266 冷たい校舎村7
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[ もし田所怜奈が齢18で 世界から消えるとするならば、
恨み言に塗れた言葉を残すだろう。 ]
(290) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ 振り落とした汰風流は、 再び怜奈のほうへと寄ってくる。 気管支が締め付けられるようで、 息もまともにできなくて、立っていられない。 ]
……は、
[ 立ち上がって走り出してしまいたいのに、 上手くいかない。 酸素が足りない。 苦しい。
少しでも距離をとるようにと手と足で這って、 近くにあった教室へと入って、扉を閉めた。 ]
(291) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ 姿が視界から消えれば、幾分か気が楽になる。 背を扉に押し当て、開かないように。 開いてしまわないように。]
なんなの!?
[ やめてよ。やめてよ。 共通言語を話せていると信じていた時に、 両親にその宗教はやめてと何度も言ったことが、 頭の中によぎる。
すべてが過ぎ去るまで。目を閉じる。 ]
(292) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ 再び、足になにかが触れる。 目を開くと、教室の中には汰風流が、 文字通り溢れていた。 ]
ぁ、や、……ひっ
[ どこから湧きだしているのか不明だが、 どんどん数を増やしていっている。 教室から出ようとするも、 身体が思うように動かない。 できたことと言えば、 両腕で自分を抱くことだけだった。
足に纏わりついていた汰風流も、 段になり段になり、胸の高さまで来ている。 ついには、額に肉塊が触れた。 ]
(293) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ 救いをあげよう。 ]
(294) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ そんなものは、要らない。 私は何にも、 誰にだって、縋ることはない。 ]
(295) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ 声が聞こえた気がして、 小さな子供のように首を横に振る。 否定をすれば、 瞬間、怜奈は汰風流の群れの中に埋まった。 ]*
(296) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ 五度目のチャイムが鳴る。 ]
(297) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ 四階、生物室。 部屋の前には、 黒い顔料を踏んだような足跡が一筋のみ続いている。
足跡を辿った先の扉、 なにかが引っかかって簡単には開かない。 無理に扉を開けたなら、 そこにはマネキンが一体居るだろう。
自分を抱きしめるような恰好だ。 力を入れすぎたのだろうか、 指先はところどころヒビが入っている。 触れたなら、崩れてしまうだろう。
きつく編んだ長い三つ編みが、 田所怜奈を模していると示していた。 ]**
(298) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ 題をどうすると問われて、 結局無題としていたそれに、 二重線を引いて、書き足す。
家族
……どんなにあなたが嫌ったって、 この社会では醜く恐ろしいとされる、 それが、あなたの姿であって。 どんなにあなたが悲嘆に暮れても、 僕がひとりでその価値観に憤り、 拒絶と否定を繰り返していたって、 変わらないんだよ。なにひとつだって。
僕だって、そんなの知ってたし、 それでも同じ箱に生まれたんだから、 家族だから、幸せになってほしかった。]
(299) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ ……本当だよ。
ただ、僕が人より少し、 人間をうまくやるのげ下手だっただけ。
ばかげた社会は変えられなくっても、 ひとりの1日のうちの数時間なら、 少しくらい、よくしてあげたかった。
……そのぼろぼろの唇の端に、 軽く爪を立てる。いつもこんな顔して。 下がった口角。たまには笑いなよ。
そうやって、こすってみたって、 やっぱり、それは元ある形のままだから。
姉さんは姉さんでしかないから。]
(300) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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……そうだよねえ。
[ 僕は、小さく笑ってそれを手放し、
その場を立ち去ろうとして、ふと、 部屋の奥>>2:473に佇む、 その、柱のような形を見上げて、
……少し、もぐりこんでみたけれど、 もう夜が遅いから、ここは暗くて。
あの日見た輝きはそこにはなくって、 ただ、暗がりに色を透かして、見上げて。
……そう、夏を。少しだけ思った。]
(301) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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[ そうこうしているうちに、 もう、眠ったっていい時間になっていて。
……寝支度をして、教室に戻ろう。
轟木颯太が保健室で眠るはずで、 病人もそちらへ行くのなら、 今日は何人くらいが教室にいるのかな。 と、少し寂しく思いながら、その場を立ち去る。*]
(302) 2019/06/15(Sat) 23時頃
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──現実:4階──
誰かの思い出にしちゃ、 あんまりにもほの暗すぎだろ。
……一発、文句いってやんねえとな 犯人さまには、な。
[ 相変わらず、暢気だった。養拓海ってやつは。>>266 思い出たる世界の持ち主とは、到底思えぬほどに。 犯人捜しもほどほどに、凡ゆる想定の話へ飛躍する。
末恐ろしい妄想が膨らみ、 窓の外の闇にまでのまれそうなほどだった。 ]
(303) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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[ 晒すまぬけ面に吹きかけた煙は、>>268 どうやら拓海の肺まで沁みただろうか。 しばらくせき込む様子を、鼻で笑いながら見ては 言葉が出てくるのを、待っていた。 ]
俺に可愛げ求めるなんて、阿呆だろ それに、心中するとは一言もいってねえし
[ だから、少し調子に乗っていた俺は、 近づいてくる拓海のその先の行動の予測ができず 反抗するような煙に巻かれて、息を止めた。>>271
危ない、吸い込んじまうとこだった。 二の舞になるのは、ごめんだぞ。 ]
(304) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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[ つっても、完全に避けるのは無理で。 軽くせき込み、耐えるように息を止めれば 顔の熱が上がるのが分かる。
子犬みたいにじゃれる拓海の笑い声と、 外に飛んでいくちびた煙草の行方を目で追えば 真似っこするみたいに、自分自身も炎の消えた煙草を 暗闇の中へと放り投げていた。 ]
うるせえ、気持ち悪いこと言ってんな
[ 立ち去るその背に、ひとつ言葉を向けて ]*
(305) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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──チャイムの鳴る前に──
[ ───人間なので、トイレに入った。
みんながまだ寝静まる頃、教室から静かに出た。 やっぱり縄張りの保健室で寝る、……じゃなく 教室へ俺は向かったんだ。なんとなく。 連れション、なんてするタイプじゃないもので、 3階の通い慣れた男子トイレへひとりで行ったんだ。
用を済ませて、いざ教室へ戻らんとする。 そんな時だったろう。 ]
(306) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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―― それから ――
[そこからきっと、俺は階下におりて 実は全然食事をしていなかった事に気づき いくらか、購買のパンを食べた。
ふと、購買に置かれたメモを見つけては そこに記された言葉たちに笑ってしまう。]
(307) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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『3年7組の田所ちゃんにツケといてください』 蛇がのたくったような字。
『三年七組柊に、 ホットコーヒー代をツケておいて』 角ばった文字。
(308) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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[ 目の前に、あいつ≠ェ現れたんだ。 ]
……なんで、おまえ どこいたんだよ、腹減るだろ
[ 校舎に紛れて、隠れていたのだろうか? 我ながら、らしくないとは思うものの 嬉しくなって、表情が綻んでいたように思う。 近づいて、いつもみたいに腕を掴んだ。 瞬間。 ]
(309) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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……なーにしてんの。ほんと。
[この世界でのメモが いったいどうなるかはわからないけれど 俺はその文字たちもちゃんと覚えて、 パンの代金だけを置くと踵を返し、教室に向かった。]
(310) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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───ッ!?
[ どろり、と崩れ落ちた。 デブの身体は形を失い、どろんこ塗れになる。 ひとまわりもふたまわりも小さくなった塊は、 俺を見上げて、わんわんと泣き始めたのだ。 ]
(311) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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[ まるで、あの雨の日のように ]
(312) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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……なん、なんだよッ
[ うるさい、と思った。 少年のようなソプラノは耳障りで、 どろんこまみれで人の形をしたソレを、 思わず、蹴り飛ばさざるを得なかったのだ。
だって、もう捨てたんだ。 ]
(313) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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保健室じゃなくてもへーき。
[と言い張り、寝支度をした後 毛布にくるまって寝る俺の姿を いったい誰が見たか、は、知らないけど ほどなくして、きっと俺は眠りに落ちる*]
(314) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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強者に、なりたかったんだ
(315) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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[ 捨てたのに、現れる方が悪い。 あの日の自分はもう捨てたんだ。 弱い自分はどこにもいない筈なのに。 どうして、なんども、なんども、
こうも抉り返してくるんだ ]
(316) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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──文化祭のあった日──
[ ───あの日、おねがいを聞いたんだ。
ついてきて欲しい場所があるっていう。>>39 学校から離れた繁華街の裏通りに何の用だ? 暗いな、って思った。思ったけど、まあ、 あいつの言うことだし、と思ってついてった。
ここだよ、って到着地点を示された、 どっかの廃ビルの扉を促されるまま開いた。
評判のよくない学校の制服を着崩して身に纏う ガラの悪い男たちの視線を一斉に浴びる。 ]
(317) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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……おまえら、
[ 遠い昔の記憶が、脳裏に蘇る。
高みの見物、とは違う。 直接的に手を施してきたいじめっ子たちだった。 俺が、あいつを見ると、生まれたばかりの小鹿…… もとい、子豚のようにぷるぷると震えながら リーダー格っぽい男にへこへこ頭を下げていた。
胸の奥が、熱くなった。 それからのことなんて覚えちゃいない。 真っ先に飛び出るのは拳だったけど。 ]
(318) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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革命、なんて笑わせる
(319) 2019/06/15(Sat) 23時半頃
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