244 【R18】ミゼリコルディアの宴【魔女村】
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[片腕を失くしたとて元々の体格の差は歴然としております。 びょーんと飛び付かれたとしても何ともないに違いありませんが、そうしないのはドリベルのいいところです。]
うあー……おはよう……。
[元々的が大きいのです。近くまで走り寄ってきた身体はぎゅっと右手で抱き寄せて。流石にここまで近くに来れば、寝坊助の目にもまぁるい耳が目に入るでしょう。]
…………う、ごく……
[くるみの殻で拵えた耳じゃ、ここまでピクピク動かないでしょう。]
(3) 2018/06/15(Fri) 23時頃
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良かった……!力、ちゃんと引き継がれた……! 熊か……熊になったのか、どり……! 熊はすごいぞ、足も早いし、力も強い……。
[これで、何だって出来る……何処にだって行ける…… 男はほんの少しだけ笑顔を歪めて、柔らかな耳を撫でました。]
どり、……きちんと、全部熊になったら…… もっとこの山、遠くの事まで、教えるから……
[山の外れ、熊の脚なら数時間で人里に出られる場所を教えて……そこで、さようならを教えなければ。妹たちを探しに行っておいで、と背中を押してやらなくては。
窓の外、夏の間は青く繁った楓の葉の先が、ほんの少し赤く染まる頃の話。]**
(16) 2018/06/15(Fri) 23時半頃
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森番 ガストンは、メモを貼った。
2018/06/15(Fri) 23時半頃
森番 ガストンは、メモを貼った。
2018/06/16(Sat) 10時半頃
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[ぐい、と背伸びで近付いたドリベルの耳は男の目の前でピコピコ可愛らしく動きました。 男は頷いて答えます。]
悪い人間、避けて通るにも、場所知る必要ある。 うん、おれの知ってること、全部教える。
[秋から冬になる前に。熊が眠りにつく前に。 ……熊が罠のために殺されてしまったのを考えるなら、早く山から追い出してしまわねばなりません。
お揃いだね、と無邪気に言われて男は黙って微笑むのでした。]
(85) 2018/06/16(Sat) 14時半頃
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ー ある日の夜 ー
[その日は雨のよく降る日で、男はじんじんと疼痛を持つ腕を抑えてうんうん唸っておりました。 そこに、一通の手紙と革袋が届きます>>41 痛み止めだけでなく、一通りの治療に必要なものが込められた袋を覗き込んで安堵の息を漏らしました。
これで真夜中に唸り声をあげてドリベルを起こしてしまうこともないでしょう。
早速お礼をしたためるために、蝋燭の明かりの下でペンを走らせました。]
(86) 2018/06/16(Sat) 14時半頃
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カリュクス様
早速お薬が手元に届きました。痛めどめだけでなく込めていただいたお心遣い、有難く頂戴致します。
黒い森も恙無いならば何よりです。奇異なものですね、同じく人間の子を手元に置かれるようになるとは。カリュクス様のお側ならその子も安心でしょう。 今は手習いで文を書かせておりますので、慣れてきたなら子同士でやり取りさせてみたいものです。
胡桃のおやつがお口にあったのならば幸いです。もう秋も次第に深まる時期。旬の茸でも見つけたならばまた送りましょう。その時は是非お二人でお召し上がりくださいませ。 ガストン
[そうしてまたポストに手紙を投函したら、きっとその夜は心地よい眠りにつけることでしょう。ドリベルが既にカリュクスのところにいる子供と文通をしていると知ったら、また奇異な運命の巡り合わせに目を真ん丸く見開くのでしょう。]*
(87) 2018/06/16(Sat) 14時半頃
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[葉の先どころか、山全体が赤や黄色に染まる時期。
─────即ち、秋です。
山の木々が実をつけて、いい香りの茸が生えて、ごろごろ太った鮭が川を上ってくる……美味しいものがそこらじゅうに溢れる季節となりました。
約束の通り、男はドリベルを連れて山の深いところにまで連れていきました。 食べられる茸、毒の生えた漆の見分け方……出産を終えたばかりの鮭を拾って捌くやり方を一つ一つ教えていきます。]
あ、あれ、鬼胡桃。あれは美味しい。
[高い木の上にずらりと垂れ下がる実を指差して。 木に登れる熊もいますが、男がやれば間違いなく木がへし折れるでしょう。]
(88) 2018/06/16(Sat) 14時半頃
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[余ったシャツの袖をくるんと玉結びにして、慣れた足取りで山を進んでいきました。 また虎挟みがあるのは怖いのでドリベルを肩車にしようと思ったのですが……今度は山の木がドリベルの顔に当たります。仕方が無いので手を繋ぎ、てくてく歩いていきましょう。]
ああ、ここの辺り、下の沢に落ちると危ない。 道の真ん中、通るように。
[虎挟みが無いか、落とし穴がないか目を配りながら……それでも実りの秋に緩む頬を抑えることはなく。]*
(89) 2018/06/16(Sat) 15時頃
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[ドリベルがまだ人間だった時、果たして木登りは上手だったでしょうか。鋭い爪を幹に突き立てすいすい登っていく様子は、最初から子熊だったと言われても信じてしまうほど。 葡萄のように房を作った鬼胡桃を採ってきたのなら頭を撫で回して褒めてあげましょう。]
どりは凄いな。おれは木が登れない。
[軽業に似た芸当に思い切り拍手したい気持ちです。]
(135) 2018/06/16(Sat) 20時半頃
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[深い沢を見下ろしながら背後から聞こえてきた呟きに男は頷きました。]
出会った場所に、近いかもしれない。 ……あの時は本当に、びっくりした。 生きてる人間、いると思わなかった。
[沢を覗き込んだらあの大破した馬車は残っていたでしょうか。それとも夏の嵐に流されてしまったでしょうか。]
なら、どりが今生きてここにいること、凄い事だ。 ……ありがとう、どり。
[そうしてまた手を繋いで、最後の別れまでの時間を惜しむのでした。]
(136) 2018/06/16(Sat) 20時半頃
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……今日はここまでにして、帰ろうか。
[多く採っても冬には眠ってしまうのですから、今日採った分はほとんどその日のうちに食べてしまうでしょう。つまみ食いなどせずとも食卓に並ぶのは充分な量です。
そうして腹をくちくしたら……山道に耐えられるほどの力がつくでしょう。]
(139) 2018/06/16(Sat) 20時半頃
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ー ある日のこと ー
[窓の外、真っ赤な葉が散るのを見ながら男は深く息をつきました。]
どり、今日は少し傷が痛いから…… 1人で沢まで行っておいで。
[いつもなら一緒に手を繋いで出掛ける頃ですが、男は眉を顰めて嘘を吐きました。 いつも使う薬の事をつつかれたなら「なんだか効かない」と嘘を重ねるでしょう。なんと言っても花籠の魔女の薬ですので効かないわけがありませんのに。
籠を持たせて、飲み水を皮の水筒に入れたら……羊皮紙の手紙をひとつ持たせましょう。]
(140) 2018/06/16(Sat) 20時半頃
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後で…………沢に着いたら、読んで。 ここで読まれたら、恥ずかしいから。
[男はドリベルと暮らすうち、随分とおしゃべりが出来るようになりました。あれこれを説明して、教えるうちに、野生の熊としての生き方をする内に薄れた人としての心を取り戻した様な気がします。
だからこそ、別れの気持ちを口にするのが苦しくて、こうして手紙にしたためたのでした。]*
(141) 2018/06/16(Sat) 20時半頃
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[傷が痛むと言えば、幼い顔が首を傾げるので、痛い所を突かれぬように、男は殊更渋面を作ってみせました。]
そう、だって、どりにしか頼めない。
[わざと子供の正義心を煽るような事を言う自分に吐き気がしましたが、ここで堪えなくてはなりません。 それでも聞き分けのいい子ですから、何か疑問に思うことはあれ、言いつけに背くことはしないのでした。 男のために魚を採ってくるのだと息巻く姿を男は黙って見送りました。]
(173) 2018/06/16(Sat) 23時頃
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[その背が木々の間に消えて見えなくなるまで、入口で立ち尽くすと……男は家の中を見渡しました。
普通の家より大きな家です。 昔は天井に渡した梁にヤマネが走っておりました。 棚の上ではカッコウが美しい声を聞かせていました。
しかし、今はどうでしょう。 窓にはたくさんのテントウムシが張り付いています。 ギンガムチェックのテーブルクロスは二人が付けたインクの染みが点々と付いています。
そして何より、冬はまだだというのに、酷く寒くて静かな家でした。]
(174) 2018/06/16(Sat) 23時頃
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[男はその身を熊に変え、藁の上に突っ伏しました。
そうしてやがて泣き疲れる頃に─────深い眠りの底へと、1人で落ちていきました。]
(175) 2018/06/16(Sat) 23時頃
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愛するどりへ
沢でどりを見つけた時のことをよく覚えています。 あの大きな事故からよく生きていてくれたものだと、熊の耳をひくつかせて嬉しそうにするあなたを見て思うのです。
このままずっと一緒に過ごせたら、と願う身勝手を許して下さい。しかし、時折血を分けた妹を想うどりを見て、それは叶わぬ事なのだと自戒の想いを強めるばかりです。秋まで共に暮らしましょう、と言ったのは私の方なのですから。
この沢の流れに沿って河口に向かって下さい。そこには人間の住む街があります。呪われた血の大熊を殊更憎む彼等ですが、身寄りの無い人の子を無碍に扱うことはしないでしょう。
多く人の行き交う街です。山で暮らしてきたどりには戸惑う事も多かろうと思いますが、人が多いところには情報も集まります。妹を探すならこの山で愚かな男と暮らすよりずっと機会に恵まれているはずです。
(176) 2018/06/16(Sat) 23時頃
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人の街に着いたなら、もう二度と熊になってはいけません。 そして、絶対にこちらに戻ってきてはいけません。
直接口でお別れを告げるべきでしたが、あなたの怒った顔にも泣いた顔を前に、簡単に決意を揺るがせてしまう弱い私を許して下さい。
何処にいても、ずっとあなたの幸せを願って。
ガストン*
(177) 2018/06/16(Sat) 23時頃
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森番 ガストンは、メモを貼った。
2018/06/16(Sat) 23時半頃
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[鍵など付いていない家です。空き巣が入るには人里から離れすぎていて、魔法使いや熊を恐れる人間ならば鍵を開ける前に火矢でも放つでしょう。
熊は身を縮めてこんこんと眠っておりました。
眠っている間は、無いはずの腕が痛むこともありませんし、心が痛むこともありません。 言わねばならぬことからも逃げ、少年の気持ちを聞くことからも逃げ、眠りの世界の揺りかごに揺られたまま春を待つのです。
眠りの間際に繰り返していた「これで良かった」「これで良かった」という言葉を時折うわ言のように口にしながら。]**
(187) 2018/06/17(Sun) 00時半頃
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[霧ふり山の冬は、命あるものすべてを凍らせようとするほどに寒く厳しいものでした。
魚を捕った川は一面が氷に覆われて 鬼胡桃が実った木はもうとっくに禿頭 ぬかるんだ道は1歩踏み込んだなら つるりと滑ってあっという間に沢まで真っ逆さま
人間など入る余地の無い場所でしたが、それでも男は固く身を丸めておりました。
夢の中、小熊が一頭、沢で魚を捕まえております。 その後ろ、木の影から鉄砲の先を覗かせてじっと息を殺す人間がいることに小熊は気付くことはありません。 いけない、逃げろ、という男の言葉は、夢の世界に溶けて形になりません。
人間の指先が引金を引くのが怖くて、逃げ場を求めて掻いた手は……傍らの暖かなものに触れて、爪を引っ込めました。]
(216) 2018/06/17(Sun) 16時頃
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[もうここには一人しかいないはず……などと疑問に思うことなく、意識は眠りの世界を揺蕩って、そのまま手に触れた小さな存在の温かさに甘えるように鼻を鳴らすと、ぎゅっと胸の内に抱き込むのでした。
『これで良かった』とぽつりと呟いて
不思議とその後は悪夢に魘されることもなく、冬の山の時間は過ぎていきました。]
(217) 2018/06/17(Sun) 16時頃
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ー それから ー
[熊が目を覚ましたのは、小屋の屋根に積もった雪が溶けて滴る音を聞いた時でした。 深い眠りから覚めたばかりで、欠伸をすることすら億劫なほど。
眠る前と変わらぬ我が家を見渡して……玄関から続く泥の足跡と、己が懐に抱いたものに目を向けました。]
…………。
[そこに、服を着た小熊が寝ていました。 本当ならここにいるはずのない小熊ですが、寝惚けた熊は見覚えのある丸く柔い耳を見下ろしながらにっこりと微笑んで]
(218) 2018/06/17(Sun) 16時頃
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おかえり、どり。
[もう一度、右手でしっかり抱き寄せて、もう一度瞼を閉じました。起きるにはまだ寒い。屋根の上の雪が溶けきったら目を覚ましてもいいかもしれません。 起きたら生え始めの木の芽や蕗の薹を探しに一緒に外に出て……それからそれから……。
しっかり目を覚ましたらとんでもないことが起きたのだと気付くのでしょうが、寝坊助の大熊はまた安らかな寝息を立て始めました。]*
(219) 2018/06/17(Sun) 16時頃
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[また眠りの底に沈みかけた意識に、小さな「おはよう」と欠伸が響いて、熊はほんの少し瞼を開けました。
なんらおかしくない朝です。 ちょっとまだ冬の気配は残っているけれど、暖かな藁の匂いがして、目の前でぴこぴこ動くドリベルの耳が可愛らしい。 そろそろ朝ごはんの時間なのにドリベルが寝ているのが気になるのでしょうか?いえいえそんな日だってありましたとも。
そういえば、寝る前にひどく辛く悲しいことがあったような気がしますが……数年前に読んだ本の内容のように、ぱっと頭に蘇ってきてくれません。
ぐわっと大きな口を開けて欠伸をしたら、また眠気が襲ってきます。熊はまた瞼を下ろして……]
(237) 2018/06/17(Sun) 18時半頃
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…………………………まって、おかしい。
[またくわっと目を見開きました。 寝耳に水、懐に熊、眠気など綺麗にすっ飛んでいって、熊はがばりと起き上がりました。]
……何故、どり?
[熊の記憶が定かなら、戻ってくるなと書いたはず。 幻でも見ているのでしょうか……頭をふるふる振るってみても、さっきまで抱いていた熊の子はちゃんと目の前にいるようです。
困り果てた熊は、おん、と鳴いて頭を抱えてしまいました。]
(238) 2018/06/17(Sun) 18時半頃
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[ともかく、きちんと話さねばなりません……事によっては起きて早々牙を剥かねばならぬかも。]
どり、どういうことだ。
[まだ小熊が寝こけているならつついて起こし、起きているなら不機嫌に唸ってみせるでしょう。]*
(239) 2018/06/17(Sun) 18時半頃
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[どういうことって?なんて聞き返されたのがすっとぼけでないことくらい、その目を見れば分かります。 きっとこの聡い子供なら分かってくれるに違いないとタカをくくった己を責めて、熊はぐっと奥歯を食い締めました。]
言ったはずだぞ。 ここには戻ってくるなと。 その理由も全部、説明したはずだ。 子どもの理屈で、罷り通るはずがない!
[歯を剥かれ、唸られても、こちらの方が熊として生きてきた時間が違います。 二本足で立ち上がると、天井を突き破らんばかりの図体で、ぎろりと子熊を見下ろしました。]
(259) 2018/06/17(Sun) 20時頃
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[唸れば地鳴りのよう、剥き出た牙はナイフの鋒のよう。大きな熊は怒気を込めて、おん、と鳴きました。]
ここに居てどうする!おれといてどうする! 動物になれる魔法使いを殺す人間がいると おれは言ったはずだ、どり。
[子ども相手に大声で吼えるのは大嫌いでした。 でも、聞き分けのない子どもの手を取り優しく教えるための言葉を、男はよく知りません。
まだちゃんとは働かない頭で必死に言葉を練りましたが……]
(260) 2018/06/17(Sun) 20時頃
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おれだって、家族、失いたくない。 何故それを分かってくれない。
[大きな熊は言葉で諭すより先に、小さな目に涙を溜めて言いました。小さな小熊に威嚇までしておいて情けないでしょうが、説明出来ない気持ちはどんどん雫になって溢れてくるのです。]*
(261) 2018/06/17(Sun) 20時半頃
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[返事を拒んだのは、確かに男の方でした。 勝手に彼の道を決定したのも。
それでも大熊は立ち上がって牙を剥くほかの術を知りません。]
おれは人間とは違う!
[鎖で繋ぐ代わりに沢までの道を嘘で塗り固めたこと以外変わりはない、と肯定しかける自分を噛み殺し熊は吠えました。]
いいか、お前も大人になる。 ここで、何時消えるとも分からずこの先を生きるより 広い場所行けば、道はたくさんある! 考えるだけ、望むだけじゃダメなんだ、どり。
[一族の守った土地に縛られる理由は、ドリベルには全くないのですから。]
(285) 2018/06/17(Sun) 22時半頃
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[泣かれることも怒られることも辛いはずなのに、熊は牙も涙も収めることもなく、息を切らした子熊を見つめました。]
おれの家族になってくれるの とても嬉しいことだ、どり。 だけど、おれの問題に、どりを巻き込みたくない。
[年端もいかない少年が、家族であるが故に狙われるなど……決してあってはならないことです。 懇願するような声で熊は諭し続けます。
人間が矛先を収めるようになること 男が人間と戦わずに済むこと 少年が人間の手にかからず済むこと
そんな都合のいい未来は一体どこにあるというのでしょう。]
(290) 2018/06/17(Sun) 22時半頃
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