88 めざせリア充村3
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―― 自室 ――
[無機質なメッセージ。そこにある名前を見て顔がこわばる。 今度の名前は――ヨーランダ。 灰の髪を持つ預言者だった。]
……あいつは。だって。
[誰もいない部屋で声が零れる。 ここだけはポプラの監視も入っていない。]
だって――あいつは、能力を使ったら……
[ここを出て、戦いの中で生きていく子も多くいる。 軍の中で出世していく子もいる。 けれど、彼女は。]
……くっそ……
[浮かんだ涙が頬を滑って落ちた。]
(*0) 2013/06/23(Sun) 00時半頃
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― 制御室 ―
[暗い暗い部屋の中。 カプセルの中に青白い人工の光に包まれて ぼんやりと浮かぶのはもう一人の「わたし」の顔。 肉体の眠る器の傍らに腰かけて、上からの通知を見る。 翠の眼を何度瞬かせても、映る名前が変化することはない。]
……ヨーランダ…なの…。
[目的は彼女の能力と判りきっていた。 あの子の能力は、とても重宝されるだろう。 戦いにおいても。政治においても。 だけどそれは、ヨーランダ自身の命を削る。]
(*1) 2013/06/23(Sun) 01時半頃
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……みぃちゃんも…ヨーランダも……見てる…よね。
[二人のチェックはすでに入っていた。 いつも勝気なヨーランダが今どんな顔をしているかも見たくなくて。 少しだけ、ほんの少しの間だけと、カメラからの映像を遮断した。
遮断する前、眼の届く範囲にミナカタの姿はなく。 自室にいるのだと推測はできて―― 会いに行きたかったけれど、今はそうすべきじゃないと。
振り払うように、暗くなった視界を更に閉じて、膝を抱えた。]
(*2) 2013/06/23(Sun) 01時半頃
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――診察室――
[どんな顔で告げればいいのかわからなかった。 ヨーランダは敏い。 自身の能力が命を削ることもわかっていた。 彼女にとって、外に行くことは死に行くことと同じだ。]
……なあ、俺は何のためにいるんだろうな。
[ヨーランダが呼び出されてここに来る前に、 傍らにいるポプラに思わずそんな言葉を漏らす。]
(*3) 2013/06/23(Sun) 01時半頃
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― 診察室 ―
[ヨーランダがもうすぐここに来る。 自身で見た現実を、もう一度突きつけられるために。
外の世界へ出ていく前のカウンセリングとして、 この場を設けることは義務付けられているけれど。
こんなの、誰も救われない。]
(*4) 2013/06/23(Sun) 02時頃
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……みぃちゃん、 …けど……みぃちゃんがいるから… …ここにいる子達は……笑っていられる…の。
[聞こえた呟き>>*3は、滅多に見せない陰の部分。 どれだけ守ろうとしても奪われていくやるせなさは、 上や外との折衝役でもあるミナカタの方が何倍も強いだろう。
だけど、他にはもっと酷い環境のところはいくつもあって。 それはこの研究所の昔も同じこと。
だから、今。ミナカタのしていることは無駄じゃないのだと。]
(*5) 2013/06/23(Sun) 02時頃
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[昔は酷かった。 被験者は犬猫扱いならばまだましであり、実際消耗品の武器と変わらぬ扱いで、ベッドすらない部屋もあった。 温かい食事があるかどうかも運次第。
今のこの施設が良いのは、ミナカタとポプラが必死に働きかけて、 そしてきちんと成果をあげているからだ。 温かく美味しい三度の食事。 綺麗なシーツ、充実している医療器具。]
……俺がいなくたって、あいつらは笑えるさ。
[苦く呟き、優しいポプラの言葉を否定する。 彼らに必要なのは、優しい監督者であって、 男本人ではないはずだ。、
(*6) 2013/06/23(Sun) 02時頃
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……それでも…今ここにいるのは……みぃちゃんなの。
[否定>>*6を更に否定する。 父親のように慕う志乃も、 ミナカタを手伝うリッキィも、 いなくならないよねと聞いたオスカーも、 他のみんなも。 ミナカタがいなくなれば悲しむだろう。
必要なのは確かに肩書きかもしれないけれど、 今の研究所を作ったのも、皆に慕われているのも、 他の誰でもなく、ここにいるミナカタだ。]
(*7) 2013/06/23(Sun) 02時半頃
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そりゃ、お前がいてくれたからな。
[ポプラの言葉に小声で返す。>>*7 それを聞いた彼女の表情はどうだったか。 見たくなくて視線をそらしたまま、 それでも礼の言葉は述べる。]
――ありがとう、……
[しかし名前を呼ぶことはない。 本当のも、偽のも、どちらも。]
(*8) 2013/06/23(Sun) 09時半頃
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[扉へのおざなりなノックが聞こえる。 許可を出す前にガラッと乱暴に開かれて。 そこにいたのは、もちろんヨーランダだった。]
「めんどくさいわよ、もう顔も見たしいいでしょ?」
[開口一番がそれで、ああ彼女らしいなと。 思いながら、席をすすめる。]
……知ってるとは思うが。外に行くことになった。
「分かってるわよ、準備させていただいてよろしい? センセ」
[何も恐れていないのだと言いたげにほほ笑んだ彼女は。 自身の未来までも見えているのだろうか。]
(*9) 2013/06/23(Sun) 09時半頃
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[向けられた言葉>>*8に、音に詰まる。
わたしはまだ、在てよかった? 役に立つことができている?
変わらない、返られない表情の向こう側で、 ぐるぐると思考は渦を巻いて。
続いて聞こえた五文字には、ゆっくりと首を振った。]
お礼を言う……のは…わたし……なの。
[ミナカタがいなければ、こうして擬体で動いていることもない。 ただの電子の海に揺蕩うだけの存在に成り果てていた。]
(*10) 2013/06/23(Sun) 11時頃
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[やがて現れたヨーランダは、面倒そうな表情を隠しもせずに。 口にする言葉は普段通りで、わずかな震えもなかった。
勧められた椅子に腰を下ろして足を組んだ彼女は、 昨日までと変わらないヨーランダだ。 明日以降も、どこに行っても変わらずにいると、 彼女自身の強い意志を窺えて。]
……ここにいる間…に……しておきたいこと…ある?
[微笑む彼女に問いかける。 この中で叶えられる望みは少ない。 けれど、彼女の行く先を思えば、外では更に少なくなる。
「そーねぇ、」
特にないんだけど、と首を捻ったヨーランダが、 最終的に決めたのは研究室の掃除だった。>>#2]
(*11) 2013/06/23(Sun) 11時頃
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――カリュクス
[答えない白い顔を覗きこみながら。 彼女の名前を呼ぶ。]
(*12) 2013/06/23(Sun) 15時半頃
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[ここで眠る自分を、ミナカタはどんな思いで見ているんだろう。 あの頃から変わらないままの姿を。
このセキュリティ権限は委ねられているけれど、 唯一このカプセル周りだけは上が権限を持っている。 だから、上からの指令に背けばカプセルの電源は落ちるだろう。
たとえばここと外をつなぐ扉を解放しようとしたりとか。]
(*13) 2013/06/23(Sun) 18時頃
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[いつ起きてくれるのだろう、とそれだけを。 彼女の姿を見るたびに思う。
やはり手紙は書いておけばよかった。 あの時の想いと今の想いが、同じなのか異なったのか。 そんなことも自身では分からない。]
……カリュクス
[呼びかける先はカプセルであって、 隣にいる小さな擬体ではない。]
(*14) 2013/06/23(Sun) 19時頃
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[ちらと向けられた視線は再びカプセルへと向けられた。>>212 並んで立ち、しばらくカプセルを眺め。
――それからどのくらい時間が経ったのか。]
……みぃちゃん…あまいの。
[袖を引いて、強請った。]
(*15) 2013/06/23(Sun) 20時頃
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[呼ばれるのは元の名前。 その名を今も呼ぶのはミナカタだけだ。
自分のもののはずなのに、懐かしいと思ってしまうのは、 ポプラとしての年月がカリュクスを追い抜こうとしているからか。
起きるのを待ってくれているのだという、淡い喜び。
だけど、そしたらミナカタが見ているのがわたしなら、
ここにいる“わたし”は誰だろう。]
(*16) 2013/06/23(Sun) 20時頃
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[袖を引かれて視線はもう一度傍らにいるポプラへと。 いつもの行為だったから、何も考えずにポケットに手を入れて。 桃の包紙につつまれた飴によく似た砂糖菓子を取り出した。]
……ほらよ。
[包紙を解いて、ポプラの口元に持っていく。 唇があけば、その中に押しこんで。 手があけば頭を撫でてやろうとして、その手は途中で止まった。]
(*17) 2013/06/23(Sun) 20時頃
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[本当に撫でたいのは誰なのだろう。 飴をやって甘やかして、慈しみたいのは。]
(*18) 2013/06/23(Sun) 20時頃
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[視線がわたしから“わたし”へと移された。 固まりを押し込まれればそのまま口に入れる。 ほろりと中で崩れた砂糖菓子の淡い甘みは、 付加してもらった味覚のおかげで感じることはできた。]
……みぃちゃん?
[宙で止まった手>>*17に、首を少し傾ける。 迷うような素振りに気づけば、翠を翳らせた。]
(*19) 2013/06/23(Sun) 20時頃
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[首を傾けたポプラに声をかけることはなく。>>*19 その手は彷徨いながらも、そっと彼女の頭の上に置く。
結局何もかも中途半端でしかなくて。 それが余計に困らせているのだろうけれど。]
――……
[やはりその名は呼べなかった。]
(*20) 2013/06/23(Sun) 20時半頃
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[呼べば認識してしまうだろう。 彼女が「ポプラ」であって「カリュクス」ではないことに。 もしもそう思うようになってしまったら、 いつかカリュクスが目覚めた日に、ポプラを失うことになる。
そんなことは耐えられなかった。 だから、ポプラの名など呼べるわけがないのだ。 あくまでもこれは擬体だから。 ポプラという生き物は存在しないから。
そしてこれをカリュクスと呼んでしまえば―― なんだか、これ以上彼女を待てない気がしてしまっている。]
(*21) 2013/06/23(Sun) 20時半頃
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[彷徨っていた手は頭に置かれた。 ぐしゃぐしゃとやや乱暴に掻き回されてる。 押し付けられる力に抵抗するように顔を上げて、 ――開きかけた口が閉じるのを見て、くるりと瞬きを。
ミナカタが困っているのはずっと分かっている。 隠しておきたいことも分かっている。 確信もなければ、訊いたこともないけれど。
……たぶん、それは。 ミナカタが“わたし”の名前を呼ばないことに関係している。
だから訊かない。 訊いてしまったら「今」が壊れてしまう気がして。
だから何も気づかない様で、抗議するように 手をばたばたと動かした。]
(*22) 2013/06/23(Sun) 21時頃
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ああ、悪い悪い。
[ばたばたと手を動かしたポプラに謝って。 乱暴に頭を撫でていた手を引っ込めた。]
もう一つ食べるか?
[機嫌を取るようにポケットから飴を出す。 先ほどと同じ桃色の包紙を開いて、砂糖菓子を口へと持っていく。 彼女が何も言わないのに食べ物を与えるのは、 話題をそらしたい時だとばれているだろうけど。]
――掃除は進んでいるかねぇ。
[診察室が荒らされているとは知らず、 ぽそりとそんなことをいって、意識を区切った。]
(*23) 2013/06/23(Sun) 21時頃
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[抗議が伝わったのか手が離れる。 離れてほしかったのに、寂しく感じるのは我侭だ。]
……いる。
[機嫌を損ねたふりをして、ふたつめをもらう。 さくりさくりと砂糖菓子を砕きながら、 聞こえる声がいつも通りのものになったのを確認した。 …今日は三つ目はないかな、と思いながら。]
……進んでる…けど…… ……みぃちゃん…色々見つかってるよ……
[ぽつり、意味深に呟いた。 制御室のモニターをつければ、各所のカメラ映像は見られる。]
(*24) 2013/06/23(Sun) 21時半頃
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[パッとモニターがついて、診察室が映し出される。 ちょうどモニカが黒いあいつを見つけたところだっただろうか。>>261 傍らにいたオスカーはちゃっかりエロ本を読んでいる。>>265]
あー……懐かしいなあれ。 何年前だかに、どうしてもって頼まれて密輸した。
[ある程度の年がいった男子の被験者だった。 本来ならその類は厳しい規制があるのだけれど。 内緒にするという条件付きで。
……で、問題はどうして診療室にあるかなのだが。 もしかしてあそこ隠し場所にしてたのか。やるな。]
……元気にしてるかね。
[幸い彼の名前はまだ報告されてこないから、 きっとどこかで生きている。]
(*25) 2013/06/23(Sun) 22時頃
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[診察室はなかなか楽しいことになっているようだった。 オスカーの実年齢を考えると、情操教育によくない気もする。
ちらりと横を見れば、ミナカタは平然と眺めていたので>>*25、 あれは痛くない腹だったようだ。 考えてみれば、使っているのを見たこともなかった気がする。]
……聞いてない…。
[「密輸」の一言に、思わず音にノイズが混じったが、 過ぎたことを咎めてもしかたない。 証拠は隠滅されるようだったし。>>274
さて、そんなことをミナカタにお願いしちゃう子は誰だっただろう。 久しぶりに思い出した、まだ外にいる子の顔。]
(*26) 2013/06/23(Sun) 22時半頃
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[男は皆通る道だ、頑張れ。 とかなんとなくオスカーにエールを送ってみたりする。
ポプラが視線を送ってきたいたが>>*26 まったくもって痛い腹ではないので平然としていた。 ちなみに黒いあれにそっくりなモノは、 何かの折に誰かが入手していたものをいたずらに使って 没収とかしたような気がする、そんな遠い昔の話。]
ああ、男同士の秘密ってヤツだからな。
[ポプラの言葉には笑ってそう返し。 ナユタが雨を呼んでいるのを見て、おおと手をたたく。>>281 チアキも似たような事を。>>284 お前ら。隠し通せる限界をしっとけ。]
……能力、は禁止なんだけどなぁ。
[報告するなよ、とポプラに笑いながら言った。]
(*27) 2013/06/23(Sun) 22時半頃
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…んー……がんばってみる…ね……。
[訓練場以外での能力の使用は禁止されているけれど、 多少の使用はいつもこっそりもみ消している。 今回もその延長線上。
お風呂場と食堂と、それから…… そういえば中庭もあったのだっけ。
[ちょっと大変そうだけど、これくらいなら許容範囲。 返答と共にぱちりと翠が瞬いて。 少し楽しげで、慈しむように。]
(*28) 2013/06/23(Sun) 23時頃
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使っちまう気持ちもわかるんだがな……
[昔はもっと厳しかった。 こんな楽しい幸せな使い方ではなくて、 もっと直接人を傷つける方法をとることも多かった。
思い出してミナカタの目が暗い色を帯びる。 仲裁に入り双方をなだめるのも、 責任を取れと言われ折檻を受けるのも ほとんど自身の役割であったから。]
ま、なんとかしてくれ。 頼んだぞ。
[ぽむりとポプラの頭を撫でた。]
(*29) 2013/06/23(Sun) 23時頃
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