18 Orpheé aux Enfers
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先輩、好き―…。
[理性はとうに消え去っていた。 そうでなければ、物陰とはいえこんな行為に及べる筈がない。
繋がった部分を揺らせば、ラルフの口から甘い声が漏れるか。 それをうっとりとした表情で聞き、耳朶を噛む]
は、あ、うっ…せんぱ、い……す、き…… もっと、お、れに……らる、ふ……
[感情と本能に操られるままに腰を叩きつける。 二人の息と肌が絡み、コンクリにぽたぽたと雫が落ちた―。 若い交わりは、興奮した欲望が収まるまで続くかと思われたが、 不意に訪れた空腹によって理性を呼び戻されてやがてフェードアウトした]
(233) Cadenza 2010/09/10(Fri) 05時頃
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……先輩。 俺、もいっかい楽器探してみるよ。 やっぱり、ここで終わりになんかしたくない。
[貯水タンクの裏に寄りかかって座りながら、言った。 重ねた肌。感じた吐息に―ひねくれていた何かが削げ落ちて。 ただもう一度共に音を紡ぎたい、音楽を創りたい、と素直になっていた]
そういえば、カルヴィンは気付いてないんだろうか。 俺は爆睡しちゃってたみたいで何も気付かなかったんだけど、 もしかしたら何か見ているかもしれない。
[落ち着いたら中へ戻って楽器探しと、犯人を見ていないかカルヴィンに聞こう。 けれど今は―。もう少し、寄り添った温度を、感じさせて**]
(234) Cadenza 2010/09/10(Fri) 05時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/10(Fri) 05時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/10(Fri) 13時頃
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― 屋上 ―
[見上げる太陽はもう朝ではないことを告げている。 熱にうなされたような時間は、あっという間だと思っていたが―。
やらかしてしまったことに今更ながら困惑して、 ぼさぼさのままの髪に手をやった。 そこを、撫でられた時の感覚が蘇って、鼓動が一つはねた]
―ん。ありがとう。 見つかれば、いいんだけど。
[音が好きと言われて嬉しそうに微笑んだ。 しかし、サイラスの一件を聞けば表情は強張った]
あの人は、確かに昨日―ぽかりと空いた時間はあったけど そういうことをする人じゃない気がする―。
[だって、犯人なら自分に空白の時間があるなんて言わないだろうし]
(266) Cadenza 2010/09/10(Fri) 23時頃
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カルヴィンが?怪しい? いや、そりゃ…一番持って行きやすいのはあいつだろうけど―
[何のメリットが? 楽器への執着を否定しているように感じた彼が、 他人の楽器を持ち出してどうするというのだろう。 髪をくしゃくしゃとしながらわかんねーと呟く。
ラルフから携帯を見せてもらってカルヴィンの居場所を知れば]
考えるよりも、聞いたほうが早いですね。 あぁ、俺制服に着替えてきますよ。 流石にこの時間でこのカッコはまずいでしょう。
先輩、先に行っててください。 俺も後から行きますから。
[そうして、緩く手を振って先にラルフを送り出した]
(267) Cadenza 2010/09/10(Fri) 23時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/10(Fri) 23時頃
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― 屋上 ―
[後で追いますから。 言っておいてまだそこにいた。
さっきまで明るかった表情はそこになく、 かわりに不安げな面持ちがあった]
あぁ、俺、ばっかじゃねえ、の……。 また困らせてるじゃないか…。
[その最中、自分の口からは想いを告げる言葉が 熱にうなされるように、何度も出ただろう。 ―けれど]
勝手に押し付けて―返ってくるわけ、ないよな。 おめでたい奴だな、俺ってば。
[はは、と気落ちした息が漏れた]
(271) Cadenza 2010/09/10(Fri) 23時半頃
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― 部屋A ―
[誰もいない部屋で堂々とジャージを脱いだ。 タオルで汗を簡単に拭いて、Tシャツを着て― 制服のズボンを穿き、白のワイシャツを羽織った]
――やっぱ、ないよな。
[寝る前に楽器のケースを置いた場所を見る。 一瞬メタリックシルバーが見えた気がしたのは、気のせいだった]
―――………。
[深い、深い溜息。 見つかる、そう期待をすればするほど、叶わなかった時の反動は大きい]
誰だってなんだっていいから、楽器返してくれってんだよ…
[返さないなら、金をくれ。 それが今の正直な素直なキモチ]
(275) Cadenza 2010/09/10(Fri) 23時半頃
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― →練習室E ―
[足早に練習室の方へと向かう。 途中食堂の方をかえりみて、腹減ったなあとぽつり。 けど、身体の欲求と心はシンクロしてなくて。 そのまま練習室の並ぶ廊下へ]
――!
[ラルフとカルヴィンの姿が見えた練習室Eへ入ろうとして、 締まりの悪い扉の隙間から聞こえてきたカルヴィンの声>>277に はっとして手を止めた。
そのまま、少し開いた扉の横―に立って、 壁に背を預けたまま聞こえてくる声に耳を向けた]
(283) Cadenza 2010/09/11(Sat) 00時頃
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ヤニクは、思いっきり眉間に皺を寄せる。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 00時頃
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― 練習室Eの前 ―
――……。
[溜息をついて首を振る。 警戒していなかったのは事実だ。 しかし、そこまで愚かだとは思っていなかったのだ。
昨夜の会話を思い出せば、楽器そのものに何の感情もないのだろう事はわかる。 しかしそれが彼の素性なのだろうか?
じゃあ何で、お前はそこで楽器弾いてるんだ…
[パルプフィクションのことを嬉々として告げた声は芝居だったのか? あの時2人で合わせた音も―]
わっかんねえなあ。
[意味がわからない。眉間の皺は深くなるばかり。 一度諦めた楽器、今更ないと聞いたところで虚しさが増すだけ]
(291) Cadenza 2010/09/11(Sat) 00時半頃
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ヤニクは、扉の前からは動かない。多分、顔を見たら黙って殴るから。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 01時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 01時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 01時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 01時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 01時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 01時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 02時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 02時頃
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― 練習室Eの前 ―
物置?
[届いたメールに首を傾げる。 副部長がそんな場所に一体何の用だろう?]
ってか、場所知らないんだけど。 物置ってどこだよ…
[知っていたらそこだって探したはずだ。 参ったなと顔を顰め、それでも今は中で話している2人のことが気掛かりで。 自分が出て行くと無駄に詰問してしまいそうだから―せめて話の中身だけはと。
部屋を出てきたラルフに立ち聞きしていたことを詫びるような視線を向けてから]
…あいつの他にも誰かいるってことですよね。 ずいぶんご大層なことで。
(303) Cadenza 2010/09/11(Sat) 02時半頃
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[瞬いたラルフに向かって、軽い口調で言って肩をすくめる。 怒っていないはずはない。けれど、最大限にそれを抑えようとしていた―]
俺、なんだか知らないけど副部長に呼ばれてるんで、行って来ます。
[携帯をひらひらとさせ、連絡があったことを示す]
なんかあったら、連絡しますから。 心配は無用ですよ。
[―って言っても心配性の先輩は心配してしまうのだろうけど― それだけ言って、適当に歩きだした]
(304) Cadenza 2010/09/11(Sat) 02時半頃
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― 物置付近 ―
俺の気が変わる前に。 って、どういう意味だ?
俺なんかやらかしたっかなあ…
[わけがわからない。 けれど、メールの最初の言葉にとても引っかかっていた。 おまけに食堂でかけられた言葉もある。
その上、ゆうべから一番疑念を抱いている人物でもある]
で、物置って、どこなんだよ…。
[立ち止まって辺りを見回した]
(305) Cadenza 2010/09/11(Sat) 02時半頃
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―ん?
[かすかに聞こえるのは―]
フルート?
[なんで?と首を傾げて数秒後。 ようやく副部長とフルートが繋がった]
感情、が―。
[音色に首を傾げ、それから音の方向へと歩き出す]
――……。
[開いたままの物置の扉から中を覗く]
バーナバスさん。
[物置の戸口のところに立ったまま、声をかけた]
(308) Cadenza 2010/09/11(Sat) 02時半頃
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― 少し前、練習室Eの前 ―
あいつが俺の楽器を持ってった…って辺りからですかね。 結構、聞いてたみたい。
[はは、とバツが悪そうな表情を向け]
いいんですよ。 もう。
あとは、あいつの問題でしょ? 俺や先輩がとやかく言ったところで…聞いてくれそうにないし。
[ちら、と練習室の方へ視線を向けた。 副部長に呼び出されたことに考え込む様子を見て、再度大丈夫だから、と。 もっとも、怒りを抑えている状態で大丈夫も何もあったものではないが―。
ともあれ、ラルフが引き止めようとする前に、 それじゃ、と言葉を残して歩き出していた]
(310) Cadenza 2010/09/11(Sat) 02時半頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 02時半頃
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― 物置 ―
[声をかけても止まらない音。 それはどことなく何かを拒絶しているように聞こえ、眉を寄せた。
こちらを見る竜胆に、何の用?と首を傾げたが、 ふと逸らした視線の先に見覚えのある、メタリックシルバー]
………………どういうことですか。
[戸口に立ったまま、棘のある声を向ける。 探していて見つけたというなら、こんな態度になるだろうか? 気が変わる前にとか、言うだろうか?
抱いた疑念は消えない。 向ける視線は、射抜くように鋭い]
(314) Cadenza 2010/09/11(Sat) 03時頃
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[途切れた音の余韻が残すのは、拒絶し果てる鳥の声。 昨晩とのあまりの差に、寄せた眉の間に皺が刻まれる]
―は?
[唐突に告げられた、事態の顛末に眉間の皺は一層深くなる。 楽器を持ち出したのは―カルヴィンのはずだ]
そいつ持ち出したの、うちの後輩だと思ってましたけど。 あんたがそそのかしたのか?
[射抜くような視線は一瞬圧を高くする。 すたすたとケースの傍へ寄って、ケースを持ち上げた]
すまなかったって言われてもねえ。 あんた、食堂で煽るようなこと言ってたよな。 ―からかってたのか?
[相手が年上である事に対する敬意を怒りが超えた。 努めて冷静に言葉を放とうとすれば、トーンが低くなる]
(319) Cadenza 2010/09/11(Sat) 03時半頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 03時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 03時半頃
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そんなもん?!
[カルヴィンをそそのかしたのか、否か。 はっきりしない答えにちらと竜胆を見る]
そりゃ焦るだろうよ。お蔭様で。
俺をそんな目に合わせて、あんたは何がしたかったんだ? スコア盗んだ犯人探しはじめた腹いせか? まさかあんたも演奏会ぶっ壊すつもりだったとかいわねえよな?
[さっきカルヴィンが口にしていた、盗んだ理由。 2人が結託しているようには思えないが―]
スコアは?
[片手を出す。 別に、ちゃんと自分の手で返すというならそれでいいけれど]
(323) Cadenza 2010/09/11(Sat) 04時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 04時頃
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――てめえ。
[表面上冷静を取り繕っているだけ。 裡は怒りでいっぱいの状況では掛けられた嘘には気付かない。 ぎりりと睨む視線は続く理由に呆れ、軽蔑の色を濃くする]
はあぁ?? あんた、昨日の合奏の時は根性入ってたじゃねえか。 俺のことだって走りすぎってどやしたよな? それがステージもオケもめちゃくちゃに…って意味わかんねえよ。
奪う方はどうだか知りたくもないけど、奪われた方は最悪だったよ。 200万もする楽器盗られたんだからな。
[吐き捨てるように言い、楽器のケースを背負った]
(327) Cadenza 2010/09/11(Sat) 04時半頃
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俺に取って音ってのは命と同意だ。 あんた、俺が楽器なくして悲観して死んだら、責任とれんの? それくらいの覚悟でやったんだろうな?
[カルヴィンに、お前に取って音とは何だと聞いた。 自分の答えは、命だ。 心臓が脈という拍(リズム)を刻む限り、 身体に流れる音は消えることはないから。
じろりとバーナバスを見て、溜息をついた。 溜まり溜まった怒りは何を言っても消えることはない。 それに、相手も一応は詫びているわけで]
ま、楽器が返ってきたなら、もういいや。 ぐちぐち言ってすまんでした。
[ケースを背負ったまま、ぺこりと小さく頭を下げ―]
カルヴィンにもちゃんと謝ってよね。 本当にあんたがそそのかしてやらせたなら。
(328) Cadenza 2010/09/11(Sat) 04時半頃
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ヤニクは、いい?と言うように首を傾げて小さく肩をすくめた
Cadenza 2010/09/11(Sat) 04時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 04時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 05時頃
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[彼が本当のところ何を想ってどうしたかったのか。 関わりが薄ければ察しようとする気持ちも薄い。 語られることが全て過去形であることが意味するものなんて、 わかるわけもない]
やっすい楽器で、やっすい命で それでも必死で音楽やってんだよ。 あんたみたいナご立派な音大生にとっては カスみたいなもんかもしれねえけど。
[逸らされた竜胆。 そして寂しい、と聞こえふ、と口を一瞬つぐんだ]
……だったら、くだらねえことやってんじゃねえよ。
[皆に謝ると聞けば何も言葉を返さず]
じゃあ。
[何もかもスッキリしない心持を抱えたまま、物置を後にしようとした]
(334) Cadenza 2010/09/11(Sat) 05時頃
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ヤニクは、大袈裟に肩をすくめながら物置を出て行った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 05時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 05時頃
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― 廊下 ―
[なにこの気持ち。 どういうことなの?責めた俺が悪いの? あいつなんなのいい奴なの悪い奴なの?
返ってきた楽器ケースを背負いながら廊下を歩く。 思いっきり憮然とした表情で。 それはもう、全く釈然としてませんと言葉なくとも判るくらい]
―あ。知らせておかなきゃ。
[ポケットから携帯を取り出してメールを打つ]
(342) Cadenza 2010/09/11(Sat) 06時頃
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― 練習室A ―
[メールを送った後、その足で練習室Aへ。 ピアノの椅子の上にケースを置いて、ダイヤル式のロックを開ける。
音大生が持ってるようなヤツから比べたらやっすいけどさ…
[自分にはこれしかない。 再び楽器を手にした時、わけもわからぬまま手が震えて、 弓を落としそうになってしまった。
手を離れてからたかだか半日だ。 たったそれだけでこの精神の擦り切れ様はある意味笑える。
楽器を構え、弓を下ろす動作を契機に流れるものは パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番の3楽章、ロンド。 昨日ここへ来た時にも楽譜を広げてこの曲を弾いていた。
例の如くちゃんとしまっていない練習室の扉から音漏れ出せば、 楽器が戻ってきたことを知らせることができるだろうか**]
(344) Cadenza 2010/09/11(Sat) 06時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 14時頃
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― 練習室A ―
[半日ぶりに手元に戻った楽器。 ぴんと張った弦を震わせて奏でる音はさぞかし想いの篭った― ―バーナバス曰く暑っ苦しい音だそうだが―ではなく。 完全に心ここにあらずのかすかすの音。
手が震えて弓にうまく力が伝えられないのもあったけれど]
…で、なんて言えばいいんだよ。俺は、あいつに。 どんな顔したらいい―……?
[楽器は見つかった。 しかし、その楽器を持ち出したのは同室の後輩で、 彼がそそのかされたにせよなんにせよどんな顔して接したらいいのか そればかりをずっと考えていたのだ。
だから、鳴り響く鐘の音―ラ・カンパネラは何を告げるでもなくただそぞろ]
(371) Cadenza 2010/09/11(Sat) 15時頃
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あ、せんぱ、い?
[やってきたラルフに弓を止め、肩に楽器を挟んだまま瞬いた。 彼が練習中にしかもノックもせずに駆け込んでくるのは、 何かあったとしか思えない。 見せられた楽譜。その端に記された文字に目を見開く]
え?楽器置いたまんまで荷物がない?って…あいつ!
[楽器と弓ををアップライトピアノの上に置く。 それから、ラルフを見て―]
まだ、この辺にいるかもしれない。 俺、探してきます!
[練習室から駆け出した]
(372) Cadenza 2010/09/11(Sat) 15時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 15時頃
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あとはお願いします!
[駆け出しながらラルフに後のことを頼んで廊下をかける。 自分の足音の他には、キインとした感じのフルートの音。 誰が吹いているのだろうなんてことは―考える程余裕はなかった。
カルヴィンが出て行ってから自分がそれを知るまでのタイムラグはどのくらいだろうか。 もうこの建物の中にはいないかもしれないけど― そう思いながら駆ける先、エントランスに人影]
おい、どこ行くんだ。
[荷物を肩から下げている後輩へ向かって声をかけ、 歩いて近づいて、進行方向を塞ぐ形で立ち止まった]
まさか帰るつもりじゃないだろうな。 楽器置いたままで。
[自分の身長とそう変わらない後輩。 僅かだけ下にあるチョコレート色をじっと見た]
(375) Cadenza 2010/09/11(Sat) 16時半頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 16時半頃
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忘れもんがあるだろう。
[くいっと建物の中の方をあごで示す]
あれどうするんだよ。
それに―副部長から聞いた。 お前そそのかしたって。
まあもう楽器が返ってくれば誰がどうだとかはともかく、 それでおまえが楽器手放す理由はないだろう?
―それに、先輩達もお前のことを心配してる。
[そこまで一息で言って、ふと視線を落とす。 カルヴィンが本当に音楽なんてやりたくないって言うのなら 何を言っても届かないくらい、音楽が苦痛だというのなら―でも]
(377) Cadenza 2010/09/11(Sat) 17時頃
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俺は、お前とはもっと一緒に演りたいし、 今度の4人だったら絶対に音大生には負けない。 それくらいのものが出来ると思ってるし、信じてる。
そりゃ、お前が盗ったって聞いたときはぶん殴ろうかと思ったけど。 でもやっぱりお前の音―いや、お前自身が、必要なんだよ。
[下げた視線を再び上げる]
だから―頼むから、戻ってくれ。
[それは命令でも懇願でもなく―願い。 まだ音楽に対して少しでも未練があるのなら、と]
(378) Cadenza 2010/09/11(Sat) 17時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/11(Sat) 18時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/12(Sun) 00時半頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/12(Sun) 00時半頃
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― 回想・合宿中のエントランスにて ―
[置いて行く。その言葉に眉を寄せる。 どうして楽器を手から離そうするまでに至ってしまったのかと それを想ったが―答えはわからない]
その、お前の目と、耳をふさいでしまったのは何かはわからないけど―。
[ふ、と目を伏せて、空を見上げ、そこに広がる青を見る けれどこんな物ではないはずだ。 音ならばはもっとたくさんの色を紡ぎ出せる―]
そんな音だって、今の北校のチェロはお前だ。 お前と全く同じ音が出せるやつなんているもんか。 俺達には他の誰でもない、お前が必要なんだよ。
[首を傾げたチョコレート色を見る]
(419) Cadenza 2010/09/12(Sun) 00時半頃
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だから、お前の視界が晴れるまで、俺等が― 俺が、手をひいてやる。
今までたっぷりお前の音に引っ張ってもらったからな。 だから今度は、俺の番だ。
[先輩じゃ役不足ですよ。 なんて言われかねないな、とはおもったものの…]
だから、戻って来い。
[チョコレート色を見る視線は、揺るがない。 それは間違いなく本心であり、覚悟を決めている現れ]
(420) Cadenza 2010/09/12(Sun) 00時半頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/12(Sun) 00時半頃
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― 文化祭当日 ―
[かくして、この日がやってきたわけで。 声楽科の練習室で姉の練習のにギリギリまでつき合わされていたせいで、 集合はギリギリ。 控え室でも気になる部分の確認を入念にしていた]
よし。
[そして、ステージ。 緞帳が開けば右半身がライトの光で熱くなる。
指揮台を挟んで向こう側。 チェロの席にふと目を向け、それからヴィオラを、 2番ヴァイオリンを順に見た]
(425) Cadenza 2010/09/12(Sun) 01時頃
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さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/12(Sun) 01時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
Cadenza 2010/09/12(Sun) 01時頃
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[緊張が指先に残っていた。 手を握ったり開いたりして解きほぐそうとしてみる。
タクトが上がる。 振り下ろされると同時に、左の方― 管楽器軍から音の波が押し寄せた。
弦はといえばぴったりと合ったボウイング。 一糸乱れぬ動きが、視覚的な波を産む。
思えば、あの合宿ではいろいろあった。 あの時のカルヴィンの返事はどうだったか。
それに、あれからラルフの音を枷に感じなくなった。 ぴったりと同じ形で後を追わずとも、 ちゃんと待っていてくれるとわかったから。
だから、今はあの時よりも自由に歌うことが出来ていた]
(429) Cadenza 2010/09/12(Sun) 01時半頃
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