[>>@11毛を逆立てた彼女の威嚇の声をよそに伸ばした手は傷を負う。
白い線がみるみる血で滲む。ぷっくりと紅い血玉。
ピリリとした痛み。正気に戻るには十分だった。
謝罪の言葉を口にすると、彼女は自身の態度について述べる。
“怖く…びっくり……”確かに怖がらせてしまった。
ちらちらと視線だけよこすその姿をじっと見る。
目が合うのを避けるような事をしてしまったのは誰のせいか。]
危険を察知したんだから、身を守る行為は当然の事だよ。
悪いのは僕だから。
[手の甲は見た目ほどには傷は深く無い。
おずおずと近寄る彼女にされるままに手を取られた。
彼女が傷口に舌を這わす。
舌の上に生えた短いブラシのように生えそろった毛をじっと見る。
彼女の赤銅色の虹彩も、みそらいろの毛に覆われた耳の中の薄桃に浮かぶ毛細血管まで、目に焼き付けようとしている。]
(@12) sayuru 2019/10/26(Sat) 23時頃