261 エイプリル・トフィーの融解点
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[部屋の角は狭くて 部屋の奥は暗くて そして狭まる距離は縮まって それからどうすることも出来なくて
震えて声が出ないの 普段あげている声が出ないの 苦しくて怖さで縮こまるの]
ヒッ…、や、…ゃだ…っ… …はな…してっ
[狩人は笑うわ 脂ぎった手が張り付いて そうして声を上げるの 私の知らない妄言を、さあ]
(27) 2019/03/27(Wed) 22時頃
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『コリーンちゃんっ…ははっ…
…愛人の俺と離れ離れになっちゃうのは
嫌だろォ?
』
や、だぁっ…!!
…は、はなし、っ
[
嬉しそうに笑うの
聞き入れてくれないの
肯定、なんてしてないのに ]
『ね?嫌だよね?嬉しいな、
俺も同じ気持ちだよ』
ちがっ…
[きっと世界が狂ったから
終わる末路が定まっているから]
『
喜んじゃって…
…沢山子作りしようネ』
(28) 2019/03/27(Wed) 22時頃
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しら…しら、な…っ
貴方なんて、知ら──ン、ッん、
ゥグ…っ…!
[きっと、悪いことも良いことも 分からないのね(可哀想な人、可哀想な私) 終わりが決まったいるのだもの 咎められてもどうせ死ぬのだから だから最期くらいは願いを叶えたいのよね
…
私の声を聞かずに
]
…っ、…!、
ぁ、 んぅ ふ、ァ
[あゝ、口の中が気持ち悪いの 口の中に熱が絡むの 誰かの息が顔にかかるの 誰とも知らない人と唇を重ねるの]
(29) 2019/03/27(Wed) 22時半頃
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[青い鳥は翼を抑えられて 籠の角で震えていた
狩人は鳥の息を飲んで 嬉しそうに 焦りながら うっとりとした顔で]
『…はぁ…っ…可愛いよコリーン…
その顔、俺だけに』
…ヒッ…!ゃ、やめっ…
[そんな顔を見せたこともないのに 妄言を続けて言う男は 私の男だと語って 男だけにしか見せない私だと決めつける。]
(30) 2019/03/27(Wed) 22時半頃
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[上がる吐息は、気持ち良くないって 首を振って叫ぶの 私はここにいるんだって
だけど声は上がらない 怖くて声がうまく出ない 重ねられる唇が声を塞いでしまうから]
や、…だっ… はな、…ン、ッあっ…ふ、っ…ッ
[張り付いた衣類 するりと側面を伝う指の動き 私は腰を上げて 知らない知らない知らないこんな感覚 気持ちよくないって拒んだ]
『トロトロ…
俺とするの待ち望んでくれてたんだ?』
(31) 2019/03/27(Wed) 22時半頃
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──ちが、…
[破かれる音が聴こえるの 羽根が毟られる音がするの そうして狩人は笑うの 嬉しそうに笑みを浮かべて]
…っなん、でぇ……
『? 恋人なら当然だろ?
お互いに我慢してたじゃないか』
[それでも私の声は聞いてくれないのね 私のことを思っているなんて 耳元で語らう声は まるで悪魔よりも酷いって枯れそうな声 もがいて浮かんで、押し寄せる感覚に息が詰まった]
(32) 2019/03/27(Wed) 22時半頃
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…! や、めっ…
はいら…ッはい、な…からっ…
──ヒ、ゃ、アッ…アッ
イヤァ!!イヤ、イヤァアアアアッ…!!!
(33) 2019/03/27(Wed) 22時半頃
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[鳥は歌えない 叫んでも叫んでも この声は届かないの]*
(34) 2019/03/27(Wed) 22時半頃
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[ 奇しくもそこは、クリスマス前に彼と来た あのレストランだった。]
(35) 2019/03/27(Wed) 23時頃
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[ てっきり彼と奥さんとが来ると思っていたけど 約束の席にいたのは、かっちりしたスーツの 甲冑を着た騎士めいたおじさんだった。]
「弁護士の脇と申します」
[ なんて、面白くもなさそうに言って 真四角の眼鏡のフレームを押し上げるの。
ああ、会えると思っていたのに、って 私はこんな状況なのに新しいワンピースを買って おめかししてた自分が悲しくなった。 胸元で光るネックレス、見せてあげたかったのに。]
(36) 2019/03/27(Wed) 23時頃
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[ 真面目そうな弁護士さんが出した書類には 色んな思い出が詰まってた。 そっとタクシーを降りる時に交わしたキスも 身体で愛を確かめ合おうと 手を繋いでホテルに入るところも。 ……でも日曜日に彼の車で思うまま乱れたのを 写真に撮られてるなんて思わなかった。
一つ一つ提出される“証拠写真”を 私は何一つ否定せずじっと眺めていた。 時折笑みが浮かぶのは、彼とも思い出を 頭の中で紐解いているから。]
「これらの不貞行為の ……何か仰りたいことは?」
[ あまりに私が大人しかったからか、 弁護士さんは眼鏡の奥から怪訝な目を向けてくる。]
(37) 2019/03/27(Wed) 23時頃
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いいえ、何一つ否定することはありません。 ……それより、私、どうすればいいでしょう?
[ 慰謝料とか、そういうのは怖くはなかった。 私は生き残って、奥さんは死ぬのだもの。 忌々しいシェルターへの招待状だけど この場合に限っては、とっても有難いものだった。]
……どうすれば、誠司さんに会えるかしら?
[ それより気にしているのは 誠司さんに逢えるかどうか。 残り僅かな時間を彼と過せたら…… ああ、願わくば彼の手で私を終わらせてくれたなら 私は断罪の術を失った世界から解き放たれるの。]
(38) 2019/03/27(Wed) 23時頃
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[ だけど、弁護士は私を責めるでもなく はぁ、と諦めたみたいなため息をひとつ。]
「この期に及んで、会えると思うのですか」
[ そんな、冷たい事実だけ突きつけてくる。 彼の提出した書類から、誠司さんから 声をかけてきたのは明白で、 私は彼が妻子ある身と知りながらそれに応えた のもまた等しく事実として刻まれている。
叶わぬ恋の末に結ばれることも また結局許されずに花と散ることも出来ない。 全部、忌々しい星のせい。]
(39) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[ けれど、皮肉なものね。 彼の奥さんから提示されたのは 彼への接近禁止命令だけ。
地球が滅ぶのですもの。 私の有り金も将来も奪っても 誰も何も得をしない。 彼女は子どもと、不貞を働いた夫と共に ここで終焉を迎えることを願ったのだと。
私だけが、生き残る。 雪がれぬ罪を背負ったまま。]
(40) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[ そうして、私が誠司さんの自死を人伝に知るのは 星の降る日を翌月に控えた頃。]*
(41) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[ガタタンッ、
家の扉が開いた。 鍵をかける習慣はないとはいえ、 他人の家に入るには挨拶は必須だ。
誰だろうと思ってそちらを見ると、 今ここに在るはずのない顔が見える。]
は? 何でお前、
[言うよりも早くそいつはずかずか歩を進め、 襟元に掴みかかってきた。 ぐっ、と首が閉まって呻き声がもれる。]
(42) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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レベッ カ、お前、 か みさまに、
[会いに行っている筈だろう、 村長の家系の人間なのだから。
それなのにどうしてここにいるんだ? 問う声も途切れ途切れだ。
こちらを見る視線には憎悪。]
「神様なんている訳ないでしょ」
[目を見開く。]
(43) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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「なんで山籠もりなんてしなくちゃなんないの」
[お前が、それを言うのか。
ギリッ、と首に爪が食い込む。 ぷつり、とした感覚があった。
殺される。 いやそれよりも、
力を入れて彼女を振り払って、 げほっと咳込んだ。]
(44) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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お前それ、本気で言ってんの?
[首元を触るとぬるりとする。 指先を見ると赤かった。
その隙をつかれ、 胸元を強く蹴られ後ろに倒れる。 ゴッと鈍い音がして脳が揺れた。]
「本気よ」
(45) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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「ねえ、考えたの」
「あんたが選ばれたってさ、 つまりあんたの子孫を 残す事を許されたってコトじゃない?」
[頭が働かない、 後頭部に妙な感触はないから、 恐らく血は流れていない。
焦点が合わない、 目を閉じて呼吸を落ち着ける事に努める。
その間も彼女の言い分は続く。]
(46) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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「つまりあんたの子供がお腹に居たら、 それはつまり、 私がシェルターに入っても良いってコトじゃない?」
(47) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[ めちゃくちゃだ、
動かない頭でも、それは解った。 こいつは本当に、何を言ってるんだ。
動かない俺の身体に乗る。 ようやっと目を開くと、 嫌な笑みを浮かべたレベッカがいて、 くそくらえと思った。
こいつは本気なんだろうか? 頭がおかしいな。
そもそも村長の娘のくせに、 神様が居ないなんていうところから、 頭がおかしいんだ。]
(48) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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うらぎりもの、
[小さく漏れた声に、彼女はカッとした表情で、]
(49) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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「裏切者は!!あんたじゃない!!!」
[またグッと首を絞められる。 身体の下が畳なのはまだ救いなのだろうか。]
(50) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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「裏切者!裏切者!! うらぎりもの、うらぎりもの、 裏切者…ッ、裏切者!!!
この村から出れて! 生き延びれて!!
さぞかし良い御身分ね!!?
なんであんたなの!? 私でいいじゃない!村長の娘よ!?
私のッ… わたしの、」
(51) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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「いままでのじんせい、 報われても、いいじゃない」
(52) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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[喚く声を理解しながら、 しかしどこか遠くで聞いた。 首を絞める力が緩んだのが解った。
こいつは何を言っているんだ。 同情してほしいんだろうか。]
(53) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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報われるような、 人生を、
お前は送ってきたのかよ。
[呟かれた反論に、 は?と彼女の顔が強張った。]
(54) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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裏切者。だろ、お前。 知ってるぞ、 中学の時外に男作って、 夜な夜な村抜け出して、
何してたかなんて、 村中皆知ってる。
[首元に触れていた手が、びくりと揺れ、 表情が蒼褪めていく。]
(55) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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だからお前は嫌なんだよ。
俺の子供? は、一回既成事実作ったら、 あとは本命とやりまくって そっちの子供連れてくんだろ?どうせ。
ばかじゃねえの、
もっともそんな方法、 国が融通きかせてくれるわけねえじゃん。
少し考えたらわかるだろ、
神様の事にしたってさあ、 いないとか、 本気でいってんの?
バカだろ、…
(56) 2019/03/27(Wed) 23時半頃
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