88 めざせリア充村3
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[仮想世界が壊れる間際。 罅割れた空間に紛れ込んだノイズ>>7+62は、 雑音の中でも聞き取れた。
電子音と共に、のしかかっていた負荷が消える。 力なく項垂れていた首をもちあげて。 うっすらと光を取り戻した翠を、 擬体を撫でているミナカタへと向けた。]
(*0) あけひー 2013/07/06(Sat) 02時半頃
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……おわ、った…の。
[まだ調整の効かない、少し雑音の混じる音で。 すべての感覚を戻していない状態では、 全員が無事に目覚めたのかはわからず。
彼らの様子を尋ねると同時に、 ミナカタの表情を窺う。]
(*1) あけひー 2013/07/06(Sat) 02時半頃
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[掌の下。小さな頭が動く。 視線を落とせば、翠が光る。]
――起きたか。
[名前を呼ぶことはやはりなく。 雑音の混じる音に腰を落として。]
ほら――口開けろ。
[桃色の包みの飴を取りだした。 開けて彼女の唇に砂糖菓子をあててやる。]
(*2) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 02時半頃
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……お疲れ。 辛かった、な。
[砂糖菓子をポプラは食べただろうか。 ゆっくりと彼女の頭を撫ぜながら。]
……ただいま。
[「あの時」言えなかった言葉を。 なんだか口に出したくなった。]
(*3) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 03時頃
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[壁に広がるモニタの電源は全て落ちていた。 誰が落としたかは、一人しかいないだろう。
口元に当てられる飴を、 すこしぎこちなく口を開いて受け入れる。 広がる甘味に、「現実」に戻ってきた実感を得た。]
……つらいの、は……あのこたち。
[撫でる手に、首をゆるく振って。 実験を止めることもせず、 「悪夢」の世界を作り上げたのが自分と知ったら、 もう以前のように接してくれなくなるのだろうかと。 そんな身勝手な恐怖を抱く。
決して、口にはしないけれど。]
(*4) あけひー 2013/07/06(Sat) 03時頃
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[「ただいま」と言われて、 それは逆じゃないのか、と。
しばらくの間、ミナカタを見つめて。]
……おかえりなさい…みぃちゃん。 それから……ただいま。
[「わたし」が目覚めた時と、同じ言葉を返した。]
(*5) あけひー 2013/07/06(Sat) 03時頃
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――お前も辛かっただろうが。
[己も、とそれは口に出さず。 白銀の髪を撫でて、撫でて。
視線はどうしてもカプセルへと向く。 あの髪に最後に触れたのはいつだろう。]
(*6) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 03時頃
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[返された言葉はあの時の言葉。 やはりこれは、ポプラなのだと。 彼女――カリュクスではないのだと痛感して。
理不尽にも、彼女に溜息をつきそうになり。 それは押しとどめて――ただ、頷いた。]
落ち着いたら上に行くぞ。 チアキと――ソフィアも、眼が覚めてるだろう。
[ポプラがためらうようだったら 手を伸ばして彼女を抱き上げようと。]
(*7) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 03時頃
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[辛いのは、強制される側。 またはそれを見ているしかできない側。
少し外れる視線に、細く呟く。]
…… 、いなかったら。
[こんな悪夢が実現されることはなかったのかもしれない。 口にするのはまだ、躊躇いがあるけれど。]
………。
[上へあがるのは少し躊躇われて。 それでもミナカタに抱えられれば、地上へと。]
(*8) あけひー 2013/07/06(Sat) 03時頃
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……忘れるな。
[余計な事を考えていそうなポプラが それを本当に口にしたら きっと自分は壊れてしまうだろう。]
お前が死んでいれば 俺はここにはいない。
[この研究所もきっとないまま。 子供達にはもっと酷な日々があっただろう。]
(*9) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 03時半頃
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[地上に出る前。 わずかな時間だけポプラを見下ろす。
ここでこの擬体を壊したら 精神だけが元の身体に戻って 彼女が目を覚まさないかと――
そんなばかげた妄想を。いつものように。]
(*10) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 03時半頃
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……でも ……
[死んでいたら、 こんな思いもしなくてすんだだろうに。
言葉は途中で打ち切る。 もし表情があったなら、 醜く歪んだ笑みを浮かべていただろう。
もしもあの時に生にしがみついたりしないで、 そのまま死んでいたのなら。 ミナカタも、こんな飼われるような生活ではなくて、 もっと別の場所で、楽に。
死んでいただろうか。]
(*11) あけひー 2013/07/06(Sat) 04時頃
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……いつでも…いいよ。
[こちらへと向けられた、 少し濁るミナカタの目に音を投げかけたのは。
実験の後で、箍が緩んでいたから。 疲れていた。こんな歪んだ生き方に。]
(*12) あけひー 2013/07/06(Sat) 04時頃
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[なおも食い下がり続けるポプラの様子に すぅっとその双眸は細められる。]
死にたかったか? あそこで、死にたかったか?
……悪かったな。死なせてやらなくて。 お前をずっと縛り付けて。
お前が、
[ポプラを抱く腕をゆらりと揺らす。 大丈夫だ、まだ耐えられる。 まだ――]
(*13) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 04時頃
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お前が、悪いんだ……
[立て続けに見せられた子供達の実験。 それは自身の心をも酷く苛んでいて。
零された、ポプラの言葉には 耐えられなくて、その身体を――
床にたたきつけるように 落とす。]
(*14) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 04時頃
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――っ……!
[自身のしたことには ポプラが落ちた音と同時に気がつき。 慌てて駆け寄って、小さな身体を抱き上げた。]
すまんっ……! 大丈夫か、どこか壊れて――
[誰を心配しているのだろう。 何を心配しているのだろう。
これはただのぬけがらなのに。]
(*15) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 04時頃
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[叩きつけるような声。 こんな声を向けられるのは、 「ポプラ」として目覚めてからは初めてだろうか。
体を支えていた手が消えて、 重力に流されるまま、床へと落ちる。
研究所の技術で作られた擬体は、 この程度の高さから叩きつけられたところで 傷ひとつつかないが。
再度抱えるミナカタの頬に、手を伸ばす。]
(*16) あけひー 2013/07/06(Sat) 04時半頃
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……わたし…が……願った……から。
[おかえりを言いたかった。それだけ。 その願いは確かに叶って、 そしてその願いが「今」の「研究所」を生み出した。]
………みぃちゃんは…わるくない。
[落としたことか、実験のことか。 “あの時”あの場にいなかったことか。
ぺたりと頬に手をつけて。 笑ったように、見えただろうか。]
(*17) あけひー 2013/07/06(Sat) 04時半頃
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[小さな手が頬に触れる。 これは紛い物の手。 偽物の手。 それでも、それは伸ばされる。]
……俺も、共犯だろう……?
[掠れた声で答えながら。 感情の浮かばないポプラの顔を覗き込む。]
(*18) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 04時半頃
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[そうやって守られて。 あの時だって彼女はそう言った。
自分がいれば止めれただろうに、と そう後悔する己に。彼女はそう言って。 それから、何度も言い聞かせるように。
まるでそれが事実であるかのように。 本当は、彼女の方こそ何も悪くないのに。]
……ぃ
[ギリと奥場を噛む。 細いポプラの手を掴む。]
(*19) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 04時半頃
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[いっそ折ってやろうか。 もう、心を揺らされないように。
彼女と同じ色の髪も 補色になっている瞳も
ぜんぶ。目の前から消してしまったら。
――きっと、何も考えずに狂えそう。]
(*20) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 04時半頃
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[腕にかかる圧力を検知する。 人の力でどうこうできる強度ではないが、 内部で鳴る警告音は無視をして。]
……みぃちゃん。
[ただ、紡ぐ。 今も昔も、同じように。]
(*21) あけひー 2013/07/06(Sat) 04時半頃
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……なあ、教えてくれ。 お前はどっちなんだ?
――カリュクスなのか。違うのか。 元に戻るのか。 俺はいつまで待てばいい? 俺が死ぬ前にお前は、目を覚ますのか……?
[聞いてはいけないことが。 ぽろぽろと口から零れる。 危うすぎる均衡。 よくもこんな長い年月もったものだ。]
(*22) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 05時頃
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――「みいちゃん」と呼んでいいのはカリュクスだけだ。
[指先を、ポプラの細い喉に。 これを壊したところで彼女は 死ぬことなんて絶対にないだろうけど。
この長い年月で己の心に根を生やした この存在を心から消し去ることは出来るだろう。]
――答えるな。 だから代わりに、そう呼ぶな。
[ポプラにはそう告げる。 まだこれを壊すわけにはいかなかったから。]
(*23) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 05時頃
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……俺は
[腕をつかむ力を緩めて 喉に当てた指も離して。
いつものようにポプラを抱き上げて。 ただし声の温度は低く。]
俺は、籠の鳥でよかった。 カリュクスを失うぐらいなら――
[ただもう一度あの紅を見つめたいだけなのに。
その望みはこんなにも――遠い。]
(*24) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 05時頃
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[答えようと開いた喉に指先が添えられる。 力はほとんど込められていない。
悲鳴のように突きつけられた通牒に、 機械の顔の内側で嘲った。
あの時の願いは、叶えてはいけなかったもの。 この擬体は、望んではいけなかったもの。
一番望んでほしかった人に、 誰よりも何よりも、疎まれている。]
(*25) あけひー 2013/07/06(Sat) 05時頃
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[抱えられ、ミナカタの望むとおりに無言のまま。 腕の中で低い呟きを聞く。
彼の望みはまだ、叶えられなくて。 これからも、叶えられるかは知れなくて。 自分の望みは悪循環ばかりを招いて。
それでも、自分はまだ動いている。
階段をのぼれば、 地下への入口ともども、揺れる感情に蓋をする。]
(*26) あけひー 2013/07/06(Sat) 05時頃
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[片手で抱きかかえれる身体。 本物の彼女よりずっと、ずっと軽い。
それでも迎えてくれてうれしかった。 同じ言葉で「おかえり」をくれて
本当は、よくできた紛い物などと思っていない。 カプセルの中ずっと目覚めない彼女のほうが 今では人形のように思えてしまう。
嗚呼――そんなことを言ってしまったら ポプラの中に居るカリュクスをどれだけ傷つけるだろうか。
擬体の中にまで入って待っててくれた男は もう己を待ってもいないし、必要ともしておらず 作り物の中にいる存在を]
(*27) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 05時頃
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[愛してしまっているのだと。]
(*28) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 05時頃
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[だから名前を呼ばない。 呼べば本当にカリュクスが過去になってしまう。
それを何より恐れて その後に彼女が目覚めることを何より恐れて
愛しく――憎い擬体を抱えて 階段を上って地上へと。]
――な、ぁ
(*29) もっぎゅ 2013/07/06(Sat) 05時半頃
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