267 【突発】Sanatorium,2880【RP村】
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身体が硝子みたいに薄っすら透けてきて、 ぶつかった拍子に罅が入った時も、僕は自分を 水槽を隔てたようにどこか遠く感じていた。
きっとあれは…痛いとか、そういったものが 冷やされて麻痺していたに違いないのです。
(+3) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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眠りの世界にいるあいだ、 冷涼でも雪は融けてしまう夏から 陽のあたらない暗くて冷たいところへ避難して 海の生き物として深い意識の中で歌っていても 融けて濡れる身体は僕をまた縮めてしまう。
(+4) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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夏を凌ぐ為の箱が棺に喩えられるなら、 暗くて冷たいそこは冥府のようでしょう。
時々補給のために暴かれている最中も、 僕はきっと、睫毛を慄わせることすらなかった。 触れない程度にくちびるに近づいた手に 冬の風のような呼気をほんの僅か寄せるだけ。
(+5) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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・・・ ─────── 眠る前の僕に、 教えられるものなら教えたかった。 目覚めたばかりの僕は、微かな興味どころか 何かを記録していることや自分の名前だって、 すっかり忘れて…雛鳥や稚魚同然だったから。
(+6) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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海の生き物のようにしっとり濡れていて 磨り硝子のように透けていた僕の身体は、 青白い心臓だけがぼんやり光っていた。
秋の風に目覚める頃には消えていても、 重なった手のひらのかたちにやけどした胸は、 誰かのあたたかさを僕の身体に残していた>>*14 誰のものかわからなくても。
(+7) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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・・・・・・・ おかえりなさい…と言われて 僕はどうしてあんな気持ちになったのでしょう。 言いようのない気持ちは潮騒を招いて、 どうしてか涙が零れ落ちそうになりました。 帰る場所は別にあったような気がするのに、 さめた夢のように思い出すことが出来なかった。 朝の雪原みたいな薄い色の瞳をしたひとは、 陸地の言葉を僕に投げかけてきました。>>*15
(+8) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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・・・・ 「 …… おはようございます おしょくじありがとう…いただきます 」
辿々しく吐き出した声は52Hzの泡沫に消えずに、 ちゃんと陸地の言葉になっていました。 波の音が遠ざかるにつれて目を覚ましても、 おかえりなさいに対して答えられないままでした。
(+9) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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きっと僕は無くなるように消えることが とても… そう、とても得意なのでしょう。 せんせいにカメレオンのようだと言われて、 肌の色が周囲の景色に馴染んでいったんです。 僕は縮んだり、罅割れたり、融けたりしていく。 ───── ■ねば■だから。
(+10) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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─────── ────
(+11) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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だから─────
せんせいが随分高いところから見下げてきても 僕はそれを陸地と深海や、天国と冥府みたいに あたりまえに遠いものとしか思えませんでした。 慰めや温かい言葉は求めていなくて、 死ねば無であることを確かめることは出来た。 消えてしまったら二度と見つかることもなくて、 遠退いたきりの視線と同じになるのでしょう。
(+12) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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だって…せんせいは生きていて、 脆くなった僕はもう、きっと…消えてしまう。 いつか…列車に乗り込んだ僕を、 見送ってくれたひと達がいた筈なのに あのひと達がどうしているかわからないように… せんせいもきっと、そうなってしまうのでしょう。 冥府に行くときはいつだってひとりだから。
(+13) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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もうあえなくなるひとの言葉に、 僕はどう返していいのかわからなくて 手当てを受けるあいだ、僕は無言でした。
いつもより更に冷たくなった体温は、 グローブ越しにせんせいに届いたでしょうか? 漸く言葉を返せるようになった時には…そう、 夏でもないのに帰らなくては、と考えていました。 ・・・・・・
(+14) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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「 硝子人間ならきっと、 波に揺られていつか手紙を届けます。 瓶に青白い硝子の破片を入れておくので、 それが目安になるでしょうか? 氷のように冷たいそれは、 僕の心臓ですから、……冬になったら 朝、白くて柔らかな雪の下に埋めてください。
そうしたらきっと ────── 」
(+15) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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( きっと…… ? まるでその先があるような言葉を 僕は何故せんせいに言ったのでしょう )
(+16) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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冷たい■の中に眠って、帰ることが出来たら。 新しく巻かれた包帯を透けた指先で撫でながら お願いをしたのはその時でした。 手記に書かれたいつかの時にも、 せんせいは同じ反応をしたのでしょうか?>>51 忘れてしまった僕にはわからないけれど… あんなことを言われるなんて思わなかった。 ・・・・・
(+17) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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僕もきっと、 砂のように崩れた女の子のように いつ■んでも…それこそ、明日でもおかしくない。 スープを食べようとして突然、… あんな風に僕の終わりが訪れてしまうなら、 今すぐにでも帰らなくてはいけないと思った。 だけど、どうしても眠りたい理由を>>50 せんせいにどんな風に説明していいかわからずに、 口籠った僕に澱みも濁りもない言葉が続く。
(+18) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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「 せんせい…… どうしてそんなことを言うんですか? 」 いままで、せんせいと過ごして こんな風に困ったことはあったでしょうか? きっと僕は隠すことなく眉を下げていたけれど せんせいの求めに応じて腕を差し出しました。
欠けないように手袋をはめるよりも、 絵を描く方がきっと……きっと、■しいからです。
(+19) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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せんせいがそのまま色を塗っていくなら 僕はずっと、その様子を静かに見ていましたし、 気が変わって手袋を探しに行っても同じこと。
それは他の人からすれば■しいのかと問うほど 静かで、温度の低いひと時だったでしょうが
───── ■ぬのが恐ろしくなりました。
(+20) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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「 ありがとうございます…… せんせい 」
(+21) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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それでも僕はせんせいに感謝の気持ちを捧げ 穏やかに笑いかけていたでしょう。 冷たい■の中に横たわる事が出来なくても、 何故か眠くなかったので、そのまま一つの夜が 空から帳を取り去っていくまでを過ごしました。 時々せんせいが指先に施してくれたものをみて、 ■しさと、裏腹の恐怖が広がるのを感じながら。
(+22) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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せんせいの冷たさまで、 僕にはもう…耐えられないのでしょうか?
(+23) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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何かが小さく爆ぜるような、 或いは何かが張り詰めていくような、 ぴき…、と小さな音が包帯を巻いたところから 段々と連続していって響いたのをきっかけに そう時間を置かずに、全身に行き渡りました。
(+24) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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僕の全身に罅が入っていなければ 鮮明に “ 向こう側の景色 ” を透かしたでしょう。
雪をまぶしたような磨り硝子ではなくて、 冬の朝に湖に薄く張った氷のようになった身体が 心臓の青白い光を衣服の隙間や全身の小さな罅から 漏らし、陽射しを避けた部屋を青く照らす様は 洞窟に入った光を海底から反射するようでした。
(+25) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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せんせいはいたでしょうか? 透明になって消えてしまう “ 硝子人間 ” に、 本当の■■さまが迎えを寄越すのを感じとって
…………
(+26) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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いつも近くで付き添ってくれていたあの存在に さいごにひとかけら残したくなっていたのです。 なくなるのだから、その行為に意味はないのに。
(+27) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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人は何故■きるかの疑問に、答えがないように。
(+28) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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( …かんがえておけばよかったなぁ )
(+29) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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こんな世界の中でも生きていく理由より 残すひとかけらの方がきっと思いつけたのに。 せんせいにとってただの数字でしかなくても、 僕にとっては違う…そんな温度差があった。 ・・・
(+30) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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もしもせんせいが近くにいたなら、 今にも砕けそうな身体を伸ばそうとしました。 グローブ越しでも僕から触れてみたかったのは、 もう随分と■めていた心のように思います。
(+31) 2019/06/19(Wed) 13時半頃
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だけど、
陸地に打ち上げられた海の生き物は 自分自身の重さに耐えられなかったり 海に比べて高くなる体温で■ぬそうなので、 僕の腕も同じくように割れてしまったかも。
倒れてしまったのか、別の音なのか ガシャン、と軽くて耳障りな響きと共に 暗いところに沈んでいった意識と視界は、 その先の出来事を僕から隠したのです。**
(+32) 2019/06/19(Wed) 14時頃
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