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[―――…どうして…と、]
[サイラスが、
クラリッサが、
ベネットが、]
[裏手に居た者たちが口々に繰り返す。
その言葉に、
獣の姿から戻ろうとしない男は
低く唸るだけで口を閉ざし続けている。]
[―――…どうして…、]
(本当は、夜に逃げだすつもりだったんだ。)
(でも火事が起きてしまった。)
(消火活動でみんな起きているから逃げれなかった。)
[―――…どうして…、]
(森の中を抜けれないかも考えたんだ。)
(けれども罠が張り巡らされてることを知った。)
(これじゃあ、村から出ても死んでしまう。)
[―――…どうして…、]
(どこにももう逃げられる場所はなかったんだ。)
(なら、逃げられるようにするしかなかった。)
(彼女を疑うかもしれない人達を、
1人ずつ仕留めていくことしか思い浮かばなかった。)
[―――…どうして…、]
(失敗したから話さないんだ。)
(だって人の姿に戻ったら…、)
(喋らなくてはならなくなったら、)
(掟破りを不問にされたら…、)
[―――…どうして…、]
(俺には教えてくれたんだ。)
(あの時、泣きながら。)
("本当のこと"を明かしてくれた。)
(大事だよ…、だから。)
(守らなきゃ――――**)
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─ ???・闇に沈む木の下で ─
[彼に背を向けるのは、怖いからだ。臆病だからだ。
なけなしの勇気は、彼の姿を見た時点で底をついてしまった。
彼をこんな姿にしたのは、
こんな死に方をさせてしまった切欠をつくったのは自分。
熱かっただろう、痛かっただろう。
苦しかっただろう。
…───彼に負わせてしまった苦痛、
そしてあの子らに負わせた罪の、いわば体現がここにあるのだ]
……………、
[名を呼ばれて
けれど足が動くこともなかった。未練だ。
恐怖が旧い友に背を向けさせ、未練が足を止めさせる。
なんて様だ。これじゃあ、何も変わらない]
……、どうして、君は、
[どうして。
どうして彼は、こんなにも強く優しく在れるのだろう。
柔らかな口調が、向ける気遣いだったことは分かってる。
何故?どうしてそんな気遣いが、彼は出来るのか。
自分のほうが辛かっただろうなんて。
( …───そうか、生前もそうだった。 )
時折ちらりと向く視線に、
妻の墓に無言で手向け続けられてきた花束に。
友の優しさを、気遣いを、後悔を自分は確かに感じていて、
だからこそ……より一層つらかったのに]
[…ああ、そうだった。
ひとつ、思い出したように幽霊は開いた喉を掴んで小さく俯く。
八年前のあの日なくしたのは、愛しい妻だけではなかったと。
なくしてしまったもうひとつの大切なもの、
─── 大切な友をも、なくしてしまったのだと]
っ、
[とん、とん、と。
暖かな手が、後ろから肩を叩いて撫でる
それに息が詰まった]
っ、〜〜〜…っ
[胸の奥から啜り上げる衝動が来て、肩が震える。
口が、必要のなくなったはずの息を吸い込んだ。
ぱたりぱたりと落ちる、それは喉からの血ではなく透明な、
… 涙が 。 ]
うっ……、
っ… 〜〜っ、
[俯いたまま啜り上げる、その喉から空気の漏れることはない。
影が生前の姿を少し取り戻すように、
幽霊もまた、自ら流す涙に現れるように昔の姿を戻しつつある。
それは生前の姿に少し似て、
けれどほんの僅かに違うようだった。
八年前。
友を友と呼べた頃の姿を、男はゆるやかに戻しつつある]
[こんなに泣いたも久しぶり、…八年ぶりだ。
けれど今度の涙はあの頃とは違い、
涙が何かを押し流してくれるかのようだった。
尤も八年積もった澱は重たくて、
そう簡単に消え去るものか分かりはしないが]
…………───、
[振り返り、有無を言わさず彼の肩を抱きこんだ。
肩口に額を預ける形で、がしりと肩に腕を回す。
昔、ふざけて内緒話をした時と同じ形で]
… スティーヴ、
[くぐもった声が、彼の愛称を呼ぶ。
それは多分、昔の響きに良く似ているようで、
八年の歳月の分、昔とは少し違っているのだけれども]
───…ごめん、
[再び繰り返す。そして]
[彼にだけ響く音量でもうひとつを囁いた。
風がさやかに、かつて共に登った木の梢を揺らしている。
その木の下、涙は暫く止みそうに*なかった*]
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─???・闇に沈む木の下─
([雨の音が聞こえる])
[温度の感じられない背中を何度も撫で、
溢れるような友の嗚咽を聞いていた]
っ、
[目を見開いた。
昔、内緒話をした時と同じように
肩を抱き込まれて、
肩口に額を押し付けられる。
懐かしい感覚だと思った。]
なんだい、ルパート。
[静かに囁くように、呼び声に応える。
口調自体は昔、彼に向けたものと変わらぬ、
柔らかいもののまま。
繰り返される「ごめん」。
もう、いいのに、と目を伏せた。
それから]
…………っ。
………。
[黙って息を吐き、
そっとルパートの背に手を添えた。]
[誰かの涙を拭う役目は医者の領分ではない]
[別にこうして許されたかったわけでもない。
何より彼を彼の家族を悲しませ、
孤独に立たせた
自分自身が許せなかったから、
恨みも、怒りも、焼かれる痛みさえ──。]
( ……それでも、
まだ僕は僕を許せはしないが。)
[まだ村では悲しみが巻き起こり
ルパートも己も、それを見続ける限り悲しみからは逃れ得ない。──それでも]
( この…僕らの生が終わってしまった後でも、
君を友と呼ぶことくらいは、
許されるのだろうか。)
[──かつて共に野を駆け、馬鹿騒ぎをし、笑った旧友よ。]
[何度も彼の背を撫で肩口に涙を受けながら
静かに揺れる木を仰ぎ、真っ暗な天の下、
せりあがる苦さを一つ飲み干した。*]
[ルパートの涙が枯れる頃。
とんとんと再度背を叩き、
泣きはらした顔を見た。
何かを考えるよう眉根に皺が入ったのは一瞬]
……しかし、まあ。
( [少し若くなった彼の姿を見ている] )
───……白髪が増えてたなあ、君は。
くくっ。
[そう言って、
鳶色の目を(どこか窺うように)見ては
けらり、意地の悪い笑みを浮かべた。
どこかへ、蒲公英の綿毛が飛んでいく。]
([頬に一筋だけ伝った雫は、
暗闇のせいで見えないことを願った]**)
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ああ、
[やがて涙が枯れると、ひとつ心の痞えが下りた気がして、
ただ、冷静さが戻るとどうも若干の居心地の悪さがあるのは、
致し方のないことか。
…幾ら姿が多少変わろうとも、中身まで若返るわけじゃない]
……、悪い。
[それに幾らこうしたところで過去が消えるはずもなく、
彼に自分を殺させた事実は変わりはしないし、
彼に苦しみを味あわせ続けた事実にも変わりはしないが]
スティーヴ…、
[ぐ。と、彼の肩を手で押し少し遠ざけ、友の顔を見る。
しみじみと見れば、何だか久しぶりだなと思った。
きちんとこの顔を正面から見るなんて、いつぶりだろう]
君はやっぱり、
[言いかけた言葉を意地の悪い笑みが遮る
けらりと韜晦するかの笑みに、頬が上がった。
手を当てていた肩を、──こん。と、一度小突いてやる]
( … ひとがいいなあ。 )
[口に出せば、何を言われるか分からない感想を裡に置き。
窺うように向いた琥珀に、にやと笑みを向けてやる。
かつて向けたと同じようにして]
…─── 薄く、なったなあ。
[一瞬の眉間の皺には沈黙を置き、音にしたのは別のこと。
仕返しとばかり、若干危うい生え際にちらり目を向けて]
─────…、
[ぱしん。と、軽く旧い友の肩を叩いた。
月にきらりと光った雫は見ないフリしてやって、
遠く、闇の空を*振り仰いだ*]
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―― 四日目/宿屋裏手 ――
[ 歩く必要すらないと識ったのは、
ほんのすこうし前のこと。
だいじなだいじな友達の、暗闇を裂く悲鳴
わたしはいつもの勝手口へと風を切る。
サイラスの声、クラリッサの悲鳴、獣の息遣い。]
メアリー!? クラリッサ! …サイラス!
[襲われているのは誰なのか、打たぬ臓が凍るようで
聞いたことも無いような悲痛な声で取り乱す彼女
地を蹴る足音の数が変わり
……グレッグ……! メアリー、やめて!!!
あの仲の良い兄妹が、そんな。
さわりと背筋を撫でる寒気に軽いほうの足音へ手を伸ばせば、ふわりと香るアネモネ。]
[ わたしの腕を風のようにすり抜けていくメアリーと
地面に倒れ、躰を潰され
このまま骨の折れる音が聞こえてしまうのだろうかと
わたしは震える右手を 朱い糸ごと上から押さえた。
けれど続いたのは、重苦しい呻き
周囲皆敵だと言わんばかりの聞いたこともない声
メアリー………、殺すだなんて……。
[ わたしのしらない、メアリー。
お父さんを喪って、村中から疑われて、
すっかり変わってしまった ……ともだち。
ずきずきと痛んだ、胸のなか。
静かだけれど力のこもった声
[ ―― ぞわりと湧く恐怖。
サイラスが、メアリーを殺す。 メアリーが、サイラスを殺す。
考えただけで思考は止まってしまいそうになるけれど]
ありえないことじゃ …、ない……。
[ 市長さんのお葬式で、いちばん泣いてた奥様が
わたしの父を縊り殺して 嗤っていたのを知っているから。
優しいひとほど、いとも簡単に歪んでしまうんだ。]
サイラス………、 メアリー……グレッグ。
どうか、じぶんを大切にして。
…… 壊れてしまわないように。
[優しい言葉
背中を包もうにも、触れられぬ今となっては
たいせつな彼の背の位置すら おぼろげで ]
[ 集会の日、背後に感じた焔を思い出して、
ひどく身勝手に 誰かの上にも奇跡が降るのを願いながら
わたしはひとつの祈りを自分に課す。
せめて わたしは変わらずに。
誰の手が 誰の血で染まろうと、
"いつも"のまんまで在るのだと。
刻はいつか。
どこか冷えた風と雁が啼く空を仰いで
決意だけを 祈った。 **]
[鳶色、今は赤い目がこちらをしみじみと見た。]
[内心恐る恐る投げかけた冗談に
上がる口の端に、ほっとするのも束の間]
、
[ 琥珀色を見開いて、それから、
ルパートの視線が向いた先を察する。
昔と変わらない冗談の応酬が返って来て
頬にわずか緊張が走る。]
(――煩い、馬鹿)
[何かを言いかけたところ
ぱしん、と肩を叩かれ閉口した。]
〜〜〜っ
…………無くなる前に死んでよかったかもなあ、
[ふと笑みを零して、(そっと生え際を気にした)
(見ないフリされたものに関しては、
自分も見ないフリをして)
遠く空を振り仰ぐ友の視線の先を追う。
塗り潰したような夜空に、転々と穴穿つように
瞬く星々と、煌々と照る月。
いつか見上げたものと同じ空がそこにある。
彷徨う亡霊を導く事はけして無い。]
――………………。
[ざらら、と風が地を撫でていく。
肩に置かれた皺だらけの掌に触れて、
そっと降ろさせた。]
[ 暫く、黙っていた。]
( 君が本当は、人を、族長を殺したのかどうか
知らない。何も知らない。 )
[宿屋の一室であんな反応をしたのだから、
きっと何かしら、知ってはいるのだろう。
そうは思うが、具体的に聞く気にはなれない。]
[おもむろに口を開く]
……。
この騒動の犯人はさ、
何を変えようとしているんだろうなあ。
[人を殺し、族長を弑し、同族を傷つけ
すべては彼らが昨日と違う今日を求めた結果。
そうしなければ求められず
そうしなければ変えられなかったもの。
それは、なんなのだろう。]
これ以上湿っぽくてもカビるだけな気がするが
見届けなきゃあならんのだろうと――
……そう、思ってさ。
[一歩、また一歩
森から村へと踏み出せば
生前の姿を辛うじて保ちながらも、時折その形は暗く翳る。
男は振り返り、
琥珀色の目をゆるく撓めて、ルパートを見る。]
君はどうする。
[グレッグの事も、メアリーが疑われていた事も、
特には知らない。
それでも、遺された彼の家族にとって
今が苦しいだろうということは想像に難くない。
それをルパートが見れば苦しむだろうな、という事も。
見ないままでいる選択肢もある。
問いを投げかける双眸は、只管に凪いでいる。**]
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―未明・宿屋裏手―
[―――――――…、]
……うん、そうしようかな…。
ここ、何日か…ちゃんと眠れてなかったんだ。
[
彼へ向けて、誰にも聞こえない場所へ、消える。
骸となった狼と、手を下した青年。
そのすぐ隣に、人の型をした男は佇んでいた。]
[月明かりの下で隠れたサイラスの顔。
そのサイラスの表情に、
男は少し困ったように眉を下げて。]
――…泣くなよ、サイラス。
…それが、自分の為なら止めないけどさ。
[血に混じり落ちていく涙は誰の為のものだろう。
もう戻らぬ彼女を想ってか、
それとも同胞に手を掛けてしまった自分の為か、]
……頼むからさ、
俺の為には、泣かないでよ…サイラス。
…俺は…クラリッサをあのまま殺せていたらさ、
多分次は、サイラス…お前を狙ってたんだ。
[眠らされた為かほとんど苦しむことはなかった。
禁忌をおかして村の均衡を更に揺るがした人狼に
与えられた死は、どこまでも優しい方法で。]
……ほんと。
人が好くて―――――…お節介だよね。
[隙あらば今にも襲わんと。
獣の型を取り続けていたあの時ですら、
苦笑交じりに呟いて狼の骸を担いでいく姿を見送った。]
[まだ意識を戻さぬメアリーの姿に視線を移して、
目を細め、けれども男は今はそれ以上言葉を紡がない。
望まない、と"彼女"は言った。
望んだのは、"男"だった。
誰でもない、自分の為に選んだ。その結末。
男の死を知るその時、"彼女"は何を思うだろう…。
従妹が意識を取り戻すよりも先、
男の姿は静かに闇の中へと溶けて行く。]
[先程まで、"自分"の居た場所。
貫かれて地面に広がったままの血、その赤。
夜の色の中に赤は黒ずんでそこに在る。]
[赤い、色。]
(―――…一番似合っていた、ワンピース。)
[あかい、色。]
(―――…憧れの背、その人の髪。)
[紅い、色。]
(―――…たくさんの星が瞬く、自分だけが知る空。**)
なんだ、気にしてたのかい。
[髪の話題
わざとらしく、ちらと視線を上へとあげた。
琥珀がじろりと睨み来れば、
笑み含んだ赤い鳶の瞳を涼しい顔で逸らして。
そうして闇に光る白い月、
やたらと生前のまま映る景色を眺めながら口を閉ざした。
素直に綺麗だなと思う。
今更、あの空に手を伸ばし救いを求める気もありはしないが]
[沈黙。互いに互いの思いで暗い空を眺めていた。
心はこれまでになく凪いでいる。
一度、彼の肩に置いていた手に手を触れられて、
その時ちらりと彼の横顔へと目を向けた。
生前と、昔と代わらず真摯に映るその横顔に目を細める。
八年前のキャサリンのこと、自分のこと。
結局まだ気にしているのだろうと、
死ぬまで──…死んでいるが、
消えるまで気にしているのじゃないかとすら思う。
…薄くなりつつあった、髪と同じに]
[沈黙を破る声
問いならぬ問いに、再びちらと目を向ける。
視線が交わることはなかった。
だから男も、また空を仰ぎながら言葉を落とす]
…───、さあ 、なあ…。
[返す声色は少し茫洋として、
あの空の星への距離を問われたかのように、
少し、想像を広げるかの間を置いた]
………けど、
…… けど、……
[躊躇うように、少し沈黙は落ち]
…なあ。
我らには…この村の人狼族には。
少しでも、ほんの少しでも、
あの子らの声を聞く余地はなかっただろうか。
同胞の声を聞く余地はなかったろうか。
同族を罰する殺すという前に。
…───少しでも声を聞いて貰えたなら、
[或いは、と。
顔は空へ向けたまま、自らに重ね合わせるように呟いた。
自分とて、妻が助けられるなら同じことをした。
同じことをして、逃げ場を失えばさて…どうしたことか]
…。 私は、彼らを助けたかったよ。
[あの子らと呼び、彼らと呼ぶ。
犯人とも裏切り者とも呼ばれる者らと、
心通じていたこと隠す気は元よりなく。
少し、間が途切れる。
躊躇うように傍らを見、ゆるく口を開いた]
…… ”犯人”と呼ばれる者が、
私だけで済めば良かったのだが。
[そう願っていたと低く零して]
だから僕は、とうに心で裏切っていたんだよ。
族長の意に抗ったのは、確かにこの私だ。
同族を殺したいと思ったことはなかったが、…
[見殺しにしたことはあるとまでは言わず、口を閉ざした。
己が手を汚したと、思われるならそれで良いのだ。
村医者は何も間違えたことはしていない。
問われずあるならば、だからそれ以上を語ることもまたなく]
ああ。行くよ。
何も出来なくとも──…
[傍にいてもいいですよね、と。
やさしい少女の声
その面影にゆっくりと瞬いて、そして小さく首を振る。
そうじゃない。自分はそれ程綺麗なものではなくて]
… あの子らの、傍に居たいんだ。
[己の我侭な狂気の末路、その末を。
見届けることを選び、男もまた森から足を*踏み出した*]
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― 4日目 投票 ―
[粛清を決める投票に、全員が集まるはずの集会場。
わたしは足音、声を何度も確認して、ようやく。
居るはずのひとが居ないことに気付くんだ。]
…………せんせ…?
[さあ、と風が砂塵を巻き上げて 揺れぬ黒髪を通り過ぎ
吹き抜けた先は通い慣れた診療所。
そんなわたしの揺らめく心を嘲笑うかのように
箱は静かに今日の死者の名前を吐き出した。
――グレッグ・シーボル
彼への死の宣告と同時に決まった メアリーの孤独。
いっそ予告なしに奪われた方がましなのではと思う位に
決められた未来は、夜の帳と共に落ちていった。]
[ (もしかしたら、具合が悪いだとか)
(誰かが大怪我をして忙しいだとか)
(そうよ、だって大火事があったんだもの)
(きっと忙しくって来られないんだ) ]
そう、よね。 きっと そう。
[手首の絹がはらりと緩み、手を下げれば落ちてしまうほど。
さら、さらと揺れた束を撫でれば ひとつ正緒を吐き出して
風に揺られて何処かへ伸びる。
手繰っても 手繰っても 終わりのない細い生糸。]
グレッグ……。 (サイラス…。)
[父からも 兄からも 遺されるあの子の叫びが
耳の裏に響いて離れない。
――サイラスは”終わったら”あそこへ来るだろうから
わたしは彼が選んだ責務に目を細めて 背を送る。
( どうか、彼と彼が 安らかであるように ) ]
グレッグ、 また、ね。
[ ルパートさんに ”会えた” から
これから世界に別れを告げる彼へ、わたしだけは
再会を願うことばを餞に。
ざわり、木々が揺れ 闇が迫るは金の獣ふたりの背。
かたどる闇へは音もなく、サイラスへは
( いってらっしゃい )
還りを願うことばを礎に。
死が流れてくる毎日が、確実に生者を蝕んでゆくけれど
皆それぞれの「ただしいこと」は、意味を持って牙を剥く。
願わくは皆、それを守ったまま 逝けますようにと
集会場から散る足音達へ、願った。]
[変わらず揺れる 微かな朱い絹糸は
わたしの指間でするりと擦れて 風に乗る。
ひとつ、腕にまきつけて
ゆるりと足を運びながら
導かれたのは、宵の深まる月降りた墓地。
サイラスが ”終わったら”
きっと訪れるだろうと思っていた場所。
手繰る糸が途切れた先は、ほうやりひかる紫の色
あの日>>1:=7視た 紫苑――。]
こんな夜更けに、お墓参りですか? …せんせい。
[返事が返らぬのは当然のこと。そう諦めながら
わたしは土の上の物言わぬ花へ、話しかけていた **]
メモを貼った。
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─ 4日目・宿屋裏手 ─
[暗い森をスティーブンと抜けて後、
男の姿は、淡く生前の姿を模した形で見慣れた宿の傍にある。
裂かれた喉から滴っていた血は、今は止まっている。
ただ、男の輪郭は淡々としたまま、
短い間昔日の姿を戻していた頭髪も再び白く薄くなっている。
どうやら、この場に在るにはそれが相応しいようだった。
心を映すということなのだろう]
メアリー、…グレッグ。
[村に入った男が真っ先に探したのは、この二人だ。
もっとも気がかりな名を求め、生前の我が家へ向かう。
そこには幾つかの人の気配があるようだった。
ゆらり、幽霊はそちらへと漂う]
グレッグ………!?
[そこで目にしたものは、
獣の姿でクラリッサに襲い掛かる甥の姿だ
それに、男は信じられないといった様子で目を見開いた。
愛娘の悲鳴が響く
咄嗟に、甥に向かって腕を伸ばした]
────…グレッグ!
[必死に伸ばした腕も指先も、彼を通り抜けて行く。
分かっている。
分かっていて尚、手を伸ばさずにはいられなかった。
すり抜けると同時、耳が彼の唸りを間近に聞いた。
甥の瞳を、そこだけは姿変わっても変わらぬものを間近に見る。
必死に、懸命な目をその場に見た]
( …ああ、)
[その瞬間、分かったと思った。
この”息子”の想いを、確かに聞いたと思った]
やめろ、グレッグ…!
[それでも尚、訴えてしまうのは、
彼もまた”大切なもの”であったから。
大切な家族、かわいい子どもであったから]
やめろ………!
[彼の耳に訴えが届くことはない。
獣の低い悲鳴、そして衝撃があって振り返った。
小さな狼が、グレッグの足に噛り付いている
娘だった。
必死に彼を引き止めようとする姿に、男の顔が歪んだ。
大切なもの。大切な子どもたち。
二人を、二人とも守ってやりたかったのに]
[顔を上げれば、立ち竦む娘の姿が見えている
先に言葉交わした彼女に今は声を掛けることなく、
ただ視線が交わる一瞬に、男の顔はくしゃりと歪む]
グレッグ…!
[サイラスの足が、甥の首目掛けて蹴り込まれた
庇っても、邪魔のしようはなかった。
男の蹴りは何の抵抗もなく、狼の首元に突き刺さる。
痛みを受ける顔で、鋭い獣の悲鳴
…──お前は、
[どうして。を、男は紡がない。
そんなことは痛いほどに分かっていた。
彼がこのようなことをする理由は一つしか浮かばない]
っ、ばかな……
[俯いて、それ以上の言葉は出なかった。
ベネットの、サイラスの声が聞こえる。
グレッグがサイラスの下に押さえつけられる。
やめてくれと叫びだしたかった。
実体があるならば、彼を殴り倒してでも甥を逃がしたかった。
彼らは決して見逃しはしないだろう。
”怪しきは罰せよ”と。
自らの例を引くまでもなく、投票を始めた時──いや、
族長が教会に皆を集めた時から、決まっていたのだから]
グレッグ、
[獣姿を解こうとしない甥の傍らに幽霊が座り込む。
サイラスを突き飛ばし駆け来た娘
メアリー、
[必死に敵意を剥き出す娘の姿に、辛い表情で眉が寄る]
二人とも………
( … すまない。 )
[守ってやれない子どもたちに頭を垂れ、
共に抱き寄せるように一瞬二人へと額を寄せて]
[そうして、無残に連れて行かれる甥を見送るのだ。
それを止める力は、命を落とした男にはない。
愚かしい話じゃないか。
結局、旧い友を苦しめその手を汚させ我侭に、
けれど少しは彼らの守りの為にと死を望んだ先がこの有様だ。
とはいえ仮に生きてこの場にいたとしても、
恐らくグレッグに加勢しただろうなという程度で、
たかが一人一匹の力で抗ったとて、何も変わらなかったかも知れないけれど]
[甥の命が奪われる場に、男は立ち会うことはしなかった。
その代わりに、彼が傍に居れない代わりに、
意識を失い地に崩れ落ちた娘の傍
大丈夫と言ってやる声も、撫でる手も持たないけど。
涙で濡れた頬を見つめて傍らに居た]
…────、
[命のまたひとつ消える気配
それを命なき者の鋭敏さで感じて、男は顔を持ち上げる。
遠く虚空に人狼の、音なき悲痛な声が*木霊する*]
メモを貼った。
[からかわれたので、じろりと睨んでやった。
父の晩年を思い出した。
輝かしい光を頭に頂いていた。
ああなる前に死んでよかったと少し思った。
月は煌々と照っている。
残酷なまでに生前と同じく美しい月が。]
───。
[語られる言葉に静かに耳を傾けている。
「あの子らの声を聞く余地は
なかっただろうか」……そう言われて、
空を見ながら考える。
「過ちは一族の手で正さねばならない」
そういう前に話を聞くべきだっただろうか。]
…わからない。
[見えぬSOSに手は差し伸べられなかった。
水平を保っていた両の天秤で
生ぬるさの中、気づけなかったことに
ルパートは気づいていたのだろうか。
向けられた視線に、ゆっくりとそちらを見る。
昔と変わらぬ柔らかい口調と、
年長者としての
少し固い口調が混ざり合っているようだ。
助けたかったという言葉は本当なのだろう。
同族を殺したいと思ったことがないというのも
彼の口ぶりから、実行犯ではなく理解者だったのだろうかというのも]
(──……君は、
わかってて、あんな、)
[誤解させるような言葉の意図を理解して
苦いものを飲み込んだ。
馬鹿、という言葉は内心に留めておく。]
……そうかい。
僕は──。
[言葉を止める。首を振る。
死んだ人間の娘を思って絞り出された嗚咽に
何より突き動かされていた。
あれは悪手だったのか。
手負いの獣を更に追い詰めることだったのか。
そもそも───……。
今となっては、考えても詮無きことだ。]
[どうすると問いかけた。
行くよ、と彼は答えた。
ルパートが足を踏み出すのを見て、
男もこくりと頷く。
──ざあ、という風を頬に受けながら
村の方へ歩き出した。
─有漏路にて─
[
投票箱は無慈悲に今日の処刑者を選び出す。
村の何処かで、グレッグが掟を破ったこと
クラリッサのまじないのことを聞いた。
二十数年前に村の外れに移り住んだ女。
彼女の孫だから力を持っていたのだろうか。
……グレッグは、あの聡くも優しい青年は
何故、と考えて思考は止まる。
わかるのは、ルパートは
悲しむだろうということと
メアリーが──あの少女は
とうとう孤独になるのだということ、だけ。]
(……いつまで続くんだろうな)
[少なくとも原因の一端を担う男が
小さくため息をつけば、
夜に溶けていくように姿が翳る。
ふわりと揺れるのは耳か煙か、]
([懐かしい呼び声がした])
[そちらに向かえば、殺伐とした盛り土の上
月影に照らされては闇に浮き上がるようにして、
色とりどりの花が揺れている。]
[紫苑の花の前に、
薄桃色の薔薇のような少女が立っていた。
幸せになるのを見守りたかった、
患者であり娘のような存在が。]
……君こそ、こんな時間に。
[危ないだろう、とは口にしなかった。
目の前の娘の身を案ずる資格ももはや無く
霜天のように冷えた心と目で、
漆黒の髪が花弁の如く揺れるを見ている。**]
メモを貼った。
メモを貼った。
[ひかりが在るのは目の前なのに
声
そもそも「彼ら」の声は、聞こえはすれど
「こちら」の姿は見えぬもの。
「こちら」の叫びも聞こえぬもの。
ルパートと、わたしと
さっき宿屋の裏手で嫌というほど思い知ってきたものだから
そのおとが、こえが、あの日
わたしはきっと、場に居ぬ3人目を疑っただろうに。]
…………せんせ。
[声の主を呼ぶ名に乗ったのは疑問符ではなくて
落胆と、寂寥と、懐古と、悲哀と、 …安堵。]
[背後へ振り向きながら
小さな左手は、右に絡んだ糸に触れるが
緩んでいたのは嘘のように帯のすがたを取っている。]
ここからね、ここに来いって糸が伸びていたの。
[ さらり、手首を撫でて指し示し
彼のほうへ向けようとして また戸惑う。
あの日は確かに視えたのに、
いま目の前の「せんせい」に光は無く
別け隔てなく染められた黒があるばかり。
わたしのいちばん見慣れた景色ではあるけれど
ふ、と。口から零れたのは小さな心配。]
……寂しくなかったですか。
[彼が何故、どうして死んだか問う気は無いけれど
全てを取り上げられ「こちら側」に来てからの事を案ずる。
一歩、 闇に近づく足は土を踏み
伸ばす腕は、声との距離を確かめるためのもの。
その先にあるのは闇のような霧か、
あの日と同じく握られた拳か。
触れられなかったとしても、やはり何も聞かずに]
せんせ。今日は、誰のお墓まいり?
[問いながらも、なんとなく。
傾けた顔をルパートが眠る場所へと *向けた*]
メモを貼った。
―幼い頃の話―
[幼い頃の話。
従妹が3歳になり歩くのが上手くなってきた頃の話。
叔父と叔母には内緒で、少年は歳の離れた従妹を
村の傍の河原へと連れていったことがある。
川は絶対に危ないから行ってはダメと、
叔母にきつく言われていたのだけれども。
兄貴分の幼馴染に連いて回った遊んだ
河原の記憶はとても楽しいものだったし
何より自分がついているのだから危なくない。
水の冷たさにキャッキャと笑ってはしゃぐ従妹、
その姿を見てやっぱり連れてきてよかったと思った。
その直ぐ後だった。
従妹が、足をすべらせて川に流されたのは。]
[血の気が引いて、慌てて従妹の元へと駆ける。
幸運なことに、
従妹はすぐ傍にあった岩に引っ掛かり、
擦り剥いただけで溺れて流されていく事はなかった。
岸まで従妹を抱え上げて降ろして
驚きと、こわさと、擦り剥いた傷のいたみに
泣き始めるびしょ濡れな従妹を必死に慰める。
『ごめん。メアリー、本当にごめん。』
ドナルドが案内してくれた時は上手く行ったのに。
少年がやったら失敗してしまった。
岩がなければメアリーは流されていたかもしれない。
その事実に気付いて、ぞっとして。]
[叔母の言いつけの意味がようやくわかる。
叔父と叔母がどれだけ従妹のことを大切にしてるか、
体の弱い叔母がやっと授かった小さな宝物のこと、
家族のことを少年は傍でずっと見てきたから。
少年の失敗で、
その宝物が喪われてしまっていたかもしれない、
そう思うと――――…
『おにいちゃん、おにいちゃん、』
しゃくりながら、たどたどしい口調で、
幼い従妹が小さな小さな手を伸ばす。
頬に触れる小さな手は、温かくて、生きていた。
気付けば少年も泣いていて、
メアリーと2人涙が枯れるまでわんわんと泣いた。]
[その後、
従妹と共に宿屋の裏にこっそりと戻って。
河原に行ったことがばれないように、
井戸の水を2人で頭から被った。
新しい遊びに喜ぶ従妹と、
そんな遊びを教えちゃダメと叱る叔母。
叔父は子供2人の真っ赤になった目に
気付いていたようだけれども、
あの後叱られたのか問われないまま終わったのか。
その部分だけ、
記憶は都合よく 切り抜かれている。**]
メモを貼った。
[呼び声は生前と変わらない。
いや、その音には生前とは違う
様々な感情の色が込められていただろうか。
男は、静かに乙女が此方に振り向くのを見た。
右手に煌めく糸の意味は知らず。
指先が辿る道筋は彼女の手首から此方へと向き
戸惑うように宙で止まった。
形をとりもどしてはいたものの、
ルパートの喉は殺した時と同じく抉れてしまっていた。
今、焼き尽くされた自分の体は
どのように見えているのだろう。]
……糸、か。
[外して、託した赤い宝石があった場所に
自分で触れた。
続いた問いには、小さく「大丈夫さ」と添えた]
皆が僕の事を死んだ死んだといいながら…
深刻そうな顔をするのは、 ……目の前にいるのに
随分と、滑稽だった それだけさ。
君こそ。寂しかっただろう。
[小さく笑う。声には寂寥が滲んでいる。
マーゴットを見下ろす。
この歳で世界と切り離される。
それがどれほど残酷な事か判らぬ筈はなく。
一歩踏み出す彼女の、伸ばされる腕の先、
触れようする白いもみじを拒むことは無い。]
[掌の先にあったのは、
やはりあの日と同じく固く握られた拳。
(そこに温度はないけれど)
そっと開いて、ルパートが眠る場所を向く
マーゴットの頭を徐に撫でた。]
……死んだ皆の、
いや。 今日はお墓参りじゃあないな……
[何せ死んでいるのは僕なんだから、と笑う。
それから、 ぽつり ]
君の声がした気が してさ ここに来た。
…………守れなかったな。
すまない。マーゴット。
[声は繋がっていた筈なのに、助けられなかった。
君にもサイラスにも辛い思いをさせたと、
彼女の頭を撫でて、懺悔のような言葉を一つ零した*]
メモを貼った。
―自宅―
[くあ、と間抜けた声を上げて身体を起こす。
ぽっかりと胸に空いた穴、足りない臓器。]
あーあ、また死んだよ。
今度は心臓かあ。
[寝ぐせのついた髪をわしと撫でてから、
普段通り起き上がる。
そういえばサイラスに貸したままの布が戻っていない、
暫くはこの風穴も開けっ放しになってしまうだろう。]
兄さん、何年ぶり?
[傍らの獣に話しかけると直ぐに返事が聞こえた。]
『15年か、そこらだ』
[そっか、と亡霊は軽い調子で笑った。]
交代する?兄さんなら人の方でもモテそうだよ。
[あんなに少女達に囲まれてちやほやされていたのが
実は40手前のオッサンだなんて知ったらどんな顔になるのか。
想像するだけで笑いが、こみ上げて、どうしようもない。
この村では兄さんの顔なんて誰も覚えては居ないだろうけど。]
『面倒だからいい』
なーんだ。
[屈んで獣の頬を両手で挟む。
そのままわしゃわしゃと黒い被毛を撫で回した。
少し固い感触があって、それから胸の穴に鼻先を突っ込まれる。]
兄さん、汚れるよ?
[問いかけても獣は気にせず内側を舐めた。
暫くぴちゃぴちゃと、体内を舐めまわす音だけが部屋に響く。
こんなことされてもぶちまけた汚れは落ちないのに。]
[手持ち無沙汰になったので、
獣の尖る耳を引っ張ったり噛んでみたり。
毛繕いの真似事をしていたのだけど。]
兄さん、ちょっと、くすぐったい。
『知らん』
[骨を舐められる感触も、まだ動いている臓器も。
ぞわぞわと言葉には出来ない、妙な感覚に襲われる。
それなのに獣はやめてくれないから、
諦めてベッドの上に寝転んで好きにさせることにした。]
兄さんに食われてるみたい。おいしい?
『……あまり』
ひどい!
[散々舐めまわして満足した獣が顔を上げる頃には
黒い中に赤が混じる様にべったりこびりついて。]
水浴びしに行こうか。
ひどい顔してる。
[悲しんでるの?なんて茶化したら、
せっかく無事だった肺をがぶっとされた。痛いよね。
それから気を取り直して、いつも通り二人で出かける。*]
メモを貼った。
[ひとりにしたくないと思っていた従妹と、
ひとりにしたくないと思っていた幼馴染。
2人が共にいるその場所、届かない場所に
霊体となった男の姿もまた在った。]
……ラーラ……?
…何してるんだ…、
[ぽつり、と。
目の前の光景を信じがたいと言わん呟きが落ちる。
霊体の男の瞳に映るのは、
怯えるメアリーの弱りきった姿
その姿に微笑むラディスラヴァの姿
[幼き日を共に過ごした幼馴染の、
声無き声で紡ぐ其れを、
彼女の言わんとすることを、
男はいつだって知っているつもりだった。
―――…わかっているつもりだった。
だからこそ今目の前にするラディスラヴァの姿に、
通る声でメアリーへと向けるその紅い瞳の笑みに、
言葉を失くしてただただ幼馴染を見つめる。
生前彼女に言った言葉が過る。
メアリーの傍にいてあげて欲しいと。]
[それはこのような光景を思ってのものではなかった。
"彼女が今からやろうとしていること"に、
緩く、首を横に振って名前を呼ぶ。]
…ラーラ、
ダメだ。
[声は、届かない。]
こんなこと…
しようとするのは、やめるんだ…。
[手を伸ばしてももう、
幼馴染の手を引き、止めることも叶わない。
メアリーへと微笑み告げるラディスラヴァの声、
声無き幼馴染を理解できていなかったのか。
――――…ずっと、騙されていたのか。]
……こんなこと、
[ラディスラヴァへ否定のかぶりを振っても
死者の声は届かず、手も届かず、
無情にも現実ばかりが刻を進めていく。]
―――…俺は…、っ
[その後は紡げず。
その場の行く末を見ることは耐えられないとばかりに
哀しげに表情を歪めて俯くと、男の姿は其処から消えた。**]
メモを貼った。
[ 「大丈夫さ」 って言うせんせの声
なんだかとっても小さくて、さみしくて
わたしは口元をきゅっと結んで、降り注ぐ声にわらいかける。
相変わらずどこか皮肉っぽくて、諦めたような笑い声は
「しめっぽいなあ」と思ったけれど。
( カビちゃいますよ )
そう言うかわりに、手のある場所を伝い探して
握られた拳
( わたしの手じゃぜんぜんおさまりきらないけれど ) ]
……さいしょはね。
だあれもわたしを見てくれないのが、怖かった。
けどもう寂しくないです。
……きっと、みんなどこかに居るから。
[ おとうさまとおかあさまも、何処かにいるかしら。と。 ]
[温度のない掌で覆っていた拳がふわりと動いて
それを追いかけようとした指は
髪を撫でる感触に ぴたりと止まる。
なんでだろう。 どうしてだろう。
死んだ誰かと話ができると知ってしまったからか
いま、サイラスが彼を屠っていると知るからか
ひどく曖昧になる 死の概念。
生前とさして変わらぬ白いまんまの指と指を小さく交わして
せんせに触れようとする 寂しがりやの手を互いに縛る。
父も 母も あの街で喪った皆が もし。
今もこんなふうに どこかに居るかもと思ったら
―――わたしは。 ]
わたしは――
「また」 ひとりで残るよりは ぜんぜん。
いまのほうがいい。
だって、呼んだらせんせが来てくれたのだもの。
[そんなことを言って。
くしゅっとした笑い顔と共に すまない。なんて言う
しめっぽいせんせ
ほろりと零れた彼の名に、動かぬ臓が締め付けられて
つい慟哭の中に響いた声を思い出してしまうけれど
サイラスはまだ、大丈夫。
優しいまんまで居てくれるはずだから。
そんなしめっぽい自分とせんせを吹き飛ばすような
おおきな深呼吸をひとつして
すう、ともひとつ胸を膨らませたのなら 森へ向き]
せーーーーんせー!!!!
[闇夜に抜けるでっかい声は、死者の憂いの影もない。]
…このくらいで叫んだら、次もせんせに届くかしら。
[薄ら白い少女の影はそう言って いたずらに、わらった。]
ねえ、せんせ。 これは何色?
[暫し後、わたしはじぶんが知る時よりも増えた土山を
ひとつ ひとつと確かめ歩き
それぞれに捧げられた花達を撫でながら色を問う。
献花にしては裁ち揃えられていないままの紫苑は
一体誰からだろうとか。
ひとつ、毒が香る一輪
あの時
手を斑に腫れさせた日は、どうしてこんなに遠いのだろう。]
……また、増えるね。
[たぶんもうすぐ。幾つになるかな、の問いは飲み込んで、
わたしは微かに目を開けた。
血に濡れた金の獣を背負った彼
聞こえてきたから。]
……………。
[ルパートと居た時と同じように
わたしは彼を避けるように、せんせの背後へと隠れ
背中に走るひどく大きな恐れを押し込める。
気づかないで、見えないで、生きていて と
気が付いて、話して、またあの手を と
どちらもほんとうのわたしの声が、
体の中で叫ぶんだ。
震えながら伸ばした手は もう一度
あの夜のように>>2:=1 包んでもらうことは叶うだろうか**]
メモを貼った。
メモを貼った。
[桜色の口元が笑みを形作る。
まだ少しあどけない少女の笑顔が、その時、
ほんの少し、大人のものに見えた。
温度も何もない筈なのに
触れた掌がまだ暖かいような錯覚を覚える。
静かに語られる言葉を、
こちらもまた静かに聞いている。]
…………そうだね。
[こうして死後も尚自我を保ち、個として在るならば
遠い日に別れた誰かも、どこかにいるかもしれない。
父と母を想う彼女の黒髪を、そっと撫でる。
できるだけ優しく。]
……。
(ひとり、か)
[今 ただ 隣人すら信じられず
独りで立つ彼らを思う。
( ……アル )
花のつぼみが綻ぶような笑顔を零し、
マーゴットは強く、この歳の少女にしては本当に強く
男の謝罪を否定してみせた
続いた深呼吸に首を傾げ――
耳を傾けていたのがいけなかったらしい。
大きな呼び声にびくりと肩を震わせ片掌で耳を塞いだ]
――――…………きみ、ねえ、
[咎める声も、怒りも、驚きも、全部全部、
くるりと振り向いた少女のいたずらな笑みに持ち去られ
残るは「ああ、もう」という諦念と、小さな笑いだけ。
南風が蒲公英の綿毛を吹き飛ばすように、
しめっぽさが飛んでいってしまった。]
赤に、水色に……緑、 紫、
――、([腫れるぞ、といおうとして、口を噤んだ])
[己の墓場に供えられた紫苑の花に目を細めた。
「あなたを忘れない」そんな言葉を持つ十五夜草。
供えたのは誰だろう。
( ……らしくもないな)
浮かんだ猫の姿に、そっと首を振る。
花に触れながら色を問うマーゴットに答えながら
その姿を見ている。
野原に遊ぶ娘を見ているようだ。
ふいに落とされた言葉に、眉根を顰める。
……もう、終わりにしたかった。
こんな殺しあいは。こんな哀しみは。]
[押し黙っていると、マーゴットの睫が震えた。
闇夜の中、重いものを背負い行くその姿は、
教会にかかっていた磔刑の像を思い起こさせた。
その影がサイラスのものだと理解するのと
彼が背負う獣が恐らくはグレッグだと把握するのは
ほぼ、同時のこと。
ぱた。と黒髪揺らしマーゴットが己の背に隠れる。
何故、と思うたは一瞬。
震える掌は、黒い男の手へと向かう。
( ……マーゴット )
[乙女の心が二つに引き裂かれている事など知らなくとも
求められていることは、ただ一つだと理解した。]
……会いたい、かい?
[婚礼の時の父親のように「幸せにおなり」と
その掌を彼に渡す事は――
彼が冥府の住人でない以上、できないけれども]
大丈夫さ。……大丈夫。
そんなに湿っぽくては――カビてしまう。
[そうして、何度目かわからない「大丈夫」を塗り重ねて
震える彼女の掌を、そっと包み、握り締める。
何かから守るように。]
[そうして静かに、サイラスが墓穴を掘るのを見ている。
見守り続けている。
彼には、辛い思いをさせている。
彼にも、村の皆にも、そしてアルカイドにも。
落とされた呟きを拾って、
口の中で小さく「すまない」と呟いた。]
…………願わくは……。
[あの真っ直ぐな薬屋の若者は生き残ってほしいと思う。
その一方で、こんな辛い仕打ちを受け続けるならば、
もう、とも思う。
わからなかったから、小さく ほんとうに小さく
彼が進む先に光あれと、願うのだ。*]
メモを貼った。
[ここならば宿屋からの音が聴こえないと。
男が再び姿を現したのは村の傍の河原だった。
小さい頃、遊びに来た場所。
幼馴染達と駆けて回った、
転んだ従妹を必死に掬い上げた場所。
一歩、躊躇いもなく水に足を踏み入れる。
せせらぎが聴こえるばかりの穏やかな地。
男の足音も水の跳ねる様子もない、生の世界。
自分が死ぬ覚悟はできていた男は、
他の村の者がこれ以上死ぬ覚悟はできておらず、
喧騒から離れてひとり、耳を閉ざすことにする。]
[見下ろすのは己の手、爪を短く切ったその指。
視界の隅で、岩に引っ掛かった流木が
まるで天秤のように不自然に揺れる。
人間と『共存』する為の均衡、
水平に保たれていたはずの『天秤』、
そもそも天秤は、はじめから水平だったのか。
[男の知る『天秤』は―――…
はじめから、水平なものではなかった。
人間との『共存』は、
いつだって人間に重きを置かれた歪なもの。]
(人間がこわがらないよう…
獣の型をとらないように心掛けた。)
(人間がこわがらないよう…
その肌を傷つける事がないように爪も短くした。)
(人間がこわがらないよう…
牙を見せない笑い方を覚えた。)
(人間がこわがらないよう…)
[少しでも人間をこわがらせれば均衡は崩れる。
ひとつ、またひとつと
人狼が本来の在り方を人間の為になくして。
そうしてようやく『共存の為の均衡』が成り立つ。
それが男の知る『天秤』の本当の形で。]
[人間は、好きだ。
人の姿でいれば人狼とそう変わらない。
気が合えば友達として想うこともできる。]
けれども、
人間は、こわい。
ちょっとした過ちですぐに均衡は崩れる。
そしてその信用は一度崩れれば
同族の血を以て償わなければならない。]
―――…いっそ、みんなで…
この村を出れば…よかったのかな。
[人間のことを気にしなくてもいい人狼だけの場所へ。
どれが、何か、何かが違っていれば。
別の未来もあったのではないか―――…
そこまで考えて、緩く首を振る。
きっと何も変えられず…いつか、どこかで、
同じ問題は起きていたのだろうとも思った。
決断は下されもう戻ることはかなわない。
なら、男が願う結末は―――……**]
っふふふふふ。 ――聞こえた?
[ 呆れた溜息、苦笑、ちょっと怒った?どうかしら。
くるり、鳴らない踵をひとつ打ち、
風の無い夜へスカートを翻しながら
笑みを向けた先のせんせ
口をへの字に曲げているだろう、なんて思う。
確認するのに口元に触れたらきっとまた、おんなしように怒られてしまうから わたしは自分の口元に手を当てて。
くすくす。 くすくす。
村でいちばんしめっぽいひとを、
ちょっとでも乾かしてやろうと肺に吸い込んだよるかぜは、
どうやら無事にその役目を遂げたようだ。]
[ 「あなたを忘れない」
そんな素敵な花言葉を知っていたのなら、
怖いもの知らずの幼さを武器に「せんせ、恋人いたの?」
なんて聞いただろうに。
せんせから、小さな小さな漏れるような吐息を感じて
わたしははたり、と動きを止め 疑問符をひとつ。
頬の横に?を浮かべることしか出来なかったのは、
彼にとっては幸いだったのかもしれない。
わたしの触れた花に、せんせの低い声が重なる。
あかい あかい まっかなアネモネ。
指を擽るかすみ草と、分厚いフリルのカーネーション。
いつかの母の日、クラリッサに花言葉を教わって
川へ流した花束を思い出す。
贈り主がそこまで知っているかを考えては、
微かに頬を緩ませて 包むように 花束を抱いた。]
[グレッグと、彼の命。両方を背負った影がゆらめいて
確かな足音と重さでもって墓地へ近づく。
怖いんだ。どうしようもなく。
あの手に触れたくなってしまうことが。
そんなわたしの恐怖なんかお見通しだとでもいうように
掛けられる声
背中に額をすり、と寄せて 金色の優しい光から目をそらす。
( うん。あいたい。)
無責任に頷いてしまいたい。けど。いけないこと、だから。
首が縦に動こうとするのを必死で繋ぎ止めれば
奥歯がぎちりと嫌な音を立てる。]
…………せんせ…。 …もう、かびてるかも。
[大丈夫、大丈夫。繰り返されるまじないと、包まれる手。
わたしは「父」の背中に顔をうずめ、幸いにも与えられる愛情に縋りつきながら 淀んだこころにフタをした。]
[ 不便なもので。 見なくても 視えてしまうもの。
サイラスの重い足取りと苦悶の息遣い、
ざくりざくりと 昏い夜のさらに深くへ続く
虚のような墓穴が拡がる音。
そのなかに”なにか”が置かれ また土の振るおと。
微動だにせずそれを見守る背中で それを聴く。
( おやすみなさい )グレッグ( おやすみなさい )
( きっとまたちかいうちに いつものとおり )
( おはようをいうから ) ]
だからサイラス、泣かないで――。
[わたしはせんせの影からようやく離れ
触れることができないひとの頬を、指先で探し
彼は誰時の空へ、絵の具のように 届かぬ言葉を溶かした。**]
メモを貼った。
[
男は不安げに空を仰ぐ。
願うならばもう誰にも来てほしくない。
けれどもそれが既に叶わぬ願いであり、
生者をまた選ぶことになるのだろう。
なら、
来て欲しくない、と思い描く姿は3つ。
その声が、聴こえないように。
届かぬ向こう側に在るように。
祈るように、目を閉ざした。**]
メモを貼った。
そりゃあ、……乾かさなきゃな。
[ぽん、と背中に額が押し当てられる。
がちりと歯を食いしばり何かに耐える様子なのも
彼女が口にしなかった何もかもも、
深くは追求しないで、そっと掌に触れ包む。
距離は出来るだけ、二歩以上あけて
必要なときだけ寄り添えるように在る事。
医者の役目はただ、それだけ。
暗い空の下掘られる墓穴は
地獄にでも届きそうに見えた。
離れていくマーゴットの掌をそっと離す。
サイラスの涙を拭おうと、宙を彷徨う白い掌を見守った。]
[視線を転じるはキャサリンの墓。
捧げられた花冠――否、花輪
カーネーション
闇の中では蒼褪めて見えてしまって
(……。)
ふと、辛さを表情に出したのは
マーゴットには見えないで幸いだった。
折角湿っぽさを払ってもらったのに、これでは意味が無い]
何かあれば、泣きたい時でもなんでもいい。
また呼びなさい。
……さっきのような大きな声じゃあなくていいから。
[そう、マーゴットに静かに呼びかける。
それから、そっとその場から足を踏み出した。*]
― やがて ―
[焼け焦げた教会の一角。
落ちていない屋根の上。
村での出来事を見守り続けていた。]
「……こが選んでくれないから、……。
……八つ裂きか、喉笛を潰すか……。
……一番滑稽な串刺しにでも?」
( ……君だったのか。素敵な贈り物をありがとう。)
[―― 静かに目を伏せた。]
[ 今日になって何故、と思った。
このまま上手くすれば、他の者だって欺けただろうに。]
[続く声に、ぐ、と胸が痛む。]
「…………四肢を食い千切った後、
死なないように止血してから ―― 、
そのまま『魔女』を火炙りにかけるってのは、ねえ!」
…………もう、止せ。アル。(猫の癖にらしくもない。)
大馬鹿野郎。
[小さく呟いた声は風に消えた。
彼が己を殺した誰かを恨む姿も、殺す姿も見たくはないが、
この村を離れることもまた できないでいる。
そうして、いつしかまた体は真っ黒へと沈みこみ
はたはたと揺らぐローブの音だけが、やけに煩くなる。]
[――”Oh ! La belle nuit pour le pauvre monde !
Et vive la mort et l'égalité !”
そう云ってけらけらり、あざ笑うのは誰だろう。
悪魔? 死神? それとも、自分自身だろうか。
それでも「今日も」やがては来る投票の時間を、
「終わり」が来ることを
死刑宣告でも待つように待っていた。**]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
sol・la
ななころび
下記の場所以外では、人狼議事内キャラチップ
の利用を許諾しておりません。ご了承ください。
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