196 水面に映る影より遠く
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── 花火のあと ── [みんなが家へ着いた頃、 一通のメッセージを知らせる音が 夏の夜に小さく響く。 補講組のグループチャット、 送信者は…───若菜 優。]
〈 明日!お祭り行きませんか! 来れる人は夕方5時に駅前集合! 彰人がたこ焼き奢ってくれるって! 〉
〈 今日はたのしかった! おやすみー 〉
[用件のみを伝えたそれに 何人から返信があっただろう。 ちなみに、たこ焼きの話はいま作った。]
(4) choro 2016/08/23(Tue) 19時頃
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みんな、来てくれるかな。
[ぶくぶく。 湯船に沈みながら、思い浮かべた顔は──]
………。
[ぶくぶくぶく。 今夜はなかなか、寝付けそうにない。]
(5) choro 2016/08/23(Tue) 19時頃
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[風呂上がり、タオルでがしがしと髪を拭きながら 縁側に腰を下ろして新着メッセージを確認。 海から吹く風が、火照った体に気持ちいい。 後ろからじいちゃんが「服を着ろ」って声をかけてきたけど、「んー」と返し、そのまま画面をスクロール。 下は穿いてるからいーじゃん。 あ、みんな参加してくれるっぽい。]
………ん
[画面を送る指は、あるところでピタリと止まる。 海風に揺れる鈴の音が、 波の音に合わせちりんと響いた。]
(65) choro 2016/08/24(Wed) 12時頃
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なにこれ、どっち。
[タオルを首にかけたまま ごろんと寝転び見つめるのは 送信者の ─ 鈴宮 小夏 ─ の名前。>>29]
( いつもなら絶対行くって言いそうなのに… )
[律への返信を思い出しながら>>1:358 行かない ともとれるような曖昧な返事に 僅かに眉を寄せる。]
(66) choro 2016/08/24(Wed) 12時頃
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律は良くて、俺はだめなわけ…?
[呟いた直後、ハッとする。]
( ……なんだいまの。違うだろ。 そうじゃなくて、えーと… なんだよもう、モヤモヤする )
[足をブラブラさせながら 開くのは個人チャットの画面。 ………けど、指は画面の上をうろうろ泳ぎ 文字は綴られないまま。 なんて送る? そもそも送る必要はあるか? ていうかおやすみってスタンプきてたし、 もう寝てる?起こしちゃうかな。]
(67) choro 2016/08/24(Wed) 12時頃
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あーーーーー
[だめだ、俺らしくもない。 クラスの女子に参加するか聞くだけで どんだけ時間かかってんだよ。
そうだよ。小夏はクラスメイトの女子。 ちょっとふざけて話したり ちょっと二人乗りとかするくらいの仲の…
………いまは ちょっと気になってる、女子。]
…………
[起き上がり、下ろしていた足を上げ三角座り。 両手でぽちぽちとメッセージを打つ。]
(68) choro 2016/08/24(Wed) 12時頃
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[散々悩んで、送ったのはたったのそれだけ。 そのあとしばらくは三角座りのまま、 じっと画面を見つめていた。 いや、返事待ってたとか、 そんなんじゃ、ないんだけど。]**
(69) choro 2016/08/24(Wed) 12時頃
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[メッセージを送ったのは、昨日の夜。 両手で携帯を持ち画面を見つめていた俺は 新着メッセージを反射的にそっこー開いた>>-365 すぐに既読をつけてしまったことを恥ずかしく思いながらも恐る恐る見た画面には、手を振るスタンプひとつきり。>>104
“ お前なんかと行く気はない ” そう言われている気がしてぴしりと固まったけど そのあとすぐに訂正がくれば ふっ、と息を漏らし静かに笑った。 寝ぼけてた…のかな。
ちりん 、 風鈴が また揺れる。]
(112) choro 2016/08/24(Wed) 19時半頃
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── 祭りの日、駅前 ──
( 嫌われたわけじゃなくてよかった )
[昨日の小夏のメッセージを読み返しながら 心の中で安堵のため息。 ん?嫌われなくて……?]
………いやいやいや
[何故そうなるんだ若菜 優。 ただの誤送信だろ、気にすんなよ。 おまけに、返ってきたのは 色気もなにもないただの連絡文>>-365。 なんであんなので喜んでんだ、若菜 優。 どうしたんだ、若菜 優。]
(113) choro 2016/08/24(Wed) 19時半頃
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……はやくこねーかな、みんな。
[どうも最近、調子が狂う。 盛大なため息を漏らしながら腕時計をチラ見。 時刻は16:15。 約束の時間まではかなりある。 家にいても落ち着かなくて、 早くに到着してしまった。
いや、ほらおれ、主催だし? 一番乗りがいいかなって。]
(114) choro 2016/08/24(Wed) 19時半頃
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さびしー、ぞ。
[ぼそりと漏らした心の声は 夕暮れの空に溶けていく。 祭の会場はここから近く。
賑やかな声を、遠くに聞いていた。]
(115) choro 2016/08/24(Wed) 19時半頃
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[もうすぐ誰かがいなくなってしまう。 結局それが誰なのかを 俺は知ることができなくて。
昨日まで同じプールで泳いだ面々を ひとりひとり、思い浮かべ──]
“ いと ”
[口にしたのは、昨日、 その名を呼ぶことを許してくれた女の子。>>2:480>>2:481 浴衣を着て、眼鏡のない素顔を晒す彼女は まるで 知らないだれかのようで。 ほんの少し、その存在を遠く感じた。]
(116) choro 2016/08/24(Wed) 19時半頃
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来てくれんのかなあ……
[ようやく結んだ糸が もうすぐ解けてしまうなんて、 俺はまだ、知らない。]
(117) choro 2016/08/24(Wed) 19時半頃
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[ひとりに耐えられなくなった俺は 律に向けてメッセージを送信。
律に向けて。 そう、律に………]
ッ、!?!?
[律じゃ、ない!? 小夏じゃん!!! なにやってんのおれ!ばか!!]
(118) choro 2016/08/24(Wed) 20時頃
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[まるで何事もなかったかのように送ったそれ。 小夏に変な風に思われてないといいけど。
……いや、変に思うわ。 どうしようめっちゃ恥ずかしい。 律!はやくこい、律!
駅前広場、ひとりわたわたする俺は たぶんきっと、すごく不審者。
今度は宛先を間違えないように確認して 律に「はやくきて」とだけ送信。 間違えてない、大丈夫。]**
(119) choro 2016/08/24(Wed) 20時頃
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( そわそわする…… )
[ベンチに腰掛けながら袖を揺らす。
着ていけって出された 黒地に細やかな縦縞模様の入った新しい浴衣。 恥ずかしいからいいよって言ったんだけど じいちゃんが、うるさいから、仕方なく。
普段和服なんて全然着ないから 変じゃないかなって落ち着かない。]
(142) choro 2016/08/24(Wed) 23時頃
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( はやく誰か来ないかな… )
[ちらり、手元の携帯に 何度目かの視線を落とした時 突然目の前が暗くなり 甘い囁きが耳元に>>131]
ぅ、わ ちょ、なにっ、……
[耳にかかる息がくすぐったくて 思わず肩が大きく揺れる。 けど、その声を 俺は知っている。 いつも俺のそばにあるこの声は───]
(143) choro 2016/08/24(Wed) 23時頃
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………………りつ?
(144) choro 2016/08/24(Wed) 23時頃
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[手をかければ、目を覆うそれは離れただろうか。 座る俺の背後に立つ人物を視界に捉えたなら]
……っ、なにしてんだよ馬鹿
[って、ぐーぱんち。 クラスメイトに目撃されているなんて気付かない>>137。
たしかに呼んだけど! こんな現れ方は注文してない!]
(145) choro 2016/08/24(Wed) 23時頃
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………さすが、 弓道部様は和装がお似合いですね?
[さらりと浴衣を着こなす律を 上から下までジロジロ見る。 すらっとしてて、様になってる。 くそ、なんか悔しい。]
座れば? まだもーちょい時間あるし。
[ぽん、と隣を叩いて見上げた。]
(146) choro 2016/08/24(Wed) 23時頃
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うん。 いつもより三割り増しで男前。 ……なに照れてんだよ。
[素直に褒めれば、顔を隠す律。>>167 それがおかしくてくすくす笑って、 俺を褒める言葉には そりゃどーも、って軽く返した。 少しだけ くすぐったい気分。]
(179) choro 2016/08/25(Thu) 00時半頃
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そうそう、たこ焼き奢ってもらお。 焼きそばとー、お好み焼きとー、 フランクフルトとー
あ、射的やりたい! って、律にはボロ負けしそうだけど。 金魚掬いは…うん……
[食べたいものを指折り数えて 射的は弓道部には敵わないって肩を竦める。 いや、弓じゃないしワンチャンある? 金魚の言葉にはいつかの夢を思い出して 苦笑を返すだけ。]
(180) choro 2016/08/25(Thu) 00時半頃
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……デート?
[視線を落とす律をちらり。 その言葉に含まれた意味はわからぬまま この前の冗談の続きかと、 からから笑いながらこたえを返す]
(181) choro 2016/08/25(Thu) 01時頃
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ん、有効。 今日は俺が誘ったんだし?
かき氷の約束もしたしな。 食べるんだろ?初恋の味。
[足をぶらぶらさせながら隣の律を見る。 初恋の味ってどんなのかな。 おれも、知りたいかも。]
(182) choro 2016/08/25(Thu) 01時頃
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── 律がくる少し前 ── [ ひとりで寂しい、なんて>>-377 あんなこと、いくら律に向けてたものとはいえ 送るんじゃなかった。 寂しい時はちゃんと言え>>2:-25とか いとには偉そうに言ったけど ちゃんと言った途端、これだ。
小夏にきもいって思われてないかな。 沈む心は、返信を知らせる振動によって さらに深く沈むこととなる。>>-427]
お、怒ってる……?
[“勘違いしたじゃん!”って、どういう意味だろ。 間違ったって言わなきゃ、来てくれてた? ……なんて、んなわけないか。]
(205) choro 2016/08/25(Thu) 06時半頃
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[あとで来たら謝ろう、と 返信はせずに画面を閉じる。 麦茶を零したのも、怒られたのも>>152 俺が知ることはないんだろうけど、
ちょっと期待してくれたんだと知れば 沈んでいた心も、少し浮上したかもしれない。]
(206) choro 2016/08/25(Thu) 07時頃
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[いつもと同じように笑う律>>209。 初恋の話題には何故か一瞬、ドキッとする。]
この前は俺にはまだ先の話って言ってたくせに。 ……律もまだなんだ?初恋。
[自分よりも経験豊富そうだと思っていたから>>0:185>>1:155、意外そうに目を丸くして。 “デート”って改めて言われると なんだか少し、恥ずかしい。]
(217) choro 2016/08/25(Thu) 13時頃
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なめんな。転ばねーし。 そーいうのは女子にやってやれよ、イケメン。
[差し出された手をとることはなく。>>210 ぱしんっ、と軽く叩きながら立ち上がる。 律の笑みに、変化はあっただろうか。]
(218) choro 2016/08/25(Thu) 13時頃
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[からころ、からころ。 掌を重ねることはなかったけれど 二人の下駄は同じ音を響かせ。 逸れぬように、律の隣を歩いていく。 狭い道にずらりと立ち並ぶ出店たち。 目当てのかき氷屋は、すぐに見つかった。]
……お、かき氷。 レモンでいいんだっけ? んじゃ、俺は……ブルーハワイ。
[代金を支払うと、 約束通り律に初恋の味とやらのかき氷を手渡す。 俺が選んだのは、夏の空と海を感じさせる青。 しゃくりとスプーンをさして一口口に入れれば 舌の上を氷が冷やし、じわりと溶けていく。 その冷たさに おぉ…と目を細めながら、 隣の律に視線を送る。]
(219) choro 2016/08/25(Thu) 13時頃
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どう?初恋の味、する? 俺にもひとくちちょーだい。
[さっと自分のスプーンを向ければ 律はどう反応しただろう。 だめだと言われても、 「俺の金だし」と理由をつけて、 きっとその白い山からひとすくい、 “ 初恋 ”を盗むのに成功したはず。]
(220) choro 2016/08/25(Thu) 13時頃
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