246 とある結社の手記:9
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─ 夜 ─
[本当はちょっと、軽率だったかなって思った。 何がって、みんなの”食事”に同行するなんてことが。
どう考えてもきっと血の匂いは臭いだろうし、正直こうしていても具合悪くならない自信はあまりない。ない、けど。 でもついて来てしまったのは、嬉しかったから。
ルパートに”同胞”と呼ばれて嬉しかった。 モンドをヒトのやり方で殺して、人”狼”になれたのが誇らしかった。その祝いの食事だ。だから。頑張ってみようと思った。
だってみんなが──、”仲間”が祝ってくれるというのだから。]
(*30) dia 2018/08/07(Tue) 01時頃
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[……最初は、仲間なんてどうだって良かった。
だって幾ら仲間と言っても、彼らは人狼。 占われれば、それでお終い。こんな狭い檻に閉じ込められれば、所詮逃げられやしない。逃げられないなら早晩死んでしまうだろう。
それならば。それまでの間、上手く協力した風を装い彼らを欺き人を欺き、まんまと生き延びて逃れればいい。そんなつもりだった。
占われても平気だから、なんて。 彼らのうちで唯一の人間であることは、優越感の元にしかなってなかった。>>1:*34]
(*31) dia 2018/08/07(Tue) 01時頃
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[けれど。マリオが死に、イヴォンが死に。 少しずつ、少しずつ”人”の楔は抜け落ちてゆき。 代わりに少しずつ、少しずつ彼らとの時が降り積もる。
ずっと、ピスティオは根無し草だった。 他に同じような人間など、どこにもいない。 少なくとも見たことはない。
両親には、この”声”は届かなかった。 占いと称して使った青い石、あれは正真正銘母の形見だ。 彼らは人狼の存在を知っていた。 知ってなお、自らの身すら守れない非力な”人間”だった。
今にして思えば。 母は本当の”占い師”だったのかも知れない。 無論、ただの思い込みだったのかも知れないし、違うかも知れない。どちらにせよ、とうの昔にルパートの肉になってしまった彼らに問うことなど出来はしないのだけれども。]
(*32) dia 2018/08/07(Tue) 01時頃
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[「置いていかれちまったのかい」、と。>>1:*40 聞いたのが、初めて「目の前で」聞いた人狼の声だった。
それまでも何度も耳にはしていたはずだけど。 人狼は人狼で、ただの人間の子どもに声が聞こえるだなんて思いもよらなかったはずだし、こっちもこっちでどうしていいか分からないから、彼らに話しかけるなんてこともなかった。
だからルパートの声は少しびっくりしたし、この村にそのまま居ついたのは結局のところ、彼ら人狼がここに居たから。という理由もかなり大きい。無論、ローザス夫妻の好意あってのことだったけど。]
(*33) dia 2018/08/07(Tue) 01時頃
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[どこにも半端な人間の”居場所”などなかった。 いいや。この村に居ついてからは、少しだけあった。
それはローザス家の下働きだったり、人狼らの手伝いだったり。 或いはラルフやノア、ユージンやマリオと釣りをしてみたり。ルパートの宿に出入りしてベッキーと他愛もない話をしてみたり、村のあちこちでちょっとした手伝いをしてみたり。
いつもいつも、愛想良く振る舞っていた。 いつもいつも、誰かの何かであるように。 浅くても一時でも、そこに”居場所”の出来るように。
…───いっとう身近に、 親のように想ってくれてる人の情には気が付かないまま。]
(*34) dia 2018/08/07(Tue) 01時頃
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へええ…… 便利なもんだなあ。
[足元を少し小柄な漆黒の獣がくるくると回る。>>*11 音を立てないその仕草に、素直に感嘆の声が零れた。 人の目には捉えにくい黒い毛並みは、つやつやとして触り心地が良さそうだ。]
うん、分かった。 なるべく足音を立てないように行くよ。 今更だけど…邪魔が入っても困るしね。
[人間なんて、もう随分と少なくなった。 モンドが居れば、耳聡く異変に気付いたのかも知れないけど。きっともう、そんな心配はないだろう。
ないとは思いながらも、慎重に歩く。 人間の足は、彼らのように静かには歩けないのだから。]
(*35) dia 2018/08/07(Tue) 01時頃
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[今宵はお祝い。 ただの中途半端な人間から、人”狼”になれたお祝い。
もう居場所を探す必要はない。 同胞はここに居るのだ。 そう思うと誇らしさと共に嬉しさがこみあげてきた。 だから。少し頑張って”食事”にも行く。
慎重に廊下を歩んで、パトリシアの部屋の扉をそうっと覗いた。 鍵はかけられてない。 あっさりと扉を開けば、中からは血の匂いがした。]
(*36) dia 2018/08/07(Tue) 01時頃
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…………っ…
[思わず眉間に皺が寄る。 手にしてきた布切れを、ぐいと鼻と口元に押し当てた。
息苦しくなるけど仕方ない。 この臭いよりは、ずっとマシだし。]
(42) dia 2018/08/07(Tue) 01時頃
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……”それ”
もう、平気なのかい? 起き上がったりは、しない?
[暗闇を見透かせない人の目には、倒れた”何か”に黒い獣の影が圧し掛かっている影ばかりがうっすら見える。 がつがつと、時折下になった影が揺れるのは恐らく自分の意思ではないだろう。ないだろうけど。一応、聞いた。
恐る恐る、といった響きはどうしても声に乗っただろう。]
(*37) dia 2018/08/07(Tue) 01時半頃
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(………… うわ。)
[人狼が人間を喰らう。 その姿を怖い、と思った。やっぱり怖い。 人狼を怖くないなんて、どこの馬鹿が言ったんだ。 こんなの怖いに決まってるだろう。怖くないやつなんて、どこか狂っているに違いない。
濃密な血の匂いが、口と鼻に押し当てている布越しにも容赦なく侵入して来る。どうしようもなく膝が震える。身体の震えを押さえようと、壁に寄り掛かった───いや、壁に背を押し付けた。
それでも震えが止まらない。匂いが。血の匂いが。 ごくりと、喉が鳴った。気持ちの悪い唾が口の中に沸いている。]
(43) dia 2018/08/07(Tue) 01時半頃
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……………、
[美味しそうだねとか、なにか。 言おうかと思ったけれども声が出ない。
いや実際に口を開く必要はないんだから、言おうと思えば言えたはずなんだけど。でも無理だった。 代わりに喉の多くからせり上がって来るものがある。
だめだ。だめだだめだだめだ。今はだめだ。
それを必死に飲み下そうとした。 余計に上がって来た。胃が痙攣する。 どうしようもない圧が、耳にじんと響いた。]
(*38) dia 2018/08/07(Tue) 01時半頃
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……ぐっ……、
[小さく音が鳴った。 大して内容物のない胃から、酸っぱいものが上がって来る。 喉に酸っぱい刺激を感じた。そうなると止まらなかった。]
ぅ……… 、…ぅぇっっ…
[布切れを必死に口元に押し当てる。 息を吸い込む。濃密で新鮮な血の匂い。 余計に、吐き気が込み上げてきた。]
(44) dia 2018/08/07(Tue) 01時半頃
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……げ……っ 、………ぇっ…っ
[もう部屋から出よう。もうダメだ。 よろよろと出口に向かい、その近くで小さな机の脚を蹴ってへたり込んだ。身体を丸めるようにして床に崩れる。]
お……、 えぇぇぇぇっっっ…
[せめてせめて、床に痕跡は。 なけなしの理性で頑張れたのはそこまで、ピスティオは口に当ててた布切れと自らの服に、盛大に嘔吐物を撒き散らした。**]
(45) dia 2018/08/07(Tue) 01時半頃
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─ 朝 ─
[ひどい朝だった。げっそりする。 まあ、夜明けよりは少しマシになったけど。 何だかまだちょっと、胃の辺りが落ち着かない気がする。
平穏な朝だった。 今朝はもう、仲間が連れていかれることはないだろう。 自分にもない。きっと。 ラルフに、みんなで票を入れたのだから。]
…………。
[平然と連れていかれる彼>>0に、言葉を掛けることは出来なかった。優しい、いいやつだったと思う。 今でこそみんなで釣りを楽しむけど、元々は彼が釣りを広めたのだ。物静かに川辺に釣り糸を垂れる様子に一人、二人と集まって。 そうして静かな彼の周辺に、皆が集った。
思い起こせば、彼が怒った顔を見たことがない。いつも穏やかで、思い出せる表情といったら穏やかな表情と笑顔ばかりだった。]
(63) dia 2018/08/08(Wed) 01時頃
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[ラルフが連れていかれて、スージーを見る。 なんだ意外と平気そうだ。平気そうだと──、思った。>>15 すぐに、違うと分かったけど。]
… ス、スージー?
[どんどん。どんどん。扉を叩いて。 大声で泣き崩れたスージーなんて今まで見たことなくて、驚いた。おろりと彼女を見遣って、困ったように辺りを見渡す。
ホットミルクを淹れていた彼女はもういない。すっかり肉になってしまった。大声で叱りつけてくれただろう人も、もういない。ラルフと同じところへ行ってしまった。]
(64) dia 2018/08/08(Wed) 01時頃
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大丈夫、っスか?
えええと、えっと。 何かなかったかなあ……、えっと……
あ、そうだ。 えーっと…、『いいこ、いいこ』 ……??
[先日からご褒美にと言われていた言葉だ。 なんでこれがご褒美なのか良く分からなかってけど、ひょっとしたら、人狼にとっては元気の出るおまじないなのかも知れない。]
(*39) dia 2018/08/08(Wed) 01時頃
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あ、ベッキー。 どうしよう、…どうしたらいいのかな。 なんか飲みものとかかなあ…??
[おろおろと宿屋の娘にも相談してみた。 きっとこういうのは、女の子同士の方が話が早いに違いない。 とはいえリンダとロイエに期待するのは難しいような気もしたから、ベッキーに期待のまなざしを向けてみる。]
…………………… あれっ?
[わんわんと響いていた泣き声が止んだ。>>24 すんっと鼻を啜りあげる音。 少し驚いて見返せば、彼女はいつもの調子で。>>26]
(65) dia 2018/08/08(Wed) 01時頃
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え。あ、あれ?
………… 元気が出て良かったっス! やっぱりスージーは、元気なのが一番だもんな。
[やっぱり女の子の心は良く分からないな。 そんな感想は、こっちにも呟かないで仕舞っておいた。*]
(*40) dia 2018/08/08(Wed) 01時頃
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[コルクボードに張り出されたメモ>>41を見る。 一応、そういうことになるのだろう。 これが認められれば、きっと。自分たちは解放される。
このグループに人狼は3人。 その計算と、合うのだから。
占い師。そう記されている、自分の名前。 それを視線でなぞって、振り返った。]
(66) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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これで終わり、かな。 ねえ、ベッキー。お疲れ………
…………? ???
[お疲れさま。と言いかけた口が開いたまま止まった。 眉間に皺が寄る。少し考える表情で首を捻った。]
あれ?? えーっと、髪が……?
[ひょいひょい。と、片手で首の後ろ辺りを示した。 昨日までこの辺に三つ編み団子が乗ってなかったっけか?]
(67) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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あれっ?切ったの? いつの間に?
????なんで????
[ぽかん。と驚いて、聞こうと思っていたことを忘れてしまった。いつの間に、なんで。何故このタイミングなんだろう。]
(68) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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あーー……、えっとさ。 ごめん、びっくりして。
あ、似合うよ。短いのも。 ほらこの辺とか、
[ひょいと彼女の首元に手を伸ばす。 大丈夫なら、ひょこんと跳ねた毛先を悪戯にちょっと摘まんで。]
へへ……っ
[嬉しい。今日はやっぱり嬉しい日だ。 あんまり上手くはいかなかったけど、人狼の仲間に本当に入れて貰えた日だったし、なんといっても閉じ込められるのも、もう終いだ。
やっと元に戻れる。そう思った。 やっと「前みたいな」日常に戻れるのだ。]
(69) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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ねえ。ベッキーにさ、
[声は明るく響く。 みんなでここを出られるのだ。明るくならないはずがない。]
みんなのこと、教えてもいいかな? いいよね??
(*41) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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[同胞に問い掛けて、目の前の彼女を見る。 彼女は自分と同じ「人間」だ。……でも。
でも、いいじゃないか。 だって人狼がお父さんなら。 声が聞こえなくたって、彼女だって「こっち側」にきっと来れる。]
昨日の話、覚えてる?
……あまり怒らないで聞いてくれると、 嬉しいなあって、思うんだけど。
(70) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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俺っちはさあ、食べられないの。 人間、だからね。
でも。モンドさんを狩った。 生き延びるために。…生きさせるために。
[誰を、と言葉にすることはないけれど。 柔らかに目を撓めて、彼女を見遣る。]
(71) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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協力者、って言ってただろ? えーっと……、結社流には囁き狂人、だったっけ。
失礼だよなーーー。 俺っち、狂ってなんかいないのにさ?
ま、協力者だ。 協力者ってさ、人間でもなれるの。 てか人間だからなれるの。
本当は”声”が聞こえたらいーんだけど、 聞こえなくてもどうにかなると思うし、教えてあげるからさ。
[差し出したままの手。 そうして、にっこりと曇りのない笑みを浮かべて。]
(72) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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これから。 一緒にやっていこうよ、ベッキー。 ルパートさんとさ、みんなと。
大丈夫だよ、難しいことなんて何もないから。 助けてあげる。
だってね、俺っちベッキーが来てくれたらいいなあって、ずうっと思っていたんだ!
[悪びれず、嬉しそうに笑った。**]
(73) dia 2018/08/08(Wed) 02時頃
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