35 星降る海岸に纏わるエトセトラ
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――――――――……ありがとうございます、団十郎様。
[花束を抱きしめながら、薄く微笑んだ]
そうだ。源蔵様の御祭用のからくり、完成したんですよ。 凄く素敵な出来あがりなんです。 今年も、皆で見物しましょうね。
[あんなに恐れていた「約束」が、今ではとても待ち遠しく思える。 深く頭を下げると、墓地の方へと歩いて行った]
(162) nekosuke 2011/08/23(Tue) 00時頃
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―村の傍の墓場―
[墓石は丁寧に磨かれていた。きっと、兄が訪れたのだろう。 白い花を墓前に供えて、一度日が高くなり始めた空を見上げた。青い。何処までも、青い空]
――――……父様。母様。今年も御戻りになるのでしょうか。
[「精霊伝説」は、未来人の時間旅行の口実でもあっただろうが。 それでも人が、その星空に先祖が戻ってくることを願うのならば、全てが嘘にはならないと想う]
私は、何も、打ち明けることの出来ないまま。 貴方達はお亡くなりになってしまった。 私を最期まで実子と信じ……。 それは今ではもう、取り返しのつかないことです。
[風が吹き込み、白い花弁を散らしていく]
それでも私にとっては、父母は、貴方達しかいないのです。 何の言い訳にもならないかもしれないけれど。 本当の父様と母様だと、思っていました。…今でも思っています。
(187) nekosuke 2011/08/23(Tue) 01時頃
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朧様は、…兄様は、 こんな私を自慢の弟だと言ってくれました。
そう。私にとっても。 何時だって、どんなときだって、朧様は自慢の兄様でした。 私が望んで押しつけた縁を、 あの方は、貴方達は、受け入れてくださいました。
それだけでは、ないのです。 私、この村で、大切な人が沢山出来ました。
みんな、みんな、―――――…宝物です。
(188) nekosuke 2011/08/23(Tue) 01時頃
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戻らないって言ったら。……兄様は、呆れるでしょうか。 それとも自分で考えて決めたことなら、 許してくれるかな…。
あれだけ大騒ぎしておいて、ちょっと、格好悪いな…。 でも、格好悪い位は大丈夫。
それでも私は、ここで生きていきたいから。
[祈りは静かに流れる]
父様、母様。私をまだ、息子として認めてくださるなら。 ――――――…どうか応援していてください。
(189) nekosuke 2011/08/23(Tue) 01時頃
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一平太は、源蔵に飛びついた。(もはや定期!)
nekosuke 2011/08/23(Tue) 01時頃
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―夜・海岸付近の道―
[――――――…墓参りの後、村の中を、朧の姿を探して、探して]
[けれど、なかなか見つからなくて]
[漸く見つけた頃には、もう日も落ちていた。 海岸傍、一人満月の輝く星空を見上げる姿]
…… っ。
[声をかけようとして、呼び方に迷い、一度躊躇し]
兄様!
[けれどはっきりと、その背に呼び掛けた]
(215) nekosuke 2011/08/23(Tue) 21時半頃
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――――――――…御祭り、は。 まだ何も見ていませんが。
[振り向いた朧に一度、立ち竦み。静かな足取りで近くまで駆け寄ると、隣に並んだ]
だって、一緒に見回りをするって、 …約束していたでしょう?
(224) nekosuke 2011/08/23(Tue) 22時頃
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[相手が言いかけた言葉の先は分からなかった]
兄様と一緒なら、私は何でも楽しいです。
[俯き気味の顔に、月明かりが影を作る。ゆっくりとした歩調に合わせて、彼の隣を並んで歩く]
………兄様。私の住んでいた街では、星も月も見えないのです。 青い空が無いのです。 上は一面、冷たい冷たい、暗いキカイに覆われて。
他の人と会話をすることは愚か、会うことも稀で。 偶に会うことがあっても、 それはただ、生きていることを確認するだけのこと。
未来の人間が、街が、全てそうだとは思いません。 けれど、私が住んでいた場所は、酷く寒々としたところでした。
(237) nekosuke 2011/08/23(Tue) 22時半頃
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だから、私、逃げ出したのです。後先も考えず。 勝手に黙って時を渡って、行き先も分からぬまま。
―――――――……そして、この村に着いた。貴方に、出会った。
[そっと腕を伸ばす。叶うなら、相手の手を握ろうと]
兄様が最初にくれたのは、繋いだ手の温かさ。 兄様が最初に教えてくれたのは、 二人だと寂しさも怖さも半分になってしまうということ。
………………………。
(238) nekosuke 2011/08/23(Tue) 22時半頃
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あのね、兄様。私、考えました。 色んな人に迷惑をかけてしまうかもしれないことも、 沢山考えました。
それでも、此処に居たいです。残りたいです。
共に生きることを祈り願ってくれる人がいるから。 将来の夢を支え応援してくれる人がいるから。
あんな、大騒ぎして。 とても、恥ずかしいし、情けないのですが。
私、残ります。この村に居ます。ずっと、ずっと。 次の御祭も。その次の御祭も―――…。
(239) nekosuke 2011/08/23(Tue) 22時半頃
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一平太は、朧が茄子と結婚しないかがとても気がかりである。
nekosuke 2011/08/23(Tue) 23時半頃
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――――――――…。
[小さく笑った兄を見上げる。 此方もほっとしたように笑みを零した]
はい。……絶対に絶対に、御無事で御戻りください。 そうでなければ。 今度こそ本当に、私が都へ駆けつけてしまいますから。
[見回りを再開、との声に頷いた]
…………兄様、兄様。 私の兄様でいてくれて、ありがとう。
[再びゆっくりと再会した歩みの中、小さな声で囁いた**]
(255) nekosuke 2011/08/23(Tue) 23時半頃
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―白石源蔵邸―
[祭りが終わり、皆を沸かせ無事に役目を果たしたからくりは、今は屋敷の片隅に置かれている。 主人へ御茶を運びに行く折、その姿が目にとまってふと足を止める]
……………………。
[羽衣伝説には諸説あるが、多くの場合、天女は男と子を残す。 子は天へ連れて行かれることもあるが、地上へそのまま留まってしまうこともある。
天女の子はその時代を必死で生き抜き、 その血は脈々と受け継がれていくのだろう]
――――――源蔵様が、未来人の子孫だと仰るならば。 私は未来からこの村に渡り、この地で恋をし子を為した、 その方に御礼を言わなくてはいけませんね。
だって、源蔵様が今ここにいるのは、そのおかげなのでしょう?
[書斎で御茶を出しながら、不意に思い出したように、口を開く]
(266) nekosuke 2011/08/24(Wed) 00時半頃
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未来は、いつ決まるのでしょうね。
此処には居ない筈の人間が、何かをすることで未来を変える。 未来を変えてしまうというのは、 とても恐ろしいことなのかもしれないけれど。
でも、少なくとも私は、その御蔭で救われました。
私は自分の我儘を通して、この村に残るのだから。 だから、せめてその分、源蔵様の御先祖様のように。 誰かを幸せにするような、生き方が出来たら、良いな。
[にこりと一度微笑むと、「御無理なさらず」と付け足して場を辞しかけて、ふと立ち止まり]
嗚呼、そうだ、源蔵様。 今日の御夕飯は、何にしましょうか?**
(268) nekosuke 2011/08/24(Wed) 00時半頃
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一平太は、団十郎の頭を撫でた。
nekosuke 2011/08/24(Wed) 00時半頃
一平太は、げんぞうさまだいすき!
nekosuke 2011/08/24(Wed) 02時頃
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