131 SACRED JUSTICE ―闇の正義と光の祝福―
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おじさん……!
[暗殺者の言葉>>176に、願いは通じたと安堵する。 しかしそれは間違いだったと、すぐに判明した]
――え?
[危うい均衡を保っていた右手に、加えられるもう一つの力。 それは狙いを過たず、暗殺者の胸に突き立った>>177]
お、おじさ――――んぐっ
[呆然と、開けたり閉じたりしていた口に、小瓶が捻じ込まれる。 不意を突いたように流れ込む液体に、少女の喉が鳴った]
(181) 2014/08/23(Sat) 19時頃
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かはっ、あっ……
[まるで急激に脳へ血が廻った、そんな錯覚の後に、信じられないほど思考が澄んでいく。 しかしそれに喜んでいられる状況ではなかった]
おじさん! やだ、なんでこんなこと……!
[ようやく自由になった手で、紅色の溢れる胸元を抑える。 けれどそれ以上は何も出来ず、おろおろと周囲を見回す]
(182) 2014/08/23(Sat) 19時頃
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だめだよおじさん、それは自分で伝えてよ……!
[ぶるぶると首を振る。 記憶を掻き乱す感覚はもうないけれど、そんな約束をする訳にはいかなかった]
ねえ、おじさん起きて! 誰か助けて……!
[必死に周囲の兵へ向け叫ぶ。 しかし、闇の衣纏う少女と表舞台に立つことのなかった暗殺者へ、手を貸す者は誰もいなかった]
どうすればいいの? どうすれば――
(183) 2014/08/23(Sat) 19時頃
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――――――
[その時。 少女は初めて、膨大な預言書の頁を、自らの意志で開いた。 古代語は意識の中で自動的に翻訳される。 それでも大半は意味のわからない記述を、一つ一つ読み解いていく]
……あった。 88ページ32行。 "彼の者にしか聞こえぬ声で悪魔は囁いた、 汝の欲望に忠実たれ、それを咎める者は汝以外にいないのだから"
――囁難の相《フェイズ・ウィスパー》
(184) 2014/08/23(Sat) 19時頃
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[意識のチャンネルを親友へ合わせる。 彼女が今どんな状況かはわからないけれど、少なくともこの状況を伝えなければ後悔する。 だから見えない糸の繋がる先へ、力の限り叫んだ]
(185) 2014/08/23(Sat) 19時頃
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早く来て! お父さんが大変なの!!
[長々と説明する余裕はない。 場所は思念を地図代わりに送り、後はどうにか間に合ってくれと願うのみ**]
(186) 2014/08/23(Sat) 19時頃
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……シーパル?
[兵士たちのどよめきの変質で、状況の変化に気が付いた。 顔を上げ視線を巡らせれば、そこには待ち望んでいた白銀の少女>>189]
来て、くれたんだ……!
[彼女が奏でるのは癒しの音色>>191。 闇に属する者には縁遠きもの。 けれど、血を流す暗殺者の傍を護るように舞う羽根>>190に、今だけはその力が正しく働くことを祈った]
(192) 2014/08/23(Sat) 20時半頃
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シーパル!
[演奏が終わる頃、彼女は力尽きたようにへたり込んだ。 慌てたようにその傍へ駆け寄る]
ごめんね、無理させちゃって。 あたしが悪いのに……。 あたしのせいで、おじさん、こんなに酷い傷を負って。
[何かを堪えるように俯く。 ぐるぐる巻きの黒衣の下で、傷口が疼くような気がした]
(193) 2014/08/23(Sat) 20時半頃
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ええ……そうね。
[王の座に近付けない以上、この場にいる意味はなくなった。 シーパル>>202の提案に頷いて、その場を離れることとする。 ヒロに気遣わしげな視線を向けるも、周囲の兵が彼と同陣営である以上、ここから動かさぬ方が安全だろう]
(204) 2014/08/23(Sat) 21時半頃
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[そして、シーパルと共に逃げる途上]
……あたしね。
[決意を籠めながら訥々と、少女は語り始める]
シーパルとまた逢えて良かったと思ってる。 ……すごく、嬉しかった。
だから、これからもずっと一緒にいられたらって思うけど……。 でも。 誰かの命を貰って生きるなんて、そんなことはやっぱり出来ないよ。
[ゆるり、首を振る。 先程あったことは明言はせずとも、察せられるだろうか]
(206) 2014/08/23(Sat) 21時半頃
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だからね……それよりも。 あたしは、あたしの《希望》を、みんなに伝えたい。 みんなに、本当の「信じているもの」を取り戻して欲しいの。
……それが、"あたし"がこの預言書を手にした理由だと思うから。
[そしてどう?と伺うように、シーパルの方を見た]
(207) 2014/08/23(Sat) 21時半頃
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[シーパルと父との一時を、声は聞こえずとも見守った後。 共に城の出口へ向け駆け出しながら、言葉を交わす。 シーパルの承諾>>209に、顔を綻ばせ]
ありがとう。 あたし一人では無理かもしれないけど……二人なら、きっと。
[言葉を切る親友。 そして投げ掛けられた問いに、一呼吸分の間を置いて答える]
(215) 2014/08/23(Sat) 22時頃
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しないよ。
[眼差しは真っ直ぐに、親友の真紅の瞳を見詰めていた。 彼女の言葉の裏に、如何なる思いがあるかはわからないけれど]
だって、ここでこうしているのだって、まるで夢みたいなんだもの。 もう一つ、夢を叶えてから逝けるなら――それは本望だよ。
[浮かぶ表情に悲壮さはない。 むしろ、命を賭した願いにそぐわぬ、無邪気で純粋な笑みがあった]
(216) 2014/08/23(Sat) 22時頃
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[二人の逃げる先、もしも野外の劇場があったなら。 そこが少女の、最後の舞台]
(217) 2014/08/23(Sat) 22時頃
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シーパル……。
[共に散る。 その言葉>>229には眉を下げるけれど、先に決断した少女は、止める言葉を持たなかった。 手を握り、真っ直ぐに向けられた決意>>230へ。ただ、頷く]
(232) 2014/08/23(Sat) 22時半頃
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― 最期の舞台《ラストステージ》 ―
[そうして二人、辿り着いた舞台で。 少女は裾をつまみ、無人の観客席へ一礼すると、その場でくるりと回りながら唱えた]
黒衣の預言書《ドレスコード》、モードチェンジ――正典進行《カノンコード》
[少女の言葉に応じ、黒衣《ドレス》がその形態を変える。 引き摺る程のロングドレスから、裾と袖の短いワンピースへ。 それは親友の纏う服とも、どこか似た意匠だった]
(236) 2014/08/23(Sat) 22時半頃
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[減った分の布地は紙へ変じる。 ただし今までのようなバラバラの紙片ではなく――横に長く連なった蛇腹折として]
変奏《トランスミューズ》!
[そして紙に記された古代文字もまた、形を変える]
[五線譜に並ぶ音符として]
(237) 2014/08/23(Sat) 22時半頃
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預言書の内容を楽譜に変換したの。
題して――協奏曲最終楽章、希望の正典《カノン・スペランツァ》。
[ぱたん。蛇腹折を両手に挟み閉じると、それをシーパルへ向けて差し出す]
共に――
……いえ。
(238) 2014/08/23(Sat) 22時半頃
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一緒に演奏《うた》おう、シーパル!
[微笑みながら、親友を誘う。 この身に血が流れていたなら、きっと頬が紅潮していたことだろう]
(239) 2014/08/23(Sat) 22時半頃
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[親友が黒き翼を広げ、祈るように手を組んだ。>>251 淡い光の加護が、まるで愛しい娘を見守るように、二人を包む。>>252]
[親友が手にしたのはヴァイオリン。>>253 指揮者はいないから、二人で目配せして、息を合わせ。 この街へ、国へ、世界全てへ伝われと、願うように歌い始める]
(262) 2014/08/23(Sat) 23時頃
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"はじめに闇があり そして光が生まれた"
"闇の中に震える者たちは 光の眩しさに手を伸ばした"
"光射す方角へ進め さすれば救いは得られんと"
"空を飛べぬ人間は そこに辿り着けぬというのに"
(263) 2014/08/23(Sat) 23時頃
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[少女に音楽の心得はない。 歌うのが好きだったとか、その程度。 それでも、他に想いを伝える術を持たなかったから。 親友の、豊かな音色へ合わせるように。 旋律へ変換した情報で体を操り、温度のない喉を震わせ謳う]
(264) 2014/08/23(Sat) 23時頃
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"苛烈なる光に灼かれた者"
"終わらぬ祈りに疲れた者"
"得られぬ救いに苛立つ者"
"立ち止まり周りを見てください"
"心安らぐ闇は いつもあなたの傍にある"
"日傘のように柔らかな影を あなたにも差し出してくれるでしょう"
(266) 2014/08/23(Sat) 23時頃
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[ぐらり。傾いだ体を、上から引っ張るような力が受け止める。 薄く目を開けて、少女は気付いた。 ――浮かんでいる。 否、黒衣が無理矢理にでも少女を立たせようと、空中にその位置を固定しているのだ。 それはまるで、黒い翼に体を支えられているように見えたかもしれない]
(267) 2014/08/23(Sat) 23時頃
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"あるいは希望を亡くしたという者も"
"気付いてください 温かな眼差しに"
"それは遥かな高みにあるのでも 正義の名の下に注がれるのでもない"
"あなたの隣に"
"あなたの記憶に"
"あなたのまだ見ぬ未来にあるのです"
(268) 2014/08/23(Sat) 23時頃
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[黒衣の預言書《ドレスコード》を担う者――またの名を、憂鬱を謳う詩人《ブルーバード》。 けれどその顔に今、憂いはない。 喩え歌い終えた先が、避けられぬ死であったとしても]
[希望はすぐ傍にあると。気付いて欲しいと]
[青い鳥《ブルーバード》は、歌う*]
(269) 2014/08/23(Sat) 23時頃
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[無人の観客席へ、すうと腰を下ろす白い影を見た。>>278 その面影と、親友の小さな呟きから、それが誰であるかは知れた]
(――あの日、護ってあげられなくてごめんなさい)
(こんなあたしが言うのもおかしいけれど)
(シーパルと友達になれて、よかった)
[思念が伝わるかはわからない。 だからせめて、それらの想いもまた歌へと籠めて。 唯一人の観客へ、歌い続ける]
(284) 2014/08/24(Sun) 00時頃
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幸福《キボウ》あれ。
(285) 2014/08/24(Sun) 00時頃
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[ヴァイオリンと、二人の少女の声は。 最期に重なり、高々と歌い上げる]
[高揚と、心身共の消耗に、薬の副作用が追い討ちとなり。 白く霞む視界の中振り向くと、手を伸ばす親友の姿が見えた>>281]
[応えるように伸ばした手は、ふらふらとぶれて行き先が定まらない。 それを支えるようにしたものは、果たしてなんであったのか。 感覚もほとんど失くした指は、――それでも]
(286) 2014/08/24(Sun) 00時頃
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――つかまえ、た。
[ようやく、それが叶ったというように。 少女は微笑んで――]
[そして、《希望》は燃え尽きた**]
(287) 2014/08/24(Sun) 00時頃
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