266 冷たい校舎村7
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[ ひとしきり撫でてやった後、 隠すように添えた一羽の鶴の行く末知らず。>>445 気紛れに投げた視線の先のぬいぐるみについて 経緯を知れば、へえとだけ言葉を漏らした。 ]
……嗚呼。マネキン、
[ 初めて聞く、自らのマネキンの話。>>446 自分の傍にハートのぬいぐるみがと聞けば、 キモ、と内心思うもののその先を知れば 暫し、唇を閉ざしてしまう。 ]
(663) ゆら 2019/06/22(Sat) 11時半頃
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………、へえ
[ かろうじて出せたのは、それだけ。 偶然の一致、にしてはどうしてだか。 けんちゃんと堅治のちがいなんて───。
ぱくり、と頬張る口角から溢れそうな>>447 あまいあまいクリームに目を奪われる。 ]
知らねえだろーけど、 てんとうむしはしあわせを運んでくれんだよ ……お前にも、と思って、
(664) ゆら 2019/06/22(Sat) 11時半頃
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[ しあわせを運ぶてんとうむしのジンクス。 実は──……恋のおまじない、 そんな意味も込められているなんて 轟木颯太は知ってはいなかったけれど。 しあわせはいずれ訪れる、と願っている。
たとえ、この世が地獄だとしても ]
チリツモ、って言うだろ?
[ 塵が積もれば山となる。 と言いまして、些細な幸せが重なれば いずれは地獄も天国に変わるかもなんて、 拓海に向けて、しあわせを運ぶつもりだったけど。 湧いた頭でいられんのは、もしかしたら。 ]
(665) ゆら 2019/06/22(Sat) 11時半頃
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[ 別のこと、に気が取られてるからかもな。 ]
つーか、退院。あんま遅えと、 置いてくからな? はやく着いて来いよ
[ 軽く深呼吸した後に、 煙草を箱をポケットから取り出して。 窓際でライターをカチ、カチ、と鳴らしていれば 偶然、窓の外にいた看護師に怒鳴られる。
院内は全面禁煙だって大きな声が、 いまは何故だかありがたかった。 ]**
(666) ゆら 2019/06/22(Sat) 11時半頃
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──後日:パン屋──
…………
[ 何年ぶりだろうか。 その名前を口にしたのは。>>569 忘れることはできなかった。 ] 忘れようとして、 捨てようとして、 夢の中でだけの話にしたかったのに 心のどこかで拠り所にしてしまったくらい。
それほどまでに、しあわせ だったんだと思う。 ]
(726) ゆら 2019/06/22(Sat) 20時半頃
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[ てんとうむしの形がなくなっていくように、 まるでしあわせが遠ざかっていくみたいに、 昔のともだちのお話も閉幕へと向かっていく。
───本来だったら、これで終わりの筈だった。 分け与えたパンの味を聞いて、おしまい。>>575 だから、隣に立つ堅治をみて、 それから視線の先をゆく猫へと目を向けたのに、 ]
お、う、……
[ ようやくこっちを見て、>>576 ようやく目線が合ってからは、 じゃあな、って言おうと開けた口は、 言葉を吐き出すのを忘れたみたいに開いた儘。 ]
(727) ゆら 2019/06/22(Sat) 20時半頃
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[ 昔、おともだちの様子がおかしかった時があった。 あの時、おともだちには誤魔化されたけど、 一緒に笑い合ってしあわせを共有できた。
今は、えがおのまほうつかいになれる訳もないし そもそも、どうしてそんな顔してるのかすら 分からないし、想像もつかなくて、どうしてだ? って、感情を思い出してしまった轟木楓太は、 ぐるぐるとよくない感情が渦巻き出した。 ]
……おい、堅治。
[ しかし、無意識のうちに、 自分の腕は堅治へと伸びていて 引き止めるように彼の腕を握りしめている。 振りほどこうとしたって、逃がすつもりはない。 ]
(728) ゆら 2019/06/22(Sat) 20時半頃
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……けんちゃん?
[ 偶然の一致? 運命? もしかしたら勘違いかも。
昔とはまったく、変わってる。
でも、赤い髪の毛も、 日本人離れした顔立ちも、 それなのに真っ黒な目も、 おうちの中にあった強い証たちも、 てんとうむしを飼ってたことも、 ジンクスを知ってたことも、 甘いものをしあわせそうに食べる横顔も。 ]
(729) ゆら 2019/06/22(Sat) 20時半頃
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[ ───おなじじゃあないか。 堅治も、けんちゃんも。 ]
(730) ゆら 2019/06/22(Sat) 20時半頃
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悪い、忘れてくれ。いまの。
[ 向けていた顔は、らしくもない 眉の下がった表情だったかもしれない。
しかし、ハッと気づいたように 掴んでいた手を離せば視線を右へ左へと泳がせて ]
何、泣きそうな顔してんだよ そんなに美味かったのか? てんとうむしパン よかったな、死ぬ前に食えて
[ ぶっきらぼうに、そう告げるだけ。 落ち着かない手はポケットにつっこんでいた。 ]*
(731) ゆら 2019/06/22(Sat) 20時半頃
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──後日:パン屋──
[ 堅治では、振り返ってくれず。 けんちゃんで、振り返れば、>>752 ]
────……は、?
[ 真っ赤に染まる顔が、其処にあった。 これまでに、宇井野堅治がこんな表情を したことはあるのだろうか? ってくらい。
掴んだ腕の熱、不安定な呼吸、 そして、言葉を飲む姿をみて─── ]
(816) ゆら 2019/06/23(Sun) 01時半頃
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[ 確信へと、変わる。 ]
(817) ゆら 2019/06/23(Sun) 01時半頃
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[ 右へ、左へ。 泳ぐ視線の中では、 くちびるが微かに動いたことに気づけない。
ちゃんと顔を見た時には 崩れるような笑顔があって、>>759 パンの感想なんかを、言っている。 ……いや、俺が聞いたんだけどな。 ]
悪い、
[ だから、二度目のごめんなさいを君へ。 ]
(818) ゆら 2019/06/23(Sun) 01時半頃
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[ ひさしぶり、を飲み込ませて ごめんね、って気持ちにさせて、 そんな風に、誤魔化させて、 気付いてやれないような馬鹿は─── ]
前に言ってた、ともだち。 ………気付いてやれなかったの、
ごめん。 俺、だろ?
[ たしかに、姿形は変わってしまった。 けれど、変わらないともだちが、そこにいた。 ]
(819) ゆら 2019/06/23(Sun) 01時半頃
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……悪い、
[ そして、三度目の謝罪。 これについては、今の自分の態度について。 ]
本当に悪かったと思ってんだけど、 ……ちょっと、うれしい
[ あの日の約束、覚えてるか? また会う日を願った、あの瞬間を。
高校に入ったあの日から、再会してたんだ。 ……たいせつな、ともだちに。 それが、ただただ、素直に嬉しかった。 ]
(820) ゆら 2019/06/23(Sun) 01時半頃
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[ 堅治の顔は、まともに見れなくて。 つられたように、ほんのりと頬が色づいて。 隠すように、片腕で口許を押さえていた。
罰が悪い、とか。 ひさしぶりで照れ臭い、とか。 昔と違う自分が恥ずかしい、とか。
色々な感情で、いっぱいになって どれから手をつけていいのか分からないけど。 ]
(821) ゆら 2019/06/23(Sun) 01時半頃
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不甲斐ねえんだけど、さ、 ……また、ともだち≠ノなってくれるか?
[ 再び、失われていた時間を取り戻そう、 だなんて、意を込めながら片手を差し出した。
ひさしぶり、を越えても、 おともだち、になれると疑わない。 君の我慢も、罪悪感も、邪魔者も、すべて─── ]
(822) ゆら 2019/06/23(Sun) 01時半頃
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[ 轟木颯太には、気づけやしない。 ]**
(823) ゆら 2019/06/23(Sun) 01時半頃
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これは、合図だった。
(910) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ 真っ赤なからだに 黒い点々 ころんと丸いちいさな虫が 袖にちょこんと、ついている。 バトン、ほどの大きさの筒を握ったまま ちいさな虫に気づいたのなら そっと摘んで近くの葉の上に乗せてやった。
あたたかな陽気に包まれている。 ]
(911) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ トレードマークと化していた 真っ赤なパーカーは見当たらない。 襟を正しく着ていたのであろう制服の 一番上のボタンを、軽く開いた。
ちなみに。ジンクス好きな男のボタンは、 ぜんぶまるっと残されている。
そうして、木の幹に背を預けては ポケットの中へと手を差し入れた。 ]
(912) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ 校舎裏、特等席にて。 ひと筋の煙が空へと昇る。 これが、此処での最後のひとやすみ。 ]
(913) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ あの日から、今日まで。 振り返れば、いろいろあった。 前置きから始まった言葉。>>687 あの時は目が点になってしまって、 池の中の鯉みたいにぱくぱくと口が 動いてしまいそうになるのを堪えた。
そして、本音をぶつけてくれるような、 ───ひとりのともだち≠ェできた。 ]
(914) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ ちょっとだけ滲む涙も、>>684 タオルケットに隠れる姿も、>>689 それから、火を分けっこするのも、>>690
うれしく、って。 その日だけは俺も本音でお答えした。
『ありがとう』って、言った。 ともだち、って言ってくれて、ありがとう。 でも、一回しか言えなかったから、 タオルケットで更にぐるぐる巻きにして 前なんか見えないようにしてやった。
ついでに、お前はライター係なって、 誤魔化すような言葉を添えていたっけ。 ]
(915) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ そして、ともだち≠取り戻しもした。>>849
結局、半分こしたパンを食べ終えて お互い照れ臭そうにしながらも、 再認識できたってことがうれしくて しあわせいっぱいの笑顔につられ>>848 轟木颯太はようやく、破顔していた。
昔、みたいな。 思い出せてえらいでしょ?って言わんばかりに。 ]
(916) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ はじめましての後のひさしぶりを超えて、 願って叶った約束を共有して、 しあわせを分け合えるようなともだち。
轟木颯太は単純なので、 昔とおんなじように何でも差し出した。 ……とは言っても、昔と違って ガムやらグミやらのお菓子の類が 主だったものではあったけれど。
───いまもまだ健在な、 天使みたいな笑顔をみたくって。 ]
(917) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ かくゆう、あいつ。は。 ]
おい、お前の作るメシ 嫌いじゃねぇから、また作っ、て………
[ って。見つけた背中を蹴らずに 素直にお願いをしようとしたのに、 逃げるようにどこかへ行っちまった。
距離感はやっぱ測れなくて、 近づけないものもあるのだと知った。 気づけない、ことがたくさんあった。
俺の世界は、視野は、狭くって、 たぶん、あいつにとってのいじめっ子は俺で。 俺が離れれば、マシ、なのかもって、 それを信じて、遠くから見守ることにした。 ]
(918) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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[ 嗚呼。そうだ。 貸し借りの話、覚えてるか?>>0:565 俺のお願い事、決まったぞ。
ともだち≠ニ思ってもいいですか?──だ。
なので、いっつも気色悪い笑顔のクラスメイトが 一人暮らしを始めるらしいと聞いて、 差し入れがてらにほらよ、って。 いつものパン屋で買ってきたてんとうむしパンを 押し付けたりしたことも、あったっけ。 ]
(919) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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…………、
[ ふ、と息を吐けば、 天使の輪っかが空へと舞い上がる。
短いようで、長かった。 俺の、モラトリアムが幕を引く。 けれど、空を昇るひとすじのように、 未来への道は、まだ続いている。 ]
(920) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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* 冷たい校舎を超えた、その先に向かう為の。 *
(921) ゆら 2019/06/23(Sun) 20時頃
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