255 【ヤンストP村】private eye+Violine
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[水のボトルを手に取り、再びリビング側へと。]
…………。 [カレーを口にし、咀嚼する。 ああ、この肉は――、そうだ、 一度“食べたもの”。 山羊の肉として出されたものと 質感や脂肪のつき方が似ているような。]
なんで、同じ肉を態々……? [しかし、その思考は次第に薄れていく。 これは、と手を止めた時にはもう遅かった。
母親の居ない家で、父親が外に出かけて 幼かったアポロは一人で食事をする。 どうしてあの頃の風景を“みている”のか。]
(-32) 2018/12/12(Wed) 23時頃
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[重い頭を抑え、包帯を巻いた指が震え、 ―――スプーンを落とす。]
っ、……っく…、かあさ……
[虚しさ 寂しさ 悲しみ 苦しみ
――― カレーの味もよくわからず、
低迷した意識を保ちきらず、項垂れていた]*
(-33) 2018/12/12(Wed) 23時頃
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[――ああ、まただ。 頭の中がぼやけて―――]**
(0) 2018/12/12(Wed) 23時半頃
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[カレーの“香辛料”と“肉”に注意が向いており 寝室の隙間から此方を観察する目を悟れずに。 気配の方に顔を向けるどころか、 力なく頭を垂れて俯く始末。
この感覚は既視感があるもので、 今は現実だ、と自分自身に言い聞かせる理性を 欠片程度にだけ余すまま――――… ドッと押し寄せた、輪郭の頼りない過去の幻覚に 倦怠感を覚え、意思を奪われて 指先に巻かれた包帯を撫でる手つきは優しく、 其処に誰かが居るとは解るが、 アポロ、と呼ぶ誰かがフローラであると 妹であるとはわからない。
歪んだ視界に映る“過去”では ―――まだ、フローラは生まれていないから 父親と義母は出会ってもいない。]
(-53) 2018/12/13(Thu) 08時頃
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[ぼんやりと纏まらない頭のまま、顔を上げて。 眼前の人物を見つめる。 初めは、母親に見えていた。 けれど、アポロを兄と言う。 “過去の”アポロには、父親と母親しかいないのに。]
……………誰?
[罪の告白をしているのは、 大切なひと――母親を殺したのは、誰。
今は遠い昔ではないこと、 彼女が殺したのはパピヨンであること。 理解しようとしても過去に意識が追いやられる。
この、誰だか解らない“おねえさん”が 母親を殺したというのなら 悔しくて、許せないのに 思考力が削がれて、殴りつける気力、怒鳴る気力、 何かをしようとする意欲が薄れる。]
(-54) 2018/12/13(Thu) 08時頃
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酷い。
[憤怒をぶつける意欲を殺されてしまっているから―― 母親を殺されたと受け止めているアポロに出来るのは 目尻から塩水を流すことしか出来ない。
眦から頬に伝い、 顎を通り、食べかけのカレーに落ちていく。]
かあさんが何をしたの? どうしてかあさんを殺しちゃったの? ぼく、の かあさんは一人しかいないのに……
(-55) 2018/12/13(Thu) 08時頃
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かあさんを返して……
[肩を震わせ、やりきれない感情に奥歯を噛み締める。 唇を合わせる“知らない人”に顔を背けた。 その接吻も触れる手も優しいけれど、 母親を害した人物なら、]
嫌いだ、 お前なんか、きらい。
かあさんをぼくから奪った、 お前なんか、きらい……
[もう一度、そのひとを見る。 誰かに似ているような気がするのに、思い出せなくて。
父親は言っていた。 かあさんは“化物のもの”になってしまったと。]
(-56) 2018/12/13(Thu) 08時頃
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かあさんを、かえせよ…… 化物……。
[アポロが見ている過去は此処にない。 顔を顰めて睨む先に居る“知らないひと”は 化物ではなく人間だ。 けれど、
街のひとは皆いいひとだから、 アポロも好きで居てね、と。 母親は去る前に言っていて。
だから“いいひと”じゃないこのひとは、 母さんを奪った―――“ばけもの”なんだろう]**
(-57) 2018/12/13(Thu) 08時頃
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お前なんか、知らない、 ぼくは、一人っ子だ 化物のおにいちゃんじゃない。
[この、知らないひとにそんな風に呼ばれるなんて。 母親を殺した知らないひとに。 声は聞き覚えがあるけれど―――
目の前に居る誰かは、女のひとだった筈なのに、 ふにゃぐにゃの解らないものに見える。 アポロは一度だけこの何か、を見たことがある。 ああ、けれどそれは―――…]
嫌い……かあさんを連れて行くばけものなんて。 さわるな! 返してくれないなら、どっか行けよ……!
[膝にのしかかる重さを何処かにやろうと、 足を伸ばして、蹴りのけようとした。 けれど、膝から下がなくて。]
(-74) 2018/12/13(Thu) 22時半頃
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どう して
ぼくの足
両方とも、 ない…
[そこには確かに、足があった筈なのに。]
……お前が、食べたのか?
[一本の足は“どこか”に届けられ
―――もう一本の足は>>0:150]
(-75) 2018/12/13(Thu) 22時半頃
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[見たくはない、 怖い化物を。 掌で顔を覆い、奥歯を鳴らして震える。]
うぅ、うう……かえせ、かえせ……
[頭が――――痛い。]
(-76) 2018/12/13(Thu) 22時半頃
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[今は、2018年から何年後なのだろう。
きっと、三十年もしたら
朝顔の種なんかなくなって、 “こうなってしまう”かもしれない。]
(-77) 2018/12/13(Thu) 22時半頃
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[それでも――好きなのだろうか。
自分を認識してもらえなくなっても。 もしかするとその頃のアポロは 自分すら、誰か分からなくなるかもしれない。
それでも――、それでも、それても。]
(-78) 2018/12/13(Thu) 22時半頃
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[……今は、何年だ?
197―――違う。
スライムのような“化物”は 海老やロブスターに似た何かに代わり、
そして、一人の少女の輪郭を持つ。]
…………。
[その服装に、その面影に、見覚えがあった。 ラベンダーを宙に蒔いた幼い少女。 にいさん、と呼ぶには至らず、 舌っ足らずに兄になろうと努力する アポロを、慕う少女。 その少女は。 ――他人なのに、半分は他人じゃないから]
(-79) 2018/12/13(Thu) 22時半頃
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…………………………………………フローラ。
[涙を拭われた頬は、乾いていくらかかさついている。]
(-80) 2018/12/13(Thu) 22時半頃
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[顔に寄り添えた指の隙間から。 幼い少女を見た。 もう幼くはないのに、けれど。 一家を取り巻く複雑な事情を知らない幼子は 妹として甘えていた。 子供の背の高さを保つように 膝に頬を寄せ、“小さくあろうとする”から。
もう、少女の体格ではないから。 きっとアポロの膝は大きなソファにはならなくて。 それに、膝から下には 昔のようにどっしりした足は二つとも無い。]
……フローラ。
また、絵本を読んで欲しいのか?
[こうして膝に甘えて来る時は、そう、いつも。]
(-81) 2018/12/13(Thu) 22時半頃
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[幻覚は輪郭をはっきりさせる事もあれば “別のものに変わろうとして” ふにゃりと一次元と一次元の橋をおぼろげにする。
―――その感覚を、 “この”感覚を。 アポロは一度、知っている。
自我を保とうと、頬に額に爪を立てた。 顔面の痛苦より、包帯に巻かれた指が傷んで。 食器が割れたあの時のように“帰ってくる”
あの時と違うのは―――… カレーの中身に入っている幻覚の種が粉に近くない為。 強烈な吐き気に、口元を覆う。]
(-82) 2018/12/13(Thu) 23時頃
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―――――っ…!! っぷ……、ふ……
[辛うじて粗相は耐え、吐き気を遣り過すも 体は重力に逆らっていないのに まるで宙を浮いているような異様な心地。 まだ、幻覚剤の効果は続いているのだろう]
フローラ……何故。
[その手で調理された鍋を食べた時、――今。 どちらも似た感覚に襲われているという事は。 妹が関与しているのは明白で。]
どうして、こんなものを……俺に。 [焦点は合わず。 体はふわふわと浮き立っている感覚のまま。 妹の手を掴もうと伸ばしても、 掠りもせず、宙を彷徨う]*
(-83) 2018/12/13(Thu) 23時頃
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[途中途中の会話は、あやふやだった。 ■ろした――誰を。 ■べた――何を。 今日は何日だったろう、と理解するまでが遅い。 平常に思考しようとしても浮遊感が邪魔をする。 絵本を読んで欲しいのだと、ずっと思っていた。 だから、ぼんやりした頭に届く妹の告白は 理解出来ないと言いたげに アポロの首を横に振らせる位には 記憶と剥離し、“みていないもの”だ。]
(-103) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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……違う、 そうじゃ、ないだろうフローラ。 絵本の化物が怖いって、
[フィクションではあるが登場する“化物”を ひとりで見るのを恐れた、 ―――そう、そうだった筈。
絵本も読んで欲しい、でも。 傍に居たかった
妹は、あの頃のフローラは 本当に、怖かったのだろうか。
怖くて、字が読めるようになっても 兄に読んで欲しいと強請った筈なのに。 “みていない”から、解らない。]
(-104) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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[何故、どうして。 アポロとフローラの記憶を壊すような事を。 どうして、どうして、どうして。 幼い妹が浮遊する蝶を捕まえようとする光景。 ―― 過去の幻想は痛苦に醒め、 掴んでいるのは蝶ではなく、アポロの手。]
願い、……
[なんの願いだった、なにを願った。 つい先日の話なのに思考と時間が結びつかず。 好きだと愛していると口遊む声を聞きながら ―――数十秒遅れて悟るのだ。]
(-105) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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お前が、酒場を――
[いや、願ったのはそうでは無かった。 酒場が呪われろとは“願っていない”。]
パピヨンを、殺したのか……
[―――呪う、呪い殺す。 であればそれが正しい顛末となろう。]
(-106) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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ありえない…… そんなこと、信じたくない。
[虫を殺すことすら躊躇う癖に。 ひとりでゴキブリの死骸だって始末できなくて。 なのに、傍に居たいから、 妹のものにしたいから、]
お前が、……怖がりなお前がっ…… そんな理由で、……… 人を殺すなんて。
[そんな理由で、 あの怖がりで心の優しい妹が 化物になるというのか。
身を乗り出そうとして、ぐらついた。 安全ベルトが体を椅子に繋ぎ留めるも、 車輪はキィ、キィ、と動き、不安定になる。 繋いだ手は、妹の意思で繋がれるまま。]
(-107) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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っ………そん …な、悪魔のようなこと。 お前が、何故。
[自然と顔が歪む。 妹の顔をし、姿をし、声をしているこのフローラは、 外側は羊でも、中身は山羊ではないか。]
俺はお前の兄なんだろう? 半分は血が繋がってる――
[妹の言っていた言葉を借りるなら、そう、で。 失う怖さを悟り、漸く自覚出来たというのに。]
(-108) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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[泣くくらいなら、そんな恐ろしい事を どうして出来てしまったんだ。 解らない――本当に解らない。]
ならどうして、 そんな…… [兄妹の愛にしては他人の不幸を呼び込んで。 家族の愛にしてはあまりに歪んで聞こえる。 “私だけの” それは ――――明らかにおかしい。]
どうしてそんな、異常なんだ? それじゃあまるで、俺を。 [アポロと名を奏で、 愛を囁く妹のふりをした何か。 妹ではなく、嫉妬と独占欲の塊を背負った、]
(-109) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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まるで、
男として見ているような……
[恋狂いの、女のようで。]
(-110) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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[妹がアポロの状態を“こうした”のだと思ったものの 妹も、何かを口にしておかしくなっているのではないか。
どうにも嫌な予感がする。
何度か繋いでいない手を動かし、失敗し、 押している間自動操縦をする車椅子のボタンを押す。 向きを変え、前進。
そうして―――繋いだ手を振り切ろうと。]
(-111) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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[パピヨンを殺した事を詰るのも、今は選ばない。 家族の関係で“自分のものに”という 観点のおかしさが、余程、気掛かりだ。]
今のお前、おかしいぞ……。
どうかしている。
[まだ、体が狙って大きく動かせる状態ではないが 車椅子の腕置きに両手をつき、指を立てる。 指先に巻かれた包帯は、どれも血が滲み出て 真っ赤な絵の具で汚したかのよう。
玄関に向かうつもりでレバーを倒すも、 覚束無い掌が向けてしまった進行方向は。
――――― 寝室であった。]**
(-113) 2018/12/14(Fri) 00時頃
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/* 妹ちゃんがかわいすぎて俺もどうかしている たっはーーやりたいことさせられているかなあ! しょっぱなから媚薬くらっておくべきだったか……?
(-115) 2018/12/14(Fri) 00時半頃
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/* フローラにあまり灰を残せてはいないけども 灰を書く時間がなかっただけ、という。
(-116) 2018/12/14(Fri) 00時半頃
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