16 漂流旅行
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『なんだ、そうでしょうか、って。 来る確信でもあるのか、お前。』
……いえ。でも。 旅行に出たグループから連絡が来なければ 学校で待機している先生方も心配、しますよね……
『……その連絡から、此処への探索まで 都合よく回って何日かかるんだ?』
………。
『……餓鬼は楽観的でいいな。』
[は、と笑う保険医。その際、ちらと相手を窺えば。 何か、小さな動物を焼いて、食べているらしい。]
(93) 2010/08/07(Sat) 03時半頃
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[う、と掌で口を押さえる。 思わず、まじまじと見ていれば、]
『何、ビビってんだ。 こいつだけは見た事のある、動物だろうが。 食べられねえ事も無い、鼠だ。』
………。
[そんな事を言われても、はいそうですか、 などと居える筈も無い。 苦い顔で見つめていると、くぅ、と鳴るお腹。]
『身体は正直だな、おい。 ……くうか?』
[へらへらと差し出す、保険医。]
いりま……せん。
[匂いも結構なもので、顔を逸らした。]
(94) 2010/08/07(Sat) 03時半頃
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『………へえ。 じゃあそのまま死ねよ、な?』
……!
[まるで子供みたいな言葉が保険医から漏れる。 此方の面にはありありと怒りの表情が浮かぶも]
『選り好みしてられる環境じゃねえんだよ。 例えこんなでも、死ぬよりかはマシだろうが!』
[食べ終わった後の、鼠を刺していた棒切れを投げつけられて う、と声を漏らし、再び俯いた。]
『だいたい、荷物を奪った奴さえいなきゃ もう少しマトモな罠も張れたんだ。 怪我の治療だって、出来たのに……』
[くそ、くそ! ……そんな保険医の、苛立つ声が暫し、響く]
(95) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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先生。 もしも…… もしも、盗んだ相手を見つけたら 先生は、どうする心算ですか?
『ああ? さっきも言っただろ!! 信じられる筈なんて無ぇ。ぶっ殺す……。』
[とても保険医とは思えない、口振り。 漸く会話が出来るようになったかと思えば 触れてはならない箇所に触れると、声を荒げる。]
……例え相手が 子供でも、 ……生徒でも、ですか
『子供だ? ……生徒だ? 自分の脅威になる相手がいちいちそんな違いで 許してやる理由が何処にある?』
(96) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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でも!!
[其れは願い、だったのかもしれない。 教師、という大きな存在を信じて居たかった。 頼って居たかった。日常の、温もりを。]
でも……貴方は、教師じゃ、……
『………』
[無言のまま、保険医がすっ、と立ち上がる気配。 恐る恐る、俯いていた視線を、持ち上げた。]
(97) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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ひっ?!
[悲鳴は振り上げられた拳に対してのもの。 予想に寸分違わぬ、男の力。 がつ、がつ、と右から左から一回ずつ頬を襲う。]
『おい。』
[ぐ、と首根っこを掴まれ、近づけられる顔。]
(98) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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『お前の知ってる教師は、』
[もう一度、頬を殴られ]
『こんな事を平気な顔で、』
[腹を膝で蹴られ]
『するような人間、か―――?』
[ぶん、と投げ出された]
(99) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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……。
[声も出なくなった横たわる身に 追い討ち、とばかりに降り注ぐのは]
『この島にそんな高尚なモンは居ねぇ。 見た事も無ぇ獣ばかりだろうが。 ………なぁ?』
[既に理性を失い心を獣へと化した、人間の姿。]
(100) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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[伏した身体。 指先が、ぴくり、と動く――。]
(*1) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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[保険医は食の続き、とばかりに 火の傍へ戻ると腰を降ろし、二つ目の鼠を掴む。 マーゴに背を見せて、くちゃくちゃ、と。]
……。
[マーゴの心中では色々な光景が浮かび、過ぎる。 『殺す』という呪詛が心を縛るせいで、 悪い方向へ、悪い方向へと堕ちて行く。]
[保険医がわざわざ、 自分を此処へ連れ戻った理由さえも。]
(101) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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マーゴは、右手に、ぐ、と力を籠めた。
2010/08/07(Sat) 04時半頃
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(102) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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[ふらり] [立ち上がる小さな身体]
[相手は未だ気づいて居ない]
[本人は走りこんだ心算だが、 傍から見ればまるで倒れこむような形だった。]
(*2) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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[保険医の背後から 全体重を両手にのせ、相手の頭部にかけて 目の前の火へと倒れこんだ――――。]
(殺さなきゃ…… ころさ、なきゃ………
こいつにみんな、殺される……!)
[保険医は抵抗するも虚しく 燃え盛る火に、頭部を吸われてしまう。
燃え上がる、頭髪。]
(*3) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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……ひっ?!
[自分でした行動も、 いざ目の前で燃え上がる頭部を見れば 怯えた眸で、後退りするしかなかった。]
や ……ぁ ちが、
[首を左右に振るも、もう遅い。 保険医は此方に反撃する余裕も無さそうだった。 頭髪を勢いよく燃やしまま、頭を包む火と格闘し ふらふら、と洞窟の外へ逃げるように出て行く。]
(*4) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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……!
[入り口付近の段差につまづいて 彼の姿が、崖下へと消えていく。 どぅん―――。 鈍い音が、幾度か遅れて伝わってきた。]
(*5) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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……
[どうなったのか、と這いずりながら洞窟の入り口へ。 彼が消えた崖の向こうを見下ろせば、 其処には原型からかけ離れた保険医の、残滓。]
っ!
[紅く広がる其れは、 もう少し先の位置へ落ちていれば海原に飲まれていたろうに。 幾度か岩場に叩きつけられ、海に還る事も叶わなかった終局。]
(*6) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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― 崖の傍の洞窟 ―
[其処に残るのは、未だ燃え残る火と 食べかけの、鼠。
崖の向こう、 岩場の辺りには原型からかけ離れた保険医の、残滓。
海に還ることも叶わない終局は やがて鴉たちにより、啄ばまれる事となるだろうか。
マーゴの姿は此処から、また違う場所へと*消えていく*]
(103) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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― 回想 ―
[崖の上にある洞窟から 蒼褪めた顔がふらふらと歩み出る。 両頬は保険医の殴打により若干腫れて居り、 熱があるせいか呼吸が浅く、短い。]
……
[それでも過ぎるのは風穴で一緒だった仲間達の事。]
……た、 ん り
か
[名を呼んでいるのに、声は掠れて響かない。 波音に飲まれても、風穴に辿り着けば 温もりにまた会えるのだと縋るように。]
(164) 2010/08/08(Sun) 01時半頃
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― 回想・崖付近の森 ―
[周りの景色はほとんど意識に入って来ない。 見た事も無い小動物、蛍光色の実。 どれもが普段なら驚きしげしげと見つめるだろうに]
―――
[ただ、ふら、ふら、と風穴を目指す足。]
……っあ
[石に躓いて、転んでしまう。 其処へ紫色の蛇のような生き物が擦り寄ってきて マーゴの太股をがぶり、と噛んだ。]
(166) 2010/08/08(Sun) 01時半頃
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―――ッ!!
[あまりの痛みにその場で、 団子虫のように丸まっては、太股を押さえ込む。 噛まれた箇所からじわじわと広がる、熱。]
……
[涙が滲んだ。 きゅ、と下唇を噛んで嗚咽を押し殺そうとしても 震えてしまう唇は止められそうになかった。]
― 回想・了 ―
(169) 2010/08/08(Sun) 01時半頃
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― 現在・崖付近の森 ―
[どれほど時間が経ったのか。 紫色の蛇のような生き物はもう、傍には居ないのだろうか。 何もかも、解らないうちに手足の先が ぶるぶると意思に反して小刻みに震えるのを自覚する。]
……
[途中、記憶が無い。 何かを見た気がした。それは何だったのだろう。 アイリスだったような、ヘクターだったような、 オスカーだったような、メアリーだったような。 何かまあるくて、明るい、暖かいもの。 『教師』の姿が重ならないのは、畏怖に包まれたから。]
(173) 2010/08/08(Sun) 01時半頃
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……
[錯覚だろうか。 誰かが自分の名を呼んだ気がした。]
あ……
[それは酷く暖かいもののように感じた。 けれどもう、其れが誰だか判断も出来ない。]
あああああ…
[それでも縋るように、精一杯に掠れた声を振り絞る。]
(178) 2010/08/08(Sun) 01時半頃
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……?
[まるで耳の中に幾層もの綿を詰め込まれた様だった。 人の声、と判断は出来る物の、其れが誰で 何を言っているのか、詳細な判断が出来ない。]
だれ…? だれか ……いるの?
[丸まったまま、音の方へ首だけを動かして ひゅうひゅうと浅く、早い呼吸の合間、問いかける。 目を凝らしても、其れが誰か、よく見えない。]
……ぁ
[人だ、と言う事と。 『保険医』では無いというおぼろげな感覚で ぎこちなく、微笑んだ。]
(182) 2010/08/08(Sun) 02時頃
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?
[ぎこちない微笑のまま首を傾ぐ。 何か此方に言っているのと手を差し伸べられたので 手を伸ばそうとするが、ぶるぶると震えてしまい]
……ごめんなさい
[辿り着くまでも、時間が掛かってしまう。 漸く、手に触れれば]
貴方は、だぁれ? ……同じ学校の、ひと?
[囁くように、問い掛ける]
(187) 2010/08/08(Sun) 02時頃
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私は多分、もう…… だめ だから
[ひゅ、ひゅ、と浅い呼吸の間隔が 段々と、大きくなっていく。]
私の事は放って、あなただけでも… ―――ッ!
だけで、も。 精一杯、生きて……
[尚も搾り出すように、言葉は続く。]
(188) 2010/08/08(Sun) 02時頃
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マーゴは、『聞こえ辛い』『見え辛い』という言葉は決して口にはしなかった。
2010/08/08(Sun) 02時頃
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…
[相手の動き続ける口を凝視する。 それでも理解する事は叶わなかった。 悔しくて、自然とぽろぽろ涙が零れてしまう。]
貴方、優しいのね……
[それでも相手の気配、 此方へ一切危害を加えようとはせず、 むしろ、助けようとしてくれているのを肌で感じ、 零れた言葉は素直な、思い。]
ねぇ。 ……私のお願い、聞いてくれる……?
(193) 2010/08/08(Sun) 02時頃
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……
[相手の返答は解らなかった。 けれど、傍から離れないで居てくれる、事。 肌に感じる優しい雰囲気だけを頼りに、唇が動く。]
イリスに、お洋服汚しちゃって ごめんねって、伝えて、欲しいの…… オスカーには、ゲーム、借りたかった、って…
それと、メアリーさんに……
[少し逡巡して]
イリスを宜しく、って あと、 先輩…… ヘクター先輩に………ありがとう、って
(203) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
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ねぇ、お願い…… 貴方は、優しい人だと思うから…
だから……みんなを みんなと、仲良く、………生きて
[涙ばかりがぽろぽろと零れて 笑うことも、忘れてしまう]
……それと
[そして、最後の、願い。]
(204) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
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『教師』は……… 絶対に、信じちゃ……駄目………
……絶対に。
[自身の体験から来る、最後の願い。 けれど其れが、『教師』に向けられている事も、 最悪の願いであることも、知らぬままマーゴは呼吸を*止めた*]
(206) 2010/08/08(Sun) 02時半頃
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/* いえいえ! 此方こそ、上手く振れずにごめんなさい……
色々考えてはみたんですけど、此処が限界で。 明日も続くようなら、後はお願いしますね!
ちなみに。 表では未定、といっていますが、 イアン先生を襲撃予定です!
お二人の、これからの展開。 お墓からわくわくさせてもらいます…!
(*8) 2010/08/08(Sun) 03時頃
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