219 The wonderful world -7days of SAIGAWARA
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[ 覚えている限り、一度だけ 私の泣いた日。
真っ白で、軽くて 細くなったお母さんの手を
私はただただ 取るのが恐ろしかった。
小さな町から出たことのなかったお母さん。
そこに都会からふらりと来てしまった父に、
一時の気の迷いと逃げで誑かされて
やがて子供が"できちゃった"、って
言葉を選ばないなら、少し馬鹿だったけれど
祖父母にバレて 男なら許すって 言われて、
もう名前すら勝手に決められた中で、
( ── 女でも、ほんとは"りょう"だったんだって。
本当にどうでもよかったのね、あのひとたち。 )
はるか、とつけてくれたのは、あの人だった。 ]
……こどもが 一番に、
親に愛されたいと願って何が悪いの?
[ いよいよ怒気を隠しもしない。 ]
…父さんのほかに、
愛してくれる人がいたとして、
それは確かに素敵なことかもしれない。
ただ、その人の願いを尊重しても、
その人は私のすべてを解決してくれるの?
お母さんを蘇らせてくれるの?
あの家に認められる場所を作ってくれるの?
私の意思を見てはくれないの?
[ 勝手なこと言っているのは、
"普通"に考えたら私の方だったのかもしれない。
だけど、今の私に 蔑ろ、と 言われたって。
── それを×く思う心はもう無い。 ]
…… 私はまだ死なない。
シーシャには生きる権利を渡す。
エントリー料、きっと大事なものだろうし
知り合いもいた。きっと死んで嘆く人だっている。
だから、
"私"が"パートナー"にできるのは、それ。
[ ── そういう、気持ちの汲み方。
これを無情だと、やっぱり普通は言うのでしょうね。
だけど 生憎 性根が曲がり切ってしまったようで。
シーシャから離れれば 落ちていた鞄を拾い上げ、
中から二枚目のタオルをひっつかみ
とうとう名前を聞くこともなかった死神へ放る。 ]
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[ばら、と 地に散らばった青い命の種を今や見向きもせずに、 仰いで吐いた、呑気過ぎる妄言にも似た問いに 困惑したような顔を浮かべるのも、 この六日間でいっとう明瞭に映し出すものだから。 (……臆、なんか可笑しい事言っちまったかね?) なんざ、静か過ぎる頭の中で思うのだ。>>@87]
……。 はは、そりゃァ、それで。 これ……、ってのに耐えられんなァ。 死神になったら平気になるだとか、 ───そういうたぐいでもないんだろう。 ( 「今の言いようじゃあ。」 >>@88 )
(199) 2017/06/23(Fri) 00時頃
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………胸糞な家だから、聞こえてたらごめん
[ そのまま、死神とは反対方向。
何処へ行くわけでもない足取りで、
"こういうときは謝るんだろうな"って、
とうとう境目も分からなくなったこころで、
シーシャに呟いた* ]
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[手を支柱にしようとして崩れるのが三度目。 見下ろすいろのない笑みにゃあ、 臆、───好いんだ。]
(……人好きのする笑みより、 其方のほうが好きかもしれない。 それよりも、)
まァ、だろう、ねえ。 追い払ったところで鬼退治が出来ないんじゃあ、 ───負ける事なんて確定しているだろう。
[「唯、同情するのだけはよしてくれ。 ……きみのやった事なら、尚更。」
なんてね。 >>@88惑いのいろを憐れみに燈し変えた瞳硝子に 勘違いかもしれねえが、そんな彩を感じたもんだから。 それだけは、ぽつ、と零したのさ。]
(202) 2017/06/23(Fri) 00時頃
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(鬼と呼ぶには、 屍肉を貪るハイエナのような唸り声を聞いても 捕食者に成り得るけものに視線ひとつ併せずに、 >>172それ毎を切り裂く剣閃の音を聴いた。)
でも ───未だ、 諦めちゃあ、いねえんだよな。
[ ───臆、そんな口振りの割りに。 白銀のかれは一目も、照らしもしなかった。]
………なぁ、三ヶ峯くん。
(206) 2017/06/23(Fri) 00時半頃
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( 「 …… パートナーを殺せば、 きみみたいに死神になれるのかい。」 )
[ 四つの青すら拾いもせず。 唯、かれが駆け寄る寸前、>>183 起こせぬ足の代わりに上体だけで、 天よりも近いブロンドを出来るかぎり仰いで、 死神にだけ聞こえるように 張りつけた笑みで真直ぐに問いかけた。 ]
(これも死神にも分からない範疇だと 返されるかね、──と思っちゃあいたが。)
(209) 2017/06/23(Fri) 00時半頃
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……榴斗。
──悪いな。
( 含んだ意は、未だ秘した儘。 )
[ >>186>>187 駆け寄るすがたに曖昧な笑みを浮した儘。 「……立つのは無理じゃあねえかな」なんて、 何処迄も呑気を揺蕩わせりゃあ、───。
抱える動きに瞳を伏して、何かを謂う前に >>@90踊ったナイフの切っ先が緋を散らし、 がらんどうの音を立てて ”かれへ伸びた。” ]
(213) 2017/06/23(Fri) 00時半頃
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(作戦会議だとかなんて、 穿たれた怪我とともに抜け落ちた。 ───考えることは、唯ひとつだけ。
責任感の強い彼の、 袴着に花文様が浮かんだように散る赤に 普段なら口走るような静止の何某かは溢さずに、 ……その疵を負ってくれりゃあ。
伸ばす腕を引っ込めてくれるかと思ったから、 知っていて尚、気づいて尚、黙っていた。)
[なのに、さァ。 ──かれと来たら退くように奔ろうとするから。 嗚呼、そんなみっともない真似ってのは勘弁だと、 ただ動く唯一の肢──右手で抗うよう、
──── 突き飛ばそうとした。]*
(215) 2017/06/23(Fri) 01時頃
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[ 死神が語る言葉を、ただ黙って聞いていた。
“愛されたい”と願った人に
愛されなかった死神と少女。
その苦痛がどれ程のものか、
失いはしたが、愛を受けていた自分には、
到底理解は及ばないのだろう。
そうして、“愛”を諦められなければ、
世界に失望するのではないか、と ]
[ 死神もリョウも、同じものを抱えてて、
けれど、死神は諦念を覚えたのかもしれない。
受け入れ難いものを、
受け入れたのかもしれない。
もしくは、別の何かを手に入れたのかもしれない。
そうでなければ、
パートナーの気持ちを考えろなんて、
言えないと思ったから ]
[ リョウが死神に言い募る。
怒気を孕ませて投げつける言葉は、
本心の裏返しなのだろう。
言い切って、放られたタオルは別れの合図のよう。
それを見て、
死神でいて、人の心を持つそのヒトに、問う ]
―――― アナタ、名前は?
[ その場を去る痛々しい背に、一言だけ投げかけて、
返事があっても無くても、
覚束ない足取りのリョウの方を向く。
「気にしてないわ」と首を振って、
それから、息を吐いた ]
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……、 ───そろそろ、そんな気はしてたがね。 怪我を負うなら、死なねえ筈が無い。
(>>@112 行いこそは死神のそれだろうとも。 臆、今まさに浮かぶ感傷なんてもんは、 ひと、そのもののじゃあないか。 そう考えたら、──すとん、と腑に落ちるのさ。)
[元はひとであったのなら当然のことと、 思えるほどに、頭に回る血の量は多くない。 幾ら女々しかろうと、皿の数を数える女のように 恨み言を謂えるような性質でもなけりゃあ、 そもそも化けて出てると言うなら今が其れだ。]
( ─────割り切りは、”上手い筈だった。” )
(233) 2017/06/23(Fri) 02時半頃
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( この世で恨みを抱くのであれば、 向けるのは、死神のかれにでは無く── )
(234) 2017/06/23(Fri) 02時半頃
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(ともに。 違う形で会えりゃあなあ、と 問いとは裏腹に惜しむ未練は心の奥底。 為そうと思うことを考えりゃあ、 ”如何せ、叶いやしない。”)
[何処迄も薙いだいろの黒曜石を手向けてから、 >>@113見開いた目を以って頷きを齎したかれの 寂しげないろをせせらと笑い上げるように──。] ……そうか。 それなら、”安心した”。
(然うして、漸く白銀の彩をしか、と見据えて、 流れた一連のフィルムの如く流れた早回しを経て >>228”白のきみ”を倒す手は確かに害意、 ────と言うやつなのだろう。)
(235) 2017/06/23(Fri) 02時半頃
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(───きみを傷つけるのだから。)
[>>@113 死神の径へと辿るのに 手を引いたものの存在など知らない男は、 その言の葉を何処までも愚かしく鵜呑みにして 増え往く有象無象の雑音の気配を見回して、 何処迄も自分勝手なおこないに手を染めるのだ。]
(事態を手招いたのも、我儘に付き合わせたのも、 夢幻に付き合わせたのも、須らく僕の罪業。 為らば、”最期迄”付き合って貰ったって 今更増える罰も、──たかが知れているだろう?)
(236) 2017/06/23(Fri) 02時半頃
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所詮、口約束だろ。 それに、この怪我で行けると思ってんのか。 きみも、僕も。足手まといになるだけだろう。 他人様に迷惑を掛けるだけ、…じゃあねえのか?
(足の熱は、 薪のように勢いを増す事は無かった。 だらだらと赤を垂れ流す左腕と、 惨めな引っ掻き疵の残る背から命が薄れるごと、 次第に死んでゆくように冷めてゆく。)
[───きみに最初から最期迄迷惑を掛け続けて、 愈愈こうなりゃあ、何方が駄駄だか分からない言葉を 譲る気もさらさらと無いままに、最もらしく諭す。]
(見誤ったのはだれか、を差し置いて。 嗚呼、でも、ある意味じゃあ都合の好かったのだ。)
(237) 2017/06/23(Fri) 02時半頃
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( きみが輝久であれ、 そうでなかれど、きみを生かす。 諦念の悪さはその一貫ばかりを貫き通す。
元どおりに帰すことまではちょいと 無理かもしれんが、其処にいのちがあるんなら ──── 容赦してくれ。 )
[ それを告げるのは”どちらのきみ”か。 知るための記憶は、閉ざされたまんまだ。 ……恐らくは、未来永劫。 ]
(238) 2017/06/23(Fri) 03時頃
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……それになァ、 約したのはきみじゃあないだろう。 全部、僕になすりつけちまえばいいんだよ。
────その為に、”きみひとりで行ってくれ”。
(239) 2017/06/23(Fri) 03時頃
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(赤に塗り潰されたてのひらでは、 もう、如何なってんのか分かりもしねえが。 律儀に皆な、待っていなくとも叶うものばかりだろう。)
[ずるずると、 自ら離れた癖に這い蹲るように伸ばした手は >>228踏鞴を踏む足の均衡が崩れたのを好い事に、 袂を掴んでは、石畳に赤い線を引きながら、
────ろくに動かない左腕に 最期の力を籠めて、その袂を掴み、 腰を下ろせば引き摺るように襟元を一緒くたにして 掴み、それから、”木刀”であったそれと きみの手とを縫い付けるように右手で重ね、握り、]
(240) 2017/06/23(Fri) 03時頃
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( その刃を、この首に添えた。 )
…… ” 僕を殺せば、きみは走っていける ”。 明日の終わりを待つこともなく、生きられる。 (かもしれない、と謂う仮定は斬り捨てた。)
[───ひとに、触れるのが怖いほどに。 一度絡めば死後に於いても纏わりつくような、 「決して離れない」なんて藤花の言葉毎断って欲しい。]
(241) 2017/06/23(Fri) 03時頃
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(……臆、二度くらい死に直さなきゃあ、 ”きみ”をちゃんと見れはしないのだろう。 三度目の正直など、流石にありはしねえだろうけど。
─────だが、 ”次が存れば、その時は。” ) [きみが渋るようであれば、その手ごと引っ張って。 空白の時に狩らせた椿の恨みに憑かれたかのでもよう、 ───その首を捧げようとした。]
(242) 2017/06/23(Fri) 03時頃
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……じゃァ、 あとは宜しく。
[>>@114 周囲の雑音共の躙り寄る様に、 嗚呼、何時かに四面楚歌の曲目なんて思い出しはして。 儘、呆けたあとの彼に振り向き様、微笑んで。]
(死神の為らせ方なんてのは知らねえが、 かれに任せりゃあいいだろう、と亦ぞろ浅はかに) (臆、でも。気力の力ってのは、 碌に強いもんでもねえから、 剥がそうと思ったのなら───、 ──分からねえけれども、なァ。)*
(243) 2017/06/23(Fri) 03時頃
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[足りないものなど、 足した覚えなど何処にも無かった。 今になっては奪ってばかり、 過去に至っては─── ……。]
(……この視界に、 言葉以外できみ”だけ”を見れたことは ほとんどと、無かったのに。)*
(244) 2017/06/23(Fri) 03時半頃
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(確かに、 此の身が持つんであれば >>257然うとするのが好いんだろう。 ────唯、なァ。 自分の潮時の加減が分からねえほどは 愚かであっても莫迦じゃあ無い心算で。)
………。
[真にきみを知れていたら、 ”信じたかった可能性”のことなど一文字とすら 告げることも無かったろう。]
(”先生”であれば、まるで幼子のように>>258 きみが然う言うのは分かっていた。 もっと、好い”殺させ方のひとつも浮かんだろう。)
(262) 2017/06/23(Fri) 05時頃
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(それでも、 器用事を識るのは後世。 唯今、唇がかたちづくるのは、 僕の知らぬ、想像の産物に過ぎない、 ”先生” の似像。)
……最期の願い、と言えば。 聞いて貰えませんかね。
─── 榴斗君。
[──瞬、 はら、と差し込んだ刃に紛れて、 髪留めの紐が千切れて 緋と染まる。]
(263) 2017/06/23(Fri) 05時頃
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[引き戻されたからこそ、 半端に意識がある生殺しの意識の中。 散華しようにも椿でもあらぬ華だからこその報いか、 二度目の(──覚えの無い一度目を馳せ、) その腕に鴉羽色を乱れさせながら 崩れるばかりの軀。
( ……臆、最期迄、 憎たらしい程に意識だけはあるこの身は、 >>260 誰ぞを呼ぶ声を、片隅で訊く。 )*
(264) 2017/06/23(Fri) 05時頃
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