45 哀染桜 〜届かなかったこの想い〜
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[すっと、浮く様な感覚に彼女の薄氷の様な瞳は開かれて。 その時には、もう既にわかっていた。
気付けば、大きく枝を伸ばす桜の枝の上木の幹に背を預ける様に其処にいた。 座っていると、表現しても良いのかもわからないが。
もう、風は彼女の長く豊かな銀糸を揺らすことも無いのだろうか。 彼女が、その瞳をその髪と似た輝きを放つ月へと向ければ、ゆらり、舞う様に揺れた。]
(+7) 2012/03/15(Thu) 02時半頃
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貴方は、月が好きだったわね。
[初めて彼に会った時、照れたように彼が棚に並べられた本から手に取ったのは、名も知らない写真家の写真集。
その表紙は、夜の海に浮かぶ月。]
(+8) 2012/03/15(Thu) 03時頃
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[その写真を撮った街は、観光地でも何でもない、海を隔てた先にある小さな小さな港町。
いつか、その街へ連れて行ってくれると。 その言葉が嬉しくて、白い空間の中、四角く切り取られた図書館の窓の外。 丘の上から少しだけ覗いている深い青を、彼に会えない日にはぼんやりと眺めていた。]
(+9) 2012/03/15(Thu) 03時頃
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[彼女を包む柔らかな光が、強さを増す。 月明かりの中、その光を浴びる桜の花びらは青白く輝いて。
ふわりと、花開く。
何処か朧げな気配が増えた事を感じれば、その瞳を向けるが、寄り添う二つの魂には自嘲した様に、小さくわらって。
すぐにまた、遠い月を見上げている。]
(+10) 2012/03/15(Thu) 03時頃
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[孤独を、埋めようとは思わない。 ひとりでいる事が、怖いわけでもない。 苦しいわけでもない。
"彼が"居ない、その事実が全て。]
(+11) 2012/03/15(Thu) 03時半頃
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[彼と別れたその日から、孤独なままに生きる事を選んだ。 自分の、本当の想いをかたく閉じ込めて、錠をかけて。
自分と別れた後の彼が、どの様な人生を送ろうとも。 自分には関係無い、そう思って。
けれど、本当はそう思い込もうとしていただけで。 鍵をかけた暗い心の奥底に在った願いは、儚く消えた。]
(+12) 2012/03/15(Thu) 03時半頃
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[彼女には、孤独だけが残る。 けれど、それすらも何処かで愛おしい。
孤独である事が、彼への愛だと。 少なくとも、今はそう感じているから。**]
(+13) 2012/03/15(Thu) 03時半頃
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ヨーランダは、どうし様も無く不器用な自分に、瞳を閉じて苦くわらった。
2012/03/15(Thu) 03時半頃
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ね。
[まぶたをあければ、桜の木の下に感じる魂へと、涼やな声を降らせた。 桜の花びらとともに、それは青年の頭上へと落ちて。]
貴方は、何を無くした?
[彼が、魂へと変わる前に耳にした言葉 >>3:47 。 突然の、不躾な言葉。 無視されても、構わないというていで、桜の枝の上から青い瞳を向けた。
自分は、無くしたのだろうか。 それとも、捨てたのだろうか。
少し、気になって聞いてみたくなっただけの事。]
(+14) 2012/03/15(Thu) 17時頃
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…そうね。
[男の言葉に、女は僅かに形の良い眉を上げるのみ。 大事だから、探すのだろう。 答えを、求めるのだろう。
青年の返答は、当然と言えば、当然の。 小さく息を吐く様な、仕草は、どこかその返答を聞いて気を落とした様にも見える。
けれど、自分が応えるとしたら―――… そう思うと、心の内で感じるものは、言葉にすれば崩れてしまう。]
(+17) 2012/03/15(Thu) 19時半頃
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[これが、夢では無くて。 本当に、魂だけの存在となってしまったのなら。
もし、そうだとしたら… ]
あーぁ。
[浮かんだ想いに、ぐしゃりと前髪をかきあげた。]
(+18) 2012/03/15(Thu) 19時半頃
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ばかみたい。
[自分で、選んだくせに。 迎えに来てくれないかな、なんて。]
(+19) 2012/03/15(Thu) 19時半頃
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お陰さまで。 ありがたい事に、髪だけは老化に負けずにいてくれるみたい。
[青年の言葉には、少しだけ目を細めた。 もう30半ば。 肌は白く綺麗だとよく言われるが、それでも当人にしてみれば随分と皺が増えたやらハリが無くなったやら、感じるもので。]
何で、いるんだろうね。
[青年の言葉には、そのまま疑問を返すかのよう。]
(+21) 2012/03/15(Thu) 19時半頃
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"なくしたもの"なのか、"すてたもの"なのか。
[どっちだろうな、と小さく言葉を続けて。]
"なくしたもの"じゃなくて、"なくなってしまったもの"なら、あると言えるかな…、と思うけど。
[自分とは、全く縁のないところで命を落としてしまった、彼の事は。]
(+24) 2012/03/15(Thu) 19時半頃
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社交辞令みたいなもの。
[何故お陰さまというのですか?と問う言葉には、小さく苦笑を浮かべた。]
桜が、冷えた色をしているから、か…。
[ゆるりと小さく首を傾げて、近くの花びらを見つめた。]
それじゃ、みんな幸せになれば綺麗な桜色になるのかしら。
[考えてもみなかったな、と頬に手をあてた。]
(+26) 2012/03/15(Thu) 20時頃
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[彼の言葉 >>+25 には、小さく息を吐いて。]
悲しむ権利が、あるのかって、ね―――…
[ぽつりと、小さく。 それだけ、相手に対してひどい仕打ちをした自覚は、あったから。]
(+27) 2012/03/15(Thu) 20時頃
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…そうね。
[人の心に、権利なんて届かない、その言葉にゆっくりと、小さく頷いて。]
赦しが、欲しいだけなのかな…
[氷の瞳は、月を見上げて。]
(+30) 2012/03/15(Thu) 20時頃
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確かに、桜色って何色かしら。 でも、死体の血は、初めて聞いた。
[月から瞳を戻せば、その声は何処か柔らかに彼へと落ちる。]
人の涙の様な色か…
[小さく呟けば、暫く黙って。 自分の髪が月の色と言われ、笑みを浮かべた。]
貴方、本は好き?
[銀をうつすエメラルドを見て、唐突に聞いた。]
(+31) 2012/03/15(Thu) 20時半頃
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[青年の言葉 >>+32 には、ゆるりと笑って。]
見ず知らずの人だからこそ、話せてしまう事もあるのじゃないかと、私は思うのだけど。
[聞かれることは、構わないと。 彼と同じように、意志表示を示して。]
変だとは、思わないけど。 貴方のものの例え方に、それっぽいなって思ったの。
桜の冷えた色の、理由も。
[手を伸ばし、ひとひらの花びらを指に。]
私は好きだけど。
(+35) 2012/03/15(Thu) 21時頃
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愛してくれてた人に。
[誰に、と問われれば静かにこたえた。]
大嘘、ついたから… 自分を赦す事は、意識した事なかったけれど…
[其れを求めていたりするのだろうか。]
(+37) 2012/03/15(Thu) 21時半頃
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[長い銀糸は、揺れる。]
不幸を、願ったわけではないけれど。 でも、…彼が悲しんだか、そのこたえは、もう知る事はできないから。
[声が、僅かに震えた。]
彼の、幸せを、祈る…? あの世で、幸せであります様にって…?
(+39) 2012/03/15(Thu) 22時頃
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…そう、もう、居ない。
[けれど、自分は彼の様な思えるだろうか。 まぶたの裏によみがえる群青の瞳は、深く哀しみの色をたたえて。 低い彼の声は、今の彼女の様に、僅かに震えていた。
彼が、自分を愛してくれていると知っていたのに。 それでも、自分は… ]
(+42) 2012/03/15(Thu) 22時半頃
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[彼の言葉に、銀が舞った。]
…いいの。 それは、私の受けるべき罰だから。
[あまり感情が浮かぶ事の無い顔が、崩れているのがわかる。 青年には、きっとはっきりとは見えないだろう。]
自分で、選んだ事、だから…
[無理に、笑ってみせた。 はっきりと見えなくて、助かったと思う。]
(+44) 2012/03/15(Thu) 23時頃
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…ありがとう。
[翠と橙に、薄青は声を落とす。
わかるよ、ぜんぶ。
思う言葉は、心のなかに仕舞って。]
(+56) 2012/03/16(Fri) 00時頃
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