172 ― 恋文 ―
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――ある日のアトリエ――
[壁際に椅子のミニチュアが並び、秋の陽射しを浴びています。 椅子が入っていた箱の中や椅子の上に カードや便箋が載っています]
[一人だけのアトリエですが どこか明るくなったような気がします]
[庭の外まで来ていたキツネが 郵便屋のエンジン音を聞いて逃げ出しました]
[それは、馴染みの手紙でした]
(43) 2015/10/22(Thu) 01時半頃
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[病院に送る絵葉書には、いつも丁寧な返事が返ってきます。 「いつも娘の為に、ありがとうございます」 その手紙だけでも、少なくともあの時の小さな女の子はまだ生きているのだと 彼は信じる事ができました]
[いつも通りの、几帳面な字。 中に入った、便箋を取り出して]
[彼は、泣き崩れました]
(44) 2015/10/22(Thu) 01時半頃
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[幼くて弱々しかったあの女の子は 今もまだ、しっかりと生きているのです。 そして、しっかりと声を伝えてくれたのです]
[平仮名ばかりの幼い文字。 後半になればなるほど、崩れて読めなくなっていきます。 それでも、彼は、何度も何度も、その文面を目で追いました]
(45) 2015/10/22(Thu) 01時半頃
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[窓に並べられた、椅子のミニチュア。 その上に、また、載せられる手紙が増えました]
(46) 2015/10/22(Thu) 02時頃
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[今回の手紙は、絵葉書ではなく、秋を感じる薄茶色の封筒でした。 その中には、山で拾った美しい紅葉の葉が一枚]
[そして、ハガキよりも少し大きな画用紙の絵でした]
[描かれたのは、少女の物語です]
[前よりも大きくなった少女が、秋の森を歩いています。 その横をキツネが歩きます]
[今までの絵よりも、少しだけ、色合いがはっきりしている世界を]
[水彩絵具に色鉛筆が混じり、より線が濃くなった世界を]
(-52) 2015/10/22(Thu) 02時頃
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[山の秋は、とても綺麗です。 彼女もいつか、そんな風景を見ることが出来るでしょうか]
[山の香りは、彼女の元に届くでしょうか]
(-53) 2015/10/22(Thu) 02時頃
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