45 哀染桜 〜届かなかったこの想い〜
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どうして──?
[ざわ──…ッ
叉、空気がぞろりと蠢いた。 女の視線の先で、桜の蕾がふたつ、みっつと、綻んで行く。]
(43) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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そう、そう、のぞむ。 別に、さんはなくてもいいよ。
[のん、じゃなかったら、何でもいい。 彼女が選んだ呼び名がストレートなものだったから、強ばりはすっと溶けてった。]
(44) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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夢の世界……
[うーん、と首をひねる。 正直、夢ではないのではないか、と疑い始めてはいるのだけれど。 けれど、夢でなかったら、一体何だ。]
あの樹が呼んでる? あの桜? 僕には聞こえてないけど。
[でも、怖くて、という女の子の手を、気のせいだと離すほど野暮じゃない。 ぶらつかせていたのをまたしっかりと握って、確かめて。]
ねえ、エリアスは、ここが夢じゃなかったら、何だと思うの? 天国? 地獄? それとも知ってる街の、どこかなのかな。
[薄あおい桜を見上げる。 ざわつく梢に、誰を呼んでいるの、と心の中だけで問いかけた。]
(45) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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何が。怖いんですか?
[首をかしげて問い返す]
…もし、俺達が一つの夢にいるのなら 消えても、夢から覚めるだけ。
貴方は怖いんですか? もう、何かを失った後なのに。
[それは、橙色がいうように 皆、誰かの欠片であるのだという思いから。 だから、包帯の男が失ったものを知る訳はないのだが]
(46) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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俺は…もうなくしてしまった。 探す為に、桜に問うたけど。答えは、ない。
だけど、気付いたことがあるんだ。 だから、消えてもいいと 思う。
[消えるなんて、非常識だ。ここが現実であれば。 けれど、今自分は不思議と目覚めを望んでいない]
(47) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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[彼女の涙を見ても気付かなかった 自分は、愛されていたんだと。
ずっと自分を苛ましていた涙は 一番求めた答えを示していたのに
それはもうなくしてしまったもの。 なくして、初めてわかったもの]
(48) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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[蒼い花弁が一層存在感を増した。 ぞくりと肌粟立つ不気味さと同時に、美しさも感じて。
女は意味もなく、ぎゅ。と携帯を握った。
銀糸は目を覚ましたのだろうか。携帯に触れて落ち着きを取り戻した女が最初に考えたのはそんな事。 ならば矢張り此処は、夢路の集う場所なのだろうか。 現実感のない風景の中、思考は同じ所を何度も回る。]
(49) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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[零れる涙を今度は拭うこともせず。 ただ音色を聞いていた。
ヴァイオリンが歌うことを止め、奏者が差し出す白いハンカチを少し躊躇ってから受け取る。>>39]
ありがとうございます。
素敵な、演奏だったので。
[涙の理由をそう言い訳して、礼と共に涙をそれで拭った。 溢れる感情も涙も止まらない。
半分は事実だったけれど。 音の欠片が、心にあるからだと奏者には分かっているのかもしれないと、ぼんやり思う。]
(50) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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貴方は私では無い──の?
なら、貴方は誰。 私達はどうして、此処に────。
[問い掛けは既に言葉にすら出さぬ侭。 桜の魔力を借りてか、直接心へと語り掛ける。]
(-13) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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未練があるから怖いんでしょう。 もう、未練がなければ…
何も、怖くないんですよ。
[また、薄い笑みを一つ零す]
(51) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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貴方が私なら良いのに──…。
境界なんて要らない。 そんな物が在るから、私と彼は分かり合えなかった。
貴方も行って仕舞うの? ────約束、したのに。
(-14) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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大勢の中で独りで居るのは、 世界に独りしか居ないのより、ずっと辛いよ──…。
(-15) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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…君が…俺だと思うなら… 俺は、君なんだろうね…。
知る必要は、ないと思うよ。 答えなんて、ここがわからない限り、ないのだし。
ただ、俺は君の近くにいると約束はした。
それだけ。
(-16) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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……。
ここが君の夢なら。 俺は、君の夢の中にいる。 君の傍に、いるよ。
[青年は、「近くに」とは言わなかった]
この中に溶けてしまえたら 君との境界線も なくなるよ。
(-17) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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[>>27厭だ。叉ヴァイオリンの音。 何故あの人は弾くのだろう。
こんなに辛いのに。 こんなに哀しいのに。
やめてと願っても、意志とは関係無く弦は掻き鳴らされる。]
(52) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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[素敵な演奏……。 その感想に、唇の端を微かに持ち上げて見せる。 受け取られた白が、水を吸うのを見詰める。]
――……もしかしたら この共感を水のように、桜は吸っているのかもしれないね。
[ふっと、そんなヴィジョンがよぎるのは、 桜の花びらが、そのような感情を連想させる色 だったからかもしれない。]
吸い尽くされたら、さて、どうなるんだろう。
[『未練は、もうない』と紡ぐ黒髪の青年に視線を向ける。 それはまるで、すべてを吸い尽くされたようにも、聴こえたから。]
(53) 2012/03/14(Wed) 23時半頃
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────〜〜…ッ
や、めて。
[喉の奥から、声を搾り出す。 泣いて仕舞えと拐かす音に気道を塞がれて。今にも零れ落ちそうな涙を榛色いっぱいに浮かべて。
涙と共に湧き出す、出会ってから別れを告げられる迄の、思い出して仕舞えば一層辛さが増すだけの、残酷な記憶に耐えた。]
(54) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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[演奏が止んでも、女の涙は止まらない。 堰を切って溢れ出した思い出が女を責め苛む。
厭だ、厭だ、厭だ、イヤだ───。]
ひ と り は い や ──
(55) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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ごめんね…。でも、傍にいるよ。
[桜は声を震わせる。ふと視線を橙色に向ける。
手から零れた薄紅の花弁。 やわらかい風にのりそっと橙色の彼女に舞い落ちる]
伝えたかったもの…君に、伝えるよ。
[君が俺であるなら。 いつか誰か、君が誰かに伝えられるように]
愛してる。本当に。
[誰に呟いた言葉だろう。静かな、やわらかい声。 呟きが空気に溶けるのと 青年の姿がそこから消えるのと。 それは殆ど同時のこと
ひらり。分身のように舞い落ちる、ほんの数枚の薄紅桜*]
(56) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
2012/03/15(Thu) 00時頃
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夢なら。
夢から覚めるだけなら、怖くない……か。 そりゃ、確かにそうだ。
[口端を歪めて笑う。]
(57) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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桜が、吸っている……。
[奏者の言葉>>53を繰り返し、涙で濡れた顔のまま桜を見上げる。 本当に、この共感――感情を吸っているのだろうか。
この、哀しくて切なくて叫びたい気持ちを、共感して。 吸っているから、この桜は悲しい蒼白い色をしているのか。
奏者の視線の先に気付き、つられるように黒髪の青年へと視線を向けた。]
(58) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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[女の肩口に舞い降りた春を告げる桜色。 視線を其処へ遣った隙に聞こえて来た、やわらかな声。
愛してる。本当に。 (愛してた。本当に。)]
でも、伝えられなかったの──……ッ、ッく、
待っ、て──…
(59) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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ごめんね……でも、一緒だよ。
俺は…君の幸せを…祈ってる……
[春の夜の幻のような、かすかな、声*]
(-18) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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なぁ………。
[気まぐれに。 名を聞いてみようと思ったが。]
…………。
[訊ねる前に、深緑色の男の姿は消えていた。]
………ハッ、ひどい夢だ。
[桜に凭れ、天を仰ぐ。]
(60) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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[そして、奏者の昏い眼は、やめてと叫んでいた女を映す。]
僕がヴァイオリン《想い》を歌えないなら 僕は僕でなくなってしまう。
ひとりで在るよりも、僕は僕で居られないことを厭う。
[それでもこの音《想い》を厭われるならば、 どうすればいいのだろう。否、答えは判っている。 判っていたから……―――。 しかし桜は、まだ その時を奏者には与えてはくれない。
――……まるで、その音で、もっと水《想い》を注げとばかり。
小さく紡ぐ言の葉は、黒髪の男の別れの歌に遮られ、 きっと榛色の眸の女には届かない。]
(61) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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[桜から、何かが流れ込んでくる。
やはりお前の仕業なのか。 やはりお前が呼んだのか。]
……おい。
あと、どれだけ喰らうつもりだ……?
(*2) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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[青年の輪郭が揺らいだのを見て、女は咄嗟に携帯を握った侭の右手を伸ばした。
女の手は、青年の空の手を確かに掴み。]
(62) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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──── イ カ ナ イ デ 。
(-19) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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[ふわり。 風に目を閉じた。]
(63) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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[其の侭、ふっ。と、夜気に掻き消えた。
後に残ったのは、"最初の幹への衝突で既に壊れて居た"、もう動かなくなった携帯だけ───。**]
(64) 2012/03/15(Thu) 00時頃
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