273 魔性の病院【R18ペア】
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─ プール ─
熱いのが好きかい? それとも水浴びのほうが?
[感想めいたことを呟く彼へ、肩越しの問いを投げる。 そのまま、もっとも大きなプールへと近づいていった。 円形で、中央に太い柱があり、流れている。]
わざわざ水を動かしているようだね。 面白いよ、これは。
[着衣のまま水に入り、体を浮かべた。 黒髪と深紅の衣を漂わせて、流れていく。]
(*30) nekomichi 2019/12/18(Wed) 15時半頃
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─ プール ─
別に、面白くなくとも構わないが。
[ 身体の動きを確認する役に立つと黍炉が言うから近づいてゆく。 それなりの流れがあるようだ。 さっそく浸かって浮かんで漂う彼を見下ろした。]
──…、
[ 遠ざかってゆく姿を見ているだけで、わけもなく寂寞を覚える。]
(*31) enju 2019/12/18(Wed) 19時頃
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[ そのうち、一周して戻ってくるだろう── 頭では理解できているのだが、焦り混じりの切なさは募る。]
…こんなことで。
[ 気を引くような派手な水飛沫をあげてプールに入り、黍炉を追う形で歩き始めた。 泳ぐことはしない。 これは鍛錬だ。
水からかかる圧と抵抗、それでいて身が軽くなるミスマッチな感覚は確かに珍奇なものだった。 この中で格闘などすればどうなるだろう?*]
(*32) enju 2019/12/18(Wed) 19時頃
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[盛大な水音が聞こえて、顔を上げた。 自然と身体が沈んで、足が床につく。 たっぷりとした衣服が水を孕んで引っ張られた。]
ふふ。ふふふ。
[半ば流されながら、後ろ向きに跳ね歩く。 面白い。つい笑いが声に出る。]
(*33) nekomichi 2019/12/18(Wed) 22時頃
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おいで。 私を捕まえてごらんよ。
[こちらを見る彼の表情は、どこか切なくて切実だ。 それはつい苛めてしまいたくなる愛らしさで、 同時に庇護欲も掻き立てられる。
生さぬ仲であろうと血の契りが未だであろうと、あれは私の子だ。 私で満たし、生まれ変わらせた子。 早く私を捕まえに来て。*]
(*34) nekomichi 2019/12/18(Wed) 22時頃
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[ 挑発された、と認識した。]
よし。
[ ぬるい水を掻き分け大股に歩く。 ほとんど倒れ込むような姿勢だが、水の抵抗がそれを支えた。
こちらを向いて笑っている顔に向け、平手で水面を削いで水を飛ばす。 目潰し…のつもり。
波立つ水面が呼吸を揺らして、唇から笑いめたいものが漏れた。 追いかけ、手を伸ばして、漂う彼の衣を掴もうと試みる。*]
(*35) enju 2019/12/18(Wed) 22時半頃
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[どうやら誘いは彼に火をつけたらしい。 やる気になった顔で追いかけてくる。 蹴立てられた波紋を視線で追っていたら、斬り飛ばされた水が飛んできた。]
ははは、あはははは、 やってくれたね。
[たまらず、声を上げて笑いながら手を翳す。その上から、びっしょりと水を被った。
頭から濡れたお返しに、両手を翼のように動かして水を飛ばす。 ゆったりとした袖が水の中でゆらゆらと踊った。]
(*36) nekomichi 2019/12/18(Wed) 23時頃
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[もとより水の抵抗が少ない分、彼の方が有利だ。 けれど、足さばきと水の流れを利用して、二度までは手を躱した。 三度目に、ついに服の裾を掴まれる。]
………――。
[微笑みを投げ、引かれてバランスを崩したという態で仰向けに倒れる。 ほとんど水しぶきもあげずに水の中に滑り込み、服を掴む彼の手を、逆に掴み返そうとした。 もろともに、水の中に引き込んでしまおうと。]
(*37) nekomichi 2019/12/18(Wed) 23時頃
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[ 笑いが水を揺らす。 濡れそぼった黍炉はとても嬉しそうに見えた。
手を躱す彼の動きを学び、彼の作り出す水流を利用して、三度目にやっと捕まえる。]
これで ──、
[ 手繰り寄せる前に黍炉の全身が水中に没し、道連れのように引きずり込まれた。]
(*38) enju 2019/12/18(Wed) 23時半頃
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[ 水中では、音の質、見えている光の色が変化した。 透明なオパールのような泡越しに黍炉を見る。
まったく絶妙な造形だ。
二人で何をしていたのか、一瞬、忘れた。*]
(*39) enju 2019/12/18(Wed) 23時半頃
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[水の底から彼を見上げる。 無数にさざめき昇っていく泡たちの向こうから、彼が降りてくる。 水面から差す光を背に、黒く切り取られた影となって。 ああ、でもその瞳は、虹を宿す稀有なる眼差しは、光など無くとも美しく輝いてある。]
─── 。
[背中に腕を回し、抱き寄せ、接吻ける。 舌を差し入れ深く誘い、息を交わす。
いつまでもこうしていたい。 互いの身体だけを感じていたい。
音のない世界にふたり漂う。*]
(*40) nekomichi 2019/12/19(Thu) 00時頃
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[ 水中で接吻けられた。 不意をつかれはしたものの、黍炉がこの行為を好んでするということは把握している。 そして、今は勝負中の気分だった。
こちらからは離してやるものかと、彼の背に回した手を強める。
痺れるように甘い。*]
(*41) enju 2019/12/19(Thu) 08時頃
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[抱き寄せ唇を合わせれば、挑むような接吻けが返ってくる。 抱擁の力強さに背筋が細波立った。 濡れた布越しに肉体を感じる。 引き締まった、しなやかな筋肉の連なり。 足を絡め、さらに深みへ沈む。
不死の身とはいえ、水中で活動するようにはできていない。 過ぎれば意識を失いもする。 その間際の、苦しさが恍惚にすり替わっていく瞬間が好きだ。
愛しい者と共に、世界の狭間に浮かぶ。 死と生を跨ぐ遊びに彼を誘った。]
(*42) nekomichi 2019/12/19(Thu) 10時半頃
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[ たおやかな肢体が絡んでくる。 一人なら何もせずとも浮くものが、二人でも縺れ合うと沈んでゆく不思議。
目を閉じて、黍炉だけを知覚した。
熱い。興奮しているのかもしれない。
互いの境界も曖昧になって蕩けた。*]
(*43) enju 2019/12/19(Thu) 19時頃
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[絡み合う二つの肉体が一つになっていく。 舌先から身体が溶けだして混ざり合うかのよう。 二人の境も、世界の内と外も、全てが曖昧になっていく。
愛しいと思う、ただそれだけが、己を形作る意思。
抱き、抱かれながら至福の極みへと昇っていく。]
(*44) nekomichi 2019/12/19(Thu) 21時頃
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─ 病室 ─
[気が付けば白いベッドの上にいた。 おそらくだが、病院のものに発見されて運ばれたのだろう。 裸…なのは、そも意志力で服を作り出していたのだから意識を失えば消えて当然だった。
隣を見れば、別の寝台に横顔がある。 微笑んで、彼の隣に潜り込んだ。*]
(*45) nekomichi 2019/12/19(Thu) 21時頃
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[ 自我を保つことが難しい行為に身を捧げたけれど、 今回は深淵が暴れ出すことはなかった。
満たされて安定しているのだろう。]
……、
[ とても温かい。]
(*46) enju 2019/12/19(Thu) 21時半頃
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─ 病室 ─
[ 気が付けば、黒い髪が腕に乗っていた。 おそらくだが、添い寝という状況なのだろう。 裸…なのは、濡れた服を着たままでベッドに寝かせるわけにいかないのだから当然か。 別の理由の可能性は、この際、置いておく。]
──…、
[ さて、この闖入者をどうしてくれよう。 目を開く前に一本取れば、勝ちだろうか。
こつり、と額を当てにゆく。*]
(*47) enju 2019/12/19(Thu) 21時半頃
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[彼が微かに身じろいで、目覚めたのだとわかった。 けれど少しでも長く触れていたくて、気づかないふりをする。 目を閉じていたら、こつりと額に何かが当たった。
瞼を開けば、焦点の合わないほど近くに、彼の顔がある。]
おはよう。
[今がいつだろうと、目覚めた時がおはようの時なのだ。 当然のように接吻けて、彼の顔へ手を伸ばした。*]
(*48) nekomichi 2019/12/19(Thu) 22時頃
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[ おはようの接吻をまた受けてしまった。]
病院はそういうことをする場ではない。
[ 正論を吐き、腕枕にされていた手を引き抜いてサイドテーブルに伸ばす。 置いてあった包帯を掴むと、伸ばされた手に巻き付けた。 両手を縛るか、ベッドの桟にくくってしまうか。 いっそ両方+目隠しもか。*]
(*49) enju 2019/12/19(Thu) 22時頃
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[正論を吐きながらの、彼の行為はアブノーマルだ。 無論、彼にそんなつもりはないのだろうけれども。]
私を縛ってどうするつもりだい? 自分でもしてみたくなった?
[抵抗することなく縛られながら、彼に足を絡める。 彼の言葉など、まったく気にしていない顔だ。]
(*50) nekomichi 2019/12/19(Thu) 22時半頃
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知っているかい? 視界を塞ぐと、他の感覚が鋭くなる。
つまり、もっと気持ちよくなれる。
[唇を寄せて、耳元に息を吹きかける。 肌を擦り合わせて腰を揺らした。 腰についているも野の使い方を思い出させるように。]
する方の悦びも知りたいのなら、構わないよ?
[微笑みで誘う。*]
(*51) nekomichi 2019/12/19(Thu) 22時半頃
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大人しくしていてもらおう。
[ 問いかけに律儀に答える。
拘束する理由など、他にあるか。 逃さないため、というのはあるか。ああ。
手を縛れば足を絡めてくる相手と格闘していると、 うっかり自分まで一緒に縛りそうになる。]
(*52) enju 2019/12/19(Thu) 23時半頃
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大変なものに見込まれたのだな、おれは。
[ ここまで衒いのない好意と性欲を示されると、揺さぶられる。 これまでにないことだから、戸惑いは大きいし、 いまだ、淫魔の業には苦手意識がある。]
あれはおれには必要な治療だった。 おまえだから、おれを助けられた。
(*53) enju 2019/12/19(Thu) 23時半頃
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そういうことだから、
── おまえと、また戦うのは、好いな。
[ 治療の名目が使えるくらい、叩きのめしにくるといい。 わざと負けてやるつもりはないが。
そっと笑った顔は、目隠しされた彼には見えないだろうけど、鋭敏化した他の感覚で、言葉にしなかったものまで伝わるといいと思った。*]
(*54) enju 2019/12/19(Thu) 23時半頃
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つれないこと。
[誘いに乗る様子の無い彼の態度に、唇をふくりと笑ませる。 手を縛る包帯を彼にも巻きつけようとして、身体をくねらせた。
こんな風に縛られて、こんな風に肌を密着させている状態で、おとなしくなどできるものか。 今度、彼も縛ってやろう。 そうすればわかってくれるはずだ。]
(*55) nekomichi 2019/12/20(Fri) 00時頃
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[こちらの目が塞がれているからだろうか。 彼の言葉がどこか素直な響きを帯びて聞こえる。 戦いしか知らなかったのだろう彼が示す好意の形は独特だった。 戦いの、その先を期待されているのならば応えよう。
けれども今は、もっと大切なことをしておきたい。]
大人しくしているから、抱いておくれ。 おまえを感じていたい。
[ただ側にいて欲しいと求め、ベッドに括られていたはずの両腕を彼に投げかけた。*]
(*56) nekomichi 2019/12/20(Fri) 00時頃
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[ 縛ったはずの相手が微笑み、腕を伸ばしてくる。]
……。
[ 変幻自在はともかく、恩義ある相手である。 その願いを無碍にするのもどうかと思う。
大人しくしているから、と殊勝な条件もつけているのだし。]
(*57) enju 2019/12/20(Fri) 00時半頃
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[ 先ほどまでのように、寝台に横たわって腕を枕代わりに伸ばした。
彼はどらちを向いて抱きしめられたいのだろう。 目覚める前に彼がしていたことの続きがあるのだろうか。
そんなことを考えるだけで、いささか鼓動が早まる。]
…これでいいか。
[ 話す声がいちいち肌に息のかかる距離だ。 記憶にある限り、こんな経験はない。*]
(*58) enju 2019/12/20(Fri) 00時半頃
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[伸ばされた腕の上に頭を載せ、彼と向き合い寄り添う。 両手はひとつに括られたままだったから、抱き返しはしない。 素直に手を下ろしていると彼のいいところに当たるのだけれども、そこはそれとしてだ。]
おまえを感じる。
[少し首を伸ばせば唇が触れ合うだろうけれど、今は宣言した通りにおとなしく腕の中に納まる。]
(*59) nekomichi 2019/12/20(Fri) 16時頃
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