246 とある結社の手記:9
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[響く声がある。ひとつ、ふたつ、みっつ。 空気を震わせずに届く言葉がある。
ロビーの面々を見回しながら、青年は一か所に視線を留めないよう注意しながら「彼ら」をも見た。これまで手を貸してきたモノたち。人を食らう化け物らの化身を。]
(*30) 2018/07/25(Wed) 16時半頃
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[かつてこの村にやって来た両親は、まだ小さい息子のみを残して行ってしまった。彼らが一人息子を置き去りにしたのは、単に、言葉通り一時的なつもりのものだったのか、────或いは声ならざる声を聴く子供が、疎ましかったか。
どちらにせよ、少年は両親が帰らないことを「知っていた」 ついておいでと言われたとしても、行かなかっただろう。行けば怖い目に遭うことを知っていた。或いは、きっと生きては戻れないだろうことも。]
… …。誰かがヘマしちまったのかよ。
[そういうことなんだろうな。と、人狼らの声を聴いて思う。そしてそれは、この場にいる彼らの仕業ではないのだろう。青年はやっぱり、困惑していた。せっかくこの能力を使って、襲われないように立ち回っていたというのに。安全だと思っていたのに。これじゃ台無しじゃないか。]
(*31) 2018/07/25(Wed) 17時頃
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なあ。やっぱり、みんなで逃げらんないかなあ。
ルパートさん、どうにかならない? なんかさーー、隠し通路とか隠しトンネルとか隠し部屋とか! そういうので、こう。しゅっと。しゅっっと!
………………………ない?
[あれば、とうに提案していそうな気もするが。 困った声が、宿の主へと向けられる。]
(*32) 2018/07/25(Wed) 17時頃
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[ルパートの宿に客として滞在したのは、遠い昔のあの時きり。 それからはローザス家の下働きとして、小器用な雑用屋として、そして───…「人狼」の小間使いとして、勝手口に良く顔を覗かせていたものだ。
ある時は芋の袋を運んだこともある。 ある時は庭の柵を直したこともある。 ある時は「肉」を運んだこともある。
両親の行方に思いを馳せることは、あまりない。あの人たちは「違った」から。よしんば人狼が仇なのだとしても、己を捨てていった人たちに義理はないから。]
(*33) 2018/07/25(Wed) 17時半頃
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……… 一々占われたら、困るっスね。
[そこだけ。そこだけは「彼ら」より自分の有利な点だ。ほんの密やかな優越感は胸に隠して、青年はひそりと囁きを落としわらった。**]
(*34) 2018/07/25(Wed) 17時半頃
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…………。
[ぱちぱちと小さく手を叩くばかりだった。]
(*35) 2018/07/25(Wed) 21時半頃
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狼煙に覚悟か。うん、うん。 まあ、必要になったことは、 一つずつやっていかなけりゃ。
[仕事をするだけ。そんな口ぶりだった。]
(*36) 2018/07/25(Wed) 21時半頃
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……お嬢様…本当に、ご立派になられて…
(*37) 2018/07/25(Wed) 21時半頃
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ははははは。
[隠し通路や隠しトンネルとか隠し部屋とかは、]
ないよ。
食糧庫のほうの 地下の出入り口も塞がれちまってね。
気づかずにいて貰えれば そっちから行こうと言えたんだが。
[あればとうに提案していたのかもしれない。]
(*38) 2018/07/25(Wed) 21時半頃
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そりゃあ、いちいち占われたら、 いずれは見つかっちまうだろうな。
ピスティオ、おまえだけ。 疑われようと占われようと、 なんともないってわけだ。
[彼のひそやかな優越感を知ってか知らずか、僅かに笑いの気配を伴って声をかける。(>>*34)]
(*39) 2018/07/25(Wed) 22時頃
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[宿の一室に取り残されていた子供。それがピスティオである。
彼の両親を肉の塊に変え、ちょうどよい大きさに切り分けて、声なき声で囁きあってはそれを分けあう。 あの子は両親が戻らないことを知っていた。
奇妙な子供だった。 人狼ではない、人間なのに、狼の声を聞く子供。 全ての作業を終えて宿に戻り、「置いていかれちまったのかい」と訊いたのが、どちらの声でだったか。もうすっかり忘れてしまった。]
(*40) 2018/07/25(Wed) 22時頃
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(>>1:97)
…見たのですか
"あの"遺体を…?
(*41) 2018/07/25(Wed) 22時頃
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逃げないってことになったら、 誰か三人、人狼としてでっちあげなけりゃな。
ピスティオ、手伝ってくれるかい?
[怒るでもなく、喜ぶでもなく、人に寄り添って生きた人食い宿屋の主人は、いつもの調子で穏やかに訊いた。]
(*42) 2018/07/25(Wed) 22時頃
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[無論、聞かずとも、誰が殺したのかを知っていた。]
(*43) 2018/07/25(Wed) 22時半頃
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[抱きしめるリンダ(>>1:118)の芳香と体温を全身で味わい―]
……ふぅ。
[その瞳は、恍惚の色を帯びた。]
(*44) 2018/07/25(Wed) 23時頃
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[恍惚に酔う声なき声が囁く―]
…偽の占い。大変、結構でございます。 もとより老獪狡猾なるルパート様の策略… 若輩のわたくしが、口をはさむ余地はございません。
ええ…ええ…
大変、結構でございます。
(*45) 2018/07/25(Wed) 23時頃
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[子飼いの"ヒト"がしくじろうと、切り捨てられるだけのこと―]
(*46) 2018/07/25(Wed) 23時頃
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ただひとつ…これだけは事前に申し上げましょう。
(*47) 2018/07/25(Wed) 23時頃
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『リンダお嬢様は、わたくしの"もの"――』
(*48) 2018/07/25(Wed) 23時頃
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骨の一欠…
肉の一片…
血の一滴にわたって
わたくしのものでございます。
(*49) 2018/07/25(Wed) 23時頃
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それさえ守っていただければ…… ええ、どうぞ…あとはご自由に……
(*50) 2018/07/25(Wed) 23時頃
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[返って来たこたえ>>*38は予想通りと言えば予想通りで。青年は黙って肩を落とした。やっぱり簡単にはいかないものか。]
あーあ。残念。
[それは心からの言葉だった。 残念だ。そうすれば少なくとも、無事にここからは逃げ出せただろうに。]
(*51) 2018/07/25(Wed) 23時半頃
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[ああ…忌々しい… なんと忌々しい… 心労も、心傷も、恐怖も、絶望も…
お嬢様を壊してしまう。
お嬢様の"肉質"を落としてしまう。]
(*52) 2018/07/26(Thu) 00時半頃
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へへ……っ
[占われても疑われても大丈夫。 それはきっと、とてもいいことだ。生き延びられる可能性が上がる。笑みの気配伴って掛けられた声>>*39に、青年は無邪気に頷いた。
とおい昔に、声なき声で呼びかけられた時と同じように。]
でっち上げ…でっち上げか。 なあ、でっち上げたら上手く切り抜けられるかな?
切り抜けたら、前と同じように暮らせるよな? 占い師は優先的に出られるらしいし……
[悪くない気がする。 でっち上げ。が、村の誰かを殺すに至ることまでは、気の回らないまま。]
(*53) 2018/07/26(Thu) 00時半頃
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構わないっスよ。手伝いましょうか。 えーっと……。俺っちが占いをしたらいいンすよね?
それで助かるってなら、お安い御用だ。
[いつもの雑用を引き受けるノリで、軽く笑った。>>*42**]
(*54) 2018/07/26(Thu) 00時半頃
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止してくれ。 ジジイなことは認めるが 策略なんて大げさな話じゃあない。 連中の言いたいことと、 おれたちの言い分の間をとりたいだけさ。
[ロイエに首を振り、ピスティオに頷く。]
手伝ってくれるか? ありがとうピスティオ。助かるよ。 ああ、今日からおまえが占い師。 よろしく頼んだぜ。
そうなりゃあ、 おまえを優先的に外に出してやれるかもしれない。 おれたちにとっても願ってもないことだ。
(*55) 2018/07/26(Thu) 01時頃
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ロイエが腕によりをかけて育ててきた娘さんだしな。 言いたいことはわかる。 なにせ、いいにおいがしているからな。 なるほど、高級な肉ってのは違うもんなんだねえ。
[どこか冗談めかしていう。]
……じゃあ、リンダお嬢様に おれたちが手を出さないかわりに、 ロイエはおれたちのお願いごとを 守ってくれるってのかい?
[そうじゃなければ、そのお願いごとを聞く理由はどこにあるのだろう。]
(*56) 2018/07/26(Thu) 01時半頃
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[老獪狡猾と称した宿屋の獣から、声なき声が返った。 我を通す"対価"を払え。 温和な声色の奥に、冷たい思惑が見え隠れする。]
……
[どのような無理難題を要求されるか。 先のピスティオが脳裏をよぎる。]
……それで『血の契約』が交わせるのであれば… はい……御二方の願い…なんなりと…。
[屋敷の獣は、いつもとかわらぬ冷たい口調で返した]
(*57) 2018/07/26(Thu) 02時頃
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[結社に邪魔されるわけにはいかない]
(*58) 2018/07/26(Thu) 11時頃
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ー リンダの個室 モンドが去った後ー
[ベットの上で弱々しく寝息を立てるリンダの頬を撫でながら、思案する]
······。
[ピスティオが能力者を偽り、身代わりの3名を結社に差し出す。ルパートは、適当に差し障りのない人間を選んで指示するだろう。ピスティオは口が回り、周囲からの信頼も厚い。問題ない。
真贋の効くサイモンは、今夜にでも始末する。“本物”の能力者が邪魔になるようならば、これも始末する。スージーならば、ぬかりなく息の根をとめるだろう。問題ない。
気がかりなのは、ルパートが要求する“お願い事”だ。資産か、利権か、はたまた育てたあげたメイドたちの肉か······。なんにせよ、弱味につけこんでくるのは想像に難くない。
だが構わない。取り返しばいくらでも効く。]
(*59) 2018/07/26(Thu) 14時頃
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