷い夢>>187をみて再び目を覚ます頃合には、 甘い匂いが階下から立ち込めていて、 僕は例年、行われたそれにひどく安堵しながら、 一定のリズムで階段を降りていった。
投げかけられる言葉に僕は目を見開いて>>169
笑顔を咲かせた愛しい娘と、 精一杯の努力の証が見えるケーキを見て 本当に嬉しくなってしまって、微笑む。]
(197) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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お祝いしてくれるのかい? はは……ありがとう、僕の可愛い娘。
[神に感謝など捧げないが、 いつもどおりの砂糖の多いケーキを 僕は大層喜んで
共に過ごした年だけ増えたロウソクが ケーキを埋め尽くしていくのを 圧巻だな、と思い見つめていた。
覚悟を決めてブラック珈琲を淹れる。 それから、切り分けられたケーキを食べる前に 彼女の名を呼んだ。
顎に指先を添えて、 唇を寄せるのは首元……ではなく、頬。 ついたクリームを思わず舐めたのは さっき見た酷い夢のせいだろう。]
(198) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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クリームがついているから間違えたよ。 [笑って冗談を吐き肩をすくめた。 それから食卓につく。]
……ミルフィ。 今回は砂糖をどれくらい使ったんだい?
[僕は律儀にそんな事を聞く。 もちろん、その後の言葉に繋げるために。]
食べ終わったら、買出しに行こう。 君の紅茶にいれる砂糖がないだろう?
[言いながらちらりと窓の外を見た。 蒼い空。きらきらと差し込む朝日に目を細める。]
(199) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[いずれ終わりがくるとしても いずれ地獄に落ちるとしても……
君がいるなら、きっといつまでも僕は幸せだ。
だから――どうか、 限りある生で、君の命がはじまりから終わりまで 「しあわせでした」と言えますように。
最早祈る神も何もないけれど それだけを願って、甘すぎるケーキを咀嚼した。**]
(200) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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/* 遅筆きわまってて泣いた。とりあえず誕生日祝われてめっちゃハッピーなパパです。娘ちゃんありがとう!
そーすけくんとあおくんが非常にえっちでよいですね、よい…… お医者さんとこも素敵 さかのぼって読むのだ……**
(-906) さねきち 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[眷属の血は主だけのもの。 だが恋人でもない身分では、この身体は他をもう抱けないと宣言するのはただの気持ちの押し付けの気がして、「好きだ」と言ったりねだったり出来ない代わりに名前を呼んで相手にも呼べと強要してきた。
所有権を主張する権利を「いくらでも」と言ってしまえる位、今アオは自分だけのものであると彼自身が自覚しているようで、そんな可愛いことを聞けばそれこそいくらでも彼を穿つ己が太く堅く膨張する。>>-899]
待てねぇ。 っ、あんま可愛いこと言うから、 っく、
[煽られて加速する揺さぶりは、がっついて理性を飛ばした動きのようで、100年の経験則によって正しくアオを追い上げる箇所に到達する。 何度も何度も、自身が行ける最も奥に己の遺伝子を押印した。 人間の精子は3日程度しかもたないが、長命の眷属の精子はもっと長くアオの中に留まって、このままにしておけば受胎の奇跡が起きるかも、なんて、本気で信じる訳ではないが。]
(-907) Ellie 2019/10/19(Sat) 16時半頃
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[限界を訴えるアオの嬌声が耳に届いたのが堤防を決壊させる呼び水となる。 きつく収縮する内部に解放する快感はこれまでの比ではなく、口を閉じるのも忘れるくらいに夢中で腰を振り続けた。
つう、と垂れた唾液がアオの顎を汚したことに気づいたのは、アオに撫でられてから。>>-901 うっとりと微笑む彼を見るとまた性懲りもない愚息がまた背伸びをしようとして、苦笑しながら顎を拭った。その手も手汗にじっとりと濡れていたから、更に汚しただけになったけれども。]
はぁ……っは、
俺、も、すげぇ悦かった……、
[手を伸ばしてティッシュを数枚贅沢に抜き取り、結合部に宛がってから引き抜くと、泡立った白濁がぶくぶくと放屁にような下品な音を立てて零れる。]
(-908) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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今度から遠慮なく好きって言えるし、 ――アオくんも言えるようになったら、
……これからは毎回一番を更新出来るよ。
[我ながら恥ずかしいことを言った、と自覚した語尾はごにょごにょと小さくなる。
誤魔化すように、まだ力の抜けたアオの身体を抱き起し、膝裏に腕を差し込んで持ち上げた。 約束通り、後始末を。
――している内に風呂場にまた艶めかしい声が響く羽目になるのは、「恋人」同士のお約束。**]
(-909) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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/* アオくんがえっちだからつい滾っちゃうんだよー。 愛情の砂糖漬けにして絆されて貰ういつものパターンですスズさんの優しさに救われている毎度ありがとうございます……
おでかけいってらっしゃい。 蒼佑はそろそろ狂います。
(-910) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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/* セイルズさんとこは二人が合言葉のように同じフレーズを繰り返していて、その雰囲気がすごく素敵だなと思ったので「ペアRP」の良さを改めて見ている感覚になりますね。 父親である自分を捨てることのないセイルズさんの>>200がリアルで親である俺の胸を抉って来てグッとくるものがあるな……。
(-911) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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――時は流れ――
[寝室を共にしてくれ、と頼んだ。]
(201) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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[隣で目覚める朝の心地よさに、ジョギングを日課から外した。]
(202) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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[スマホはバッテリーを外して使えなくなっていたままだったが、問題はなかった。 彼を置いて外出することはほぼなくなってしまった。]
(203) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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[次に出来なくなったのは、買い物がてらの散歩だった。 食材も本も、ブルーレイのレンタルだってインターネットで済ませられる。
その結果、ふと見つけた珍しい食材で思いがけない料理を作ったり、掘り出し物の中古本の知識を披露することがなくなった。
出来ることを貪欲に増やし続けた男の人生に、出来ないことが増えていった。]
(204) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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/* >>-883 そうなんだよね わりとわれわれいつ終わっても大丈夫なように喋ってたと思う!やってー!
ぬへへあさくらさんのベルヌイユさまかわいいねーかわいいねー
(-912) tayu 2019/10/19(Sat) 17時頃
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[ネットショップを閉じ、売り物としてつくった在庫はすべて卸した。 正気でいられる時間が減ったと気づいた時に、工房は閉じることにした。 それが眷属になる前から続けてきた職人の最後のプライドだった。
――そして。]
(205) Ellie 2019/10/19(Sat) 17時頃
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