人狼議事


237  それは午前2時の噺。 

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【人】 墓守 ヨーランダ

[駅前まできたのだから、と本屋へ足を伸ばす。
雑誌群を横目に新刊コーナーを通り、奥の棚へ。出版社別五十音順に並べられた、ブロックの終わりの方に「万井 菫花」の背表紙を見付ける。
デビュー作の『造花の道』、二冊目『透かし絵の君』と並び、短編集の文庫本『ののはな』も置かれている。
これに続くものは、まだ、ない。

自分で名乗ったことはないのだが、一度打ち合わせで斗都良までやって来た担当が「この町に作者が住んでいる」と売り込んだらしく、一時は平積みの小さなコーナーも作ってくれていた。
再びコーナーを作るためのものは、まだ、ない。]

(4) 2018/03/25(Sun) 08時半頃

【人】 墓守 ヨーランダ

[スーパーに立ち寄り、簡単に食べられるものとお茶のティーパックの追加を幾つか見繕う。
ああ、砂糖が残り少ないのだっけ、と棚の間を探していれば、走り回る子供のはしゃぐ声と、それに続く母親の怒鳴り声。
うんざりしたように「ここにいて!」と叫ぶ声は、眠らせたままの一編を思い出させた。]


  「大丈夫よ。」
   母の声が手首を引く。
  「明日にはきっと、」
   母の声が足を左右順番に運ぶ。
  「良いようになっているから。」
   母の声が喉元に巻き付いてジワリと絞めていく。
   嗚呼、あの男は明日までにこの世を去るのだろう。


[我が子を溺愛する母の執念と完全に管理された息子の話。デビュー作を自ら皮肉に書き直すような小編は、公園で何から何まで口を出す母親を眺めていて生まれたのだけど──

手厚く支援してくれる自分の母親を、そう思ってるのだと誤解されてしまったら……なんだか恐ろしくて、書きかけで引き出しの奥に仕舞いこまれている。]*

(5) 2018/03/25(Sun) 08時半頃

墓守 ヨーランダは、メモを貼った。

2018/03/25(Sun) 08時半頃


【人】 墓守 ヨーランダ

[その後もぐるぐると、休憩を挟みながらあてどなく町をさ迷ってみたけれど、世界に目覚めは訪れなかった。
浮かぶのは記憶のアルバムとそこから溢れ出る文字ばかり。

夕暮れに公園を通りすがる。お蔵入りさせた小編の生まれた、ととら第一公園。
あの母子……何を言われても子供は素直に頷くのに、母親は言葉を重ねる毎に己に酔うように声のトーンが上がっていき、
──キィー……
ブランコの揺れる音が、夕焼け空に響く金切り声を思い出させた。]

 駄目……こんなんじゃ、なにも…。

[子供の姿が疎らに見える公園。ブランコの音を立てた人影は夕焼けの逆光で影のように見えて、背筋がゾクリとする。
否、空気が冷えてきたようだ。

足を早めて公園を離れると、逃げ込むようにアパートへと戻った。
気分転換とヒントを求めて出た筈なのに、気持ちはすっかり落ち込んでいる。リセットが──必要だろう。
静かな夜の空気で浄化されたくて、太陽と共に眠りに落ちる事にした。]*

(6) 2018/03/25(Sun) 16時頃

【人】 墓守 ヨーランダ

 ─ 深夜二時の、少し前 ─

 ───…んぁぁあ……

[コツ、コツ、コツコツコツコココココッ。
世界を始める筈のペンの一音は無駄に嵩み、意味のある線はひとつも引けないままに夜が耽る。
原稿用紙に押し付けられた頬からは声にならない呻きが漏れて澱んだ空気を重くして。
頭の中を支配するのは、今日一日思い出した自作の文字と、今や手遅れである修正の文言、それに時計の針の音。雑多なそれらがぐるぐる渦巻き、とても新たな世界が割って出る気配などない。]

 さんぽ。散歩に行こう。気分転換。

[昼間に失敗したのは明るすぎたから。
情報過多で惑わされてしまったから。そう言い訳をして、昼間と変わらぬ格好で表へと出る。
書けない焦燥感でポシェットにヨムマジロ君を押し込むのにも苦労しながら、トボトボと暗い夜道を歩いていく。
照明でぼんやりと浮かぶ空間は、先程の公園。
入口に差し掛かった、その時。

   ふつり

世界から光が失われた──]

(7) 2018/03/25(Sun) 16時頃

【人】 墓守 ヨーランダ

[人間、驚き過ぎると声も出なくなるようで。
乾いたみたいな喉で浅く息をしながら周囲を見渡した。
暗い。

急に光を無くし闇に閉ざされれると、何かにぶつかったのか、それとも穴に落ちたのか、そんな風に思うようだ。
触れることの出来ない、けれど己をすっぽりと包む暗闇に、オロオロとどうすることも出来ずにいると、


  ───キィィィ……

   ブランコが大きく音を立てた。
   まるでこちらを驚かそうと意志を持って
  いるかのように。]


 きゃぁぁあ!!

[暗転の瞬間よりも驚いて、高い悲鳴をあげてその場に座り込んだ。]*

(8) 2018/03/25(Sun) 16時頃

【人】 墓守 ヨーランダ

   くらくなると、こわいものがやってくるよ。

   うそ!
   よるがくると、ゆめにはいって、たのしいことが
  たくさんになるんだから!

   ほんとうに?
             ほんとうに?

   ほんとう……、だよ。ほら、きれいないろの
  ことりが、おかしのおうちにみちびいてくれる
  はずなんだから──あれは……なに…?

   こわいものが、やってきたんだよ!


[ヒッ。
掠れた息を飲みこんで、座り込んだまま自分で自分の肩を強く抱きしめる。
現実には恐ろしい妖怪なんている筈無いと分かっていても、自分の指先さえ見えないこの闇の中では僅かな物音でさえ、悪いものの気配のように錯覚してしまう。]

(23) 2018/03/26(Mon) 01時半頃

【人】 墓守 ヨーランダ

[手で肩を擦りながら右に左に首を巡らせるけれど、視界を助けるような光源は見当たらなかった。
完全なる、闇。


   鎖された闇の中で急速に失われる平衡感覚。
   今自分が立っているのか座っているのか、前と
  後ろと右、左、どちらを向いているのかさえ
  あやふやで、不確かで──酷く不安になる。]


 ……あっ、

[チリン。
微かな鈴の音。聞き覚えのあるそれは、ヨムマジロ君のキーホルダーに付いたものだとすぐに思い至る。
先程慌ててポシェットに入れた時に、しっかり仕舞えていなかったのだろう。座り込み、不安に身を震わせる内に不安定に引っ掛かっていただけのそれはずれていき、遂に地面に落ちたのだ。]

(24) 2018/03/26(Mon) 01時半頃

【人】 墓守 ヨーランダ

[携帯電話は、携帯してきていない。
手元を照らせるものは、なにもない。
手探りで周りの地面を探るけれど、一瞬指先に触れた硬い物は、その指に弾き飛ばされころころと離れて行くのを感じた。]

 や、やだ、どうしよう…!

[自分の周囲をパタパタと叩いて探しながら、暗闇の利点を一つだけ知った。
どんなに瞳に涙を浮かべても、滲むべき視界がないのだから困らない、ということ。]**

(25) 2018/03/26(Mon) 01時半頃

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