244 【R18】ミゼリコルディアの宴【魔女村】
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[顔全体で不満を表現しながらも 腕の中から離れる気は、毛頭ありません。
よく見て。と、ガストンのシャツをぐいぐい 皺がよるくらいに引っ張って ついでに背伸びのおまけもつけましょう]
うん!うごくよ [どうだ!と、胸を張りたい気分です 大人への第一歩、とは少し違いますが 少なくとも、ガストンとお揃いになれるのですから]
(24) 2018/06/16(Sat) 00時頃
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[足が早ければ、人間が来た時に教えに行ける。 力が強ければ、疲れた時に支えになれる。
なにより、お揃いなのですから わからないことも教えてもらえるでしょう。
目の前の喜びに夢中な少年は 自分の耳を撫でる男の笑顔が、少しだけ歪んだことに気がつけません。
ただ、嬉しくてたまらないと 体を捩って、けらけら笑い声をあげて]
悪い人間がどの辺りから来るのか。も!
[山の遠くのことを教える。 その言葉の意味を少年は知りませんでした。]
(25) 2018/06/16(Sat) 00時頃
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[山の色々なところを教えてもらったなら 悪い人間が来る場所を、岩や倒木で閉ざしてしまおう そうして冬の間、二人でいても安全なように 眠れる場所を探そう。そんなふうに考えて]
ガストンとお揃いだね!
[伝えたかったことの一つ 熊になったことは、伝えられました。
けれど、ここに残ると決めたことは あの日のまま、緩いでいないのだから 伝わっているのだろうと
そんなふうに安直に考えている子熊の耳にも どこからか、微かな虫の音が届き始めておりました*]
(26) 2018/06/16(Sat) 00時頃
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―― 文字でのおしゃべり ――
[それは、前に作ったテントウムシが乾ききった頃。
色とりどりのテントウムシを窓に飾ろうとした時 ちらりと、ポストの中に見えた影>>1:320 浮き足ってポストの中を覗き込めば そこには、手紙が一通入っておりました。
宛先はだれと書かれているのでしょう? 落ち着かない手を抑え、手紙の表を確認すれば そこに書いてあったのは、自分の名前 その上、筆跡に見覚えがありましたから 返事が来たのだと、すぐに気がつけます。
返事が来たからには、次の返事は自分の番 ぱたぱたと家の中に駆け込んだ少年は 机の上に羊皮紙を広げました]
(47) 2018/06/16(Sat) 12時半頃
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フェルゼへ
お返事ありがとう。 うん。ドリって呼んでくれる方が嬉しいな。 ガストンもそう呼ぶから、そっちの方が落ち着くんだ。
あ、ガストンはね。飛び乗れちゃうくらいにおっきいよ ガストンはちょっと前にケガしたから さすがに今は飛び乗るのはガマンしてるけどね。
リッキィさんは、色々な魔法が使えるんだね! フェルゼも魔法が使えるなんて、二人ともすごいや ガストンは他の魔法は使ってるところ見たきおくないから 魔女や魔法使いも、色々ってことなのかな? そう考えるとちょっと面白いや。
ニンジンケーキはね、オレンジとシナモン入れるのがコツだよ リッキィさんもニンジンケーキ食べられるといいな。
テントウムシ2匹、いれとくね。 ドリ
(48) 2018/06/16(Sat) 12時半頃
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[書き終わったなら贈り物の準備。 小さな袋を紐で手紙へくくりつけます。
完成した手紙をポストに入れたなら 無事に届くように、手を合わせてお祈りのポーズ。 ぱたぱたと駆け足で家の中へ戻っていったのでした*]
(49) 2018/06/16(Sat) 12時半頃
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―― ありがとうと、ごめんなさいと ――
[季節は少し遡って、まだ無花果の盛りの頃のこと 朝一番にポストの中身を確認すると 隅っこの方に新たな手紙が一通>>1:332
ここまで何度か文字を介したやり取りをして 手紙には慣れ始めた少年ですが やっぱり、新しい手紙には心が踊ります。
大事に大事にお腹へ抱えて家に戻り 藁の寝床の中、腹ばいになって手紙を読み始めます 手元にはもちろん、お返事用の羊皮紙とペンも一揃え]
(70) 2018/06/16(Sat) 13時半頃
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ペラジーさんへ
お返事、ありがとう。 自分の紹介もしないで、お願いだけ先にしちゃってごめんなさい。一からお手紙考えるのってなかなかむずかしいなって思いました。
名前は伝えたから、あとはねんれいと、住んでるところでいいのかな? えっと年は7才で、今ボクは山でガストンという人と住んでいます。ガストンはクマに変身できる、大きな男の人です。 ペラジーさんの魔女さんが、血がつながってなくてもお姉さんで親で家族なように、ボクにとってはガストンが、お父さんで大事な家族です。
ボクは住んでいた村が食べ物が取れなくなっちゃって、人買い。という人に売られました。 二人いた妹は、ボクより先に連れていかれちゃったから、どこにいるかわかりません。 ボクは、山で事故にあって死んじゃうところだったのをガストンに助けてもらいました。 冬まで家においてもらって、それから妹たちを探しに行くって予定でした。
(71) 2018/06/16(Sat) 13時半頃
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でも、ガストンはケガをして、左うでをなくしちゃいました。 だから、ボクがガストンの手の代わりになりたいって思ったんです。 だから、ペラジーさんに小さい子が困っていたら、助けてあげて。ってお願いしたのは、完全にボクのワガママなんです。
ガストンの側にいたくて、でも妹たちがどこかで困っているのもいやで、あんな風にお願いしたんです。 自分ではもう探しにいかない。ガストンといるって決めたから ごめんなさい。ボクは優しくなんかないんです。 お祈りしてくれてありがとう。 ペラジーさんが、何かで困った時も だれかが笑い顔にしてくれるといいなって祈ってます。
こんなボクでもよかったら またお話ししてくれるとうれしいです。
ドリベル
(72) 2018/06/16(Sat) 13時半頃
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[袖口をインクで真っ黒に汚しながら綴った手紙は 羊皮紙二枚分の長いものとなりました。
一生懸命書いた手紙でしたが 自分の願いをうまく表せるだけの言葉は まだまだ少年の中には備わっていません。
それでも、妹が見つかることを祈ってくれた 優しいその人が少しでも幸せであるように 自分がガストンに助けられたように 困ったときに、誰かが助けてくれるように。
悩みながら書いたおかげで 書き終わった頃にはお昼も過ぎていましたけれど ようやく完成した手紙をコトリ。ポストへ入れたのでした*]
(73) 2018/06/16(Sat) 14時頃
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[穏やかだった外見の変化は 熊の耳が生えてからというもの その速度を一気に増して行きました。
それこそ、朝は何の変哲もなかった掌に お昼には肉球が出来ていたこともありました 座りにくいと思ったら、尻尾が生えていたことも。
そして、そんな変化が起こるたび少年は 猫が獲物を見せびらかすように ガストンのところへ駆けて行っては]
ほらみて!おそろい
[そう、自慢げにいうのでした]
(95) 2018/06/16(Sat) 16時頃
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[そんな日々を積み重ね、いつしか季節は過ぎて行きました。 枝に残っていたわずかなイチジクも きっともう、熟れすぎて美味しくはないでしょう。
一つの果実が盛りを終える代わり、次を彩るのは柘榴の赤とアケビの紫 足元に散らばったどんぐりが、歩くたび音を立てて砕けます。
食べられる茸と聞けば、ぽいっと籠に入れて 鮭の捌き方を教わった時には 力任せに捌こうと失敗したりもしたでしょう そうやって、ひとつひとつ教わるたび これからの未来に胸を膨らませて]
あ!じゃあボク登る!
[美味しいと聞いたなら、迷うことなんてありません。 スルスルと、鋭い爪を幹に立てたなら まだ体が軽いのもあり、簡単に登っていけます]
(96) 2018/06/16(Sat) 16時頃
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[そうして、ガストンと繋いでいない方の手に 山の恵みで重たくなった籠を握り締めながら 転ばないように気をつけて、山を歩いていけば]
う、うん 一列のがいいかな? それならガストン、先に通って
[たしかに、ぬかるんだ道が細くなっています。
下の方からはゴウゴウと、低い音が聞こえて来て 落ちたなら、ただでは済まないのだと教えてくれます。
背中の毛をぞくり、震わせながら 恐る恐る一歩、歩みを進めて]
あの時落ちたのも、こんな場所だったのかな
[思い出したのは、あの日のこと。 よく行きていられたと、握る手に力が籠ります*]
(97) 2018/06/16(Sat) 16時頃
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[まだよちよち歩きの頃から木登りは 少年にとって数少ない特技でした。
一番最初に木に登ったのはいつだったか 少年自身でさえ、覚えていないほど小さな頃
枝に止まった小鳥に手を伸ばしていると思ったら 躍起になって枝をよじ登っていたなんて 苦笑いでよく両親に言われたもの
だから、木登りを褒められた時には嬉しくて "こんなに採れるよ"なんて、木のてっぺんへ もし心配されたとしても、気にもせず それは大きな胡桃の房を咥えておりてきたのです]
(151) 2018/06/16(Sat) 22時頃
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[欲張ってしまった胡桃の房は 籠には入り切らずに、ぶらりぶらり
胡桃が滑り落ちないよう、籠を斜めに傾けながら ガストンの言葉に、少年もまた頷きます]
うん。ボクもびっくりした でもさ、……きっと、良かった
[あの日、荷馬車をひいていた馬は死んでしまいました。 消えた命があるのだから、落ちて良かったなんて 本当は言ってはいけないと思うのです。
それでも、茂みの切れ目に沢が見え そしてそこに、粉々になった木片が見えたなら]
ボクこそ、ありがとう
[繋いだ手をぎゅっと握り締め そっと、沢から目を逸らしたのでした]
(153) 2018/06/16(Sat) 22時頃
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うん。帰ろう!
[帰宅の合図に 荷物でいっぱいの籠は元気よくぶらんぶらん。
その日の食卓に、山盛りの木の実が出ても 少年は何一つ怪訝に思うことはありません。
だって、熊は冬眠する生き物なのですから 冬眠の前にはたくさん食べて、栄養を蓄えるもの。 『脂肪』というのでしたっけ? それを蓄えて、まるまる太るものなのだと 彼にもらった図鑑には、そう書いてありましたから。
美味しいね。なんて満面の笑顔で 自分と彼の分、二つずつ胡桃の殻を剥いていったのです]
(154) 2018/06/16(Sat) 22時頃
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―― そして、ある日 ――
[それは、風が冷たくなってきた頃のこと 床に転がり、絵を描いていた少年は 男のため息に、怪訝そうに首を一つ傾げます]
痛いの?
[聞けば、傷が痛いから一人で沢まで……とのこと 彼の表情を見れば、顰めた眉が辛そうで 先ほどのため息にも納得がいきます。
けれど、素直に出かけられるかというと別問題。 傷が痛むというのなら、自分がここにいて 出かけずにお手伝いした方がいいのでは?
なんだか不思議なことを言っている。と ぱちくりと、まばたきを繰り返していましたが]
(155) 2018/06/16(Sat) 22時頃
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うん、わかった それなら、行ってくるよ
[『手紙』と言われたならば さっきまでの疑問も吹き飛んでしまいます。
少年が最初に手紙を書いた時のように なにか、話しにくいことを伝えるため たとえばそう、お腹が空きすぎて 少年の分のおやつまで食べてしまったとか そんなことを伝えようとしているのかもしれません]
傷が痛いときは栄養いるんだよね? おっきなおさかな、持ってくるね
[理由が想像できたなら、あとは二つ返事。 籠と水筒をしっかり抱え はじめての一人の冒険に逸る心を抑えながら 扉をくぐって、山へと出て行きました*]
(156) 2018/06/16(Sat) 22時頃
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[ぱたり、後ろ手に小屋の扉を閉めたなら 裸足のまま森の中を歩いていきます。
桑の実季節に与えられた血は 月日とともに少年の体に広がっていき 今では違和感を感じることもなくなりました。
裸足で小枝を踏んでも、もう痛くはありません 籠をつかむ腕もズボンの裾から出る足先も 焦げ茶色のみっしりとした獣毛に覆われて 洋服こそ着ておりましたが、今の少年の姿は 二足で歩く以外ほとんど、子熊と同じ。
洋服を着て、すくりと立つ子熊の姿で 幾度も二人で歩いた沢までの道のりを 一歩一歩、歩いていきました。
迷うことなんてありません 胡桃の木の場所や、アケビの実のある場所 色々なことを教えてもらってあるのです]
(178) 2018/06/16(Sat) 23時半頃
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[だから、一人で大丈夫。 大丈夫なはず、なのですけれど。
空っぽの片手がなんだかスースーします 踏んづけた枝が立てる物音さえ いつもより大きく響いて聞こえます。
道に迷ってはいないけれど まるで迷子になったような感覚に 沢まで行かず、戻ってしまおうかと くるりと来た道を振り返りましたが]
(179) 2018/06/16(Sat) 23時半頃
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約束だもん
[そう、これは頼まれごとなのです。 引き受けた以上、こなさなければなりません。
後退りしたくなるのを奮い立たせるように ぎゅっと強く握りこぶし。 危ないと言われた場所までたどり着けば そろりそろり、岩を伝い沢まで下りていき]
(180) 2018/06/16(Sat) 23時半頃
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[ことさら大きな岩の上 ぺたんとお尻をつけて腰を下ろします。
魚を取るよりも早く、手紙を広げれば 書かれていたのは、予想もしていなかった 『さようなら』を示す言葉]
――――ッ……
[ポロポロと涙が毛皮を伝っていきます
沢の音ももう、聞こえません 零れた涙が羊皮紙にいくつものしみを作り インクが溶けて、滲んでいきます。
洋服を着た小さな子熊は まるで石像にでもなったかのように 日が落ちるまで、岩の上に座っていたのでした*]
(181) 2018/06/16(Sat) 23時半頃
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[どれくらいの時間が経ったのでしょう やがて、最後に残った夕焼けの一片が消えて 辺りは闇に包まれていきました。
ぼんやりとした月明かりでは ガストンの手紙はもう、読めません。 読めなくなった手紙と、籠をつかむと 子熊は、のろのろと腰をあげました]
ガストンの、バカッ……!!
[妹のことを想うのなんて当たり前です それでも、一緒にいると決めたんです。
よく考えなくちゃいけないことでも 考えたあとも答えが変わらないことだって きちんと存在しているのです。
それに、なにより]
(192) 2018/06/17(Sun) 03時頃
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いくらおっきな街だって そんなところになんか、行きたくないやいっ!!!
[あの日、助けてもらえなければ 少年は今、こ子には存在出来ませんでした。 今、こうしている時間も全て ガストンがくれたものなのです。
それなのに、彼を憎む人間がいる場所へなんて どうして行けると言うのでしょう?
たとえ、妹たちの行き先がわかるとしても そんな場所に、一歩だって近寄りたくありません。
手紙と籠を口に咥えると 子熊は四つの足で、山道を駆け出しました]
(193) 2018/06/17(Sun) 03時頃
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[どこへ向かうのか。 行き先は、一つしかありません。
暮らして着た場所ですから 当然、鍵がないことは知っていました でもバリケードがこさえてあったら? ガストンがどこかへいってしまっていたら?
走っている間も、不安はどんどん湧いてでます 嫌な考えを振り払うように、一目散 山道を走って、走って]
よかった……かえれた
[途中、幾度か転びました。
それでもようやく、小屋へと帰り着くと 人の気配にほっと胸をなでおろします 床が泥で汚れるのも御構い無し 四つ足のまま、なかへと入れば]
(194) 2018/06/17(Sun) 03時頃
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ただいま
[眠っている大熊に、帰宅の言葉を 起こさないように小さく伝えたあと 空っぽの籠と破れた手紙を枕元へ
なんだか急に眠くなってきたのは たくさん走って疲れたからでしょうか]
おや、す―――
[そのまま、倒れこむように ガストンに体をぴたりとつけて 子熊は眠りに落ちたのでした**]
(195) 2018/06/17(Sun) 03時頃
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[分厚い藁の寝床の中、胎児のように体を丸め 小さな子熊は冬の間中、夢を見ます。
窓を叩く風の音はゴオウ、ゴオウと 滝壺へと落ちる水の音へ 積もった雪の重さに、屋根が軋む音は 荷馬車の上で、積荷が擦れる音へ
風の荒さと、雪の重さからなる夢は 寂寥感に満ち満ちて、良い夢とは言えないもの
人間ならば、飛び起きることもあるでしょう もし起きられなくとも、せいぜい一晩限り 朝になれば、自然と目が覚めて どんな悪夢も次第に薄れていく。そんなもの
けれど子熊にとって、冬の眠りは深いもの 見る夢がどんな悪夢だとしても そうそう目覚めることは叶いません]
(232) 2018/06/17(Sun) 17時半頃
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[大熊へ隙間がないほど寄せていた体は 幾度もの寝返りで、ころりころり
夢の怪物を振り払おうとするあまり いつしか、体は寝床から床板へ
冷たいそこへ転がりかけた時 暖かいものが前足の先に触れて]
――――……。
[温もりに先導されるようにして 寝返りの向きは、寝床の方へ
一番大きく、暖かい存在に触れたなら 眠り始めた時と同じようにぴたりと体を寄せ 悪夢のない、深い眠りへと落ちていくのでした]
(233) 2018/06/17(Sun) 17時半頃
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―― そして、雪解け水の頃 ――
[あれほど激しかった風の音も 今では時折わずかに、窓枠を揺するだけ。
窓の隙間から室内へと流れる空気にも 切り裂くような鋭さはもうありません。
どこからか飛んできたのか 羽虫が一匹、寝床の中の子熊の耳にとまれば]
―――ふ、ぁ
[くぁぁ。と顎が外れるほどの大欠伸 抱きしめる腕の下からもぞもぞと這い出して ふかふかの毛に覆われた前足で顔を擦ります。
泥だらけだった前足 もっともその泥は、今ではもうすっかり乾いて ぽろぽろこぼれてしまうほどでしたが]
(234) 2018/06/17(Sun) 17時半頃
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[一頻り目をこすったなら 眠気を払うように、ふるりと身震い一つ
眠る前、何かに怒っていた記憶があるのです それに何か悲しいことがあったようにも
なんだったっけ?と首を傾げ 寝ぼけ眼の子熊は、もう一度寝床へころり]
おはよ
[ふわぁと、もう一度あくびを繰り返しました*]
(235) 2018/06/17(Sun) 17時半頃
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[目覚めの挨拶をしたものの 頭の中は、まだ殆ど夢の中 悲しい出来事も、怒っていた理由も 泥汚れの原因さえ思い出せそうにありません。
思い出すのも面倒くさいから この際、二度寝してしまおうかなんて 頭から藁の中へ潜りかけた時です。
すぐ隣で大熊が起き出してくる気配がしました]
(242) 2018/06/17(Sun) 19時頃
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………?
[子熊よりずっと、熊歴の長いガストンですから きっと、冬眠なんてお手の物。
目覚めたらしゃきしゃき朝の準備を始めて 身繕いを整えるはずなんて そんな推測はどうやら、大間違いだった様子。
ごそごそしたり、欠伸を漏らす姿が面白くて 見つめているうちにまた、とろりと夢の中 穏やかな寝息が漏れ始めたのです、が]
(243) 2018/06/17(Sun) 19時頃
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[ごそごそしていたガストンが なぜだか、勢いよく起き上がりました。
『おかしい』という言葉は 何を意味しているのでしょう?
寝ぼけ眼の子熊は、考えて考えて…… 思い出した瞬間、眠気が飛びました]
(244) 2018/06/17(Sun) 19時頃
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どういうことって?
[とぼけているわけではありません 唸り声混じりの相手に、こちらも唸り声。
怒っていた理由も思い出しましたから 瞳に力を込めて、ここにいる理由を]
……一緒がいいって、いったじゃん 言ったのに、なんで 出て行かないといけないのさっ!
[小さな熊が威嚇したとして 大きな熊にどれほどの効果があるのでしょう?
それでも、怒っているのだと 鼻筋に皺を寄せ、叩きつけるようにいいました*]
(245) 2018/06/17(Sun) 19時頃
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[礫のように投げられる言葉の数々を 揺るがないようお臍にグッと力を入れて 身じろぎひとつせず、子熊は聞いておりました。
言ったはず?説明したはず? 確かにそれはそうでしょう
託された手紙にも、確かに書いてはありました でもそれは、受け入れるにはあまりにも]
返事がかけない手紙なら そんなの、いらないやいっ!!!
[駄々だと思われたとしても それでいいのです。
大人には大人の 子供には子供の言い分がある そのどちらが正しいかなんて 簡単にはわからないと思うのですから]
(275) 2018/06/17(Sun) 21時半頃
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そうやって勝手に決めるなら アンタも、ボクの親と一緒だよ!!!
[このままだと生きていけないからと 自分と妹を売った両親の姿と 目の前の彼の姿が、重なります。
子供3人分の食い扶持が減った分 家族の暮らしは楽になったのかもしれません 妹たちも、どこかで幸せになれたかもしれません
でも、いくら幸せの可能性を積み上げても 手放されたという事実は消せはしないのです]
(276) 2018/06/17(Sun) 21時半頃
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殺されるからなに? あぶないからなに?
そうやって、山からボクがおりたとしても 幸せになれるかなんてわからないんだよ!?
それなら、うまく行かなくたって 一緒にいられる方法を考えた方がずっといい
[前にガストンが言っていたこと "欠けたものは、戻せない" その言葉の意味を少年は知っていました。
一度、バラバラになってしまったら いくら寄せ集めてくっつけたって 元どおりにはなれないのです]
(277) 2018/06/17(Sun) 21時半頃
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家族だから、一緒にいたいんだよ! ガストンのバカ!!!!
[必死で言葉を並べ立てて 思っていることを伝えようとしても 結局最後に出るのは、子供の喧嘩のような言葉 息を切らし、前足でぐしぐしと涙を拭ったのでした*]
(278) 2018/06/17(Sun) 21時半頃
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[自分の問題に、巻き込みたくないという言葉 その言葉に子熊は、一瞬目を見開くと ため息とともに、静かに瞳を伏せました。
自分の問題。確かにそれはそうでしょう けれど、それを理由にして 子熊の行く末を決めてしまうというのなら それは、もう彼だけの問題とは言えない そう思うのです。
違うと言った人間の 少年の両親と全く同じことをしているのだと なぜ、わかってもらえないのか 家族と言いながらも なぜ外のものとして扱うのか
羊皮紙の手紙を読んだ時のように なんだかとても悲しくなった子熊は しょんぼりと、肩を落として]
(298) 2018/06/17(Sun) 23時頃
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[わかってくれないならもういいと 言葉を切ろうとした時でした。
不意に唸り声ごえが止んだかと思うと その代わり、なにやら呆けたような短い声 探し物を見つけたような声 そんな声を聞いてしまったのですから
先ほどまで唸り声をあげていた子熊の方も 緊張の糸が緩むというもの きょとんと目を見開いて 怖い顔を作るのも忘れ、口も半開き
だって、それというのも]
(299) 2018/06/17(Sun) 23時頃
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へ?いえで? [子熊がここに残るなら ガストンは出て行くという意味でしょうか。
そう解釈するのが妥当な気もするけれど それにしては、なんだか様子が違うな。と こちらも床にぺたりとお尻をつけました*]
(300) 2018/06/17(Sun) 23時頃
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し、知ってらぁ……! 意味ぐらい!!
[家出は家を出ていくということ 至極真面目な様子の大熊に 子熊はえへんと、大見得を切ります
もっともっと幼い頃 子熊だって家出したことがあります 何で叱られたのか、今では覚えていませんが お気に入りのオモチャと、オヤツを持って 三時間ばかり、納屋に立てこもった時のこと
あとで見つかって、大目玉をくらいましたが 見つかるまでのワクワク感……! 今でもしっかり覚えています]
(321) 2018/06/18(Mon) 08時半頃
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[でも、ガストンの言う家出は 子熊の記憶の中の家出とは、だいぶ違うよう。
子熊は首を傾げ、うーん 腕組みのおまけまで付けて思案顔]
それって、お引越しとか 旅に出るって言うんじゃ……
[一応、言ってはみたものの どちらにしても、家を出るのは一緒 ただそれが、どちらか片方だけか それとも二人だけかの違いだけ。
そこまで考えたところで 今度は子熊がぱっくり口を開く番
話を飲み込むまでここまでかかるのは きっと心底、怒っていたせい そう言うことにしておきましょう]
(322) 2018/06/18(Mon) 08時半頃
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うん!一緒に行こう!!!
ガストンのこと嫌いな人間がいる街は 遠回りになっても、寄らないようにして 二人だもん、きっと大丈夫
[目的地のない旅です。 いいえ、目的地を探す旅かもしれません。 どこまでも歩けるだけ歩いて そうして、足を止めたところが目的地 それでいいように思えます。
妹が見つかったとして 『ついていかない』なんて言われても大丈夫 それでも子熊には、もう家族がいるのですから]
ね、とーさん
[差し伸べられた腕に、両手で抱きつき 大きな大きな熊に満面の笑顔を返したのでした*]
(323) 2018/06/18(Mon) 08時半頃
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[どこまでも一緒 それ以上に素敵な言葉は、きっとないでしょう。 どこまでだって一緒なら なんでもできるような気がするのです]
うん!起きなきゃ!!
[子熊もよいしょ 弾みをつけて立ち上がろうとしましたが。
少しばかり勢いが良すぎたのか あべこべに、後ろへころり 尻餅ゆつくように転げてしまいます。
むぅ、と小さく唸ってから 今度はちゃんと手を使ってのそのそ 先ほどの失敗がだいぶ恥ずかしかったので 慎重に立ち上がることにして]
(342) 2018/06/18(Mon) 13時頃
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じゃあ、ポスト見に行かなきゃ
荷物はね、えーっと 食べ物とお気に入りのもの! [図鑑に家出の仕方があるならばいいけれど どこを見てもきっと、書いてないでしょう。
まず、食べ物はないと始まらない その次に、羊皮紙とペンも お手紙を書くのにきっと必要。 地図は?もしあったなら持っていた方が楽
そんなふうにあれやこれや 頭の中で考えていくのも楽しいのです*]
(343) 2018/06/18(Mon) 13時頃
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[瞬く間に大熊が人間の姿に変わったなら 子熊もそれを真似して、見よう見真似。
えいや!と、気合いを入れてはみたけれど なかなかうまくはいかないものなのです 体を震わせてみたり、ジャンプをしてみたり しばらくの間、あれこれ試行錯誤して]
ほら!変身できた!
[ようやく人の姿になれたのは お腹がぐぅぅとなるほど、後のこと。
それでも、一人前に変身できたと 得意気に鼻を鳴らしたのでした]
(368) 2018/06/18(Mon) 21時半頃
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[変身も、もう自由にできる 木登りなんて、どちらの姿でもお手の物 なんだか大人に近づいたような気がして 人間の姿の子熊は、しゃんと胸を張りました。
では、父親熊の方は?というと 唇の端がひくひくしているのが 子熊の目にだって、みて取れます]
だーーーめ!!! とーさんなんだから、とーさん!
これから、人がいるところにも行くんでしょ? そのときに、とーさんって呼んでなかったら とーさんのこと怪しまれるかもしれないじゃん だから、とーさんだよっ!!!
[ここぞとばかり連呼したのはもちろん たくさんいえば慣れるかもしれないと 半分以上は、わざとです]
(369) 2018/06/18(Mon) 22時頃
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[怒ってみたり、泣いてみたり 冬眠中に動かなかった分を取り返すように 起きてからというもの 子熊はひと時だって、じっとしていません だから、お腹が空くのも当たり前というわけで
ポストの中から取り出された籠の中 それはもう、美味しそうな食料を見つけたなら いそいそと手早くお皿の準備]
かへ? かへふぁー いっふぁこほぉ、ふぁい
[行ったことない。そう言いたかったのですが 生憎、酢漬けのキャベツで口が埋まっていました。
酢漬けのキャベツを水で飲み込んだなら その次は、ウインナーという具合に 次々とお皿へ手を伸ばしていき]
(370) 2018/06/18(Mon) 22時頃
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[そうして、お腹がいっぱいになったなら 食べ物と大切なものだけ持って出発 ……と、いうつもりだったのですが]
んーとね、大っきい二匹は留守番 あとはみんな、つれてく
[テントウムシを連れて行こうというガストンに ちょっと考えてからそんな提案を
空っぽの家が寂しくないように テントウムシに住んでいてもらいましょう]
(371) 2018/06/18(Mon) 22時頃
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[もし、故郷の村を救えたなら そんな思いも、ないわけではありません。
けれど、もし故郷の村に辿り着いたとして 人々がガストンを受け入れてくれないのなら そこで暮らしたいとは思わないでしょう。
ぎゅっと繋いだ手を握り返し すぅっと、一度深呼吸。 旅立ちの準備は整いました]
好きかどうか、じゃなくって 好きになってくれるか、どうか!だよ!
ボクだって最初は 食べられちゃうって思ったもん
(372) 2018/06/18(Mon) 22時頃
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[最初は好きじゃなかったとしても 少しずつ、近づいていけたならいい、と 力を込めて主張したその言葉は 半分は自分自身に向けたもの。
旅立ちにはもちろん不安もあるけれど 不安だけをみていたら、脚が竦みそうでしたから]
いこう、とーさん
[まずは慣れ親しんだ山道を ずっとずっと先へと進んでいきましょうか*]
(373) 2018/06/18(Mon) 22時頃
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