193 ―星崩祭の手紙―
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[白い、シンプルな便箋に、黒のインクで綴られた文字。文字にはトメもハネもなく、どこか記号めいている。無機質な筆跡に比べれば、文は随分饒舌なものだった。]
よっす!手紙届いたぜ。俺の名前はピート! 母星から西の航路開拓調査隊、今は西に856個目の星にいるんだ。
おはようかな?こんばんはかな? 俺の今いる星は、空は年中明るいよ。 ピーチシロップにミルクを注いだ色って言えば想像つくかい?白から濃いピンクに空が染まってるんだ。 あんたのとこの星が真っ暗なら、半分取り替えっこできればいいのにな!
テレパシー…ってすげえな!考えてること全部伝わっちまったりしないのかい?そんなことになったら、リーダーにお目玉くらいっ放しになるよ。…ま、今はそんな心配しなくてもいーけどな。
(-1) 2016/07/19(Tue) 02時頃
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びっくりすると言えばさ、あんたもそうだけど、みんなテガミを文字で送ってくんだよ。俺っちのとこの星じゃ、文字なんかもうエラい人しか書かないからさ。 普段はあんたの言うとおり、テガミも全部動画で送るさ。 今このテガミは、いったん俺が喋ったことを、コンバーターを使って文字に変換して、それを紙に写してる。だから、ヘンなとこがあっても見逃してくれよな。
賑やかかあ。この星に来たばっかの時は口うるさい先輩やらでだいぶ賑やかだったけど、今は俺以外、すっかり静かになっちまった。元から3人分は喋るってよく言われてたからさ、あんたの星に行ったら俺はさぞ目立っちまうだろーな!
(-2) 2016/07/19(Tue) 02時頃
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食べ物なんかは母星から物資が届くけど、珍しいといえばこの星のもんは何でも珍しいなあ。空の色もそうだし、花弁が透明な花なんか初めて見たよ。
あんたの知り合い、折角のお祭りなのに忙しいって気の毒だな。じゃあとっときの標本送ってやるから渡してくれよ。昨日送ったテガミにも入れたんだけど、これが手元にある最後の一個さ。 文流しの手紙は、返信以外どこに着くかわかんないんだよな。あんたの知り合いの感想が聞けなくて残念だよ。
[カプセルの中に、しおりサイズの、プレパラートに似た、プラパラートよりもずっとずっと頑強な透明な硝子体に、やはり花弁が硝子の様に透き通った花が一輪、封入されている。固く封印されて、開くことはできない。]
(-3) 2016/07/19(Tue) 02時半頃
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[ひとつめは、赤い縁取りがきらきらと金色に映えるカプセル。開くと、まず目に入るのはコインケース。ほんのり、掠った香りはなんだか懐かしいような香りがした。
そっとコインケースを開けると、中に収められていたのは1枚の銀の硬貨。取り出して眺めると、手彫りなのだろうか?ほんのすこし歪な意匠が表裏に掘られていた。]
どっこも、流れ星はおんなじに見えるんだなあ…、って、え、まさかこれが手紙!??
[コインの裏に掘られた流星は、男のイメージするものと殆ど同じで、しみじみそう呟いたが、慌ててカプセルの中を覗き込むと、ひとひらの羊皮紙が底にひっそりとあった。
音声化のコンバータに手紙を掛けると、若い、活発そうな女性と推測した合成音声が手紙の内容を読み上げる。
読み上げられた内容に、ん、んー、と逆向きに座った椅子の背もたれを揺らして少し惑ったような様子を見せるが、指先で高く中にコインを弾くと受け取って、また大事にケースへとしまった。]
(0) 2016/07/19(Tue) 02時半頃
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[ふたつめは、自分の送った宇宙カプセルへの返信。送ったものより一回り小さい銀のカプセル。
慣れた手で外装を叩くと、再生が始まる。どうやら相手も、自分が送ったと同様の形式で返してくれたようだった。
一瞬ぶれた像が焦点を結び、同時に詩が流れ始める。そこに映ったのは、ふかふかのソファに腰掛けた、線の細い少女。]
…ぃやったあ!!!!!!
[願掛け通り、可愛い女の子に届いた事にガッツポーズをつくる。映像の中の少女がちょうどくすくすと笑ったのは偶然で、けっしてその様を見たからではなかっただろうが。
小さく手を振る姿で再生が終わると、名残惜しそうにもう一度再生する。詩の感想を送れない事が残念だな、と思った。]
(1) 2016/07/19(Tue) 02時半頃
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[3つめのカプセルは、またしても文字で綴られており、コンバーターに掛けると、自分よりは年嵩らしい、落ち着いた男声音で文面を読み上げた。
聴き進めるにつれ、「彼」の世界には「声」がないことを知り、ぎょろりとおおきな目を瞬く。淡々と語られる見知らぬ彼の世界の話に聞き入った。全く想像もしたことのない、暗い空の続く世界、声のない世界。
彼への返信に、筆致や文面から推測した彼の合成音声はどんな声だったかを記そうとしかけ、やっぱり止めた。なんだかとても無粋な真似の様に思えたからだ。
その代わり。母星へのサンプルとして最後の一つを残しておいた、硝子の花弁の標本をカプセルの中に封入した。]
(2) 2016/07/19(Tue) 03時頃
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[2つの宇宙カプセルの返信を文字で書き終えて、宇宙へと飛ばしプラントに戻ると、しばらく覚えたことのない、心地良い疲労が残った。
宇宙カプセルの数は残り2つ。自分以外に減ることのない。 明日は何を伝えて飛ばそうかと、銀色の外装の表面を撫でた。]
(3) 2016/07/19(Tue) 03時頃
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/* あれだよ村建てがどうあれ。楽しんでいただけるものを提供できているかそれだけが心配。
村建ては素敵な物語を頂いておりますよ。 そしてちょっとだけ沈んでまた書く…
(-41) 2016/07/20(Wed) 00時頃
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