237 それは午前2時の噺。
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[ ─────… ざぶ ん、]
(44) minstrel 2018/03/31(Sat) 02時頃
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[ 斗都良駅周辺の道すがら、突如、視界が黒に呑まれた。田舎町を細々と照らす灯火は、見渡す限り潰えたようで、夜の帳を打ち消す街灯も、今は無力にも夜闇を野放しにしている。
職場の送別会が、名残惜しさと今日限りの別離を言い訳に、二次会、三次会、四次会と長引いたおかげで、正しい夜の訪れに立ち会うが。脳髄までしっかり酒精が回った頭では、碌に事態が飲み込めない。
ただ頭上に明滅する無数の星を瞳に収め、天を仰ぐ。 綺麗なもんだ。悪くない、と吐き出した息の酒臭さに、少々目が醒める。上手く切り取れる気はしないが、出来心で夜空の写真でも撮ろうかと、ポケットを探り──…ない。
スマホがない。一気に酒が抜ける。あちこち叩いて、ある筈の機体の膨らみを探し当てんと願うが、手応えはない。入れた覚えがないのだから、当然鞄にもない ]
「はぁ、何やってんだ……」
[ 呆れと、諦観の入り混じった溜息が、忽ち夜に取り込まれる。端末の画面光も、連絡手段も絶たれ、暗闇と孤独に対抗する術を失う。星が降ろした電信柱の影から、眠りについた三両編成の電車の車体から、静寂が顔を覗かせる。月光が悪人を洗い出すかのように、一筋此方に差し向けた ]
(45) minstrel 2018/03/31(Sat) 02時頃
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「……先生?」
[ か細い、昼間の喧騒の中であれば捉え損ねる程の、小さな声を拾い上げる。遮断機の向こう側で、背に月明かりを受け立ち尽くす子供。見覚えのある白い肌が、夜との対比で一層際立つ。早春にしては薄着の袖のないワンピースと裸足が、はっきりと輪郭を持ち、丑三つ時に取り込まれる事なく存在している。昼の間、保健室で眠り姫然としているのが、納得出来る程に ]
「お前、こんな時間に何を、…………あっ?!」
[ 違和感は幾つもあるが、少女の手の内にある物を見て、声を上げる。長方形のシルエットだけで、小さな手が握り締めているのは、自分の探し物だと早合点する。が、見止めたと同時、少女が身を翻し、駆け出す ]
(46) minstrel 2018/03/31(Sat) 02時頃
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「おい、……待てって!何処行くんだ!」
[ 引き止める大声が、アスファルトを打ち路地に響く。反射的に追い掛けようと足が動き、踏切を越える。坂道に差し掛かり、運動不足の心臓が暴発しそうな程に痛むが、立ち止まることも出来ず、千鳥足に鞭を打つ。やがて世界が回り出し、足場を失う浮遊感に襲われる。視界に踊る白いワンピースだけが道標だった。
大人の脚力が開いていた距離を次第に埋め、もう一息だと伸ばした手は、空を切り、落ちる。後を追う速度を態と緩めたのは、少女が笑っていたからだ。長い黒髪が夜に棚引く。すれ違う夜風は少女を見逃し、誰も彼も、あの子を捕える事は出来ない ]
(47) minstrel 2018/03/31(Sat) 02時頃
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[ ──大人になれば、自由が手に入ると思っていた学生時代。苦渋に耐え、机に向かう事しか出来ないでいた。現実は、柵に行き場を失くし、背負う物が増える日々。
青年は時折、生きにくそうに笑っていたのを思い出す ]
(48) minstrel 2018/03/31(Sat) 02時頃
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[ 夜を駆ける、少女の今が、この子の本質だとするなら、保健室で俯いていた子供もまた抑圧されていたのか。棒切れのように動かなくなった足を素直に止める。
俺の負けだ、と口に出した途端、力が抜け座り込んだ。振り返った少女が、廊下を騒がした悪餓鬼達と似たような、いい笑みで笑った。斗都良の町は未だ闇の中であるのに、この一本道に静寂の気配はない。そうしてこの身体を縛る気怠い不自由が、なんだか愛おしく、思えて、薄く笑って身を任せた ]*
(49) minstrel 2018/03/31(Sat) 02時頃
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