193 ―星崩祭の手紙―
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ピート[[who]]
(-27) 2016/07/17(Sun) 21時半頃
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[ ゴン、
と。 自宅の扉が乱雑にノックされる音で 目が覚める。 全く こういうところは、 きっと男に似たのだろう。
つまりは、来客の正体なんて直ぐに分かったし、 どなたですか、なんて。 伝える手段も無かったから、無言で出る。 予想通り。 男よりずっと背の小さな少女と対面した。 ]
(27) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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[ 視線が合うこと 数秒。
彼女よりも乱雑に腕をひっつかまれて、 触れた部分から、脳まで。 駆け巡るように 少女の声が聞こえる。
星が散らばっているように 輝きを帯びて、 男を見上げている 少女の大きな瞳は、 きっと、彼女に 似た。 ]
(28) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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「父さん」 「ただいま」
[ 少女が抱えているのは、カプセルと。 それから、…やはり、カプセル?なのだろうか。 馴染みの無い水草で編まれた籠が、ひとつ。 ]
「文流しでしょ?星崩祭でしょ?」 「家の前にあったよ…ってなんでそんな驚いてるの」 「むしろ驚いてるのはこっちだよ」 「私、父さんがこういうことするなんて思わなかった!」
[ 捕まれていない方の手で、 脳の中でまくし立てる少女の頭を軽く小突き。
無言の抗議。 ]
(29) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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[ 家の中に入って、まずは。 水草ではない方のカプセルを開いた。 中から出てきたのは、紺の便箋。 黄色のインクで綴られた文字を見ると、 この星の空では無い、 本当の夜空がそこに在るようにも、思えた。
手紙とそれからもうひとつ。 中年の男と少女の写る 色あせたフィルムが一枚。 彼女と、少女と。 思い出を残したことの無いつまらない男にとって、 幸せを切り取ったようなそれは、 "こうするべきだった"という、後悔と。 幾ばくかの羨望を抱かせて。 ]
(30) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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[ 離れていた少女を招き、 伝えるために肩に触れる。 ]
"お前、酒は飲めるんだっけか"
「飲めない」 「でもあともうちょっとで、飲めるよ」
[ そうか、と。 それだけ伝えて、手を離す。
簡素なやりとり。 ちょっとつまらない、男のいつも。 ]
(31) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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[ 少女が生を受けてから、 多くの年月が経ったのだろう。 星崩祭の周期と比べてしまえば、 たった少しの間の様にも思えるが。 成長 とは、こういうことなのだろう。
電子媒体のカメラ機能で、 何時かの彼女のように、此方をのぞき込む少女を撮る。 びっくりした少女の顔に、口の端で笑みを返し、 背を叩かれて、また笑いながら。
ペンを取った。 ]
(32) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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空の向こうの星の子へ
おはよう。 こんにちは。 こんばんは。
手紙をくれて、ありがとう。
俺の星には、天気らしい天気が無くてね。 地下に閉じ込められたみたいな、 真っ暗な空が、いつまでも続いているよ。
俺の機嫌は、まあ。 色々あって、曇り空、ってところだ。
(-41) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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君のところのお祭りは、踊りをするのか。 俺のところは、…そうだな。 君の言葉を借りるなら、 空の向こうに行ってしまった誰かと会えるって、 そう言われている日なんだ。 そんな祭りだから、 俺も、俺の娘(君と同じくらいかもしれない)も、 踊りとは縁遠くてね。 是非、君の踊りを、みたいと思う。
(-42) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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俺の知人も、空の向こうに行ってしまったよ。
きっと俺も、君のパパと同じように、 悲しい顔をしていたんだと思う。 知人のいる場所への行き方を知ってはいるけど、 きっとずっと、この星が居場所になるんだ。
君は。 悲しい顔をしていたパパに、 どうしたの、って、言えたかい? 俺は、臆病だったから。 空の向こうに行くまで、結局なにも言えなくてね。
どうか、また会えるのなら。 君の思い出を、君のパパを大切にしてほしい。
(-43) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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ああ、そう。 君の星へは、Alpha Centauri は。 どうにか娘と行くよ。 娘はまだ酒を飲めないから、 とびっきりのジュースでも用意してくれると嬉しい。
素敵かは、分からないけれど。 俺の星の話を酒の肴にしようか。
F.
(-44) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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[ カプセルに同封されたのは、 真新しい一枚のフィルム。
大きな瞳でカメラをのぞき込む、 ポニーテイルの年頃の少女が写っている。 Daughter と 細い字。 ]
(-45) 2016/07/17(Sun) 23時頃
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[ 手紙自体はと言えば。 華やかさもない真っ白な便箋に、 ただ黒い字が並ぶだけだったから。 封筒の端。 ぎこちない描き方で、星をみっつ。 "ミツボシ"を真似して、小さく添えておいた。 ]
(-58) 2016/07/18(Mon) 00時頃
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[ カプセルを閉じて。
もうひとつ。 透明な水草の籠を開けば、中から水が溢れ出た。
地下の星 と呼ばれているとはいえ、 地上で生きている男だったから。 想像もしていなかった箱の仕組みに、 眼鏡の奥で、目を見開く。 光景を見ていた少女がタオルを投げてきたから、 有り難く受け取り、溢れたそれを拭き取った。 水の中からの手紙。と言うべきか。 真っ黒な紙は男の手に取られ。
読み進めたところで、暫し。 少女の手が腕まで伸びてくる。 ]
(43) 2016/07/18(Mon) 00時頃
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「その紙、端が崩れてる」 「ちょっとまって」
[ 彼女に似た 瞳。 瞬きをすると、星がこぼれ落ちそうだと。 柄にも無く そう思う。 思うだけで 伝えないまま、 少女がキッチンへ向かい、 帰ってくるまでを眺めていた。
持ってきたボウルには水が入れられていて、 示されるがままに手紙を浸す。 ]
(44) 2016/07/18(Mon) 00時頃
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「元々水に入ってたなら、これで大丈夫…、多分」 「…でも、母さんが見たら」 「きっと直ぐにわかったんだろうなあ」
[ 手が離れると同時に、 ぷつんと切れる、少女の念。
―― 外の星に、人一倍興味のあった彼女。 彼女が いたならば。 手紙を送ってきた、水の中に住む相手と、 楽しく"話"が出来ただろうか、と思いながら、 再びペンを 走らせた。 ]
(45) 2016/07/18(Mon) 00時頃
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[ まっさらな白い便箋に、 黒の細い文字がきっちりと並んでいる。 水には耐えられなかったから、 その白い便箋は、水が入らないよう、 密封された袋に入れられていた。 ]
(-62) 2016/07/18(Mon) 00時半頃
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どこか遠くのステラへ
こんにちは。 俺の名前は、エフという。 君の知りたい俺の星は、地上にあるよ。 君と違って、水の中では息が出来ない。 おそらく、君とは逆に、水の中に行くために、 君の言うような、ちゃんとした服を着なきゃ駄目なんだ。
そして、地上にはあるけれど、 地面の下に閉じ込められたみたいに、 いつでも空が暗いんだ。
(-63) 2016/07/18(Mon) 00時半頃
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そうだな。あと。 俺の星には、きっと。 君の想像するような、口を開いて出す「声」がない。 誰かに気持ちを伝えるときには、 たとえば、握手なんかをして、 相手に触れて、直接思いを送るんだ。
テレパシー、って言って、ぴんとくるだろうか。 きっと、珍しく感じると思う。 どうだろう。 あまり派手じゃないけれど。 俺の世界は、こんな世界だよ。
(-65) 2016/07/18(Mon) 00時半頃
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[ さらにもう一枚。 別の袋で密閉された、便箋。 ]
何処か遠くの、アマルテアへ
ステラの手紙を、ありがとう。 代筆との文字があったから、礼を別で記した。 俺の知り合いにも、 ステラと同じように外を知りたい人がいたんだ。 今はちょっと、知ることも難しくなったが。
知人の分、とまでは言わないし、 俺の手紙が、 ステラの「楽しい」になるかは分からないけれど、 どうかステラが、多くの星を知れるように、 祈っておくよ。
(-67) 2016/07/18(Mon) 01時頃
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ああ。 添える菓子は娘から。 女の子の好みそうなものは 生憎分からなかったので。
F.
[ と、手紙は締めくくられ。 最後、カプセルの中には、 まあるい、プレーンクッキーの入った袋が、 詰められていた。 ]
(-70) 2016/07/18(Mon) 01時頃
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「本当に、他の星で食べられるの?」
[ なんて、肩に手を置いて言う少女に、 "まあなるようになるさ"と返し、 贈り物を詰めた返事は、これで二通。
さあ飛ばそうとしたところで、 ]
(65) 2016/07/18(Mon) 01時頃
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「ねえもうちょっと書きなよ!」 「母さんへの話題が増えるでしょ?」
[ とか 頭の中に。 声ががつんと飛んでくるものだから。 ―― それもそうだな、と。 つまらない男にしては、本当に珍しく、 便箋を取り出す。
多分、背を見ている少女の瞳は、 驚きで、まあるい。 ]
(67) 2016/07/18(Mon) 01時頃
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遠い星の、何処かの誰かへ。 はじめまして。 こんにちはかこんばんはか、 あるいはおはようかは分からないが。 星崩祭の文流しと聞いたんで、 一寸、手を離せないでいる、 外の世界を知りたがっている知人の為に、 手紙を書こうと思う。
(-84) 2016/07/18(Mon) 01時半頃
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そっちの星は、どんな世界だ? 俺の星は、空は。 地下に閉じ込められたみたいに、いつだって真っ暗だ。 あと、特徴らしい特徴と言えば、 俺らの世界で生きている人間は、 きっと君の想像するような、 「声」が出ないことだろう。
テレパシーってやつを、使ってるんだ。
(-87) 2016/07/18(Mon) 01時半頃
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そっちの空は、明るいかい? 皆は、俺たちのようにテレパシー代わりに手紙を書かずに、 直接声を出して、話すんだろうか。 珍しいイキモノや、菓子や、食べ物は、 いるかあるか、するんだろうか。
俺の世界は、声が響かないから空気が静かだけど、 きっと声のある世界は、賑やかなんだろうか。 ここに書くのは俺の予想ばかりだけど、 他にも何か、聞かせてくれると、 きっと知人が、喜ぶと思う。
F.
[ まっさらな白い便箋に、 黒の細い文字がきっちりと並んでいる。 ]
(-92) 2016/07/18(Mon) 01時半頃
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[ 封をして、これでみっつ。 窓の外、宙へとそれぞれ、少女とともに飛ばしていく。 飾りも縁取られもしていない、ただ透明なカプセル。
少女の手が腕に触れる。 何時かの彼女より、遠慮がちに。 ]
(76) 2016/07/18(Mon) 01時半頃
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「飾りとかつければ良かったのに」 "まずこの星のデザインがそういうのとは縁遠い"
[ 間髪入れずに返事をすれば、 一瞬 むっと されるも、 「まあ、そうだよね」と飛んできた。
家の家具も壁紙も、なにもかも。 柄らしい柄なんて、この星にはまず無い。 ]
(77) 2016/07/18(Mon) 01時半頃
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「…父さん」 「母さんがいたら、もっと楽しかったよね?」
[ 遠くなっていく呟き。 脳内に響いているはずなのに、 それでも消えていきそうな少女の声に、 つまらない男はどう返せば良いか迷って、
ポニーテイルが崩れるのもお構いなしに、 くしゃり、頭を撫でた。 ]
(79) 2016/07/18(Mon) 01時半頃
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