193 ―星崩祭の手紙―
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[ずっと、頭から離れないことがある。 それはあの日、あの子を拾ったその日から、ずっと彼女に付き纏っていることだ。
あの子を内に収めていた飛来物が開いた時──私が触れた時、あの子は目を覚ました。 それは、あの子にとって望まない目覚めだったのではないか。 私が不用意に触らなければ、あの子はきっと目覚めなかった。 私が触らなければ。 私が触ってしまったから、不自然な覚醒をさせてしまったから。]
[あの子の目は、光を映さないのではないか。]
ステラ。
「なぁに、お姉ちゃん。」
……なんでもないよ。 行ってくるね。
[そう言って、彼女は微笑みを向けた。]
(49) hakutou 2016/07/22(Fri) 00時頃
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[純白の雪が舞っている。 正確に言うならば、それは外の世界に生き、そして死した生物たちの残滓であった。 今日のように気流の強い日には、気底に堆積していたそれらが舞い、このような物悲しくも美しい情景を創り出す。
水中にしか生を見出せない人間とは違い、この深い空気の底でも、生命たちは強く生き抜いている。 自らを変化させ、適応し、命を繋いで。]
……きた。
[それは、やはり彼女をめがけて落下してきた。 しかし、昨日と違うのは、その数。 3つに数を増やした落とし文は、静かに彼女の腕に収まった。 1つは、恐らく彼女自身が宙に放った、"願い"の返答。 すると、他の2つは?]
誰かの、流したお手紙、かな。
[しばしの逡巡。 私が受け取って良いものなのか。 けれど、湧き上がる好奇心と、"もしや"の念が、彼女の背を押した。]
(50) hakutou 2016/07/22(Fri) 00時頃
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[もしかしたら、あの子の故郷から届いたものがあるかもしれない。]
(51) hakutou 2016/07/22(Fri) 00時頃
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[ホーム、彼女の部屋。 初めに開かれたのは、彼女宛の返信であった。 入っていたのは便箋と、木の実と乾酪が詰められた袋。 終わりかけた夕方のような深く濃い青。 そんな便箋に綴るのは、最も強く目に残る色。 柔らかに紙上を転がっていくその文字は、色恋に笑い泣く若い女性を思わせる。 きつく唇を引き結び、彼女はその文字を追い始めた。]
[ミツボシという名の、恐らく女性は、彼女の望みを叶える恩寵とはならなかった。 添えられた絵図は多少の類似点はあれど、違うということだけは確実だった。 けれど、見ず知らず、この先出逢うこともないだろう人間の勝手な願いに、時間を割いてくれたことを想い、彼女は呟いていた。]
ありがとう、ございます。
[さて残るは、2つ。]
(75) hakutou 2016/07/22(Fri) 21時半頃
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[残るは2つ。 彼女は送っていない、恐らくはどこか遠くの誰かから、偶然流されてきたであろう、もの。
1つは小さく、細やかな装飾が施された硝石の円筒。 また1つはどこか異国の懐かしさを感じさせるもの。]
[1つ、硝石の円筒に入っていたのは、擦り硝子のような便箋だった。 綴られる文字は拙く、書き手の幼さを伝えてくる。 内容も同じく。 子供らしいその文章はとても無邪気で 、遠く文を運んできた硝石のように、透き通っていた。]
パパとママ、か……
[彼女自身に例えるならば、それは院長である、妙齢の女性がママなのだろうか。 では、パパは? 一瞬浮かんだ守衛の顔を、全力で頭を振って消す。 いや違う、さすがにそれはない。
さておき、親など知らない、知りもしない彼女には、その硝石は眩しかった。]
(95) hakutou 2016/07/22(Fri) 23時半頃
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[子供を育てるのは、何よりも時間、だと思う。 神様になど祈らなくとも、それはいずれ叶うだろうと。 彼女はそっと、手紙を置いた。
それが、手紙の主にはもう残されてはいないのかもしれない、など。 彼女は、露も知らないことであった。]
(97) hakutou 2016/07/22(Fri) 23時半頃
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[1つ。 最後に残されたそれを開くと、ごく薄く、酸の匂いが、した。 滑らかな紙は少し厚く、しなやかな弾力と張りを彼女の手に伝えてくる。 お世辞にも丁寧とは言い難いその文字を、彼女は少し眉根を寄せながら、辿り始めた。]
(103) hakutou 2016/07/23(Sat) 00時頃
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[そこにしたためられた内容は、強い痛みを伴うものだった。 最期の文、そう書き残す送り手は、全て覚悟の上、なのだろうか。]
……ごめんなさい。
[嗚呼、これは、私などが受け取って良いものではなかったのだ。 助けを求めていた。 受け取ったのが私でなければ、この送り手は、あるいは救いの手を得られたかもしれない。]
ごめん、なさい。 私には、助けられない。
[すぐ近くの小さな手すら、掬い上げてやれない私には。 キカというらしい送り主の手は、どうしようもなく遠い存在に思えた。]
(104) hakutou 2016/07/23(Sat) 00時頃
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[カタリと、音を立ててチップが落ちる。 机の上で1回だけ跳ねたそれは、薄暗い部屋に小さな光源を与え、女性の姿で話し始める。
らくらく惑星育成キット。 幾億もかかる星の一生を、たった4日で見せてくれると、事細かに説明するその声は、膜が張ったように、くぐもって聞こえた。]
(105) hakutou 2016/07/23(Sat) 00時頃
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[映像が途絶え、暗がりが戻ってくる。 彼女は、動かなかった。 否、動けなかった。 誰かを救いたい、など、彼女は考えたこともなかった。 考えることを、無意識のうちに避けていたのかもしれない。 現実としてその手に取れば、気付いてしまう。 自分が、いかに何もできないのか、を。]
「お姉ちゃん?」
[声がした。 振り返ると、あの子はそこにいた。]
(132) hakutou 2016/07/23(Sat) 00時半頃
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ステラ? どうしたの?
「なんとなく、お姉ちゃんの側に行かなきゃって、思って。」
[どうしてこう、この子は鋭いのだろう。 1番来てほしくなかった──来てほしかった、時に限って。
自分の首元を掴む、縋るように。 そして、彼女は腕を下ろした。]
あのね、ステラ。
(133) hakutou 2016/07/23(Sat) 01時頃
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[そして、抱え上げたそれは……最後の光籠。]
外に、行きたい?
「うん!」
[あの子の言葉には、曇りがない。 余計なものが見えないから、要らぬものばかりを見据えて、淀んでしまった彼女とは違って。 だからこそ、彼女を突き刺す刃となった。]
あんただけなら、外に行けるかもしれない。 行ってみる?
[彼女は、努めて明るく、そう告げた。]
(134) hakutou 2016/07/23(Sat) 01時頃
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「お姉ちゃんは?」
[返ってきたのは、真っ直ぐな疑問だった。]
私は、行けない。 これは小さいから、あんたしか入れないのよ。 でも、あんたなら大丈夫だって。 私がいなくても……
「お姉ちゃん。」
[あの子の声が、彼女の言葉を遮った。]
「わたしのこと、嫌い?」
(135) hakutou 2016/07/23(Sat) 01時頃
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どうして……大好きに決まってるじゃない……!
[気付けば、叫んでいた。]
大好きよ、昔から、今も、ずっと! だから、あんただけでも外に行ければ……
[きっと、私などの元にいるよりずっと。]
あんたが、幸せになれるでしょ?
[もっと早くに、こうするべきだったのだ。 手離したくない、などと、私が考えるようになってしまう前に。]
だから、ね。
[籠を手に、差し出す彼女の腕は、みっともなく震えていた。]
(136) hakutou 2016/07/23(Sat) 01時頃
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「行かない。」
[あの子は、首を振った。]
どうして……
「だって、わたしはお姉ちゃんと一緒にいたいから。」
[彼女も、首を振った。]
そんな、だって、外に行ってみたいんでしょ……?
「うん。 だけど、お姉ちゃんが一緒じゃなきゃやだ。 お姉ちゃんと一緒にいるのが、わたし、1番幸せだもん。」
ステラ……
[妹の名を呼ぶその声は、もはや音にならなかった。]
(137) hakutou 2016/07/23(Sat) 01時頃
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「だって、わたしは。」
[ステラは、確かに彼女を見つめて、笑った。]
「お姉ちゃんの妹だから。」
(138) hakutou 2016/07/23(Sat) 01時頃
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[泣き崩れる彼女の頭上、遥か宙の彼方で
幾百もの波と共に 星が、崩れた。]
(139) hakutou 2016/07/23(Sat) 01時頃
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[その昔、宙にはいくつもの種族が暮らしていたという。 文化も見た目も違うその種族は覇権を求め、常に醜い争いを続けていた。 数え切れない数の命が喪われ、遂に怒り狂った神は粛清を決意した。 大波を起こし悪しき世界ごと滅ぼそうとしたのだ。 我らが星にもその波は迫り、絶望に打ちひしがれる民より、1人の娘が立った。 神よ、愚かなる我々に、どうか、今一度のお慈悲を。 我々は必ずや、今度こそ正しき道を歩んで見せます。 神は応えた。 ならば見せてみよ。 その誓い、違えたならば、2度はない。 途端、宙を覆う波は消え去った。 命を救われた民は、その娘を巫女と崇め、慎み深く暮らし始めた。 民が道を踏み外そうとした時には、神は宙に波を起こし、その者たちを戒めるのだという。]
[そんな、お伽話。 この星が沈むより以前の神話。 その原理が解明されて久しい現在でさえ、畏怖の念を思い起こさせるほどに。 それは、圧倒的な光景だった。]
(163) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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「本当に行くんだね。」
はい。 もう、独り立ちには遅いくらいですけど。
[寂しくなるねぇ。 そう言って、院長の女はため息を吐いた。
やりたいことがある。 彼女がそう告げたのは、ほんの数週間前のことだった。 世紀の祭りが終わり、誰もがその余韻に浸っていた頃。 彼女は突然、ホームを出ることを決めた。]
そんなに遠くじゃないですから。 仕事もあるし、時間ができたら寄りますよ。
[妹を抱き抱え、微笑む彼女の瞳は、真っ直ぐと前を見つめていた。]
(166) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[本当に小さな、一間だけの家。 彼女と妹の、新たな生活の場。 少しだけ場所をドーム中央に寄せて、彼女たちは居を構えた。]
[窓脇に置かれたのは、小さな硝石の器。 内包された花は、星の光を浴びる度、ちらりちらりと瞬く。]
[食卓の中央には、光籠と同じ材料で編まれた四角い容器。 至極大切に包み込まれたその中身は、3日目となる、夜空の欠片。 立派な惑星に育ったそれは、ただ静かに崩壊の時を待っている。]
[そして、部屋の隅に置かれた棚の上。 あの祭りの間に届いた全ての手紙とカプセルは、そこに、収められていた。]
(167) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[狭い玄関から、彼女は部屋を振り返る。]
ステラ。
「なぁに、お姉ちゃん。」
……なんでもないよ。 行ってくるね。
[そう言って、彼女はにっこりと、万感の思いを込めて笑った。]
(168) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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[ステラ。
私の妹。]
(169) hakutou 2016/07/23(Sat) 02時頃
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