278 冷たい校舎村8
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――現在/舞台袖――
[眩暈がする。
喜多仲は死んでなんかない、そう何回も反芻する。 しようとするのにどこからか笑い声が聞こえる気がして うるさい、――と、辰美は無言で唇を噛む。
だから、マネキンにかけるものがあるか、という言葉や 癖のような深呼吸の音は認識していても 阿東礼一郎がそこに来ていることには 控えめに声をかけられてから気が付いた。]
(139) 2020/06/18(Thu) 08時半頃
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……れー?
ああ、息。……こほっ、うん。 わり、気ぃつかなかった。大丈夫。
[首元から手を放す。>>129 空咳をして、ぼんやりとマネキンを見ている。
その時にはそろそろ辰美幸俊にも それが「喜多仲郁斗」だと認識できてしまっているので かけ布を探しだす冷静さが保てなくて場所だけ示した。]
(140) 2020/06/18(Thu) 08時半頃
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かけられそうな布なら、あっち。
……なあ、れー。 きたなか、死んでないよな。 ……お前も死なないよな。 大丈夫だよな。
[そんなこと、誰にもわかるはずがないのに。 辰美は茫然とそんなことを問いかけた。 浅い呼吸を繰り返し、 やっと礼一郎に目の焦点が合った。]
(141) 2020/06/18(Thu) 09時頃
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……わり、やっぱちょっと気分悪い。 顔洗ってくる。
[辰美はそう言って首を振る。 礼一郎が気づいたんだから 後は皆に知らせてはくれるだろうか。
そう半ば甘えるように期待しながら、 辰美は舞台袖から逃げるように出た。]
(142) 2020/06/18(Thu) 09時頃
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――手洗い場――
[そのまま最寄りの手洗いに滑り込むように入っていき 温水を選択するのを忘れて冷たい水を顔にかける。
昨日喜多仲がここにいた。いて笑っていたのに。 七星だって見つかっていない。 ……もういないかもしないなんて信じられない。 辰美はただ恐ろしかった。
顔を上げる。]
(143) 2020/06/18(Thu) 09時頃
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「彼は途中で降りたんだよ。 夢の世界には定員があるからね。 ちょっと定員オーバーなのさ」
(144) 2020/06/18(Thu) 09時頃
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[声が聞こえてぎょっとして、顔をあげる。 鏡の中に紳士が映っていた。 口の端を吊り上げるように笑って、……笑って、 その像がぐにゃりと歪む。
……兄だった。]
『ゆきとし』
[兄が笑う。鏡の向こうから手を伸ばす。 手を伸ばして首を締めようとしてくる。 声にならない叫びが喉を通る。]
(145) 2020/06/18(Thu) 09時頃
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――――、――、――――、
(146) 2020/06/18(Thu) 09時頃
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[死ねよ。どうか頼むから死んでくれ。俺もお前も。]
(147) 2020/06/18(Thu) 09時頃
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[――――パリン。]
[気が付けば目の前の鏡が割れていた。 ぱらぱらと砕けるそれから拳を離す。 破片が突き刺さった左手がだらだらと血を流す。 片手が赤く嘘の色で彩られる。]
…………くそ、やらかした
[痛みはあとからやってきた。 妙に鈍いそれに顔をしかめながら、 辰美はもう一度蛇口をひねる気になれず鏡を見る。
息を切らした自分の姿がそこにあった。**]
(148) 2020/06/18(Thu) 09時頃
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――舞台袖――
[途方に暮れるような声が聞こえて、 数瞬遅れて自分がいつも通りでないことに理解が及んだ。
ごめん、と言いたかったが、 謝ったって仕方のないことだし かといってほぼ肯定を求めるような質問は この状況で良くなかったんじゃないかと 後から辰美は気付く。>>149
辰美はやはり礼一郎に甘えていて、 その無責任さに少しだけ救われた。>>151]
(178) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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……そっか。 そう、帰ったんだよな。
…………こうなる必要あるのかわかんねーけど
[たぶん。に含まれた意味なんか 辰美はとっくに分かっていて やっぱり礼一郎にごめんな、と思ってしまう。 性分ではないので言わないけれど。
二度目の死の否定に「そっか」は返さなかった。>>153 ただ少しだけ安心したように辰美の息が深くなる。]
(179) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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[踵を返そうとして礼一郎が何か言った。>>154
辰美にとってそれが都合の悪いこと、 というわけではなかったけれど
そう、まとまった思考をするには ちょっと混乱しすぎていて理解できなかった。]
(180) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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死なねえよ。たぶん。
帰ってこれるって、………… かえる、し、こんな世界
(181) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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[どこに? そう辰美は思った。
舞台袖の方へ? この夢から現実世界へ? あるいは兄のいる家へ?
それとも、礼一郎と無邪気に2人で遊んだ子供の頃に? それなら帰りたいと辰美も思うけれど、 多分そういう話じゃないだろう。
だから どこに? と 一瞬本気で思ってしまっていけなかった。 国語の点数だと0点がとれそうだ。
その後無理やり文脈をあてはめて、 「こんな世界」と言い添えた]
(182) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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俺もお前に死なれたくねえよ。
――っ、お前も、それ、一緒だろ、思いつめんの。 俺わすれてねえからな 保健室での……
[突然正気に戻ったように辰美は言い返す。 「思いつめる」という文脈に言い返す。 昨日の保健室での出来事を忘れていない。]
……だいじょーぶ。俺は。
[まくしたてそうになって 辰美は首を横に振り、そういった。 今度こそその場を離れていく。]*
(183) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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集団失踪? …………集団幻覚?
心の中だから、そんなこともあるかも。 ……本当に?
(184) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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――手洗い場→――
[……た、という音が聞こえて、 辰美は静かにそちらを振り向いた。
綿津見まなが立っている。]
……辰美だけど。
[いつかのように辰美はそう言って、>>176>>177 何か、を見ている綿津見の目線の先を追い、 ......あーあ。とちょっと自分の所業を後悔した。]
(185) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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………… ………………
[無言のまま辰美は蛇口をひねった。 やっぱり冷水だった。 赤色が流しに揺れて、消えていく。
傍目から見てヤバい奴だ。と理解はしていて けれど辰美はごまかすでもなくぽつりとこういう。]
(186) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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……うっかり割った。
[見ればわかるし、 うっかりとは言い訳にもなっていない。
嘘をつくのが下手だ、と葉野に言ったことを思い出し 自分も人の事いえねえな、と反省した。]
(187) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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あのさ。 喜多仲、体育館でマネキンになってたよ。 七星みたいに。
[通信エラー。通信エラー。 こちら血を流しながら唐突に話を始めていますが 大丈夫ですか、受け取れますか。
黒板の文字を見た上で、>>2:221 綿津見は七星のことを知っているだろうと予測して 辰美はそんな話をしている。
受け取ろうが受け取るまいが、 辰美はやっぱり、繋がりのない話を進める。]
(188) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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わだつみさ。 舞台裏で、「どこに行きたいの」って 言った事あっただろ。
あれってさ。 紳士としては少女の成長が見たいから 多分、どこでもよかったんだよな。
自分で歩いて、傷ついたり辛かったりしても ただ、少女が自由である姿を見たかった。たぶん。
言い損ねたな。……って、今更。思い出して。
(189) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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[何でこんな話をしているかって、 思い出したから以外にないのだけれど 手についた水を切って、ハンカチで軽くぬぐった。
ちょっとずつ赤黒い染みができている。 後で水洗いしよう。――と、淡々と思う。]
割ったの、内緒にしといて。
[オフレコな。と人差し指を唇に当てる。 それから、ゆっくりとその場所を離れるだろう。 何か言われれば答えたかもしれないが。]
(190) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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[それから行くから。――そう、言われた気がするけど。 ええと、どこに行くんだっけ。>>154]
(191) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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[......保健室は女子がいると面倒だな、と そんなことばかりがすぐに考えついた。
だから辰美はそのまま、昨日のように購買へ向かう。 消毒液や絆創膏くらいはあるだろうと踏んで。]
(192) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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[手洗い場から点々と、点々と、赤い血が落ちている。 ペンキの青と混ざったら紫になるかは―― 残念ながら気にしていなかったから、わからなかった**]
(193) 2020/06/18(Thu) 13時半頃
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/* ウワーー秘話 話 とんできた ありがとうまなちゃん、かえします クレープ食べてから治療しろよ辰美
そして俺のいるとこに帰ってこいっていうの普通にかわいいなって思って 思ったんだけど 礼一郎君ほんまかわいいな 天の声ってか地の文が辛辣なのが不思議な温度感あるね…
(-29) 2020/06/18(Thu) 19時頃
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/* Q.落ち日ではないのになぜこのようなムーブを? A.割りたかったんです……校舎村の鏡………(土下座
(-31) 2020/06/18(Thu) 19時頃
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――現在/水道――
[しょうがない。 さて、どこまでがしょうがないで済むだろう。
モップは一本壊しているし、鏡は割ったし あと友達を少なくとも二人は傷つけているし 若林先生がいたなら正座じゃすまないが。
……とはいえ今は先生もいないし、 手から血を流していようが、 片手にクレープを持っていようが、 咎める人はだれもいないので良しとする。>>222]
(275) 2020/06/18(Thu) 20時頃
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……んだよ、
[昨日のように、あるいは文化祭の時のように、 辰美は「なんだよ」って綿津見に問う。>>227
静かに積み重ねた日の上で 生きるのが下手な子供二人が会話をする。 「内緒ね」――そう言い合って。]
[窓の外で静かに雪が降っている。 言葉が静かに降り積もる。>>228]
[辰美はそれに耳を傾けて、 「ありがとう」と確かに言った。 それから、少し困ったように「そうか」と続ける。]
(276) 2020/06/18(Thu) 20時頃
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