171 獣[せんせい]と少女
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― 前の日の食堂で ―
[みかん花の蜂蜜を前に気持ちはうきうき。>>1:373 ユージン先生とおいしそうに盛りつけできた>>1:348 フルーツポンチを運ぶ。
業かな朝食を、いただきますしようとして。 食堂にない、コリンとアヤワスカとエフ先生に やっと気づく。 大事なことがすっぽ抜けるくせは、まだまだ治らない。
コリンとアヤワスカは遅れても食べにくると思うけど さっき食べるのを嫌がってたエフ先生は>>1:383 もしかして逃げたんのかな、なんて。]
(1) 2015/10/11(Sun) 00時半頃
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[ゆびきりの約束通り、>>1:384 あれからエフ先生は少しずつ力の使い方を教えてくれた。 たまに、変な顔をしながら。 それが義務なんだって。不真面目なのに、真面目な先生。
治して、と頼むことが減ったのは怪我が減ったから。 怪我が減ったのは、山雀を埋めた後から。 すくっては零れ落ちる、水のような小さな命。 落ち着いてから、先生に山雀のことをお話したけど、 わたしはまた変な顔になってしまったかも。
でも今だって、あの骨ばった大きな掌は好きだから。 撫でてもらえる回数も減ってしまったことだけ、不満で。 代わりに、"おまじない"を頼むことが増えたりして。 それから──── ]
(2) 2015/10/11(Sun) 00時半頃
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[みかん花の蜂蜜たっぷりのパンを頬張る頃には コリンの姿が見えれば隣に座ろうと手招きを。>>1:379 次に食堂の入口に見えたのは、 エフ先生とアヤワスカ。>>1:432
一対のように並ぶ、"せんせい"と"少女"。 ああそうか。
いまは、みんなの"せんせい"だけど。 もうすぐ誰かの"せんせい"になるんだな。 なんて。]*
(3) 2015/10/11(Sun) 00時半頃
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― なまびやの夜 ―
[書庫に借りていた本を返して、 大広間でみんなでプレゼントを開けて。 夕食前には、真っ白な髪のおねえちゃんと オズワルド先生がやってきて。>>23
瞬く間に時間は過ぎて、 ゆっくりと空はくすんで黒く沈み、夜が来る。 なんとなく、また眠れなくなって。 ぺたぺたと廊下を歩いて、先生を探す。
荷物を片づけている時に、見つけたそれを返す為に。 いつかの井戸で借りてから 返しそびれたままのひざ掛け。>>1:382 眠れないあの夜にユージン先生に見つかった時。 仲良くしてたとりさんを、畑の隅っこに埋めたこと。 とりさんが、いつもどんな風に飛んでたか。 たまにしゃくりあげそうになるのを誤魔化しながら 喋り疲れて眠くなるまでお話したんだ。]
(61) 2015/10/11(Sun) 12時半頃
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[井戸の近くまできて、きょろきょろ。 屋根の上にいるかと思ったら、樹の傍に居た。>>1:430 樹に向かって話しかける声に、首を傾げる。 本当に先生の声かなって思うくらいか細くて。 不安になるような声。 ゆっくり離れようとして足音を立ててしまった。
気づかれてしまったなら、しょうがないよね。]
ユージンせんせい、これね。返しにきたんだ。 あのときは、ありがとう。
[まっくらな夜だから、先生の顔はよく見えないまま。 笑顔でひざ掛けを差し出したんだ。]*
(62) 2015/10/11(Sun) 12時半頃
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― いつかの井戸の傍で ―
[前にもひざ掛けを返そうとしたことはあったんだ。 借りてから暫くしたある日、廊下を歩いてると 畑の方から帰ってきたユージン先生とばったり会った。]
あのねせんせい。 この間借りたひざ掛け、お部屋にあるの。 とってくるね!
[ぱたぱたと部屋に取りに戻ろうとした、その時。 大きなコリンの声に、びっくりして足が止まった。>>38
────命を使ったら、死んじゃうかも!
ずきん、と胸に何かが突き刺さったように痛くなって ぐしゃりと顔が歪む。 コリンの声が苦しくて、苦しくて。聞いていられなくて。 部屋とは別の方向にわたしは駆け出していた。]
(65) 2015/10/11(Sun) 13時半頃
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[誰かと擦れ違ってもぶつかっても、足を止めないで 走って走って辿り着いたのは、井戸。 そこまで走ってきたわたしの息はあがって苦しかったけど コリンの声が耳から離れない。
あの日の夜みたいに井戸の傍で、蹲る。 俯いたわたしの視界が、ぐにゃりと歪む。 追いかけてくる先生がいたとしても、気づけずに。]
……とりさんも、 コリンみたいに叫んでたのかなぁ。
[ぽたぽた、ぽたぽた。 開いた両手に落ちる雫が、溜まらず指の間をすり抜けて 地面に落ちていく。]
っごめんね、……ごめんね。
[何度も何度も、謝る。 物見小屋で手の中にあったはずの、小さな命に。]
(66) 2015/10/11(Sun) 13時半頃
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……わたし、とりさんを治してあげたいって思ったの。 でもそれを……とりさんは嫌だったのかな。
命を擦り減らすって、聞いたのに。知ってたのに。 わたし、悪いこと……しちゃったのかな。
[あの時の山雀を。その前にも怪我をしたコリンを。 誰かが怪我をする度に、 治してほしいってわたしは先生に何度お願いしただろう。
蒼い目の奥に残る、記憶の欠片の山雀がこっちを見てる。 嫌だ、嫌だって首を振ってるそんな気がして。 繰り返し、ごめんねって謝り続けた。]**
(67) 2015/10/11(Sun) 13時半頃
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― まなびやの夜 ―
[情けないところってなんだろう。>>71 元の姿もだけど、まだまだ知らない先生がいっぱいある。 さっきほどではないけど、まだちょっと弱々しい声。]
見ちゃった。 せんせい、ここで誰に謝ってたの?
[ひざ掛けを返しながら、 これを借りた時のユージン先生を思い出す。>>72
背中を撫でてくれた大きな掌。 微笑んでゆっくり話を聞いて、話してくれた声は いつも先生の周りを吹き抜ける風のように優しくて。 ユージン先生の言葉があったから、 わたしはそれから畑の隅っこに通うようになったんだ。 わたしも仲良くできて嬉しかったから。 遊びに来れなくなってしまったとりさんに、 今度はわたしが遊びにいこうって。]
(149) 2015/10/11(Sun) 22時頃
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[夜風に乗って、ミツボシの唄が聞こえてくる。>>73 ゆっくりと目を閉じて、唄が終わるまで耳を澄ます。 葉擦れの音がかさかさ、さわさわ。 伴奏するみたいに、唄と一緒に夜空に響いていた。]
……だから、ごめんねなんだね。
[先生が昔何をしたのか、わからないし。 先生の優しい手が、痛いことするなんて想像できない。 でも、わたしも不安になってここで泣いたみたいに 先生も不安なのかな。]
(150) 2015/10/11(Sun) 22時頃
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あのね、わたしもすっごく不安な時あったんだ。 とりさんに……悪いこと、しちゃったかなって。 ほんとは嫌われちゃってたんじゃないかなって。
[あの時も、涙と声が枯れるくらい謝った後で>>67 先生の言葉を思い出したんだ。 ヴェラ先生と一緒に描いた絵の中みたいに。 元気に飛んでた姿を。遊びにきてくれた姿を。]
とりさんみたいに、この子も嬉しいんじゃないかなぁ。 こうして先生が遊びに来て、撫でてもらって。
[かさかさと今度は葉擦れの音だけが響く。 先生の樹を撫でる手は、とっても優しい。 それはきっと、伝わってると思うから。]
(151) 2015/10/11(Sun) 22時頃
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────ひゃっ!?
[わたしも一緒に樹を撫でて隣の先生を見上げた瞬間、 先生の指先が強く光った。>>74 足元の音にびっくりして、樹の影に逃げ隠れる。 おそるおそる半分だけ顔を覗かせれば光るランタン。]
……今の、せんせいがやったの?
[わからないものは、怖いけど。 わかってしまえば、怖くない。 だって先生は傷つけたりしないって、信じてるから。]
(153) 2015/10/11(Sun) 22時頃
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すごい、すごい! これなら夜でも転んだりしないね。
[樹の影からひょこりと、先生の隣に戻って。 ランタンを持ってない先生の光った手に、手を伸ばした。 小さい頃、暗い夜だといつもよりよく転んだから、 いつもコリンや先生に手を繋いでもらったみたいに ぎゅっと掴めば、ちょっとだけ甘えて。
そして井戸からまなびやへの入口まで、送ってもらおう。 その先から部屋までは、わたし一人で帰れるから。]*
(154) 2015/10/11(Sun) 22時頃
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[ランタンの灯りに照らされる笑顔は ちょっとだけ元気がないような。>>181 でも優しい笑顔に変わりはなくて ユージン先生をこわいって思う人なんて、いるのかな。
もう一度、ユージン先生の指先が光る。 びっくりしたけど、こわがらないことに驚く先生に わたしのも蒼い目を丸くして、ぱちぱち。ぱちぱち。]
嵐のように強い吹き飛ばしてしまう風とか 大きな音で樹を真っ二つにしてしまう雷とか そういうのはこわいけど。
ユージンせんせいは、こわくないから。 だから、せんせいの雷も風もこわくないよ。
[昔はどうであっても、 今の先生の手は、誰かを傷つける手じゃないこと。 繋いでるわたしは、ちゃんと知ってる。>>183] だから優しく撫でてくれる先生を見上げたんだ。]
(215) 2015/10/12(Mon) 00時頃
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[まなびやの入口でに着けば、 屈んだ先生と目線が近くなる。]
せんせい、どうしたの?
[だんだん、蒼い目が丸くなる。>>184 世界のいろんなもの。 蜂蜜より、おいしいものも。 本の中でしか見たことのない海に、たくさんの船も。
ぜんぶ、ぜんぶ。]
(216) 2015/10/12(Mon) 00時頃
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せんせいと、一緒に?
[きっと楽しいと思う。 蜂蜜を食べた時みたいに、 おいしい葡萄を一粒もらったときみたいに ふにゃりと顔が緩んだ。 先生と一緒なら、きっとなんだって楽しい。]
うん!
[大きく頷いたわたしの蒼い目は、夜空の下で 昼間のように、輝いて。 ぎゅう、もう一度放す前の手を強く強く握ったんだ。]*
(217) 2015/10/12(Mon) 00時頃
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― 現在、畑の隅っこ ―
[朝食を終えてから、荷づくりの終わった荷物を 部屋に転がしたまま。
向かったのは、畑の隅っこ。 小さく盛られた土の山の前で、しゃがみこんで。 いつものように声をかける。]
おはよう、とりさん。 もうすぐわたし、ここにあまり会いにこれなくなるんだ。
[旅立った後もおねえちゃんみたいに遊びにはこれるけど。 これまでみたいに来れないのは、確かだから。]
(222) 2015/10/12(Mon) 00時半頃
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今日は、鐘が鳴らなかったなー……。
[昨日とっても楽しかった分だけ。 ぽっかりと穴が開いたような気持ちになってしまう。
変わらず寝坊助なアヤワスカの元気な声。>>50 ヒナコとクラリッサがユージン先生と作った、 きらきらの宝石みたいなフルーツタルト。>>4 星空に咲いた光の花。>>1:419 その星空を唄う、ミツボシの声。>>46
今日はみんな支度したり、ばたばた、ばたばた。 気になるのは、朝から見ていないコリンの姿。 幼い頃、どんくさいわたしの手を引っ張ってくれた。 おそろいの怪我をたくさん作った。 わたしが悲しい時は、抱きしめてくれた。>>78]
(223) 2015/10/12(Mon) 00時半頃
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[コリンは、どの先生と並んでここを出て行くんだろう。 わたしが井戸の傍で泣いてたのを、 コリンに聞かれてたなんて知らなかったから。>>82
包帯ぐるぐる巻きの怪我した手で過ごすコリンに 着替えとか食事の片づけを、隣で手伝いながら。 エフ先生のところへなんて言うこともできなくて。
包帯が取れた時は、すごくホッとしたのを覚えてる。]
(224) 2015/10/12(Mon) 00時半頃
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[呼ぶ声が聞こえて振り返る。>>225 そこにいる先生の姿を見れば、 蒼い目を輝かせて立ち上がった。]
エフせんせい! おはよう、今日は"ふつかよい"は大丈夫?
[エフ先生に畑の隅っこに山雀を埋めたこと>>54 伝えたあの時は、まだ顔が歪んでしまって。 俯いていたら、大きな手で頭を撫でてくれた。 ちらと顔を上げたら掌の向こうに 覚えのある先生の変な顔が見えて、また俯いてしまった。
今なら力の話をする度に変な顔をしてた先生の気持ちが わたしにもちょっとだけ、わかるのかもしれない。]
(254) 2015/10/12(Mon) 01時半頃
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[見上げたエフ先生の顔色はいつもよりいいけど、 ちょっとだけ表情がかたいような気がする。
なんだろう。 すごく大事なお話なことはわかるから、 瞬きもせずに先生を見上げた。]
──……一年前のこと?
[なんで、先生が後悔するんだろう。 山雀を治したいって、頼んだのはわたしで わたしが力を使ったのとは違ったけど、治してくれた。
わたしはまだ、先生の過去も。何を後悔してるかも。 知らないままだから、不思議な顔をしてしまう。 けど。]
(255) 2015/10/12(Mon) 01時半頃
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せんせいと、一緒に?
[びっくりして、ぽかんと口を開いてしまう。 昨日の夜と同じ言葉を繰り返して、 ようやくエフ先生の言葉が理解できて慌ててしまった。
どうしよう、どうしたらいいんだろう。
昨日つないだ手を握った指先が、ぎゅうと服の裾を掴む。 たぶんもうすぐ、ユージン先生がここにくる。>>243 とっておきの林檎を、一緒にとろうって。 笑顔でわたしは、もう一度大きく頷いたから。]
(256) 2015/10/12(Mon) 01時半頃
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[狼狽えるわたしは、それでも嘘なんてつけなくて。 ぐるぐる、ぐるぐる。 真っ白になりそうな頭で考える。]
……わたしね、 ユージンせんせいに、昨日一緒に行こうって言われて。 うん、って言ったんだ。
[色んなものを、ユージン先生と見たらきっと楽しいって。 うきうきと一晩中それを考えて眠りに落ちたんだ。
今のエフ先生の顔は変な顔じゃなくて、 はじめて見る、とってもとっても真剣な顔で。 苦しくなる。 言葉が、喉でつっかえてしまって、続かない。]
(263) 2015/10/12(Mon) 02時頃
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[わたしは、誰と一緒に行きたい? わたしは、"おしまい"までの時間をどう過ごしたい?
思い出すのは、何度も何度も掬った水。 小さな命のように零れ落ちてしまう水は、 きっと先生より先に"おしまい"を迎えるわたし。]
(264) 2015/10/12(Mon) 02時頃
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[わたしは、わたしの"おしまい"を迎える時に ────誰の手の中に、いたいんだろう。]
(265) 2015/10/12(Mon) 02時頃
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[服の裾を握り締めていた指先から、力が抜ける。 すとんと落ちてきた気持ちを、 つっかえそうになる言葉で、ゆっくり形にする。]
────…わたしが、
[最期の最期まで遊びにきてくれた山雀のように、 怪我をしたら、治してと何度もせがんだ。
治療の力で命を縮めてしまうってわかってから 怪我をしないようにしたら、 撫でてもらえることも減ってしまって。 代わりに、"おまじない"をせがんだのは。]
(296) 2015/10/12(Mon) 03時半頃
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わたしが笑ったら、 エフせんせいもまた、笑ってくれる?
[エフ先生に治してもらった時、 わたしが笑顔なのは痛いのがなくなったのもあるけど。 わたしが笑えば、エフ先生もつられて笑ってくれるから。
けど。山雀を埋めた時は、笑えなかったから。 わたしの記憶の欠片の先生は、あの時の変な顔のまま。
まるで、鏡のような先生を。わたしは。 あの時のままには、したくない。]
(297) 2015/10/12(Mon) 03時半頃
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わたしは、 もっとせんせいに笑って欲しい。 もっとせんせいに撫でて欲しい。 もっとせんせいのことが知りたい。
(298) 2015/10/12(Mon) 03時半頃
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[澄んだ蒼い目で、先生を見つめる。 命の折り返し地点を越えて、 くすみはじめた色は、ちょうど昼下がりの空の色。
この色が、沈んでしまうまで。]
エフせんせいと、一緒に行きたい!
[気持ちのままに紡いだ言葉が、 吹き抜けた風に乗って、昼下がりの畑に響いた。]**
(299) 2015/10/12(Mon) 03時半頃
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[聞き返してくる、エフ先生の声。>>318]
わたしは、エフせんせいがいい。
[だからもう一回。黒い先生の目を見て繰り返す。 なんとなくまだ続きがあるような気がするのに、 エフ先生の口からそれは出てこない。]
……だめ、かな。
[ちょっとだけ、不安になる。 けど。]
(356) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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[ユージン先生と聞いて、蒼い目を丸くした。>>319 そうだ、どうしよう。 また慌てだしてしまいそうなわたしを止めたのは、 今度こそ聞こえた、言葉の続きと。]
────うんっ!
[わたしが驚かそうとした時みたいに笑う先生の顔に、 ぱっと笑顔になってエフ先生に抱きついた。 エフ先生が、わたしだけの"せんせい"になる。 そのことがとってもとっても、嬉しくて。]*
(357) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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……ひゃっ! ユージンせんせい?
[いつから、そこにいたんだろう。>>301 ユージン先生の声にびっくりして 抱きついていた手を放して、振り返る。]
あのね、ユージンせんせい。 わたし…───
[エフ先生と行きたいって、言わなきゃ。 でも、ユージン先生の方がちょっと早くて。 わたしのさっきの声が聞こえちゃったこと、 わかってしまった。
ユージン先生の風が、通り抜ける。林檎が落ちる。 ぶわっと小麦色の髪を巻き上げる風はやっぱ優しくて ほんのちょっとだけ、さみしさが頬を撫ぜた。 蒼い空に弧を描いて飛んできた林檎を エフ先生と一緒にわたしも受け取って。]
(358) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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[美味しそうな林檎に、わたしは笑顔になる。]
ありがとう、ユージンせんせい! うんっ。いっぱいいっぱい笑顔にするよ!
[ユージン先生の手が、ちょっと上がって。 そのまま下ろされる。 そして、ユージン先生の少女を迎えに行く背中に、 わたしは一歩だけ前に足を踏み出した。]
(359) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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あのね、せんせい!
わたしね、今のせんせいを見て こわいっておもう人は、いないと思う!
それでも、もしこわがらせちゃったら…… そのときは、昨日してたみたいに "ごめんね"って謝ればいいんだよー!
[きっとその気持ちは、今の先生なら伝わると思うから。 ちょっと小さくなった背中に、わたしの声は届いたかな。 届かなくてもきっと、誰かが ユージン先生にそれを伝えてくれるって。信じてる。]*
(360) 2015/10/12(Mon) 20時頃
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[ユージン先生の背中を見送ってから。 エフ先生の隣に戻ってくれば、 仏頂面に戻ってしまったエフ先生。>>320 ちょっとだけがっかりするけど、 ずっと笑ってにこやかなエフ先生も、想像できない。
でも少しずつ、 わたしが笑う時、一緒に楽しいって嬉しいって思って 笑ってくれるようになったらいいな。]
せんせい、林檎一緒に食べよう!
……あ。 もうせんせいって呼んじゃ、だめ?
[盟約したら、"従者"になるんだっけ。 おねえちゃんも、オズワルド先生を名前で呼んでた。 すぐに変えなきゃいけないのかな。 林檎を持っていない方の手を伸ばして、 エフ先生の空いてる手をぎゅうっと握った。>>321]*
(369) 2015/10/12(Mon) 20時半頃
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[目くばせする先生の目は、もう落ち着いていて。 いつものように、とても優しい。>>392 握り返してくれるあったかい手に、嬉しくなる。]
呼びたいように……?
[じゃあちょっとだけ、 おねえちゃんの真似をしてみようとして。]
エフ……せんせい。 へへ、やっぱせんせいって呼ばないと落ち着かないや。 これまで通りでも、いい?
(423) 2015/10/12(Mon) 23時頃
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[落ち着かないのが半分。 残りの半分ははずかしいような照れるような くすぐったさに胸の辺りがふわふわする。 これをなんて言えばいいかわからなくて、 今は笑って誤魔化しちゃおう。]
せんせいも変えなくていいけど。 たまにでいいから……クリスって呼んでほしいな。
[コリンみたいに。仲良しの呼び方で。]
(424) 2015/10/12(Mon) 23時頃
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[林檎を持ったまま手を引かれて、並んで歩き出す。 隣で授業中みたいな、ちょっと硬い先生の声。>>395 落ち着いている、いつもの先生。
真面目にお話する先生は、贔屓するように見えないけど それってわたしが特別ってことかな。 だったら、嬉しくて笑顔がこぼれる。]
わたしね。 むずかしいこと考えるの得意じゃないし、 がっこうを出ていくのも、おしまいがくるのも。 そういうものなんだって思ってて。
わたしは誰と並んでがっこうから出てくのかなって、 ずっとぼんやりとしか考えてなかったんだ。
[がっこうの中でゆっくり流れる時間に、 ぼんやりしたまま"とくべつなひ"を迎えてしまった。 どんくさいわたしが誰かを選ぶなんて思ってなかった。]
(439) 2015/10/12(Mon) 23時頃
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でもさっき、エフせんせいがいいって言ってから。 エフせんせいが、わたしだけのせんせいになるって そう思ったら、とっても嬉しかったんだ。
せんせいがわたしだけ見てくれるならもっと嬉しいし、 これから、いっぱい構ってほしい!
[そうして山雀みたいにおしまいを迎える時は、 先生の手の中にいたい。 なんとなくだけど続く言葉をそっと飲みこんだのは、 先生の今の顔を変えたくはなかったから。]*
(441) 2015/10/12(Mon) 23時頃
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― 物見小屋 ―
[階段を上がれば、気持ちい風が髪と服を攫う。>>408 あの日みたいに見下ろした裾野の街は、賑やかで。>>#1 もうすぐあそこに行けたりするのかなって思うと 心がわくわくと飛び跳ねた。 先生の隣に並んで座り林檎を齧ろうとして、 向けられた黒い瞳に、開けた口をそのまま閉じた。]
なぁに、せんせい?
[蒼い目をきょとりとする。 またあの、真剣な顔だ。きっと大事なことなんだろう。]
獣の姿の、せんせい……。 どうなるかわからないって、 どういうこと?
(447) 2015/10/12(Mon) 23時半頃
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[がっこうでは先生はみんな いつもわたし達と同じような姿してるから。 モスキュート先生だけちょっと違うけど、 エフ先生の元の姿も、上手く想像なんてできなくて。]
せんせいって、獣だとどんな姿をしているの? どうなるかわからなくても…… わたしは、わたしの知らないせんせいを、 もっと知りたい!
[教えてくれるかな。 わたしはまた、せんせいの言葉が理解できるまで 時間がかかるかもしれないけど。
元の姿になった先生に驚いて、林檎を落としちゃったのは たぶんもうちょっと後のお話。]*
(450) 2015/10/12(Mon) 23時半頃
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― 昨日のおくりものと、3分の魔法 ―
[昨日の朝食後。 アヤワスカの声が食堂に響いたんだ。>>284
なんだろうと首を傾げていれば アヤワスカの傍にはモスキュート先生。>>328 パティシア先生も近くにいたのかな。]
………わぁ! きれい!
[真っ白なドレスに歓声を上げる。 たまに書庫でモスキュート先生の周りを>>0:18 ふわふわしてる綿毛を集めたみたいに、真っ白な。
くるりとその場で一回転すれば、裾がふわりと広がって すぐにドレスは消えてしまったけど。
次々に変わるみんなの、色とりどりのドレスに 拍手をするのも忘れて蒼い目を輝かせていたんだ。]
(463) 2015/10/13(Tue) 00時頃
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アヤワスカ、ありがとう! わたしも大好き!!
[アヤワスカを、ぎゅうと抱きしめるけど。 贈り物をしたアヤワスカのドレス姿は見ていない。 ヒナコもミツボシも、そのことには気づいたみたい。 どうにかならないかな。 モスキュート先生を振り返ったら、音がして。>>331 今度は6人全員揃っての魔法の時間が、 もう一度やってきた。]
(464) 2015/10/13(Tue) 00時頃
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[ミツボシからのおくりものに合わせて、>>456 お花のおひめさまみたいなヒナコが呼ぶ声>>374 わたしはドレス姿のアヤワスカの手を取った。>>422 こういう時は、なんて言うんだったかな。 前に読んだ本のせりふを思い出して。]
……一曲おねがいできますか、おひめさま?
[わたしもドレス姿だけど、いいよね。 くすくす笑いながら、 ドレスの裾を広げて、くるくる。くるくる。 みんな大好きって抱きついて手を取って、 3分の夢のような魔法は、わたしの宝物になったんだ。]*
(465) 2015/10/13(Tue) 00時頃
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[口ごもる先生に、身を乗り出してしまう。>>518 ユニコーンって一度本で読んだことがあったはずだけど すぐには思い出せなくて。
どんな姿をしてるって書いてあったかな。 確か、あれは──── ]
────…エフ、せんせい?
[ぼとん、と落ちた林檎が床を転がる。>>523 目の前に現れた姿にびっくりしすぎて瞬きもできない。]
(547) 2015/10/13(Tue) 22時半頃
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[だって、先生のいつもぼさぼさな髪は真っ黒だし。 目だって真っ黒だし。 不精髭まで生えてるし、ってそれは関係ないかもだけど だって、だって、だって。
今、わたしの前にいるのは 頭から尻尾の先まで、眩しいくらい真っ白できれいな馬。 ううん、その額に折れた角がある──ユニコーン。]
ほんとうに、せんせい………?
[頭の中に響いてくる声は、落ち着いた先生のもの。 わかってても、すぐには信じられなくて。 わたしの方に踏み出す蹄にびくっと肩が跳ねて 近付いてくる鼻先にぎゅうと思わず目を瞑ってしまった。
甘えるように擦り付けられた鼻頭はちょっと湿っていて 啼く声が物見小屋に響く。 かかる吐息に、ドキドキと騒がしい心臓をおさえて ゆっくりと目を開いた。]
(548) 2015/10/13(Tue) 22時半頃
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[頭の中に響く声。>>533 真っ白な睫毛が揺れて、 優しくて深い紺色の瞳がわたしを見つめる。
"少女"のわたしは、知っている。]
ゆるします。 わたしが、わたしの"おしまい"を迎えるまで──
[伸ばした手で、真っ白な毛並みを撫ぜ 蒼い目を細める。 それからほんの少し身を乗り出して、 湿った鼻先にゆっくりと、くちびるを 押し当てた。]
(556) 2015/10/13(Tue) 23時頃
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[小さく囁いてから、くすぐったそうに笑って。 今度はその首に抱きついて、白馬に頬ずりした。 がっかりなんて、とんでもない。
まだ心臓はドキドキしてるし、 ひなたぼっこしすぎたみたいにぽかぽか頬が火照る。]
大好きだよ、せんせい!
[やっぱり、すぐには主になんてなれなくて。 今度は物見小屋いっぱいに響くくらい 大きな声と笑顔で告げたんだ。]*
(559) 2015/10/13(Tue) 23時頃
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