272 【R18RP】十一月と、蝶が奏でる前奏曲
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[あたしの知ってる、高本がそこに居る。 誰かを演じ続けた鷹本星一郎でも、 あんたが演じ続けた誰かでも、ない。
あたしの知ってる、高本光一郎。]
(49) 2019/11/04(Mon) 20時頃
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[誰か代役演れる人いないの?って そうだ、ロミオ役の子が熱出したんだった あたしの思考はあの日と同じ回路を辿る そしてあたしは馬鹿だから、 高本が怪演を魅せることを思い出して、]
はーい。代役は、
[と言い掛けて、 >>0:11]
(50) 2019/11/04(Mon) 20時頃
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[知ってる。だから、高本は俳優になったんだ。 この後熟女に誑かされて、文化祭そっちのけで、 ああ、そうだ、今日から、全てが始まったんだ ]
(51) 2019/11/04(Mon) 20時頃
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[視線があたしに集まっている、 手を挙げてしまった馬鹿なあたしはにへらと笑う そしてすごすご手を引っ込めている矢先に ──
「遅れたーッ えっ、ロミオ役いねーの? 大丈夫かよ、俺やろっか?? お前も俺だったら安心じゃね??」
現れた救世主はジュリエット役の仲良しの子>>0:38 あたしが言わなくても、手を挙げてくれた子>>0:15
ほらね?やっぱり。居たじゃんか。]*
(52) 2019/11/04(Mon) 20時頃
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/* わーい!!過去に戻ったドン!!(ぴょんぴょん)
(-7) 2019/11/04(Mon) 20時頃
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[こころが体調を気づかってくれたのは 私が嘘ついたこともあるのだろうけど 玄関先でわんわん泣いたせいもあると思う。
真っ赤になった目はもう冷えたし>>33 ちょっと腫れてるけど大丈夫。
平気だよって笑えばこころは何も聞かず 道場まで手を繋ぎたがった私に やっぱり何にも言わなかった。
私は昔から単純で隠し事なんてできないから こころは私の「平気」嘘と分かってるんだよね。 でも何も聞かないでいてくれる。 こころのそういうところも、だいすきだよ。]
(53) 2019/11/04(Mon) 21時頃
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――夕方・道場――
[道場は少し、新しく見えた。 それは七年後の道場を私が知っているせい。
隣にいる心の手をぎゅっと握れば ちゃんと握り返してくれる。
忘れていた手の温度すら懐かしんでいれば 早く着替えてきなさいと言われてしまう。
大丈夫、ずっとここに居れば何もないはず。 そう思っていても放しにくくて もうちょっと、と甘えていれば ガサガサ足音がして誰かが――]
……っ
[僅かに肩をこわばらせたけど ――ああ、なんだ、大和だ。]
(54) 2019/11/04(Mon) 21時頃
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ふふ、大丈夫だよ。
[緊張が解けてふわふわ笑ってしまったから 大丈夫だなって思ってもらえたかな。>>35]
朝はごめんねー。 ちょっと嫌な夢見ちゃったの。
[ああ、どうやって大和と話していたっけ。 最後にちゃんと会話をしたのは 大学に入学する彼を見送ったとき。>>0:250
とっくに私の背を追い抜いて 顔立ちも大人に近づいていた大和。 さっき、式場で会った時は もう完全に大人の人になっていた。]
(55) 2019/11/04(Mon) 21時頃
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[記憶のままでよかったこころとは違って 大和はこれまでの経験が邪魔をして どう接したらいいか混乱しちゃう。]
えっと……組み手、する? 今日ね、家に泊めてもらうから あんまり遅くならないほうがいいと思って。
[早めに切り上げて暗くなる前に帰りたくて 二人でさくさく進められそうなものを提案した。]
(56) 2019/11/04(Mon) 21時頃
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[こころがちゃんと傍で見ているのを確認して 一つ、ゆっくり呼吸をした。
大和は道場に来なくなってしまっても 私はずっと通い続けていた。 いつか必要になるかもしれないから。 ――もしこころが見つかったら こんどこそ、私が、守ろうって。]
いくよ!
[あの日――勝敗はどうだったっけ。
私はこちらへ向かってきた大和の腕を取り そのまま身を沈めて彼の重心をずらす。 ターンッ! と大きな音をたてて 大和を床にたたきつけた。]
(57) 2019/11/04(Mon) 21時頃
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[ここ半年はあまり練習できていなかったけど どうやら腕は鈍ってなかったみたい。
大和はうまく受け身をとれたかな。 未だ床に転がっていれば 手を差し伸べて立ち上がるのを助ける。]
大和、強かったんだねー! まだ前に出るのがはやすぎるけど。
[そうだ、このころ負けることが増えたんだ。 強くなったんだなあって 嬉しくなったのをやっと思い出した。
思いだせたのが嬉しくて、懐かしくて、 じんわり浮かんだ涙を掌でこすった。]
(58) 2019/11/04(Mon) 21時頃
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[練習を終えて道場を出てから こころの手を握って二人の家へと向かおう。]
ごめんね、待たせたから冷たいね。 私と大和は動いてきたばかりだから あったかいってのもあるけど!
[近くにいた大和の手を握ろうと手を伸ばし でも、握る前にためらってしまう。 いいんだっけ。 大和の手は、握っていいんだっけ。
迷っている間に大和は私の荷物をとって すたすた先に行ってしまった。]
(59) 2019/11/04(Mon) 21時頃
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[空っぽの私の手を見て こころが、握らなかったの? と聞いた。]
……う、うん。なんか。 私に握られるのは嫌かな、とか。
[そんなわけないでしょ、というこころは なんだか楽しそうに見えるんだけど。]
――……だって、
[もうずっとまともに話せていなくて メールにだって返信できなかったんだよ。 私はこころの分までお姉ちゃんでいようって そう思っていたんだけどね。
……大和のこと、ぜんぜんわからないんだ。*]
(60) 2019/11/04(Mon) 21時頃
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[大丈夫って言葉だけじゃ 朝の様子を見ているだけに疑わしかったけど、 笑っている顔と一緒なら信じられる。>>55
今朝の姉ちゃんの予想は正しかった。 さすがだと姉ちゃんを見ると 小難しい顔をしてるから、 姉ちゃん的には納得してないらしい。]
朝から何事かと思ったんだからな。 寝る前にホラー動画でも見たんじゃねぇの。
[とはいえ。姉ちゃんが聞き出せていないのに 俺が聞き出せるとは思えないから、 茶化して話題を切り上げるのが精々だった。]
(61) 2019/11/04(Mon) 21時半頃
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[相手がいくら好きな相手でも 道着を身につけて対面したら遠慮は無用。
けど大丈夫なんだろうか。 朝の菜摘は調子が悪そうだったし。 でも、組み手に誘ってきたのは菜摘の方だ。>>56]
応!
[一礼の後、早々伸ばした手をいなされ やばいと思った時には くるりと視界が回っていた。>>57
……なんだよむしろ絶好調じゃん。]
(62) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[ここ半年くらいは菜摘の方が忙しくて 道場に来られない日も多かったから 組み手でも俺が勝星をあげることが多かった。
それで油断していたつもりはないけど、 これだけ綺麗に負けたのはいつぶりだろう。]
調子よかったんだけどなー! 菜摘がいなすのが上手すぎんだよ。
[跳ね起きて悔しげに。 受身を取ったり力を受け流すのは 菜摘の方がやっぱり上手だ。
手を借りて立ち上がると>>58 復習のために今の流れを再現しようと 菜摘が俺の腕をいなすところからスローでもっかい。]
(63) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[稽古を終えて合流して早々 姉ちゃんの手を握っているのを見るにつけ、 余程昨日の夢か何かは怖かったらしい。
俺に対してはそんな素振りがないのを見ると そこに俺はいなかったのかな。]
中で待ってりゃいいのに。
[冷たいと姉ちゃんの手を握った菜摘が騒ぐから、 呆れた声で言えばかわいくないとのお言葉をいただいた。
中学三年生の男子にかわいさを求めないでほしい。]
(64) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[ちらっと菜摘が俺を見て 手が伸ばされたけど 半端な距離で降ろされてしまう。>>59
なんだったんだろうと思ったけど このまま放っておくと 2人が歩き出すのはいつになるか分からないから、 菜摘の鞄を持って歩き出す。
今日の夕食はなんだろう。 菜摘が泊まりにくるのは先に母さんに連絡済みだし、 最近は冷えてきたからシチューあたりかな。]
いいから早く帰ろうぜ。 俺、腹減った!
[道場の敷地を出たところで まだ何か話している2人に声をかけた。]
(65) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[ その人のことを、私は殆ど覚えていない。 ]
(66) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[おそらく交流めいたものはあっただろうに。 後から調べられる名前などの情報はともかく。
その人とどんな会話をしたか。 どんな仕草や、表情をしていたか。
一瞬一瞬を切り取った情報を。 思い出と呼ばれるエピソートを。 私の貧弱な記憶力は、あっさりと忘却してしまい。
そして1年、3年、―――10年と。 時が経つにつれ、 不確かな記憶は曖昧さを増していく。]
(67) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[ それでも一つだけ はっきりと覚えている"一瞬"がある。 ]
「 さようなら 」
[ 別れの言葉と共に向けられた微笑みだけは。 脳裏に焼き付いて、忘れられそうにない。]
(68) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[ 〜♪♪♪♪〜 ]
(69) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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……名前。 このためだったんだ。
[ 今は誰もいない生徒会室。 聞こえてきたアナウンスに、 書類に向けていた顔を上げる。>>18
ぱちり、ぱちりと眸を丸くしながら。 同時に奇抜な形の帽子と、 示された名前達を思い出して。>>0:290
全校生徒の人数を考えれば、 私一人ではなかったと思うけど。 それでも他にも文化祭の準備がある中 その全てに名前を付ける作業は骨が折れた。]
(70) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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部費十倍って。 予算どうするんだろう?
[ 末席にしろ、生徒会に席を置く身。 予算会議を思えば頭が痛い。
しかし何とかしてしまうのだろう。 その確信もある。
富山嶺二という人間は、 決して無責任な男ではないから。]
(71) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[帰り道はいつもと同じように、 姉ちゃんと菜摘が少し前を歩いて 俺が数歩後ろに続く。
モールへは3人で行くことになったから、 明日の話でもしてるのかな。
菜摘がお泊りセットを取りに自宅に戻っている間。 その玄関先で待っていると姉ちゃんから ごめんねぇって謝られたけど。]
菜摘が楽しそうな顔してるなら そっちの方がいいよ。
[2人で出かけよう計画はまたいづれ。 そう言ったらこのへたれって肩を叩かれてから、 でもいい子だねぇって撫でてくるから。
ええい気恥ずかしい。 人様の家の前で姉ちゃんぶるのやめてくれよな!*]
(72) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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[ 本日は霜月学園67回目の文化祭。
私の生徒会の仕事の割り当ては、午前中。 午後になったら、どうしよう。 お腹もすく頃合いだし。 焼きそばでも、食べに行こうかな。 暢気に、そんなことを考える。
ご飯を食べたら…… それから―――……。 ]
(73) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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うん、頑張ろう。
[ 両手で拳を握り、えいっと気合を入れると。 私にとってはごくごく普通の、
昨日から続く一日を開始する。]*
(74) 2019/11/04(Mon) 22時頃
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――七星家――
[泊まりの荷物を持って お母さんには適当に理由を説明して 申し訳ないからちょっとお土産を、と クッキーの詰め合わせを用意するのを待つ間。
あのオルゴールをくれた男の人が ――たった二日 >>1 そう言っていたのを思い出していた。
二日、二日だ。つまり今日と、明日。 勝負はきっと明日だと思うし 明日何も起きなければ……その時は ちゃんとこころに気をつけるように話そい。
でも今は、こころの顔を曇らせたくない。 このきらきらした毎日が 壊れやすいものだと知ってしまったから。]
(75) 2019/11/04(Mon) 22時半頃
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[お土産を受け取ってから廊下に出れば こころが大和の頭を撫でていた。>>72
そうそう、こんな光景はよくみてて 大和が恥ずかしそうに嫌がるのも ほんとうに、よく、みてて。
七年前、明日、私がもっと 何かできていれば、二人はこうやって]
……ぁ、
[じわり目の奥が熱くなったと思ったら ぽたぽた廊下に水の粒が落ちてしまう。 慌てて顔をこすったけれども きっと二人には気がつかれてしまっただろうな。]
(76) 2019/11/04(Mon) 22時半頃
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待たせてごめんねっ! こころの好きなナッツクッキーあるから 夜に一緒に食べよ!
[太っちゃうってこころはよく言ってたけど 美味しそうに食べるのをまた見たいよ。
何でもないように笑った私に こころは目を細めたけれども やっぱり何にも言わなくて。
大和が何か言うか何か言いたげにしてても 私は視線を逸らすだけだったし 帰り道も、上手く大和と話すことができなかった。]
(77) 2019/11/04(Mon) 22時半頃
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