252 Aの落日
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― 新聞部部室 ―
[ 話しの続きは長そうだと、彼女は言う。>>122 病院の場所を知りたがり、新聞を取る手。>>123 それを幼馴染に見せるつもりなのだろうか。 能動的な透明な悪意に背筋が凍る気がして、 この二人を一緒にしてはいけないと思う。 彼に刺さるかも分からぬ釘を刺し、 起点かと思える彼女の手を取った。 ]
(188) 襟 2018/10/21(Sun) 19時頃
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― →文芸部部室前 ―
[ 廊下を歩く。 どこか人目のない場所、 ここからなら文芸部が近いか。 文芸部部室前で立ち止まり、振り返る。 ]
あの様子だと、気付いていたんだろ。 えーこちゃんが自殺だってこと。 俺の望みが叶った、って言ったよな。 あれ、どういう意味だ? 何を知っている。何かしたのか?
[ 一週間前ほどのことを話してはいないが、 えーこちゃんが話した可能性はあるだろう。 悪意無く人を追い詰める行為。 彼女自身がやらない保障はどこにもない。 握った手と反対側の手を扉に突き追い詰め、 間近になった顔を見つめる。 ]
(189) 襟 2018/10/21(Sun) 19時頃
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なにがあんたをそうさせる。黒江仄日。
(190) 襟 2018/10/21(Sun) 19時頃
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俺、言ったよな。 人生つまんないんなら、 自分でつまらなくないようにしろよ、って。 暇つぶしなら俺がなってやるから、 もう、あいつを放っておいてくれないか。
[ 壁に着いた手を彼女の肩に回し、引き寄せる。 腕と胸の間に閉じ込めて、耳元で囁く。 ]
俺は。あんたを揺るがしたい。*
(191) 襟 2018/10/21(Sun) 19時頃
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― 新聞部部室 ―
褒めてねえよ。 あ?お、まえ……!
[ 激昂しようとして、留まる。>>210 糾弾も拳を奮うのも簡単だが、 越えてはいけない一線だと踏みとどまる。 拳を握り締め、眉を潜めるのが面白いのか、 彼は味わうように、喉の奥で静かに笑った。 ]
光栄なのかよ。 友だちいないだろ、オモトセンパイ。 今度デートしてやろうか。ラーメン屋とかで。
[ 了承しなさそうだな、と思いながらそう口にした。 乗るなら今度マジで誘ってやろ。なんて、 いつか彼女に対して思ったのと似た感情が沸く。 ]
(230) 襟 2018/10/21(Sun) 22時頃
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[ なんで、と声が零れた。 語られる言葉>>211が理解できないわけではないけれど、 理解してはいけない気がして。口をへの字に曲げた。 ]
人の不幸は蜜の味、って奴だろ。 そうだろうな。 俺は他人事だって眺めてばかりいられないし、 できれば俺が楽しませたい。 話を聞いてるとあんたもそういうところ、 あると思ったんだが。 見せびらかしたいだけなら、 それはただの公開オナニーだろ、童貞野郎。
[ 童貞かどうかなんて、知らないが。 吐き捨てるようにそう口にして、部室を出た。 *]
(231) 襟 2018/10/21(Sun) 22時頃
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― 文芸部部室前 ―
[ 問いかけにわからない、という素振り。>>203 ただのからかいだと、彼女は言う。>>204 いとも容易く揺さぶられて、顔を歪めた。 傷ついたような顔をしていたのだと思う。 真っ直ぐな視線を見返す。 やりたいようにすることも、 決定者は自分しかいないことも、 同意しかないのに。 何かが決定的に違っているのだろう。 彼女も、彼女も。 縋るように願いと共に伸ばした手。>>207 気持ちごと蹴り上げられた様だ。>>209 「いてっ」と思わず言いながら、 思わず加減してた手に力が入る。 でもそれも一瞬だけ。 肩に回した手の力を緩めて背中の中ほどへ回し、 少し身体を離して視線を合わせた。 ]
(232) 襟 2018/10/21(Sun) 22時頃
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したよ。 他人事じゃなくて自分のことで笑えるようにって。
[ 例えば最初の頃の意味深な態度。 前夜祭、誘った事だとか。 どれも些細なことばかりだ ]
けど、笑えなかったんだろ。 あんたが嗤いそうな話くらいあるけど、 話したらそいつのところに あんたは行くんじゃないか? 一時の暇つぶしの為に教えてやらねえよ。 俺を見ろって言ってるんだ。
(233) 襟 2018/10/21(Sun) 22時頃
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俺をほのかさんが笑える様な男にしてみないか。 今なら安くしとくぜ。 自分でも趣味悪いって思うけどな。 俺、あんたが好きなんだ。
[ 抱き寄せようと力を込めて、やっぱりやめて手を離す。 前方には俺、後方には彼女の城。 きっと、彼女も俺には話さないんだろう。 軽薄な態度。ライトな関係。 大事な事は誰も俺に話さない。 所詮、その程度の人間なんだろう。俺は。 ]
(234) 襟 2018/10/21(Sun) 22時頃
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ま、ほのかさんはあいつの方が良いんだろうけど。
[ 一歩後ろに下がり、視線を新聞部部室のあった方に流す。 何故だろうな。 妙に可笑しくて、奇妙な笑いを俺はした。* ]
(235) 襟 2018/10/21(Sun) 22時頃
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― 文芸部部室前 ―
[ 返される舌打ちと明らかな不快の色に、>>247 腹の底から湧きあがるのは喜びだった。 多分、ずっとその顔が見たかった。 ]
良いけど、まだイヤだ。
[ この手を離してしまえば終わってしまう気がして。 卒業まであと数ヶ月。 関わりが出来たことすら奇跡に等しいから、 卒業してしまえば関わりなんて消えるんだろう。 一週間ほど前、えーこちゃんを拒絶した理由に、 関わっているだなんて。 彼女も間接的な加害者だと知れば、 彼女もまた、喜ぶのだろうか。 ]
(283) 襟 2018/10/22(Mon) 01時半頃
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[ 喜ばせたいと思うと同時に、 培った倫理観が警鐘を鳴らす。 いっそ彼女の色に染め上げられたらと思い、 同時にそんな自分に吐き気がした。 ]
悪いだろ。 自分を好きな素振りの無い人を好きとか。
[ だからきっと、これは報復なのだろう。 共感や共有の出来ない相手が自分を示すのだと、 理解した上で口を開く。 ]
真に理解し合える人はこの世のどこにもいない。 ただ、違いを認め合い関係を築こうするのが、 対等に近しく共に生きるってことだ。
[ 教えて欲しいと自分を売って、 怒らせるようなことをわざと言った。 馬鹿にしないでというのは、怒りからだろうか。 どこか満足そうに、笑う。 ]
(284) 襟 2018/10/22(Mon) 01時半頃
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俺はその他大勢の他人だったか?本当に?
(285) 襟 2018/10/22(Mon) 01時半頃
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[ 少しは自分に向けられた感情に悩めばいい。 自分のことで悩めばいいんだ。 それなのに、幼馴染のところへ帰れ、 ということを言うから。 扉が閉まりきる前に足を入れ、阻む。 ]
守りきれるもんじゃないだろ。それより、 まだ、俺よりえーこちゃんの方が面白い? ここで無理矢理あんたの弱み握ってもいいけど、 流石に嫌だろ?そういうの。
(286) 襟 2018/10/22(Mon) 01時半頃
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俺が本当にどうでもいいなら、 なんで何度も会いに来てたんだ? 俺が気になったからじゃないのか。 今だって俺の言ったこと、嫌だったんだろ。
あんた、ホントは俺に惚れてんだよ。
(287) 襟 2018/10/22(Mon) 01時半頃
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卒業までに、考えて。――…待ってる。
[ 挟んだ足を引けば自然に、 ギイィと低い音を立てて、扉は閉まった。* ]
(288) 襟 2018/10/22(Mon) 01時半頃
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[ 文化祭から日にちが過ぎれば過ぎるほど、 あの出来事は過去になっていく。 縁もゆかりも無い人ほどその傾向は強く、 ああ、そういえばそんな人もいたねと関心なく。 再々行われる道徳教育で命の大切さを説く言葉も、 上辺を撫でていくばかり。
彼女とその家族は何かと大変だったようだ。 何らかの事件性が無いか探る警察と、 あまり深入りされたくは無い学校側の板ばさみになり、 どんどん疲れていくようだったと母は語る。 ]
(375) 襟 2018/10/23(Tue) 19時半頃
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[ 世の中そんなもんだ。]
(376) 襟 2018/10/23(Tue) 19時半頃
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[ 俺もそんな空気の中で適度に笑い、 適度に合わせて暮らしている。 3日もすれば何事も無かったように、 友達からもらった月末までのクーポン片手に、 クレープ食べに行かない? とほのかさんを誘っただろうし、 万年青君をラーメンを誘ったりしただろう。 ルリちゃんやあいさきくんに、 面会できるようになったらお見舞い行くの? と聞いたり、 文化祭の時に「お、ナマイキ言うじゃん?かわいいよ」 と頭をぐしゃぐしゃにしてやった。 イメチェンして得意げに笑った>>2:164後輩に ばったり会って、何となく飴をあげたり。 ]
(377) 襟 2018/10/23(Tue) 19時半頃
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[ そんな他愛もない日々の中、母伝てで 少し落ち着いて面会できるようになったと聞いた。 手土産にリボンデザインのヘアバンドを選び、 数日後に病院へ行き、ベッドの上の彼女に声をかける。 ]
えーこちゃん、 って、寝てるのか。
[ 少し待って、起きないようなら帰るかと決め、 パイプ椅子に腰掛ける。 電源を落とした携帯電話は暇つぶしに使えず、 鞄の中から文庫本を取り出し、眼鏡をかけ視線を落とす。 そうして何ページか読み進めて、小さな声に顔をあげる。 彼女が俺の名前を呼んでいた。 ]
(378) 襟 2018/10/23(Tue) 19時半頃
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おはよう、えーこちゃん。夢見はどう?
[ 覚えていない、と彼女は言う。忘れてしまったと。 夢はそういうものだろうなと、栞を挟んで本を閉じる。 鞄の中に収めるついでに、手土産を取り出し、 ベッドの上にぽんと乗せた。 ]
やるよ。食事の時にでも使ってくれ。
[ 落ち葉の様にぽつぽつと言葉を交わす。 ここへ来ることになった原因の話しはせず、 当たり障りの無い話を俺たちはする。 時間にして十数分程度。 あまり長居しても疲れるだろうと、席を立つ。 ]
(379) 襟 2018/10/23(Tue) 19時半頃
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そろそろ帰るよ。また来る。 嫌ならおばさんにそう言っといて。
[ 何が、誰が原因でいやなのか。 それは彼女の心の中にしかないから。 親越しに伝えてもらえれば良いとそう言って、 出入り口の扉に手をかけて、少し迷ったあと口を開く。 ]
……えーこちゃん。また死にたくなったら、 その前に誰かと話をしようぜ。 誰も思いつかなかったら、俺を呼べよ。 話して、ぱーっと気晴らしして、 それでもまだ死にたいんだったらさ。 その時は。
[ 振り返る。 逆光で顔が良く見えないが、 俺はなんてことないような顔で笑って、 最後に一言伝えて、部屋を出ていった。 ]
(380) 襟 2018/10/23(Tue) 19時半頃
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俺が看取ってやるよ。**
(381) 襟 2018/10/23(Tue) 19時半頃
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[ おばさんが俺を家へと招いたのは、 少し肌寒くなってきた日のことだった。 名を呼ばれ、聞きたいことがあると家の中へ誘われ、 見せられたのは学校新聞と、 コピー用紙を束ねた冊子。>>348 Aの落日と題された冊子は知らないが、 学校新聞は充分すぎるほどに見覚えがある。 ]
(442) 襟 2018/10/24(Wed) 23時半頃
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[ おばさんはこれが病室にあったのだと言い、 学校で回覧されているのかと聞いた。 ……誰が持ってきたのか心当たりはあったが、 それを問われることは無く。 おそらく、自分も容疑者の一人だろうとあたりをつけ、 一般生徒が知っている範囲の答えを返す。
冊子の方は内容も人物も心当たりはあるが、 詳細を知るわけが無いので読ませてもらう。 やけに詳しい部分もあれば曖昧な部分もあるが、 書き手の存在が抜け落ちた物語は、 それ故に俺の目に書き手ががはっきりと見えた。
いじめじゃないのかとか、 ここに書かれているのは本当かとか、 心配する言葉に適当に相槌を打ち、頁を閉じる。 ]
(443) 襟 2018/10/25(Thu) 00時頃
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誰が持ってきたか気になるなら、 俺も調べてみる。 これ、預かってもいい? ちなみにえーこちゃんは、これ見てる?
[ 返ってきた答えに「そっか」と頷き、 冊子と新聞を預かった。 しばしお茶と愚痴に付き合った後、 僅かな距離の夜を歩き、家に帰る。 ]
(444) 襟 2018/10/25(Thu) 00時頃
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[ 翌日、陽が沈む少し前の時間。 彼女の病室へ行く。 いつかのように当たり障りの無い会話をして、 不快でない沈黙、十数秒ほど。 俺は口を開く。 ]
えーこちゃん、これ。
[ 昨日預かった新聞と冊子を鞄から取り出し、 ベッドに座る彼女の膝の上に置く。 身を震わせるのが目に見えて分かった。 新聞を見つめた後、震える指で冊子を手に取る。 頁を捲り、文字を見つめるのを俺は見ていた。 ]
(445) 襟 2018/10/25(Thu) 00時頃
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他人が語る自分は全部ホンモノじゃないだろ。 えーこちゃんの事は、えーこちゃんが知ってる。 違うか?
[ 顔をあげてまんまるに開いた目が俺を凝視する。 ]
それを書いた奴を、俺は多分知ってる。 誰なのか、知りたい?
[ 彼女の中の彼女の存在は、一体どんなものなのだろう。 迷うような顔を見ながら、腹の底に渦巻く感情。 口の端を歪ませて、頷く彼女に口を開く。 ]
(446) 襟 2018/10/25(Thu) 00時頃
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[ ああ。こういうのは少し楽しいかもしれないな。 ]
(447) 襟 2018/10/25(Thu) 00時頃
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[ 誰もが有象無象の中、信じたい答えを選んでは、 傷つけたり、喜んだり、傷を舐めたりしてる。 彼女は誰を信じて誰を憎み、 誰に殺さそうになったのだろう。 別に教えてくれなくても良い。 藻掻いて、足掻いて、最後に笑えれば、それで良い。 笑えなかったら、その時はどうするんだろうな? さあ。無数の回答の中、何を選ぶ? **]
(448) 襟 2018/10/25(Thu) 00時頃
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