266 冷たい校舎村7
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悩んでいることは、ある。
けど、それを苦に自殺するほど 俺は性格の良い人間じゃあないよ。きっと。
自分が死ぬくらいなら、 周りを道連れにする男だ。
[冗談めかして、笑った。 視界の端に捉えた昇降口には、 防災訓練のときしか見たことのないような 銀色のシャッターが閉まっていた]*
(619) 2019/06/09(Sun) 22時半頃
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――屋上前扉――
[平気か、って俺は頷いて、 返される言葉にそういうことなのかもね>>603と そう相槌を打った。]
あのメール、かあ…… 送り主わかればいいんだけどね
[といいながら、ドアノブをまわして 動かない扉に、ううん、とうなる。 強行突破かあ、と考えながら>>604 聞こえる声と、暗がりで見えた薄い笑みに目を向けた。]
(620) 2019/06/09(Sun) 22時半頃
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ああ、なるほど。 そっか。文化祭当時だから残ってるか。 じゃあ当面は大丈夫なのかな。
[電気とかは通ってるし、 ひとまず生きる分には困らないのかもしれない。]
でも、覚えた単語とか、忘れていきそう。困るね。 ……あ、ちょい離れて
[受験の近いこの時期だしといいながら、 俺は軽く下がると、 屋上の扉を、思いっきり蹴り上げる。
ごいん、と音がしたけど、びくともしなかった。]
(621) 2019/06/09(Sun) 22時半頃
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駄目だわ。ういのとか呼んできた方がいいかも。 一回下降りない?
[まだ抵抗あるかな、と伺うように、田所を見て、 俺は小首を傾げた。*]
(622) 2019/06/09(Sun) 22時半頃
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──── 回想:祭りの後の話 ────
[ コップに揺れる飲み物は、 シンプルな無糖の紅茶だ。 一口分、傾けながら、 自分の席で賑わいを眺めていた。
端っこで静かにしているわけではないが、 楽しそうな顔は、見ているだけでも楽しい。 ]
俺、甘いのはあんまりな。
[ 食べないの? って聞いてきたのには>>522 甘さを取っ払った紅茶のコップを揺らして。 ]
(623) 2019/06/09(Sun) 23時頃
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[ 学校で、甘いものを口にすることはない。 滅多にない。 週一くらいで立ち寄るパン屋でも、 デザート系ではなく、 食事系のパンをよく取るような具合だ。
大抵は、学校帰り。 日の暮れる辺りに入ることの多い店が、 田所のバイト先と知ったのはいつだったか。
カレーパンと、アスパラベーコンパン。 トレイに乗っかるのそのあたり。 取る最中、つい、 てんとうむしのパンに視線をやってしまうが。 結局、それがトレイに乗ることはないまま、 会計に向かうのが、いつもの流れだ。 ]
(624) 2019/06/09(Sun) 23時頃
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[ だから、この場においても。 甘味は好きじゃない、と、貫き通して。 写真撮影が始まれば、 こっそりとスマホを取り出して。
隠し撮りに向いたアプリがある。 サイレントモードにしていれば、 シャッター音が鳴らないってやつ。
それで撮影した何枚かも、 共有されることとなるだろう。 ]
(625) 2019/06/09(Sun) 23時頃
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[ 教室の端っこでケーキを食べる姿>>529 其処に近づいて、撮影する姿>>544 二人そろってのピースも>>545>>566 お誘いに頷いているのが見えたから>>569 ケーキを持つ姿を、 少し離れた所からもこっそりと一枚。
はじっこの方の席は、見通しが良い。 そこから見える、自然な顔。 カメラ目線ではない顔を、隠し撮る。 そこにいたメンツは漏れなく標的だ。
見つかったらまぁ、そこで観念しますとも。 *]
(626) 2019/06/09(Sun) 23時頃
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具合は平気。 ちょっと、色々びっくりしちゃって。 休んでただけなんだ。
[オキシドール、マーキュロクロム、マキロン。 横文字が並ぶ棚の中を漁る。
養護教諭が薬を出してくれるのに比べれば 多分、何倍もの時間をかけて、 漸く紫苑は目当てのものを探し当てた。
宮古>>596の方がずっと要領は良さそうだし、 もしかしたら、下手に手を出さない方が 良かったのかもしれない。
まぁ、いっか。紫苑は思う。 過ぎたことはどうしようもない。]
(627) 2019/06/09(Sun) 23時頃
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[宮古の手を取る。 消毒を済ませ、指先に絆創膏を巻き付ける。 道具さえ見つければ、 あとはあっという間だ。]
会いたいよ、そりゃあね。 好きな子だもん。
[問いには、即答を返す。 何処か、自分に言い聞かせるように。]
宮古さんだって、 会いたい人とか居るんじゃない?
[むしろ、彼女に会いたがっている人が多そうだ。 モテそうだし。
ただの勝手な憶測は口に出すことはせず、 宮古の手当を終えた紫苑は 再びベッドに横たわることにした。]
(628) 2019/06/09(Sun) 23時頃
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[会いたい。はるちゃんに会いたい。 確かにそう思うのに、何故だか気は進まなかった。*]
(629) 2019/06/09(Sun) 23時頃
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……だって楽しかったし。
[そう応える口ぶりに翳りはなかった。>>612
思えばなかなかたいへんなこともあった。 宇井野にも賛成をいただいたのがよかったか、>>547 彼に着せるのが白衣で決まったものの、>>548 宇井野サイズの服なんて普通の店ではなかなか売っておらず。 (ましてや白衣っぽいのというとなく) たまたま服屋の片隅で大きなサイズのジャケットを見つけて、 参考にしようとしげしげ眺めていたら店員にジト目を向けられたり。
胸や背中周り、腕の太さをメジャーで測っては、 やっぱり大きいんだなぁ、という感想を得たり。 ためしに作ってみた白衣は肩回りがきつきつでやり直さざるをえなかったり。 学校が開いている間には仕上がらず、家のミシンで仕上げをしたり……]
(630) 2019/06/09(Sun) 23時頃
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──屋上前扉──
[ 送り主の情報として、>>620 あのメールと不安定な状況にあるということだけ。 拓海は自殺と言ったかもしれないけど>>423 そうとはあまり考えたくはなかった。 ]
巻き込まれた人たち……、 みんな文化祭に関わってたし、 なかなか特定難しいね。
[ ホストは自分ではないように思う。 早めに忘れてほしいと書いて、 そのくせ精神世界に呼ぶなんてあべこべじゃないか。 ]
(631) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[ また小さく頷いた。>>621 そして指示されたとおりに二歩後ろに下がる。 扉は開かれない。 追加で、上靴で窓を殴ってもよかったけど、 まだ靴下は干しっぱなしだ。 靴を脱いで地べたに素足をつけるのは避けたかった。 ]
……強行突破できなかったか。 例えば、うっかりこの扉が開いちゃったら、 精神世界に影響及ぼすとか、あるのかな。
[ また答えを求めない感想を零して、>>622 小首を傾げつつの拓海の誘いには、肯定の言葉を返した。 そうして階段を降ることとなる。 ]*
(632) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[そんな楽しいことに加わった面々が、 みんなで同じ夢を見ている? >>613
宇井野はそうは思っていないんだろうな、ということは、 口ぶりからなんとなくわかった。
夢だとしてもどこからが夢なのか釈然としない、それも確か。 暖を取りながら登校したひと時を束の間、思い出す]
(633) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[頬を、と頼んだ相手が大きな手でとったのはイロハの手だった。>>614 頬をぎゅーっとして、と言った時点でそれ相応の痛みを覚悟してたけど、 想像よりずっと痛かった。なんだか骨にクるといいますか]
……い、いいよ……ありがとう……
[やっぱり夢じゃないのかここは。 こんなに夢のようなのに。
現実でも夢でもない、じゃあ言うなれば異世界?
そう思うだけでも荒唐無稽なのに、宇井野はさらに非現実的なことを口にする。>>615]
(634) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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誰かがつくった世界? ……ここが? そんなことあるの?
[あるらしい。 言葉に軽い調子はなかったから、二の句が継げずに黙ってしまう。 急に目に映る景色がふいに寒々しく感じてきて、 「出よう」と宇井野を出口へと促した。
――薄暗い廊下はもっと寒々しかったけれど*]
(635) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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──現在/1階廊下──
……人が少ないから。 クラスメートしかいないから。 この中の誰かがじきに死ぬかもしれないから。
[ よくわからない。と僕もよく言うけど、 高本悟の口から聞く>>616ことなんてあったかな。
僕は、わからないというとき、 本心から答えを欲しているから、 少しでも力になれればと思って、
答えになり得そうな事柄を、 僕の思いつく限りで羅列する。
それは呟きのようなもので、 正解不正解を求めたわけじゃなかったけど。]
(636) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[ 二度手間の天才。 僕は間違いなくそれであった。 先の昇降口はシャッターで封鎖されてる>>619。
手荒な真似をするつもりはなかった。 だから、目的は達成されたようなもので、
今となっては僕は高本悟がたどたどしく紡ぐ、 いくつかの言葉の束に必死になっていた。
非難するつもりなんかなかった。 ただ、わからないことが多すぎたんだ。]
(637) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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……道連れにしたかったのかもしれないよ。 じゃなきゃ、どうしてここに当人以外の人間が?
……違う。 そういうことを言いたいんじゃなくて、 他人を道連れにすることを非難する気もないんだ。
ただ、ただ──、 ねえ高本くん、君は言ったよね。 決して逃げられない。捨てられない。 僕たちは少し似てる。……って。だからかな。 高本くんの何が性格悪いのか分からない。
[ 冗談めかしたって面白くない。 そんなふうに言ってほしくなかったのは、 多分、ほんの側面でも、その瞬間だけでも、 重ねることのできる一面を彼に見たからだ。]
(638) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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死ぬのに理由なんていらないよ、高本くん。
どうしてこんな社会で生きていかなきゃいけないの? どうして僕らが生きづらい思いをしなきゃいけないの? どうしようもないことに向き合わなきゃいけないの? みんなは違うの? 君は違うの? この世に生きたいの? みんなが辛うじて、何か理由を見つけて、 生きることにしてるんじゃないと、ずるいよ……
(639) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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……高本くんが、メールの送り主ならいいのに。
(640) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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……ごめん、嘘。 ……嘘じゃないけど。ごめん。
(641) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[ うまく息ができなかった。 昇降口のことはもういいよ。 頬から血の気が引いていくのが分かる。
……自分が言ったことの意味が、 少し遅れて頭の中で組み立てられていくようで、 僕は、慌ててその場を立ち去ろうとする。
くるりと背を向け、また階段に足をかける。 ……それから気付いた。理由なんてもうないのだ。*]
(642) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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― 回想:祭りの後 ―
[いったい何人目の付き合いだったんだろう。 それを俺が知ることはできなかったけれど]
紫苑の音響さ。すっげえ凝ってたよな。 めちゃくちゃ臨場感あってよかった。 ありがと
[それが手作りだって>>315、 俺は知らないけれど 音響監督の仕事は確かなものだったから 今しか伝えられないことを伝えて、
「いいよぉ」と撮影を承諾してくれる 笑顔の穏やかな人の顔を、 「ありがとー」といって、撮った。]*
(643) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[ 楽しかった。 宇井野も同じく、翳りない声で言えること。>>630
衣裳作りに難航させてしまったことに、 申し訳なさを抱かなかったわけではないが。 肩回りのキツイ白衣を破かぬように、 大人しく三角座りしてたのも良い思い出だ。
最終的に、見事ぴったり出来上がった衣裳は、 今は学校に保管されているのだったか。 それとも、誰かが持って帰ったのだったか。 ]
(644) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[ 背丈相応に大きな手が手加減しても、 此処が夢であることを否定する程度には、 掌に痛みを与えることは出来る。
痕は残りにくい場所。 骨のちかくをつまむ形の指は、 すぐに さっと、 降ろされて。>>634 ]
心理系の本ではよく見かけるな。 随分と非現実的な話だし、 話してる俺も信じがたいが。
精神的に不安定な人とか…… 命の危うい人が作る傾向にある、って。
(645) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[ 書いてた。 あのメールの内容をまた、思い出す。 出よう、って、言うのに。頷いて。 ]
ひとまずは、ここから出る方法と。 すぐに出られそうになければ、 しばらく過ごすことにはなるな。
食いモンはしばらく持ちそうだった。
[ 冷静な声色を作れたと思う。 扉を抜けても、現実に戻ることなんてなくて。 どこかおどろおどろしい、 文化祭に浮足立った飾りの廊下が、 薄暗く寒く伸びているだけ。 *]
(646) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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―― 屋上前扉 ――
皆に「ホストなのか?」って 聞いて回るのもねえ。
[ちょっと気まずいからね、と、 まだ、閉じ込められてしかいない俺は 暢気に思ったりもする。]
(647) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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[そういえば、教室に干されてたの、 田所さんの靴下? なんて問いは向けなかった。>>632
びくともしない扉をじっと見つめて、 答えを求めない感想に、今の俺の感想だけ返す。]
さあ……。 無理やりゆがめたら壊れたりとかするのかな。 でも、外青空だしなあ。
(648) 2019/06/09(Sun) 23時半頃
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