212 冷たい校舎村(突)
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[ その姿 が、あんまりに さみしく て ]
(102) 2017/03/18(Sat) 17時頃
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──── 理一 !
(103) 2017/03/18(Sat) 17時頃
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── 屋上 ──
[ 叫んだ。
遠く 遠く の地面なんかじゃなくて、 こっち、振り向いてほしくて。
なのに、出てきたの、名前だけだった。
理一、寒いじゃん、ここ。バカじゃねえの。 屋上も、白くて、俺は、あとを追いかけるように、 足あとをかさねるように、おまえの背中を追った。]
(104) 2017/03/18(Sat) 17時頃
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[ やっぱり、今もさ、 泣きそうなの、俺のほうだったのかな。
大丈夫 なんて言った割に、 俺、やっぱり、全然大丈夫じゃねえし、 動揺、しまくりだった。泣きそうだった。
おまえが死ぬの、こええよ。]
(105) 2017/03/18(Sat) 17時頃
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[ ガラス片を避けるのに と、 ともだち の貸してくれたブレザーは、 今度は雪よけになりました。
吐いた息は、白く目に見えて、 鼻はぐずついて、吐息さえも震えていたけど、
俺、せいぜい、まっすぐに、 少し先、この世界の瀬戸際に立つ おまえを見つめて、 言うことしかできない。]
おまえのこと、迎えに来た 理一
[ こっち、向けよ。言いたいこと、死ぬほどある。*]
(106) 2017/03/18(Sat) 17時頃
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[ 空を背に、おまえ はやっぱり、笑ってて、 俺ばっかりが、駄々っ子みたいだ。
詰まった距離>>117に、 ちっとも、安堵なんてできないし、 おまえ、そんなのってないじゃん。]
── 嫌だ
[ って、俺、それだけがすぐに、声になって、
ゆっくりと息を吐いて、 言葉に滲む水気を逃がす余裕もない。
次から 次から あふれてくるのは、 きっと、感情のむきだし。]
(120) 2017/03/18(Sat) 19時半頃
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他の奴らも、来るから おまえのこと、迎えにくるから
おまえ、古辺に怒られるから めっっちゃ怖いから、あいつ
覚悟しとけよ ほんと もう さあ……
[ 声は段々、震えて、歪んで、
おまえがどんなに笑ってても、 俺はいよいよ泣いてたよ。悲しい。]
(121) 2017/03/18(Sat) 19時半頃
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おまえ、昨日、言ったじゃん この世界の主に聞くしかねえ って
…… なあ、
同じもの になんか、なれなくても、 一緒にいたい って、
同じもの に、なれたって、 ”みんな”と一緒に生きてけないんじゃ、 意味なんかないって、
…… 思ってくれたんじゃ ねえの *
(122) 2017/03/18(Sat) 20時頃
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── でも、ただの確認でも、 俺たちのこと、呼んでくれて、うれしかった
[ そんなこと、 そんな、ことしか言えないまま、 ── 俺は、おまえ の 秘密 を知る。
それは、俺には想像もしなかった世界。 怒ってへこんでばっかの俺には、 言葉で説明されたって、遠く 遠くにある秘密。
いつか、”もしも”を想像したように、 俺はやっぱり、きれいな対応など分からないまま、
きっと、一瞬、目を見開いて、 だけどまた、表情は歪む。]
(158) 2017/03/18(Sat) 23時頃
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わかんねえよ 俺の知ってるおまえ、最初から、そうだった 変わったやつだなあって、思うこともあったけど、 だけど、それが、理一 だったんだよ、俺には
浮いてたって、救われたよ おまえが、笑ってんの見てると、 なんとかなるような 気がして、
── おまえ、周りのことだって、気にして くれて
[ 言いながら、思う。 ── あ。
それが、負担なんじゃないの って、 そうして生きることは、消耗するだろうと。 言ったのは、俺だった。]
(159) 2017/03/18(Sat) 23時頃
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[ 俺、”知ってる”。 ずうっと、ずっと、これが続くのか って。 そう思った瞬間のこと。
これもまた、ただの 想像 ではありますが、 そのことに気がついてしまったとき、
俺、止められない と、思った。
おまえ が、包丁取り出したときも、 やっぱり、たぶん、俺は黙って、 ただ、情けない顔してたんじゃねえかな。
思い出してたんだ。 帰れよ って、おまえ、言ってくれたなあ って。]
(160) 2017/03/18(Sat) 23時頃
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[ やっぱり、最後まで、俺にあったのは、 怒り というより、 悲しみ だった。
そうしてでも帰す というおまえの決意を、 俺は、受け止めたい とも、思ったし、
別に、それが、間違いだったとしても、 その気もち、もらえたから、充分だから、 俺、もう、ここで終わりでも、いいや。 ]
(161) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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[ ── なんて、きっと後悔にしかならない終わり に、
なる 寸前、声>>148が、影>>151が、飛び込んで、 なんだか、凍っていた時間が、動き出したようだった。
── あ、来てくれた って、思ったし、
俺のことまで突き飛ばして、 胸ぐら掴んで、拳を振り上げる古辺を見て、思う。
やっぱり、怖い って、バカみたいに。 あ、ここは寒いな って、 麻痺しかけていた感覚が、戻る。]
(162) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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[ いつもどーり も、なにもかも、 削げ落ちた みたいな、勢いに、 俺は、あっけにとられながら、 とられたから か? 涙も引っ込んで、
おまえ、俺のブレザーどこやったんだよ とか、 ブレザーごと落とせばいいみたいな屁理屈ねーぞって、
代わり みたいに、落ちてる上履き>>148を、 なんとなく、手繰り寄せながら、
俺はまた、この世界をつくった友人に、歩み寄る。
見下ろす みたいな格好に、なっただろうか。 「 あのさ 」と、口を開く。
さっきよりも、言葉は、 きちんと話せている ような、気がした。]
(163) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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俺、死にたかった
これから先ずっと、 みんなが当たり前に知ってる、 フツウの幸せもわかんないまま、 ずっと、生きてくのかって、考えて、 生きんの、やめたかった
勘違いでも、なんでも、 あのメール、書いたやつのこと、 一瞬でも、知ってるって、思った
(164) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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でも、死にたかったくせにさ、 ずっと、帰りたくもなかったくせに、 おまえに、帰れ って言われて、 生きろ って、言われた気がして、
なんか、ちょっと、うれしかったんだ 単純だけどさあ、 そう言ってくれるやつが、いるなら、 もうちょっとくらい、生きてもいいかなって
[ ふ と、こぼれた笑みは、 きっと、自嘲めいたものなんかでもないし、 さすがに、少し、照れくさくて、一瞬目を逸らす。]
(165) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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だから、俺、俺は、俺 ……、 たぶん、俺のために、生きて、帰ってほしかった 帰ってきてほしい って、思ってる
もうちょっとだけ、生きようかなって、 そう思った、俺のために、 一瞬でも、自分を重ねて、見た、 この世界の主 には、生きて ほしくて ともだちとしても、単純に、生きて ほしくて
── だから、言いにきただけなんだ
(166) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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理一、一緒に帰るぞ
(167) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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[ まっすぐに向けた視線は、噛み合っただろうか。
「 それだけなんだ 」と、俺は呟いて、 ただ、まっすぐに、おまえを見ていた。
── それが、想像と共感を繰り返した 俺の結論で、
きっと、やっぱり、 引きずってでも、連れて帰るとかさ、 そんなこと、できないし、したくもねえし、
俺には、これ以上のことは、言えない と思った。
これ以上、言うべきことなんて、
……ああ、そう。 それと、]
(168) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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俺、ここに来てさ、 いなくなってもいいって、 思わなかった。 たぶん、一度も
最後まで、ここにいさせてくれて、ありがとう
(169) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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[ そう言って、俺は、口角を上げて、── 笑った。* ]
(170) 2017/03/18(Sat) 23時半頃
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[ 理一、おまえ、聞いてきたよな。 おまえが泣いたら、びっくりする? って。
びっくりするよ って、俺、言ったけど、 今、声震わせてるおまえのこと見て、 泣いてる、おまえのこと見て、
つられてるのか、嬉しいのか、 ほっとしてるのか、なんだか、 わかんねえまま、俺もなんか、 また、泣きそうだ って、思ったりも、したけど。
びっくりは、しなかったんじゃねえかなあ。
思ったほど、なにもかも、 ダメになるわけじゃ、なさそうだ。]
(204) 2017/03/19(Sun) 15時頃
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バカ、いいも、なにも、 俺らが迎えにきたの、 全部、何もかもひっくるめて、 俺たちが、今まで一緒に過ごしてきた、 おまえ なんだって、理一
[ 俺は、多分泣きながら、笑ってて、
帰ろうぜ、さみーよ って、 おまえの世界 に、やってきたときみたいに、 身体を震わせて、もっと寒そうな古辺に気づいて、 あいつのブレザー、被せるみたいに返しながら、
今度はさ、座り込んだままの理一に、 俺が、右手を差し出して、 そろそろ立てば? 濡れるだろ って、笑った。 *]
(205) 2017/03/19(Sun) 15時半頃
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うるせえ 誰のせいだよ アホ、へたくそ
[ おまえ、意外と表情取り繕うの下手だなって、 その新発見は、なんだか、愉快だったし、
掌 にかかる体重を、引っ張り上げる瞬間、 失いかけていたものの重みに、ぞっとする。
けど。 今、掴んでいる手は、 きちんとあたたかい、人の温度だ。生きてる。
その、温度にも、重みにも、 よかった って、あふれそうになるし、 きっと、これからもずっと、覚えてる。思い続ける。
生きようかなって、生きていけるかもって、 確かに思えた瞬間 の記憶として。]
(210) 2017/03/19(Sun) 20時半頃
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[ だから、
ここに来たときの、俺みたいに、 みっともなくズボン濡らした おまえ を見て、 俺、笑いながら、
一度指摘されるとさ、やっぱり恥ずかしいから、 おまえの笑い声>>208に、紛れこませて、言っておく。]
ずるくても、クサくても、なんでも いいよ それで、おまえ と、帰れんなら
[ ケラケラと笑って、 こっ恥ずかしい空気もなにも、吹き飛ばしてしまおうぜ。
上履きを左手に携えたまま、 俺、入間 のほうを振り返って、手を振り上げた。]
(211) 2017/03/19(Sun) 20時半頃
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さみいだろ! ほら!
[ 返す って、笑う俺も靴下なんだけどさ。 ほんとふざけんなよな、寒いというか痛い。
とにかく、フツウにはしゃいでる高校生みたいに、 右手は、じゃれあったまま、 俺は、一歩、二歩と、白を踏み分け、入間に近づいて、 さっさと履けーって、手を差し出して、 ── 聞こえた声>>209に、振り返った。
その口の動きを読み取るのに、 きっと、1秒だって、かからない。
目が、合う。俺は、まばたきを一度だけして、目を瞠る。 それから、口を大きくあけて、笑った。
── その笑みは、きっと 幸福に満ち満ちて。*]
(212) 2017/03/19(Sun) 20時半頃
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[ 肩ではためくブレザー>>226は、ヒーローめいて、 屋上に吹き荒ぶ風を受けて、揺れた。
なんせ、ここは、屋上。その淵。 遠く 遠く の地面を見下ろした一瞬、
それから、俺は振り返って、]
── おまえ、
[ 崩れた階段を見たときも、 そのまま、手を引かれたとき>>239も、
我慢していた言葉を、吐く。]
(241) 2017/03/19(Sun) 22時半頃
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ほんっと、最後まで、めちゃくちゃな──、
[ 校舎のほうからは、不穏な音しか しなくて、 呆れたような、怒ってるような、 そんな顔をしていたはずが、
いつの間にやら、俺、 脱力した みたいに、笑っていた。
それから、手を出す。「 はい 」って。両手。 右手、まだ、つながってたかな。
それから、左手は、入間のほうに。]
(242) 2017/03/19(Sun) 22時半頃
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手、繋いでりゃ、はぐれねーだろ
[ なんで って、疑問はあった? 俺は、当たり前 って顔で、そう言った。
大丈夫、この世界のかみさまが、 大丈夫 って、言ってんだからさ。
怖くなんて、ないよ。
そういう気もちは、 へらり と、返した笑みに込めた。]
(243) 2017/03/19(Sun) 23時頃
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[ 不思議と、本当にさ、恐怖はなかった。
あ、いや。高所への恐怖 くらいは、若干。 でも、なんでかな、飛べ って言われて、 そこに、抵抗はなかったよ。だから、みんな一緒に。]
── 帰ろう
[ 振り向いて、手を差し出した そのままの向きで、 手は取ってくれた? 心配 なんかじゃ、ねえけどさ。
俺は、体重をぐらりと後ろに倒す。 きっと、安心しきった顔をして、 世界が傾いた。冷たい空気が、頬を掠めて、
それから、見上げた 空に、 ひかり が、見えたような、気がした。*]
(244) 2017/03/19(Sun) 23時頃
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