[ 蛇神の脱皮を眺めると、はらりはらりと舞う鱗。つられて腹眼を解いて散ると、蛇ではないから構築がほどけてしまうのだなあ。
湯に浮いて流れるひとかけひとかけを、それぞれの観察眼でじっと見つめて共流れ。ひとつの目玉くらいなら、載せても浮かぶ舟にもなる。
あるいは他方は波に攫われ沈む目玉と鱗もあり。
すべて散るのは敵わぬと、手近を集めて菱の字組むと、喫水を超えた天辺は追想眼と定めよう。]
おっといけない。ぽろぽろ溢すは穢がよい。思い出ぽろぽろ溢れては、峠を案内する甲斐がない。
脱いで捨て置く蒼もまた、夜空もかくやの艶姿。
月夜の海征く帆船の、アブラカダブラ七つの海よと、勇んで漕ぎ出す三段セイル。御守飾りをと引き受けた、船首飾りが見聴きした大波小波に良く似てる。
尤も嵐の夜には存外脆く、煽られ傾ぎ帆柱裂けて、流れた島で終生暮らすこともずいぶんあった。
征くと言う地には届かぬ民も、綺麗な花の娘に婿入りすれば厳つい笑顔を咲かせていたよ。あれはそれなら、着かずともよい旅路であったものかなあ…
(51) 2019/12/29(Sun) 00時頃