266 冷たい校舎村7
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[たとえば窓の外を見た宇井野の反応が 何かに怯えているようだった、だとか
教室を早足で飛び出した柊の様子が ちょっとおかしく見えた、だとか
立ち止まった灰谷の様子が 「いいなあ」>>0:793って言ってみせた時みたいに なんだか妙に見えた、だとか
そういうのも、見えていたのだけれど 意識が自然と外に向かう。
俺は自分の席から歩き出して、 屋上と、職員室とを迷ってから 後をついていくように、 文化祭の色が濃い中を蛭野の背中をふらりと追う。 迷子になりそうだから? 多分、そんな理由。
そんなに急がなくても、追いつけたはず。]
(71) 2019/06/08(Sat) 12時半頃
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本当に文化祭みたいだな。 売店とかもそのままで。
[部室の展示とかも、そのままかなあ、と なんとなく思いを馳せながら 蛭野の背中に声をかける。>>22
高本が見たら「のんきだ」って 思われそうなくらいのトーンで]*
(72) 2019/06/08(Sat) 12時半頃
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[昇降口を見に行く気にならなかった理由を自覚しない。*]
(73) 2019/06/08(Sat) 12時半頃
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―― 回想:恋愛談義 ――
なに? 俺はいい奴だよ?知らなかった?
[俺はふてぶてしく笑って、 高本の頭をいーこいーこ、って撫でていた。 男子高校生の戯れみたいなもの。>>37
黙り込んでしまった高本から視線をはずして ごめんなさい、って教師に慣れた謝罪を投げかけて
手元のノートにクロスハッチング。 押し黙った高本の横顔を小さく書いて>>38
いい奴でもなんでもなくて 見てるのがヤなだけだよ、なんて そんな言葉は、飲み込んだまんま*]
(74) 2019/06/08(Sat) 12時半頃
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―― 回想:実験台 ――
[いつもどおり、がありがたかった。>>40>>41 うどん屋にキョースケの化粧をしながら入る俺。 を想像して、ギャグかな。とちょっと思ったけど。
ゾンビだぞ、とふざけて高本が俺の肩に手を置いてくるので ぎゃー、と俺は軽々しく悲鳴をあげる。]
いやーっ、こわーい! 食べられちゃうわ!
[とかいいながらそそくさと距離を置いて、 逃げるそぶりをしてみせて 少しの間、高本とじゃれていただろう。]
(75) 2019/06/08(Sat) 12時半頃
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[高本も七月も、素は可愛いのにね。 偏差値が高いと素直に生きられないのかな。
って、皆と違う「いつもどおり」を受け取りがちな俺は そんなことを、たまに思う*]
(76) 2019/06/08(Sat) 12時半頃
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文化祭は楽しかった。
(77) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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──現在:廊下──
[ 教室に集まった数少ないクラスメートたち。 戸惑いや不安がざわめきに乗って、 僕の耳や脳の中を素通りしていった。
気味が悪い。>>50 ……そうかな。 礼儀正しい挨拶だったと思う。
教室の外に出たら、すごく賑やかだ。 人の気配はしないのに、空気が。 色が、においが、音が、とても賑やかで、
……確かに、僕はそういう場所で、 みんなとはぐれて迷子になるのが得意だけど、]
(78) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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……拓海くん。 全部まるっと、文化祭みたいだね。
[ ふふふと僕は笑った。
歩いてっても、お祭りの終わりは見えなくて、 それが、なんていうか……校舎丸ごと文化祭だなあ。 それだけのことだけど、なんだかおもしろくて。
……それだけのこと、というか。 とんでもないこと。なんだろうけれども。
職員室を見に行くとか、ほかの人を探すとか、 速やかに下校しようとかいう、 意味のある考えは、僕にはなかった。]
(79) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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僕らの展示も、残ってるのかな。
[ ふと浮かんだのはそんな言葉だった。
多くの高校生にとってきっとそうであるように、 僕にとって文化祭とは、自分のクラスと部活。 この二つでほとんど完結しているものだったし。
美術室は階下にある。
だから、僕の足は階段のほうへと向かって、 急ぎ足にはならないまま、下ろうとして、 ふと、立ち止まった。養拓海を振り返る。]
(80) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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……ここの階段、こんなだっけ。
[ 3階建ての校舎。屋上へ続く階段。 ……のはずだけれど、どうしてかな。
違和感に一瞬、立ち止まって、 首をかしげて少し考える。
上るべきか下るべきか。 それが問題であったわけだけど、]
──どうする?
[ と、迷子がちな僕は、判断を委ねた。*]
(81) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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/* >>64もともとの予定では興味ないというより、 「かわいい友達? クラスの人気者? どうせ僕よりブスなんだろ」 ってタイプだったんですけどね。だいぶ道を違えました。
(-38) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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―― コイの天使の話 ――
[残念ながら、蛭野京輔が部室で災難に遭っていた時、 俺は美術部顧問にイーゼルを運ばされていたので いくら探せど、姿はそのとき部室に無かったことだけ 添え置いておく。>>0:1024>>0:1026
なので、その経緯も 「××ちゃんが蛭野センパイに頼みごとしてましたよ」 「コイバナ!コイバナ!」 そんな後輩ちゃんの残念な伝達でしか知らない。
その内容を正しく把握していたら、 俺は蛭野の事を「かわいそうに……」と 真冬の外に放り出された子犬のように哀れんで 代わりに伝書鳩をしたとは思うけれど。 そういうのは、あいつは得意じゃないし。]
(82) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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[そういうわけで、その日教室に居た時も、 柊と蛭野の組み合わせをちらりと見て、 珍しい組み合わせだなー、と、 そんな事を思っただけで
「ちょっと」と呼びかけられるまで>>65 二人が何を話しているかは知らなかった。]
はーい。呼ばれました。 どうしたんだい柊くん。
[俺の中での柊といえば、 顔が整っているモテ男、である。 高本と並んで人類の敵なんじゃないかな、って たまに思うけど それはもてない男のひがみでしかないので、省略。
それはそれとして、柊も紫苑も変わった名前だ。]
(83) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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ん、放課後、会いにいきます。 いいよー。何、告白とかそんなん。 相変わらずモテるねえ。
んで、ええと、誰に。美術部の……?
[名前、は蛭野から聞けただろうか。>>66]
名前知らないのに、よく会おうと思うなー
[俺はその美術部の女の後輩ちゃんが嫌いじゃない。 嫌いじゃないんだけれども。 知らない相手の誘いをよく受けられるな、って 純粋に感心して、柊にそんな感想を零した*]
(84) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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/* 部室が2.5階にある学校があったなあ。あれは何部だっけ。
いや、そんな複雑な設定にはしないんですけど
(-39) 2019/06/08(Sat) 13時頃
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―― 現在:3階 ――
学校ごと巻き戻ったとか
[かなあ。と、 俺は少しおかしくなって同じく笑う。>>79 いったいどんな魔法を使えば、 あの時に時間が戻るんだろう。]
――ああ、ありそう。 あの日のままで並んでるのかね
[あの日展示においていた作品を思い出して あの日は結構、展示にも人が来たなあ、だとか ……キョースケの姉ちゃん、いたなあ、とか。 そんなくだらないことを思い出しながら]
(85) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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[ふらりと階段のほうへ向かう蛭野を追って>>80 二階にある美術室へ行こうとした、ところで
その足がぱたりと止まるものだから、 どうした、と、落としていた視線を持ち上げる。]
…………ん
[瞬く。 屋上に続く階段には、 見慣れた窓があったはずだけれど そういえば、ないな、と思いもして首をかしげた。
そこにあるのは一階と二階、 二階と三階をつなぐような階段だ。 上の階の照明が落ちているのか薄暗く 新築の校舎なのに、少し汚れている気がする。]
(86) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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……のぼってみる?
[美術部に行きたいなら、そっちでいいよ、と前置きつつ 俺は好奇心にまかせて、すこし階段を上った。 踊り場をまがった先に見えたのは――]
うわっ
[思わず声が出た。 そこにあるのは、薄暗い3階だった。
廊下の端には作り物かもわからない手が転がっている。 教室の札が黒く汚れている。 視認できただけでも、異様だった。]
(87) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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……キョースケ。 上にあるの、屋上じゃない 三階? みたいだけど。
[階段を上りきって立ち止まった俺は でも、その変化に怯えてはいなくて
探検する? って、昔みたいに 蛭野に呼びかけた*]
(88) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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──回想:実験>>0:1057──
──……、もど、戻せるよ。
[ 戻れるの? と灰谷彩華>>0:1057は言った。 僕はたぶん、お得意の迷子みたいな目を、
空中と、自分の指先と、養拓海の顔と、 高本悟の腕と、灰谷彩華の口許あたりと、 ……何巡か巡らせて、小さい声で言った。]
……落ちないようなものは、使ってないし、 皮膚が弱いところは、付けまつ毛用の糊で──、 ああ、でも、あんまり長く付けてると、 肌には、よくない。
[ ……彼女には分かり切ったことだっただろう。 事実として。明白なことばかりを並べ立て、 それを問いかけへの答えと、したかった。]
(89) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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[ 最後だからはしゃいでいる。
という灰谷彩華の言葉は、なんだか、 免罪符みたいにも僕には思えた。
最後だから、僕ははしゃいでいる。 視線を自分の指先に落とし、息を吐き、 傍らではしゃいでいる様子>>0:1070の、 高本悟を見た。彼も、はしゃいでいる。
最後だから。
……だから、大丈夫。 楽しそうな級友の称賛やじゃれ合いに微笑み、 崩れそうな頬が、切り刻まれた手が、 せわしなく動くのを、僕は笑って見ている。]
(90) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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……うん。また、練習させてね。 *
(91) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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戻れなかった。
(92) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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──回想:美術部の彼女>>62──
受井アイリさん。
[ 病院の受付ばりに、僕はフルネームで答えた。
美術部の悲劇>>82のその後の話である。 悲しいかな、助けを求める相手はおらず、 とはいえ、その瞬間が過ぎ去った後で、 友人に泣きつくほどのことでもなかった。
僕にとっては。要は伝達なんだから。
そして、伝達を終えて、 名前を聞かれたので、僕は答えた。]
(93) 2019/06/08(Sat) 13時半頃
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[ さらに情報を求められたなら、 前髪が眉の下で切りそろえてあるとか、 薄化粧だとか、そういうことなら言えたけど、
人間性の部分に関しては、 薄っぺらな”いい子だと思う”というのが、 僕にできる最大の情報提供である。
キューピッド役は晴れて免除された。 代わりに巻き込まれた養拓海>>84が、 名前も知らないのに。というのを、 そういえば確かになあと他人事のように思い、]
(94) 2019/06/08(Sat) 14時頃
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……でも、ほら。 受井さんはうれしいんじゃないかな。
[ と、僕は投げやりに見えて大真面目に、 都合のいい予想を紐づけようとする。*]
(95) 2019/06/08(Sat) 14時頃
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──現在:3階>>85──
[ あの日のままで並んでいるかもしれない。 そう言われて>>85、階下へ行こうとしたのだ。
あの日のまま、そこにあるのかもしれない。 僕らの高校生活の集大成。何かの終わり。 あるいは────、
……この不思議な状況をひも解くのと、 なんら関係のない理由で、行動しようとして、
のぼってみる?>>87 と、言うが早いか、彼は階段を上っていた。]
(96) 2019/06/08(Sat) 14時頃
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[ うわっ と、子供みたいな声がする。]
(97) 2019/06/08(Sat) 14時頃
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怖いものなんてなかった。
(98) 2019/06/08(Sat) 14時頃
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