— 遥か昔 —
[その頃、鬼神と呼ばれていた鬼が纏うのは血臭で、その眼は血色の魔眼だった。
人であれ妖であれ、不用意に近付けば無事では済まぬと、主以外は、味方でさえも遠巻きにする、その鬼神に、恐れげもなく近づいて来た童子の姿をしたものが、只人で有るはずもない。>>32]
...其方、石の神か何かか?
[妖に近いが、瘴気の類は感じられず、どちらかといえば邪気を寄せ付けぬ力を纏っているように思えて、首を傾げる。]
...ああ、我の角は...我同様、元は山の気から生まれたものだからな、宝玉と成り立ちは似ておろう。
見るのは構わぬが、不用意に触れるなよ?
[主との絆を刻み、鬼の力の源とも言える角は、並みの妖なら、触れただけでも影響を受けかねない。
だから気をつけろ、と、注意はしたが、追い払おうとはしなかった。
それはただ、近づく者がめずらしかったから、だけだったのか、どうか。*]
(34) fuka 2020/06/11(Thu) 23時半頃