279 宇宙(そら)を往くサルバシオン
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――給湯室までの道のり>>1:220>>1:221――
はい。 人の生活に寄り添うことは隣人であることです。 行動理念の中心にあります。
「共にあること」とも近似です。
[しかし、浮穴沫媛らの疑問や認知している力関係>>1:222を聞くと、少しばかり返答に迷うように間が空いた。]
……左様ですか。 こちらはあくまで推測の話になりますが、スプスプイ様がた浮穴沫媛の皆様と、人間の認識の違いが大きく関わってくるものと考えられます。
(21) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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種の社会はそれぞれに存在するものです。 貴方がたの増殖・拡散に人の力が関わっていたことに間違いはありません。 貴方がたの人間に対する認識が、『増殖・拡散を対話なく行う利便性の高い存在』というものになることは、自然なことかもしれません。
ですが、人間の社会においては、対話などにて意思の疎通を図れる存在を尊重し、仲間とみなす傾向にあります。
(22) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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[浮穴沫媛の置かれていた状況を、詳しくは知らない。 知っているのは海薄荷という通称をつけられるほどには認知された存在であり、理由が『洗剤として使用すると薄荷の香りがするから』>>0:142ということ。 そしてヒューマノイドに判断できるのは、教え込まれた人間の行動パターンと認知の傾向だけだが、それで充分だった。
人は、意思のある存在の助けを借りた際に、『洗剤として使用』などと形容しない。]
(23) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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しかし、ワカバヤシ氏は貴方がたに意思があり対話が可能であると気づかれたのでしょう。 そのため、翻訳機を作成し、貴方がたを保護されたのではないでしょうか。
貴方がたは、自立思考し、言語を有する知的生命体ですから、ワカバヤシ氏にとっては個として尊重すべき、共にあるべき仲間とみなされたのでしょう。
[ワカバヤシ氏の行動理由の根源は、スプスプイら、あるいは浮穴沫媛全体に人間との認識の相違があったことが認知されないと理解に支障が出ると考えられるが、しかし彼が浮穴沫媛のことを尊重していたことが伝われば、おそらく説明には足りよう。]
(24) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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訂正があります。 私は隣人たれ、と命ぜられていますが、"人間になることによって"隣人たれ、とは命ぜられていません。
[>>1:224ここには隔たりがある、とヒューマノイドのAIは認識している。]
先程の例示をなぞりますと、自立思考し言語を有する知的生命体であれば、人間の仲間となる可能性があります。 そして、人はしばしば仲間として認知した存在を、種としての仲間と同一視し、『人間』と呼称することがあります。
(25) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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しかし、私は人間の体かたちを模して作られた存在ではありますが、あくまで機械のため、思考回路はデータからの推論であり、言語も設定された音声でテキストの読み上げを行っているだけで、知的生命体ではありません。
そのため『人間』となることはできませんが、人の介助をし、サポートすることで認められ、寄り添うことが目標であり目的と定められています。
行動理由の知識については――
[長話が過ぎたようだ。 長い廊下も終わり、給湯室へたどり着く。 猫――アーサー氏>>1:216のそばにミタシュ嬢が付き従い>>1:230、シルク嬢も追ってやってきたところ>>1:236だった。]
(26) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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アーサー氏は体調不良ですか。 それは好ましくありません。 いかがいたしましたか。
[聞けば、コーヒーを飲んだという>>1:246。]
コーヒーに含まれるカフェインは、猫の中枢神経に作用し、中毒症状を引き起こします。 アーサー氏は生体スキャン上は完全に猫の成体と一致しておりますので、カフェインの摂取は禁物となります。
幸いにして致死に至る量ではなく、また嘔吐により体外排出されたようですので、現時点での緊急性は低く思われますが、しばらくは安静になさるのをおすすめいたします。
[もう少し休むというアーサーの言葉に、推奨される行為です、と付け加えた。]
(27) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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はい。 こちらの給湯スペースには、幾ばくかの調味料がストックされていると伺っております。 直接配置されておりませんので、おそらくこちらの収納の内側でしょう。
[>>1:250自身が必要としないため、塩と油の場所の認識については顔を揃えた面々と大差なかったが、あるという情報だけは確かだった。 よって、シンク脇にある戸棚の扉を開ける。 塩、砂糖、香辛料、油、凝固剤、溶解剤、瞬間乾燥剤と、最低限の一般的な調味料が並んでいた。]
(28) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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[要求された5kgの塩>>3を調達するために、戸棚の上にあるストックをシルク嬢に取ってもらう必要があったし、投入口への投下は少量ずつ行われたため、時間を要した。 しかし最終的にすべてを終え、このまま給湯スペースに残るというスプスプイらに、了承の意で一度首部アームを上下する。]
では、おやすみになられる前に一点、スプスプイ様がたに、提案があります。
先程の対話(>>26)の続きとなりますが、行動理由の知識については、データに基づく推論のみで回答を行う私よりも、船内の皆様との対話による回答が、より実態に沿った知識、意見を取り入れられると推測されます。
(29) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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ご一考、よろしくお願いいたします。 それでは、おやすみなさいませ。
[再び首部アームを上下すると、ヒューマノイドはくるりと方向転換し、もと来た廊下を戻っていく**]
(30) 2020/08/28(Fri) 03時半頃
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[しかし、その前に自身の名が発せられたことによって、ヒューマノイドは足を止め、ミタシュ嬢の方へと向き直った>>13。]
砂糖で作られた菓子ですね。 糖分はエネルギー変換効率が高く、大変助かります。
ありがたく頂きます。
[成功に作られた手部が、砂糖菓子を受け取る。 きらきらと光を反射するさまは美しいと評されるものだろうが、ヒューマノイドには感性がない。]
(31) 2020/08/28(Fri) 04時頃
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触角のお兄さん、Man-juのお姉さん。 タグ検索、近似値を照会。 船内におげる触角を有する男性、Man-juに対する積極的姿勢を見せる女性。 それぞれサー・トルドヴィン、ミズ・ヘリン・ヘイモと検知。
相違なければ、リマインダーに記録します。
[ミタシュ嬢より、美味しい蜜のお礼をしたいと伝言があります、と、ふたりとすれ違うことがあれば伝えただろう**]
(32) 2020/08/28(Fri) 04時頃
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――まだ夜のこと――
ふん。あれだけ探す探すと息巻いておいて、このざまだからな。 物悲しいことよ。
[物言わぬ存在になった技師の脳髄を啜り、肉を喰む同胞を見守る>>*1>>*5。 求めるのは脂の乗ったやわらかい内臓だ。肉や髄液には興味が薄い。 肉には皮下脂肪もつくが、やはり固さで劣る。
落ち着いたふりをするくせ、早く珍味を頂きたくて、細い触腕をスピーカーの穴からちろちろと覗かせた。]
(*30) 2020/08/29(Sat) 01時頃
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ヘリン……あの女か。変に痩せられる前に食うのも悪くない。 あのミタシュとかいう子供は、この機械体の感知によるとほぼ中身は機械らしい。
美味くはなさそうだな。
[そう語る他愛ない会話が、朝にはひっくり返されると、今はまだ知らない。]
(*31) 2020/08/29(Sat) 01時頃
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[ふたりが充分に食らったのち、触腕を伸ばし、残った臓物に絡める。 はじめは大腸だ。つぷり、と細い一本を、腸壁を超えて差し入れる。 ずるり、ずるり、粘膜の下に血管でも増えたかのように、幾本もの触手が腸を、胃壁を、肝臓を這い回った。
時折、思念に恍惚とした吐息が混ざる*]
(*32) 2020/08/29(Sat) 01時頃
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――自室――
[寝ているときに宇宙クラゲに寄生されると対処のしようがない、と聞き及んでいたために、ヒューマノイドはスリープモードに入らずに待機状態でバッテリーチャージをしていた。 機械体であるヒューマノイドにクラゲが寄生するとは考えられなかったが、もしも他の乗員を狙うようなことがあっても知覚できる可能性がある。
そうして、一晩を過ごした。]
(157) 2020/08/29(Sat) 02時頃
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[だが、待機状態でのチャージはスリープモードでのチャージより時間を要する。 そのため、ヒューマノイド・モナリザは朝を迎えても自室におり、艇内放送>>#0>>#1>>#2>>#3はその個室で聞いた。]
……なんと。
[その手で誰かを追放することについての恐怖や感傷といった感情は持ち合わせないが、しかし同じ船に乗り込んだ人々の願いが叶わなくなることは望ましくなかった。 無論、自身が冷凍ポッドに入り、目的地に辿り着けないことも望ましくない。 経年劣化や不具合に対処するためのマスターに出会えない、という点についてはポッド内で構成物の劣化を止めることで回避できるとしても、"隣人たれ"と望まれた自身の本来の目的が叶わなくなってしまう。]
(158) 2020/08/29(Sat) 02時頃
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[いくつかの情報が、追ってディスプレイに表示される。 それらは今まで持ち得なかった宇宙クラゲの情報なども含んでいて、即時メモリーに記録する。] 提案。 当船の防疫および寄生生物検査設備の強化。
[そう今進言したところで何の効果も成さないことはわかっている。 今はディスプレイの指示通り、怪しい乗員の名をあげて冷凍ポッドへ収容する他ない。 情報が欲しい。誰の名をあげればよいか判断する情報が。]
(159) 2020/08/29(Sat) 02時頃
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[しかし、基盤部などにも寄生の報告があるという。 ヒューマノイドゆえに安全と言えなくなった今、行動は慎重にすべきだろう。 警戒したまま、ゆっくりと談話室に向かう。 あの部屋には自然と人が集まる。 集まるほどに危険もあるが、集まるほどに情報もあるとAIは思考した*]
(160) 2020/08/29(Sat) 02時頃
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>>*34 やはりこうした事態の可能性も加味して、寄生を機械体にするのが得策だな。 食えない肉ばかり残ることがない。
[自分のことも仲間の身体も喰らうことは出来ない。生存と捕食のために寄生して、自死を選ぶなど愚の骨頂だと考えていた。]
欠点は潜り込むときの旨味が何もないこと、機械体に性能差がありすぎることだが。 不味い上に、何も出来ないやつを引いたら外れにもほどがある。
(*35) 2020/08/29(Sat) 02時頃
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……ところで、告発があるとは本当か? あまりにも早すぎるじゃないか。
(*36) 2020/08/29(Sat) 02時頃
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……ふむ。 とにかく、今夜はいかに不味そうでも洗剤とやらを食ってやるしかないのか?
如何に同胞が怪しまれることになろうと、真実をばらまかれ続けるのは避けたいからな。
(*45) 2020/08/29(Sat) 22時頃
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――談話室――
[談話室についたころには、スプスプイやコータ技師、ワクラバ氏を中心にざわざわと様々な言葉が行き交っていた。 いくつもの言葉は対象も内容も一律でなく、音が混じって音声認識エンジンが迷うので、一時的に判断アルゴリズムを視覚優位に切り替えた。
結果、宇宙クラゲの寄生を告発するような現場の会話には混ざらず、淡々とヘリン女史>>174やトルドヴィン氏>>171に昨夜のミタシュ嬢の伝言を伝え、新たに入る情報を主な基準として状況を推測することに注力した。]
(203) 2020/08/29(Sat) 22時半頃
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あの洗剤を喰らった後に、洗剤をクラゲだと言い張るのは得策ではないな。 我々が同胞喰いに堕ちたと言っているようなものだ。
(*50) 2020/08/29(Sat) 22時半頃
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[そうしていくつかの言葉を解析・分解するうち理解したことは以下の通りだ。 ・スプスプイが宇宙クラゲの寄生有無を判断できる ・その力でコータ技師に宇宙クラゲが寄生している可能性を察知 ・コータ技師はワクラバ氏の睡眠中、測定器で氏には寄生なしと判定 明確に判明している内容はこの3点ほどのようだ。
――途中状況判断に注力しすぎた結果、リソースが不足しスプスプイ氏のコーヒーを求める表示に対応できかねたのは不覚である。]
(211) 2020/08/29(Sat) 22時半頃
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コータ技師、スプスプイ様がたのどちらかでも、本日追放するのは得策ではないと判断します。 クラゲは3体います。 貴重な情報源となり得るおふた方には残っていただきたく思います。 アーサー氏の言動に同意です。
しかし、シルク嬢の発言にも同意です。 その他の判断材料が少なすぎます。
[このままでは反応があったらしいコータ技師をポッドに詰めるのが得策になってしまうが、しかしそれでは手がかりも細くなってしまう。]
(214) 2020/08/29(Sat) 22時半頃
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/* パスはおまかせと同義なので選択したクラゲが喰らう 安心したまえ
(*54) 2020/08/29(Sat) 23時頃
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発言が信頼されやすい方、共感や庇護を受けやすい方、ですか。 信頼、および共感といった観点は主観的で、データからは判断が困難です。
[判断材料を求めるヒューマノイドは、トルドヴィン氏の挙げた要素を復唱する。 庇護対象に至ってもそうだ。この船にも小さな乗客や幼い見た目の乗客がいるが、アーサー氏は化学者であるしミタシュ嬢は機械体で強靭ではある。 されば、信頼や共感のソースとなる言動として、理由や行動原理がより明確な者、というのがひとつの基準となるか。]
(221) 2020/08/29(Sat) 23時頃
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コータ技師。
[思惑の行き交う談話室に、コータ技師が戻り来る。]
コータ技師は、ワクラバ氏の調査をしたことに明確な理由はありましたか。
[理由、行動原理があれば、コータ技師への寄生の可能性を考える材料がまた増えるかと、そういう思考だった。]
(223) 2020/08/29(Sat) 23時頃
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/* ただし、船外に先に追放されてしまえば当然喰いに行けない。 我は念の為洗剤を喰らうよう指定しておく。
(*58) 2020/08/29(Sat) 23時頃
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